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材大なれば用を為し難し

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学習塾は不要だと思う1 Ryou 2013-12-18 00:06:46 Ryou
竜の口、堀通り角の伝奏屋敷は1 Ryou 2013-12-18 00:04:20 Ryou
下らぬ手土産一つで1 Ryou 2013-12-18 00:03:08 Ryou
藤井が去ると1 Ryou 2013-12-18 00:02:13 Ryou
七百両で仕上りますものを1 Ryou 2013-12-18 00:00:06 Ryou
「なかなか早いな。どうれ」1 Ryou 2013-12-17 23:59:19 Ryou
殿中で高家月番1 Ryou 2013-12-17 23:58:44 Ryou
一日百両として1 Ryou 2013-12-17 23:57:26 Ryou
用人部屋へ戻って来た二人は1 Ryou 2013-12-17 23:56:44 Ryou
「七百両!」と1 Ryou 2013-12-17 23:56:22 Ryou
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1 Ryou 2013-12-18 00:06:46 [URL]

日本では少子化が進んでいると言われているそうですが、学習塾は物凄い勢いで増加している印象があります。駅前を歩くと分かりますが、学習塾ばかりです。

私には高校生2年生の子どもがいるのですが、学習塾に行かせようと思ったことは一度としてありません。社会に出てから使うことのない知識を教えるという事自体に必要性を感じないのです。

費用にしても毎月の事ですから、親の経済的負担も馬鹿になりません。
若い人たちが大人のビジネスに利用されているだけだと早く気付いて欲しいものです。

肝心の子供としては大学進学を希望している都合で通いたい様なのですが、通いたいなら自分でアルバイトでもして、お金をためて行きなさいと私からは言っています。
 
1 Ryou 2013-12-18 00:04:20 [URL]

 竜の口、堀通り角の伝奏屋敷は、塀も壁もすっかり塗り替えられて、庭の草の代りに、白い砂が、門をはいると玄関までつづいていた。
 吉良が、下検分に来るという日なので、替りの人々は、早朝から詰め切って、不安な胸でいた。
「どこも、手落ちはないか」
「無いと思う」
「思うではいけない」
「じゃ断じてない」
「でも、七百両ではどこかに無理が出よう」
「相役の伊達左京の方は、いくら使ったかしら?」
「それはわからん!」
「伊達より少ないと、肩身が狭いぞ」
「第一評判が悪くなる」と、人々がいっている時、
「吉良上野介様あ!」と、玄関で呼ぶ声がした。
「そらっ!」
 人々が立ち上った。玄関の式台、玄関脇には、士が、小者が、つつましく控えていた。玄関の石の上に置いた黒塗りの駕から上野介が出て、出迎えの人々にかるく一礼して、玄関を上った。人々は、上野の顔色で、上野の機嫌を判断しようとした。
「内匠頭は?」
「只今参上いたします」
 上野は、内匠頭が玄関に出迎えぬので、いよいよ腹立ちと不愉快さとが重なってきた。そして式台を上って、玄関に一足踏み込むと、
「この畳は?」と、下を見た。
 
1 Ryou 2013-12-18 00:03:08 [URL]

「下らぬ手土産一つで、慣例の金子さえ持って来ん。大判の一枚、小判の十枚、わしは欲しいからいうのじゃない。慣例は、重んじてもらわなけりゃ困る。一度、前に勤めたことがあるから、今度はわしの指図は受けんという肚なのだろうが、こういうことに慣例を重んじないということがあるか。馳走費をたった七百両に減らすし、わしに慣例の金子さえ持って来ん。こういうこと、主人が何といおうと、家の長老たるべきものが、よきに計らうべきだが、藤井も安井も算勘の吏で、時務ということを知らん。国家老の大石でもおれば、こんなばかなことをすまいが。浅野は、今度の役で評判を悪くするぞ。公儀の覚えもめでたくなくなるぞ」
 上野は、内匠頭にも腹が立ったが、江戸家老の処置にも怒りが湧いてきた。
(わしのいうことをきかないのなら、こっちにもそのつもりがある)
 そう考えて、
「手土産など、突っ返せ!」といった。用人が、
「それはあまり……」といった。
 上野は、だまって何か考えていた。
 
1 Ryou 2013-12-18 00:02:13 [URL]

 藤井が去ると、
「怪しからんやつだ」と、上野は呟いた。
 用人が、
「浅野から」といって、藤井の持って来た手土産を差し出した。
「それだけか」
「はい」
「外に、何にも添えてなかったか」
「添えてございません」
「彼奴め、近年手元不如意とか、諸事倹約とか、内匠と同じようなことをいっていたが、そうか」
 上野は冷えたお茶を一口のんで、
「主も主なら家来も家来だ」
「何か、申しましたか」
「ばかだよ。あいつらは。揃いも揃って吝ん坊だ!」
「どういたしました」
「浅野は、表高こそ五万三千石だが、ほかに塩田が五千石ある。こいつは知行以外の収入で、小大名中の裕福者といえば、五本の指の中へはいる家ではないか。それに、手元不如意だなどと、何をいっている!」
「まったく」
 
1 Ryou 2013-12-18 00:00:06 [URL]

「しかし、七百両で仕上りますものを、何も前年通りに……」
「どう仕上る?」
「それは、ここにあります」そういって、内匠頭は書状を差し出した。
「それは、とくと見た。しかし、そうたびたびの勤めではないし、貴公のところは、きこえた裕福者ではないか。二百両か五百両……」
「一口に、おっしゃっても大金です。出す方では……」
「とにかく、前年通りにするがいい」吉良の声は少し険しくなっていた。
「じゃ、この予算は認めていただけませんか」
「こんな費用で、十分にもてなせると思えん」
「おききしますが、饗応費はいくらの金高と、公儀で内規でもございますか」
「何!」上野は赤くなった。
「後の人のためにもなりますから、私このたびは七百両で上げたいと思います」
「慣例を破るのか」
「慣例も時に破ってもいいと思います。後の人が喜びます」
「ばか!」
「ばかとは何です」
 畠山が、
「内匠っ!」といって、叱った。
「慣例も時によります」
 内匠頭は、青くなっていいつづけた。
「勝手にするがいい」吉良は拳をふるわせて、内匠をにらみつけていた。
 
1 Ryou 2013-12-17 23:59:19 [URL]

「なかなか早いな。どうれ」
 吉良は、じっと眺めていたが、
「諸事あまりに切りつめてあるようじゃが」と、内匠頭の顔を見て、
「これだけの費用じゃ、十分には参らぬと思うが」と、つけ足した。
「七百両がで、ございますか」
「そうだ」
「しかし、これまでのがかかりすぎているのではありませんか、無用の費は、避けたいと思いますので」
 上野は、じろっと内匠頭をにらんで、
「かかりすぎていても、前々の例を破ってはならん。前からの慣例があって、それ以下の費用でまかなうと、自然、勅使に対して失礼なことができる」
「しかし、礼不礼ということは、費用の金高にはよりますまい!」
「それは理屈じゃ。こういうことは前例通りにしないと、とかく間違いができる」
「しかし、年々出費がかさむようで……」
「仕方がないではないか。諸式が年々に上るのだから、去年千両かかったものが、今年は千百両かかるのじゃ」
 
1 Ryou 2013-12-17 23:58:44 [URL]

 殿中で高家月番、畠山民部大輔へ、
「今度の勅使饗応の費用の見積りですが、ちょっとお目通しを」といって、内匠頭が奉書に明細な項目を書いたのを差し出した、畠山は、それをしばらく眺めていたが、
「わしには、こういうことは分からんから、吉良に――ちょうど、来ているようだから」と、いって鈴の紐を引いた。坊主が、
「はい」といって、手を突いた。
「吉良殿に、ちょっとお手すきなら、といって来い!」
「はっ!」
 坊主が立ち去ると、
「とんだ、お物入りですな」と、畠山がいった。
「この頃の七、八百両は、こたえます」
「しかし、貴殿は塩田があって裕福だから」
「そう見えるだけです」
「いや、五万三千石で、二百何十人という士分がおるなど、ほかでは見られんことですよ。裕福なればこそだ」といったとき、吉良上野がはいって来た。
「浅野殿の今度の見積りだが、今拝見したが、私には分からん。肝煎指南役が一つ!」
 畠山が書付を、吉良へ渡した。
 
1 Ryou 2013-12-17 23:57:26 [URL]

「一日百両として、千両。前の時には日に四十両で済んでいるが、天和のときの慶長小判と今の鋳替小判とでは、金の値打が違っているし、それに諸式が上っているし……」
「御馳走の方も、だんだん贅沢になってきているし……」
「そうさ。出雲だって千二百両使っているのに、浅野が七百両じゃ……ざっと半分近いのでは、勅使に失礼に当るからなあ」
「困った」
「困ったな。急飛脚でも立てて、国元の大野か大石かに殿を説いてもらう法もあるが、大野は吝ん坊で、七百両説に大賛成であろうし、大石は仇名の通り昼行灯で、算盤珠のことで殿に進言するという柄ではないし……」
「困ったな。できるだけ切りつめて、目立たぬところは手を抜くより法はない」
「黙って家来に任しておいてもらいたいな、こんなことは」
「いくらか、こんなときにいつもの埋合せがつくくらいにな」
「悪くすると、自腹を切ることになるからな」
「そうだ!」
「とにかく、まず第一に伝奏屋敷の畳替えだ」二人は、接待についての細かな費用の計算を始めた。
 
1 Ryou 2013-12-17 23:56:44 [URL]

 用人部屋へ戻って来た二人は、
「困ったなあ!」といって、腕組みをした。
「吉良上野という老人は、家柄自慢の臍曲りだからな」
「家柄ばかり高家で、ぴいぴい火の車だからなあ」
「殿様は、賄賂に等しい付届だと、一口におっしゃるが、町奉行所へだって献残(将軍へ献上した残り物と称して、大名が江戸にいる間、奉行の世話になった謝礼として、物品金子を持参することをいう)を持ち込むのだからな。大判の一枚や小判の十枚ぐらいけちけちして、吉良から意地の悪いことをされない方がいいがな。もしちょっとした儀式のことでも、失敗があると大変だがな」
「しかし、前に一度お勤めになったから、その方は大丈夫だろうが、七百両で仕切れとおっしゃるのは、少し無理だて」
「無理だ」
「勅使の御滞在が、十日だろう」
「そうだ」
 
1 Ryou 2013-12-17 23:56:22 [URL]

「七百両!」と、二人は首を傾けた。
「少なすぎるか」
「さあ!」
 二人は、浅野が小大名として、代々節倹している家風を知っていたし、内匠頭の勘定高い性質も十分知っていたので、
「それで、結構でしょう」と、いうほかはなかったが、伊東出雲とて、少しも裕福でないのに、その伊東が千二百両かけたとしたら、御当家が七百両では少しどうかしらと、二人とも思っていた。
「第一、近頃の世の中はあまり贅沢になりすぎている。今度の役にしても、肝煎りの吉良に例の付届をせずばなるまいが、これも年々額が殖えていくらしい」
「いいえ、その付届は、馬代金一枚ずつと決っております」
「それだけでも、要らんことじゃないか。吉良は肝煎りするのが役目で、それで知行を貰っているのだ。わしらは、勅使馳走が役の者ではない。役でない役を仰せつかって、七、八百両みすみす損をする。こっちへ、吉良から付届でも貰いたいくらいだ」
 二人の家老は頷くよりほかはなかった。
 
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