材大なれば用を為し難し

返信投稿フォーム
ニックネーム:
30文字以内
URL:
* コメント: [絵文字入力]

1000文字以内
文字色:
* 印の付いた項目は必須です。

井出康子は (コメント数:1)

1 Ryou 2014-05-17 12:07:49 [URL]

 井出康子は、すこし首をかしげたまゝ、市ノ瀬牧人の顔色を読むように、
「北原先生つていう方は、あたし、とても純粋な、しつかりした方だと思うの。普通の女のように引込み思案でなく、そうかといつて軽薄なお先つ走りでもない、とても頼もしいところのある方ね。あの方に愛される男つて、どんなに仕合せかと思うくらいだわ。それだけに、北原先生を幸福にしてあげられるような男は、そんなにざらにいないつていう気もするけれど、あたし、その役をあなたに引受けていたゞきたいのよ。ちよつとお待ちなさい、あたしに言うだけ言わして……」
 と、井出康子は、何か言いかけた相手を制して、
「もちろん、北原先生がその婚約の方をあきらめるつていう条件でよ。あたしがそうさせるから大丈夫よ。結局、北原先生の愛があなたに移るということは、あなたがそれを必要となさるかどうかできまるの。
Ads by Google
(c)Copyright mottoki.com 2007- All rights reserved.