市ノ瀬牧人の道案内で (コメント数:1) |
1 Ryou 2014-05-16 11:11:12 [URL]
市ノ瀬牧人の道案内で、井出康子はむすこのモトムをつれて、きよう、ワラビ狩りに出かけて来た。 なるほど、道は登り一方で、人里をはるかにはなれた森の間の草地である。炭を焼いたあとの、雑木の切株のまわりに、によき/\とワラビの芽がのび、これはなんとしても採りつくせぬというありさまであつた。 「なんていうありかた、これは? まるで、ワラビ畑ね」 と、井出康子は、むしろ手を下さずにながめていたいというふうに、眼をみはつた。 市ノ瀬牧人は、やゝ得意げに、 「あるところには、ある、というこつてす」 「まつたく……あればそれほどありがたくないつていうこと、かしら? でも、もつたいないから、持てるだけ持つて帰るわ」 が、その「持てるだけ」が問題であつた。市ノ瀬牧人は、ひと握りずつ束にしたのを、リュックいつぱいにつめこみ、二つの手さげ袋は、はみだすほどになつた。 「もう、たくさん、たくさん」 そこで、弁当をということになつた。 |
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