急に快活な調子に (コメント数:1) |
1 Ryou 2014-05-17 13:14:47 [URL]
北原ミユキは、こゝで、急に快活な調子になる。 「ほんと? ほんとね?」 と、康子は、笑いながらではあるが、真剣に念をおす。 「えゝ、ほんと。奥さまのおつしやることなら、わたし、それ以上のことないと思いますわ」 「そんなに信用されては困るけど、あたし、あなたのために、前から考えてることがあるの。もうずいぶん前からよ。あなたが宇品からお手紙をくだすつたわね。そのころからなの。今なら、それを思いきつて言つてもいゝと思うわ。いろんな行きがかりをいつさいすてゝ、あなた、結婚なさらない?」 その声は、落ちついて、みじんも浮わついたところはなかつた。が、それだけに、北原ミユキには、意外であつた。 「結婚? わたしが? 奥さま、それ真面目なお話?」 と、眼をみはるのを、 「真面目よ。大真面目よ。あたしは案外ふるい女だけど、結婚のことだけは、ありきたりの結婚を考えてはいないの。それはわかつてちようだいね。そうよ、あなたは、あなたのような方は、ほんとに生きる道をそこに求めなければうそだと思うわ」 |
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