材大なれば用を為し難し

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夫の意見を聴いたときは (コメント数:1)

1 Ryou 2014-03-27 09:44:01 [URL]

 夫の意見を聴いたときは、たしかに、それに同感したのですが、夜になつて、ひとり寝味にはいつてから、ふと、こんな考へが浮びました。――「しかし、人間には、動機次第で、あくまでもひとを助けようといふ気になることはないだらうか。相手がそのために負担を感じるといふのは、まだまだその相手に余裕があるからではないか。義侠心といふのは、いつたいなんだらう。弱いものへの奉仕の精神ではないか。エゴイズムとはまつたく反対なものだ。自分たちの現在の生活は、誰がみてもたいへんなことはわかつてゐる。下をみればきりはないけれども、いろんな条件を照し合せてみて、第三者が心から同情してくれたとしても、ちつともこつちは、そのために、自尊心を傷けられることはないと思ふ。物質的な施しを受けるまでになつてゐないといふほこりさへ保てれば、進んで与へられる他からの力は、それを受け容れるのが、素直な人間の道ではないだらうか」
 保枝のこの論理は、一応、彼女のとつた処置を弁護するやうでしたけれども、すぐにまた、こんな疑ひが胸の底に湧きあがりました。――「いつたい、あの伏見といふ男が、あらゆる好意を示さうとしてゐるのは、夫の卯吉に対してか、或は、この自分に対してか?」
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