藤井が去ると (コメント数:1) |
1 Ryou 2013-12-18 00:02:13 [URL]
藤井が去ると、 「怪しからんやつだ」と、上野は呟いた。 用人が、 「浅野から」といって、藤井の持って来た手土産を差し出した。 「それだけか」 「はい」 「外に、何にも添えてなかったか」 「添えてございません」 「彼奴め、近年手元不如意とか、諸事倹約とか、内匠と同じようなことをいっていたが、そうか」 上野は冷えたお茶を一口のんで、 「主も主なら家来も家来だ」 「何か、申しましたか」 「ばかだよ。あいつらは。揃いも揃って吝ん坊だ!」 「どういたしました」 「浅野は、表高こそ五万三千石だが、ほかに塩田が五千石ある。こいつは知行以外の収入で、小大名中の裕福者といえば、五本の指の中へはいる家ではないか。それに、手元不如意だなどと、何をいっている!」 「まったく」 |
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