材大なれば用を為し難し

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自暴自棄にもちかい彼女の言葉 (コメント数:1)

1 Ryou 2014-05-17 13:13:00 [URL]

 井出夫人は、この自暴自棄にもちかい彼女の言葉を、たゞ笑つて受けながし、江原の方へ向きなおつた――
「どうでしよう。こういうことをおつしやるんですよ。でも、いゝお仕事のお手伝いができなさるんだから、そういうことに興味がおありになるんだつたら、ずつとお続けになるといゝわ」
 井出康子が、やさしく言つてきかすように、彼女へ眼をうつすと、
「あら、奥さま、わたし、ちつとも興味なんかないですわ。いくらかの好奇心と、お義理とで、承知しましたの。わたし、後悔してますの、ほんと、ほんと……」
 と、彼女は、泣きだしそうな顔になり、井出夫人の方へいすを引きよせる。
 江原久作は、じつと下を向いて、彼女の冷静を失つた態度を、それとなくうかゞつていたが、
「奥さん、ぼくからはつきり申しますが、北原君は、ぼくには絶対に必要なひとです。これは、ただ、仕事のうえというだけでありません……」
 こゝまで言うと、北原ミユキは、立ち上つて叫んだ――
「うそ、うそ……、このひとの言うことはうそです」
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