材大なれば用を為し難し

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下らぬ手土産一つで (コメント数:1)

1 Ryou 2013-12-18 00:03:08 [URL]

「下らぬ手土産一つで、慣例の金子さえ持って来ん。大判の一枚、小判の十枚、わしは欲しいからいうのじゃない。慣例は、重んじてもらわなけりゃ困る。一度、前に勤めたことがあるから、今度はわしの指図は受けんという肚なのだろうが、こういうことに慣例を重んじないということがあるか。馳走費をたった七百両に減らすし、わしに慣例の金子さえ持って来ん。こういうこと、主人が何といおうと、家の長老たるべきものが、よきに計らうべきだが、藤井も安井も算勘の吏で、時務ということを知らん。国家老の大石でもおれば、こんなばかなことをすまいが。浅野は、今度の役で評判を悪くするぞ。公儀の覚えもめでたくなくなるぞ」
 上野は、内匠頭にも腹が立ったが、江戸家老の処置にも怒りが湧いてきた。
(わしのいうことをきかないのなら、こっちにもそのつもりがある)
 そう考えて、
「手土産など、突っ返せ!」といった。用人が、
「それはあまり……」といった。
 上野は、だまって何か考えていた。
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