竜の口、堀通り角の伝奏屋敷は (コメント数:1) |
1 Ryou 2013-12-18 00:04:20 [URL]
竜の口、堀通り角の伝奏屋敷は、塀も壁もすっかり塗り替えられて、庭の草の代りに、白い砂が、門をはいると玄関までつづいていた。 吉良が、下検分に来るという日なので、替りの人々は、早朝から詰め切って、不安な胸でいた。 「どこも、手落ちはないか」 「無いと思う」 「思うではいけない」 「じゃ断じてない」 「でも、七百両ではどこかに無理が出よう」 「相役の伊達左京の方は、いくら使ったかしら?」 「それはわからん!」 「伊達より少ないと、肩身が狭いぞ」 「第一評判が悪くなる」と、人々がいっている時、 「吉良上野介様あ!」と、玄関で呼ぶ声がした。 「そらっ!」 人々が立ち上った。玄関の式台、玄関脇には、士が、小者が、つつましく控えていた。玄関の石の上に置いた黒塗りの駕から上野介が出て、出迎えの人々にかるく一礼して、玄関を上った。人々は、上野の顔色で、上野の機嫌を判断しようとした。 「内匠頭は?」 「只今参上いたします」 上野は、内匠頭が玄関に出迎えぬので、いよいよ腹立ちと不愉快さとが重なってきた。そして式台を上って、玄関に一足踏み込むと、 「この畳は?」と、下を見た。 |
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