材大なれば用を為し難し

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次に主人は (コメント数:1)

1 Ryou 2013-12-01 12:14:55 [URL]

次に主人は私のただ今の住所を尋ねたから私は今はセラに居るといったところが、主人は少し考えて居りましたが、「それじゃあなたはこの頃大変名高い法王の御殿に出入するセライ・アムチー(セラの医者という意味にて著者の通称なり。ただし本名はセーラブ・ギャムツォすなわち慧海という)というのはあなたの事じゃございませんか。」「そうだ」といいましたところが非常に驚いて「どうもこの頃は世間ではあなたを薬師様か耆婆 のようにいって居ります。私共も身体が弱いから酷い病気でも起らないかどうか、一遍お逢い申して見て戴きたいと思うて居った矢先でございました」というようないろいろの話が出てそれから大変にその人と親密になった。そこでまた例の大蔵大臣の所に居るものですから喰物が沢山余って仕様のない事がある。それはやはり大臣方の紹介で是非見てやらなければならん貴族の病人がある。それらを見に行くと沢山な礼物の上にいろいろ珍しい喰物をくれるです。
 そういう物は自分一人で喰えないからみんな薬舗と其所へ持って行って分けて遣る。自分の部屋の留守番をして居る弟子坊さんにも分けて遣る。自分の喰うものはそんなになくっても大臣の所で御馳走があり余る程あるんですから……。それでだんだん親しみを増して来て私の災難を真実に救う原因となったのです。そこで私はやはりその大学の生徒になって居るのですから科目を怠ることは出来ない。折々セラの方にも帰って問答に出なくてはならん。もっとも医者であるから幾分か教官の方でも大目に見てくれて、そう毎日出なくったって叱言は喰わないんですけれども自分も好きなものですから折々やって行く。ここで僧侶の一般の傾向及び学者の理想として望んで居るところの事柄、僧侶の人種の区別等についてお話して置きましょう。
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