この屈辱が (コメント数:1) |
1 Ryou 2013-09-30 15:06:25 [URL]
「この屈辱が、おわかりになりますか?」 旅人は何も言わなかった。 将校も無言だった。両足を広げ、両手を腰に添えて、地面を見ながら、静かに立っていた。 それから、旅人をはげますように微笑んだ。 「昨日、私はあなたのそばにいたんですよ。ちょうど司令官が処刑を見学してほしいとお願いしたときです。私にもその言葉が聞こえました。司令官のことはよく知っていますから、すぐにわかりました。どういうもくろみで、あなたにお願いしたのかが。司令官の力は絶大で、私に対して断固とした処置を執ることもできるのですが、今まで、あえてしようとはしませんでした。そこでおあつらえ向きに、あなたがやってきて、名のある外国人の判断を仰げば、と思ったのでしょう。計算高い男です。あなたはここに来てまだ二日です。昔の司令官のことや、彼の思想哲学を知らないし、あなたは西方の国の常識というやつに慣らされている。もしかすると、あなたは死刑廃止論者というあれかもしれないし、特にこのような機械で死刑執行するとなれば、なおさらです。それに悲しいかな、あなたにはこの裁判は一般の人に公開されない秘密裁判と映るでしょうし、処刑に使うのはこんなおんぼろの機械ときている。――そうして、今、処刑を目の当たりにすれば、誰だって異常だと思う――と司令官は考えたに違いありません。 |
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