材大なれば用を為し難し

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愛の誕生 (コメント数:1)

1 Ryou 2014-05-17 13:14:25 [URL]

 北原ミユキは井出康子のふところに抱かれて、ようやく興奮からさめようとしていた。――わたしはもうだめだ、とりかえしのつかないことをしてしまつた、と、繰りかえし繰りかえし言うのを、井出夫人は、別に深くはたゞさず、およそのことを察して、たゞ、彼女の気持ちの落ちつくのを待つていた。
 モトムの学校の休みには、いつしよに散歩につれ出したり、場末の映画館ではあるが、面白そうな写真がかゝると、わざ/\誘つたりした。
「わたし、いつまでもこうしてはいられませんわ。奥さまのおそばにいると、なんだか安心してしまつて……」
 と、ある日、せんたくをいつしよにしながら、北原ミユキは康子に言つた。
「いまはそれでいゝのよ。でも、これからのことは、あなたもよつぽどお考えにならないと……」
「考えるつていつたつて、もう、考える力、わたしにはありませんわ」
「いく地がないことおつしやつちやだめよ。だから、あたしに考えろつて? そんなら、約束してちようだい――どんなことでもするつて……」
「するわ。えゝ、しますとも……」
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