こんな夢をみたことは (コメント数:1) |
1 Ryou 2014-03-27 09:46:16 [URL]
彼女は、こんな夢をみたことは、生れてはじめてです。なんといふ変な後味でせう。罪の意識に似て、それともいくぶんちがひます。心に覚えのない夢をみせる悪戯らな神を、彼女は憎みました。 それから二、三日たつて、明るく晴れた午後のこと、夫に聴かせるつもりで、ちようど音楽の時間にラジオをかけてみました。 「おい、聴いてるかい? なにしてるの?」 夫が叫ぶ声に、台所から急いで来てみると、 「あれ、大庭常子だよ」 なるほど、それに違ひありません。カルメンを歌つてゐるのです。 「チキシヨウ! うめえなあ」 と、夫は感嘆の声をもらします。あまり音楽のことはわからぬ筈なのに、いやにわかつたやうなことを云ふので、彼女は、はじめちよつとをかしい気がしましたけれど、聴いてゐるうちに、これも上手下手のうちにはいるのか、大庭常子のカルメンは、なにか迫るやうな不思議な声の調子で全身をぞくぞくさせます。 |
Ads by Google |
(c)Copyright mottoki.com 2007- All rights reserved.
|