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材大なれば用を為し難し

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スレッド名コメント作成者最終投稿
打ち解けて話をする時分には1 Ryou 2013-12-01 12:09:22 Ryou
このことはペーピーの1 Ryou 2013-10-16 21:20:34 Ryou
顔にも身体に1 Ryou 2013-10-16 21:20:09 Ryou
そして、実際に1 Ryou 2013-10-16 21:19:40 Ryou
で、ペーピーのほうは1 Ryou 2013-10-16 21:19:08 Ryou
彼女のほうから1 Ryou 2013-10-16 21:17:44 Ryou
あの人はきっと1 Ryou 2013-10-16 21:17:23 Ryou
Kが眼ざめたとき1 Ryou 2013-10-16 21:17:00 Ryou
この人ったら1 Ryou 2013-10-16 21:16:42 Ryou
二度の聴取1 Ryou 2013-10-16 21:16:13 Ryou
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1 Ryou 2013-12-01 12:09:22 [URL]

 打ち解けて話をする時分には現任大臣の事ですから政府部内の話も折々ある。で、この方は政府で何かむつかしい問題が起ると、その場では意見を述べずに家に帰って来てそれから自分の父親のごとき前大臣に相談をするです。今日はこういう問題があったがどうしたものだろうと言うと、前大臣は前例を鑑み、あるいはその事変に応じてそれぞれの処分法をば言われる。一体から言うと前大蔵大臣は今頃は総理大臣の位置に居るか、高等僧官の中で宮内大臣の位置に居るか、どっちかの位置に居られる人だそうです。そう行かなかったというものは、この尼僧を奥さんにせられた事からやはりチベットでもそれが幾分か攻撃の種になって、自然蟄居しなければならんようになったと言う。
 もしこの方がチベットで政治を執るようになって居りますれば、今の鋭敏なる法王とこの老練なる大臣とが相俟って随分面白い仕事が出来たろうと思う。こういうような前大臣と現任大臣との夜分のお話には、私もその席に居ていろいろ聞いたり、時としてはまた私の意見などを言って見たりするような親しい間柄になったです。それがために私は研究しようとは思わない、とても研究しようと思ったところが到底出来得ないと絶念して居った
 
1 Ryou 2013-10-16 21:20:34 [URL]

このことはペーピーの気ちがいじみた空想であるはずがなかった。というのは、彼女はフリーダと、一人の娘と一人の娘という関係で十分に張り合うことができたからだ。このことはだれだって否定はしないだろう。Kが一瞬のあいだに眼をくらまされてしまったのは、何よりもまずフリーダの地位だったのだし、フリーダがその地位に与えることを心得ていた輝きだったのだ。そこでペーピーはこんなことを夢見たのだった。Kは、もし彼女があの地位を手に入れたら、嘆願せんばかりに彼女のところへくることだろうし、そうしたら彼女は、Kの願いをきき入れて地位を失うか、それとも彼をこばんでさらに出世をつづけるか、どちらかを選ばなければならないだろう、と。そして彼女は、いっさいのものをあきらめ、身を落して彼のところへいき、彼がフリーダのところではけっして知ることができないような、そして世のなかのどんな名誉ある地位にも依存しないような、ほんとうの愛を彼に教えてやる気構えでいたのだった。
 
1 Ryou 2013-10-16 21:20:09 [URL]

顔にも身体にもみじめさが疑いの余地なく現われているんだから、少なくとも、たとえば彼女のいわゆるクラムとの関係といったような、だれにもたしかめることのできない秘密をほかにもいろいろともっているにちがいない。そして、ペーピーにはあのとき、次のような考えさえも頭に浮かんだのだった。つまり、いったい、ほんとうにKがフリーダを愛しているなんていうことがあるんだろうか、あの人は思いちがいしているんじゃないだろうか、あるいはただフリーダだけをだましているんじゃないだろうか、そしておそらくこうしたすべてから生まれるただ一つの結果はペーピーの出世ということだけになるのだろう、そうなればKはそのあやまちに気づくか、それともそのあやまちをもう隠そうとはしないで、もうフリーダのことは見ずに、ペーピーだけを見るのではないだろうか、と。
 
1 Ryou 2013-10-16 21:19:40 [URL]

そして、実際に彼女のために出世の道をあけてくれたのだ。とはいっても、Kのほうでは彼女のことなど何も知らず、彼女のためを思ってそんなことをしたわけでもなかった。だが、それは彼女の感謝の気持をさえぎるものではなかった。彼女があの地位につけられる前の晩に――あの地位につくことはまだきまったわけではなかったが、大いにありそうなことだった――彼女は心のなかで彼と話し合い、自分の感謝を彼の耳にささやいて、何時間かを過ごしたのだった。そしてさらに、彼が自分の身に引き受けた重荷がほかならぬフリーダであるということが、彼女の眼に彼の行為をいよいよすばらしいものに見えさせた。彼がペーピーを引き出すために、フリーダを自分の恋人としたということのなかには、何か理解できないほど無私のものが含まれていたのだ。フリーダときたら、きれいでもない、少しふけてしまった、やせた女の子で、短い、毛の少ない髪をしており、その上気心の知れぬ女で、いつも何かしら秘密をもっている。そのことはたしかにあの人の容貌ともぴったり合っている。
 
1 Ryou 2013-10-16 21:19:08 [URL]

で、ペーピーのほうはどうだろう? いったいペーピーは、あの地位を自分の手に入れようなどと、かつて考えたことがあったろうか。彼女は客室つきの女中で、重要でない、ほとんど先の見込みもない地位にいたのだった。どの娘とも同じようにすばらしい未来の夢を見ていたことは見ていた。夢はだれにだって見るなというわけにはいかないものだ。けれども、それ以上に進むことなんか、本気で考えたことはなかった。彼女はすでに手に入れたもので満足しきっていたのだった。ところが、フリーダが突然、酒場から消えてしまい、それがあまりに突然だったものだから、亭主はすぐ適当な者を手に入れることができず、探したところ、むろん相応に前へのり出していたペーピーが眼にとまった。あのころ彼女は、それまでにどんな人も愛したこともないくらいにKのことを愛していた。彼女は何カ月ものあいだ、下のちっぽけな暗い部屋に坐ったきりで、そこで何年でも、また運が悪ければ一生のあいだでも人の眼につかずに暮らすつもりでいた。すると、そこへKが現われた。そんなKはまるで一人の英雄で、娘を解放してくれる人間というわけだった。
 
1 Ryou 2013-10-16 21:17:44 [URL]

彼女のほうから自分ですぐ語り出したのだった。眼をじっとコーヒーのポットに向けたまま、話しているあいだも気をそらす必要があるとでもいうように、また自分の悩みにかかりきりになっていてもそれにすっかり没頭するわけにはいかないのだ、というのはそれは自分の力を超えるものなのだ、といわんばかりであった。まずKは、ほんとうは自分がペーピーの不幸に責任があるのだ、でも彼女のほうはそれをうらみには思っていない、ということを聞かされた。そして、Kに反対なんかさせまいとして、話のあいだにも熱心にうなずいて見せるのだった。まず彼がフリーダを酒場からつれ出し、それによってペーピーの出世を可能にした。それ以外に、フリーダの心を動かして彼女の地位を捨てるようにさせることができるものは何一つ考えられない。フリーダはあの酒場でまるで巣のなかのくものように坐りこみ、いたるところに彼女の知っている限りの糸を張っていた。彼女を彼女の意に反して引き抜くことはまったく不可能だったろう。ただ身分の低い者への愛だけが、つまり自分の地位にふさわしくはない何ものかだけが、彼女をその地位から追い立てることができたのだ。
 
1 Ryou 2013-10-16 21:17:23 [URL]

「あの人はきっとあなたのことをもう好きじゃないようね?」と、ペーピーはコーヒーと菓子とを運んできながら、たずねた。しかし、そのききかたは前のように悪意がこもったものではなく、悲しげな調子で、まるであれからこの世のなかの悪意を知ってしまい、それに比べては自分のどんな悪意もむだで、意味がないといわんばかりであった。彼女はまるで苦しみをともにする人に話しかけるような調子でKに話しかけてきた。そして、Kがコーヒーを味わってみて、どうも甘味がたりないと思っているらしいのを見て取ると、すぐ走っていって、彼のために砂糖のいっぱい入った砂糖入れをもってきた。彼女の悲しい気分は、今晩のほうがおそらくこの前のときよりももっと飾り立てているということにさまたげにはなっていなかった。髪の毛の編み目や髪に編み入れたリボンがたくさんあって、額にそった生えぎわとこめかみのあたりとでは髪に念入りにこてをあて、首には小さな鎖をかけていて、それがブラウスの深い襟ぐりに垂れ下がっていた。とうとう十分に眠ったし、よいコーヒーも飲めるのだ、という満足から、Kがそっと髪の編み目の一つに手をのばし、それをときほぐしてみようとすると、ペーピーは疲れたように「かまわないでちょうだい」といい、彼と並んで樽の上に腰を下ろした。Kは彼女の悩みについてたずねる必要はなかった。
 
1 Ryou 2013-10-16 21:17:00 [URL]

 Kが眼ざめたとき、まず、自分はほとんど眠らなかったように思った。部屋はさっきのまま人気がなく、暖かかった。どの壁もまっ暗で、ビールの栓の上のところについていた電燈は消えていた。窓の外も夜だった。ところが、彼が身体をのばし、枕が落ち、寝床と樽とががたがたいうと、すぐペーピーがやってきた。そして、もう夜であり、自分が十二時間以上も眠ったのだ、ということをこの子から聞いた。おかみが昼のあいだに二、三度彼の様子をたずねたし、ゲルステッカーもそのあいだに一度彼の様子を見にここへやってきた。ゲルステッカーは、Kがおかみと話していたとき、ここの暗がりのなかでビールを飲みながら待っていたが、もうKが眠っているのをじゃまする気にはなれなかったのだ。それに、最後にフリーダもやってきたということで、彼女は一瞬間彼のそばに立っていたが、ほとんど彼のためにやってきたのではなく、ここでいろいろと準備をしなければならなかったのだ。というのは、今晩から彼女はまた以前の勤めにつくはずだからだ。そんなことをペーピーはしゃべった。
 
1 Ryou 2013-10-16 21:16:42 [URL]

「この人ったら、なんてわたしを見つめているんでしょう! もうこれでこの人を追っ払ってちょうだい!」
 しかしKは、機会をつかんで、自分がここにいることになるだろうと、完全に確信し、ほとんどどうでもいいのだというような態度で確信して、こういった。
「あなたを見ているんじゃなくて、あなたの服を見ているんです」
「なぜわたしの服を見るんです?」と、おかみは興奮してたずねた。Kは肩をすぼめて見せた。
「いきましょう!」と、おかみは亭主に向っていった。「この人は酔っ払っているんです、ろくでなしめが。酔いがさめるまで、ここに眠らせておきなさい」
 そういって、さらにペーピーに、何か枕になるものをKに投げてやるように命じた。ペーピーはおかみの呼び声で暗がりから姿を現わしたが、髪は乱れ、疲れており、だらしなく箒を手にしていた。
 
1 Ryou 2013-10-16 21:16:13 [URL]

 二度の聴取――エルランガーのも――について語ったこと、またKがあの人たちのことを尊敬をこめて話したことは、亭主に好感を与えた。亭主はもうKの頼み、つまり樽の上に一枚の板をしき、そこで少なくとも明けがたまで眠りたいという頼みを、かなえてやろうとしているように見えた。ところが、おかみのほうは明らかに反対らしく、彼女は今やっと自分の服とそのしどけない様子とに気づき、ところどころを無益に引っぱりなおして、くり返し頭を振るのだった。この宿の清潔に関する昔からの懸案らしい争いが、またもや突発しているらしかった。疲れきっているKにとっては、夫婦の対話は非常に大きな意味を帯びていた。この宿からふたたび追い出されるということは、これまでに体験したいっさいのことを越えるような不幸であるように彼には思われた。亭主とおかみとが自分に向って一致して反対してくるようなことがあっても、そんなことが起ってはならないのだ。Kは樽の上にかがみこんで、うかがうように二人を見つめていた。とうとうおかみは、Kがずっと前から気づいていた例のなみなみならぬ神経質さをもって、突然わきへどき――おそらく彼女は亭主ともう別なことを話していたのだった――こう叫んだ。
 
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