材大なれば用を為し難し

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舞台は、連絡なき (コメント数:1)

1 Ryou 2014-02-02 12:49:34 [URL]

舞台は、連絡なき三つの場所を同時に示し得るやう、その空間を利用して、それぞれ独立した装置を施す。
三つの情景は、大体次の如き関係に配置されてゐればよい。


Aは、ホテルのアパルトマンに属する贅沢なサロン。

Bは、別のホテルの一人用寝台附小室。

Cは、ある商店の電話室。





時刻は午後九時。

Aの部屋では、男甲がソフアに倚つて夕刊を読んでゐる。その妻らしき女が、隣室から出て来る。



女   ちよつと、大きい方のトランクを開けて頂戴な。
男甲  もう寝るんだから、明日にしたらどうだ。
女   今、いるもんがあるのよ。
男甲  なにがいるんだ。
女   いゝから開けて頂戴つたら……。


男甲、渋々起つて隣室にはひる。女、その後に続く。
この時、Bの部屋へ、男乙が、外から帰つて来る。帽子を被つたまゝ寝台の上に寝ころがる。が、すぐにまた起き上り、電話の受話器を外す。



男乙  もし、もし、都ホテルへ繋いでくれ給へ。あゝ、都ホテル……。もし、もし、そちら、都ホテルですか。楠見つていふ人ゐますね。えゝ、さうです、夫婦連れの……。今、ゐますね。僕の名前は云はなくつてもよろしい。すぐ繋いで下さい……。


Aの部屋の電話が鳴る。女が電話口に現れる。
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