邦画王

蘇える金狼(1979年) (コメント数:201)

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『蘇える金狼』
 
■製作 角川春樹
■プロデューサー 黒沢満  伊藤亮爾 紫垣達郎
■監督 村川透
■助監督 小池要之助
■脚本 永原秀一
■原作 大藪春彦
■撮影 仙元誠三
■音楽 ケーシー・ランキン トッシュ(編曲:木森敏之)
■音楽監督 鈴木清司
■音楽プロデューサー 高桑忠男
■主題歌 前野曜子
■美術 佐谷晃能
■録音 高橋三郎
■照明 渡辺三雄
■編集 鈴木晄
■スチル 関谷嘉明
■衣裳デザイン 芦田淳
■スーパーアドバイザー 四方義朗
■テクニカルアドバイザー トビー門口
■製作担当 青木勝彦
 
キャスト
■朝倉哲也 松田優作
■永井京子 風吹ジュン
■清水 佐藤慶
■小泉 成田三樹夫
■金子 小池朝雄
■竹島 草薙幸二郎
■秀原 河合絃司
■富田 加藤大樹
■湯沢 岩城滉一
■石田 加藤健一
■清水絵理子 真行寺君枝
■桜井光彦 千葉真一
■鈴本光明 安部徹
■栗原 椎谷健治
■冬木 江角英明
■牧雪子 結城しのぶ
■西川朱実 吉岡ひとみ
■石井 岸田森
■田宮 高橋明
■国友 待田京介
■福田 トビー門口
■磯川 南原宏治
■植木 村松克己
■磯川のボディガード 猪狩元秀
■磯川のボディガード 田畑靖男
■磯川の配下 野性軍団
■坂本 今井健二
■野坂 阿藤海
■吉村 山西道広
■今野 飯田敏之
■兵庫 久米明
■原 団巌
■沢野 角川春樹
■警官 榎木兵衛
■スチュワーデス 中島ゆたか

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550 x 776
チラシ

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550 x 776
ウラ

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『蘇える金狼』は1979年8月25日に角川映画第8弾として公開された!
『大藪春彦500万部突破記念』として制作された本作は『現代版赤と黒』と呼ばれる大藪春彦の原作を完全映画化!
『昼は平凡なサラリーマン。夜は組織に牙を剥く一匹狼』である朝倉哲也の活躍を描いたアクション巨編である!
 
『蘇える金狼』は1964年に平和新書より刊行された。
そして1979年に角川書店から刊行された事が映画化のきっかけになったと思われる。
 
この映画の制作の発端は1978年の『最も危険な遊戯』からスタートした遊戯シリーズのヒットである事は明白だが、さらにそのルーツとなるのが1977年に日本テレビが制作した『大都会PARTⅡ』である!
アクション主体の制作体制で人気を博し、優作の過激なアクション&アドリブ仕立てのギャグが本作でも採用されている。
このシリーズの第3話『白昼の狂騒』が昭和52年度芸術祭にノミネートされたのだ!
これは異例の快挙だった。
この時のゴールデン・トリオ監督/村川透 脚本/永原秀一 主演/松田優作&スタッフで制作されたのが『最も危険な遊戯』であり『蘇える金狼』なのだ!
 
『蘇える金狼』を語るには
 
大藪春彦
 
村川透
 
松田優作
 
の3人を外す事は不可能だろう。
 
ポスター

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パンフレット①

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500 x 635
パンフレット②

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500 x 699
パンフレット③

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500 x 710
パンフレット⑤

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500 x 699
パンフレット⑥

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500 x 697
パンフレット⑦

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500 x 694
パンフレット⑧

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500 x 681
パンフレット⑨

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パンフレット⑩

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パンフレット⑪

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パンフレット⑫

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パンフレット⑬

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パンフレット⑭

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パンフレット⑮

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パンフレット⑯

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パンフレット⑰

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- 管理者により削除 -

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- 管理者により削除 -

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パンフレット⑰

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500 x 722
パンフレット⑱

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500 x 694
パンフレット⑲

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500 x 696
パンフレット⑳

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300 x 420
大藪春彦
 
大藪春彦略歴①
 
幼少期
■1935年2月22日京城(ソウル)に生まれる。
父は教師。
■1935年
山形県酒田市に移転。
■1941年
当時、(『韓国併合ニ関スル条約』に基づき)日本の領土であった朝鮮半島北部の新義州に移転。
国民学校入学。
■1945年
父が徴兵される。
敗戦後、高官たちは民衆たちを見捨てていち早く帰国し、残された日本人の警官や憲兵たちが、朝鮮人たちの復讐でなぶり殺しにされるのを目撃する。
生活苦の中、長男として盗みをしてまで、必死で食料を得る。
ロシア兵に銃剣で刺されたこともあったという。
ジフテリアにかかった妹を背負い、町の病院から病院へ血清を求めて走り回る。
■1946年
共同で闇船を雇い、日本へ帰る(新義州(8月)→仁川→ソウル→議政府→釜山→佐世保(9月17日)→香川県善通寺の祖母の家)。
この一連の過酷な体験が大薮に国家権力への不信感を植え付けたと言われている。
因みに終戦直後生き別れになった父はすでに帰国しており、高松で教師をしていたという。
■1952年
高松一高に入学。
新聞部に入り革命を訴えるが、天皇を批判した号が回収され焼き捨てられる。
そのため、文芸部・演劇部へと入学。
■1955年
東京外国語大学を受験するが不合格。
この頃一時期牧師を目指し四国クリスチャン・カレッジに入学し、英語をマスター。
図書館でアメリカのハードボイルドのペーパーバックに出会い、読みふける。
学校クリスチャンの現実に失望し中退。
■1956年
早稲田大学教育学部英文科へ入学。
射撃部に入部し銃に熱中。
また、神保町の古本屋で買ったアメリカン・ミステリを濫読する。
■1957年
創設されたワセダミステリクラブに入部。
デビュー
■1958年
処女作にして『伊達邦彦シリーズ』第一弾『野獣死すべし』を早稲田大学同人誌『青炎』に掲載。
ワセダミステリクラブの会長である千代有三(文学部教授・鈴木幸夫)の手をへて、名誉顧問の江戸川乱歩に紹介され、雑誌『宝石』7月号に掲載、大反響を生む。

29 @kira 2013-02-10 10:16:09 [携帯]


328 x 475
大藪春彦略歴②
 
同じく1935年生まれで、大学生でデビューした高城高(こうじょう・こう)とともに日本ハードボイルド小説の元祖となる。
■1959年
『街が眠る時』『野獣死すべし』(仲代達矢主演)が映画化。
これにより大藪は一躍流行作家となった。
■1964年
代表作『蘇える金狼』刊行。
■1968年
東京都府中市にて三億円強奪事件発生。
この事件は大薮の著作『血まみれの野獣』がモデルになったのではないかと噂され、大薮は重要参考人として意見聴取を受ける。
■1979年
角川映画『蘇える金狼』が松田優作主演で公開。
■1982年
角川映画『汚れた英雄』が草刈正雄主演で公開。
死去
■1996年
1300枚におよぶ大作『暴力租界』が未完なまま、東京都世田谷区の自宅で肺炎のため急逝。
享年61。
■1997年
その年の優秀なミステリー、ハードボイルド小説に授与される大藪春彦賞が創設される。

30 @kira 2013-02-10 10:23:47 [携帯]


128 x 200
『大藪春彦のメッセージ』
 
■大藪春彦を読んでまず思い浮かぶのは
 
   『復讐』
 
という言葉である。
全ての作品のテーマが復讐で貫かれている。
略歴を見れば大藪が幼少期に過酷な体験をしている事がわかる。
それは国家や政情不安によって引き起こされた混乱に翻弄されたものである。
この経験が大藪に『自分の身は自分で護るものだ。例えどのような手段を使っても』という観念を植えつけたと思われる。
 
その思想によって書かれたものが大藪文学である。
幼少期の経験から大藪は国家や権力に対して異様な反発と不信感を抱く。
ある人物が『大藪春彦からピストルと車を無くせば何も残らない』と語ったが当然である。それらは大藪が復讐するべき対象と渡り合う力の象徴だからだ。
ピストルや車には人間同様の人格が付与される反面、女性に関する描写は極めて即物的である。主人公が目的を達成する為の道具であり、セックスの対象でしかない。それを批判の対象にする者もいるが甚だ見当違いである。むしろ崇高ですらある。
現実に大藪作品のような事が起きれば陰惨なだけだが彼はそれを娯楽作品に昇華する才能を持っていた。
銃や車に関する知識は一般を遥かに凌駕し、それに裏打ちされた作品におけるディテールの描写力は他の追髄を許さなかった。
でなければ多くのファンを獲得する事は不可能である。
荒唐無稽であればあるほど、細部にはこだわらなければならない。
 
実は大藪春彦は松田優作のファンだった。
『最も危険な遊戯』『殺人遊戯』を観たのだろうか。
そして、自分の作品に挑戦する若き俳優に雑誌のインタビューでこんなメッセージを送っている。
 
『今回、僕の大好きな松田優作が朝倉をどう演じきってくれるかがとても楽しみです。』

31 @kira 2013-02-10 10:43:15 [携帯]


480 x 640
原作『蘇える金狼 野望篇』大藪春彦
 
角川文庫版

1979年に開催された『大藪春彦フェア』に伴いカバーはリニューアルされた。
カバー写真は前年に東映セントラルフィルムで製作された松田優作主演『殺人遊戯』のポスター用に撮影された写真を使用。
この路線で製作される事を強調していた。

32 @kira 2013-02-10 10:45:19 [携帯]


480 x 640
原作『蘇える金狼 完結篇』大藪春彦

33 @kira 2013-02-10 10:57:58 [携帯]


556 x 800
原作『蘇える金狼 野望篇』大藪春彦
 
角川文庫版

1982年に『汚れた英雄』製作に伴い開催された『汚れた英雄フェア』によりカバーがリニューアルされた。
使用写真は『蘇える金狼』製作当時に撮影された宣材写真を使用。

34 @kira 2013-02-10 10:59:36 [携帯]


435 x 600
原作『蘇える金狼 完結篇』大藪春彦

35 @kira 2013-02-10 20:20:57 [携帯]


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村川透
 
■略歴
1937年3月22日生まれ。
山形県村山市出身。
日本の映画監督で、Vシネマやテレビドラマなども手掛ける。
福島大学経済学部卒業。
江戸前期に活躍した俳人・村川素英の子孫にあたる。
来歴・人物
福島大学卒業後の1959年、日活に入社し営業部に所属。
同年に退社し、翌年助監督試験を受けて再入社して、舛田利雄、中平康、西河克己らに師事。
優れた職能系助監督として『伊豆の踊子』『あゝひめゆりの塔』『嵐の勇者たち』など数多くの作品で名だたる監督をサポートしてきた。
特に日米合作映画『トラ・トラ・トラ!』では日本側演出部総チーフとして現場を取り仕切り、舛田利雄、深作欣二とともに実質的な監督として活躍。
その手腕はアメリカ側監督であったリチャード・フライシャーも絶賛した。
1972年、監督デビュー作である日活ロマンポルノ映画『白い指の戯れ』(脚本/神代辰巳)が高評価を受けるが、ほどなくして日活を退社。
郷里の山形に戻るも、1976年に恩師の舛田と日本テレビプロデューサー・山口剛の計らいにより、テレビドラマ『大都会 闘いの日々』で監督復帰。
この時に松田優作と出会い、1978年には松田を主演に迎えた『最も危険な遊戯』で映画監督としても本格復帰した。
その後松田とは、『蘇える金狼』『野獣死すべし』など多数の作品でコンビを組んだ。
またテレビドラマでも人気作品『探偵物語』『西部警察』『あぶない刑事』『はみだし刑事情熱系』など、多くのアクション作品でメガホンをとっている。
松田優作没後も多くの作品を発表し続け、出身地の山形県村山市では『村川透映画祭』がコンスタントに開催されている。
また、舞台を中心に活動していた柴田恭兵を『大都会 PARTII』のゲスト出演に推薦、その後『大追跡』のレギュラーに起用され、その人気を全国区へ広げたことでも知られている。
帰郷していた時代は、鋳物職人高橋敬典(妻の父であり、人間国宝)の下で働いたり、兄・村川千秋(『野獣死すべし』に指揮者役で出演)による山形交響楽団設立に携わったこともあった。
クラシック・ジャズ・ポップス問わず音楽方面への造詣が深いことでもよく知られ、自らもアマチュアサクソフォニストとして活動。
日活時代には演奏者として劇伴のレコーディングに参加することもあった。

36 @kira 2013-02-10 20:26:46 [携帯]


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村川透
 
略歴②
 
後に『遊戯シリーズ』などで組む作曲家・キーボーディストの大野雄二とは当時からの旧知であったという。
70歳を越えてもいまなお現役で、2時間ドラマを中心に多くの作品を発表し続けている。
■作風
同時期に活躍していた長谷部安春や小澤啓一といった日活ニューアクション畑の監督陣との比較では、相対的に独創性の強さが際立っていることで知られ、その演出手法の中でも特に有名なもののひとつとして『手持ちカメラの多用』が挙げられる。
これは動・静問わず様々な場面で使用され、更に望遠ショット・長廻し・シンクロ録音などを組み合わせることによりドキュメンタリーフィルムを思わせる迫力とリアリズムを醸し出している。
その一方でトリック撮影(主にハイスピード撮影)などを大胆に取り入れることによって、アクションシーンに重厚感を持たせることも得意としている。
その他の技術面では、ナイトシーンなどにおけるブルーライトや逆光を利用した独特のライティングにも定評があり、崔洋一・原隆仁などの後進にも大きな影響を与えた。
自作にカメオ出演することがあり、その際にはたまにエンドロールに『山形透』と名前を出している。
『早撮りの村川』の異名のとおり撮影の速さはずば抜けている。

37 @kira 2013-02-10 20:35:36 [携帯]


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松田優作
 
松田優作が『蘇える金狼』に出演したのは1979年。『太陽にほえろ!』でデビューして6年目に突入していた。
前年には主演映画『最も危険な遊戯』『殺人遊戯』が低予算にもかかわらず大ヒットした。
優作の人気はピークを迎えていた。
しかし内心はアクションに嫌気が差していた。
来る仕事は同じような内容。
自分の右手には常にピストルが握らされている。
自分では様々な役をこなして来たつもりでも世間の優作に対するイメージは相変わらず『ジーパン』だった。
この年、優作は『あめゆきさん』『乱れからくり』に出演。
アクション俳優のイメージから脱却しようと試行錯誤するが思うようには行かなかった。
そんな状況に苛立っていた。
優作が追いかけていた萩原健一は既に演技派の道を歩んでいる事がさらに拍車をかけた。
他人に対して辛辣だった優作は自分にはそれ以上に厳しかった。
『俺はいつまで同じ場所で足踏みしてるんだ』という思いが優作につきまとう。
ここまで負の要素が多いと断れば良いのだが優作は『蘇える金狼』を受けた。何故なのか。
角川映画と言えばメジャー路線だ。しかも主演となればその宣伝効果は計り知れない。
そしてイメチェン失敗もその要素のひとつだろう。
下手に動くよりはしばらくはメジャーな舞台で遊んでみるのも悪くないと考えたのでは。
そして当時のインタビューで語っていた『蘇える金狼はラブストーリー』発言だ。
世間的には『蘇える金狼』はアクション映画というイメージだ。当然だろう。アクション映画の監督と俳優で撮影し、原作は大藪春彦なのだから。
松田優作だけがこの作品を別の側面から見ていた。
 
『決してアクションじゃない。メロドラマです。金も地位もすべての野望を果たした男が、それで満足するわけがない。愛人役の風吹ジュンとの恋愛を描くことで主人公の〝人間〟が浮かび上がると思う。』
 
それが朝倉哲也と永井京子のラブストーリーだったのである。
しかし、そこは松田優作。たかがラブストーリーでもただで終わるはずがない。
いったいどんな恋愛模様を我々に提示してくるのか。

38 @kira 2013-02-10 20:50:08 [携帯]


480 x 720
『現代社会の破壊者・朝倉哲也の挑発』
 
原作では東和油脂に勤務するサラリーマン・朝倉哲也は誠実な勤務態度と業績優秀である事から上司・部下からも信頼されるエリートである。
しかし彼には東和油脂を乗っ取るという野望があった。
その為にボクシングジムで肉体を鍛え、上司の身辺調査を行い準備していた。
 
何故朝倉は会社乗っ取りを企んだのか。
それは上司達が帳簿を改竄したり、トンネル会社を作り会社の利益を不当に着服している事実を知ったからだ。
朝倉は怒った!
それは道徳的な怒りではない。
『こんな無能な奴等が会社を食い物にする位なら俺がその立場になってやる』
という傲慢な怒りだ。
普通なら『会社の金を着服するなんて許されない背任行為だ』と非難するだろう。
仮に警察に駆け込んでも巧妙な偽装で証拠を隠滅している上司達に太刀打ちなど出来る筈もない。
 
朝倉は上司の背任を非難する気などなくむしろ肯定している。
 
力は絶対的な善だ!
 
これが朝倉の哲学だ。
それは金・権力・武力を問わない。
どんなに素晴らしい信念も崇高なる理想も力が無ければ他人に踏みにじられてしまう。
蹂躙されて泣く位なら蹂躙する側になれば良いというのが朝倉哲也の法律なのだ。
 
大藪春彦『蘇える金狼』は刊行されるや日本のサラリーマンに熱烈に歓迎されたという。
それほど当時の社会情勢・世相に不満を抱いていた人間が多かったのだろう。
ベトナム戦争などの暗く重い暗雲が低迷し、将来に対する不安が世界的規模で蔓延していたのだから。
 
そこに現れた朝倉哲也の社会に対する鉄槌制裁は読者に痛快なるカタルシスを与えた!
 
そして朝倉は振り向いてこう言う。
 
『お前等、本当に満足してるのか。お仕着せの快楽に酔ってないで自分で何かやってみろ!』
 
と。
 
朝倉哲也の悪魔的な挑発は絶望的な現代に於いて更に光明を放って輝いているのだ。

39 @kira 2013-02-10 21:00:43 [携帯]


338 x 425
映画『蘇える金狼』製作の背景
 
角川映画とは角川書店社長であった角川春樹が1976年に設立した角川春樹事務所からスタートした。
それ以前は1975にATG『本陣殺人事件』に出資している。
松竹と組んだ『八つ墓村』が製作延期になり、開催予定の『横溝正史フェア』に間に合わなくなった為、自ら映画製作する事を決定。
これが第1弾『犬神家の一族』である。
角川映画は莫大な予算を投じてそれまでの邦画界ではタブーとされてきたTVーCMを大量に流した。
メディアミックス戦略は素晴らしい効果をあげ、大成功した。
それまで衰退していた邦画界が活気づいて軒並み大作路線を走り出した。
映画が次々ヒットし、角川春樹は時代の寵児ともてはやされた。
しかし、その光に翳りが見え始めたのが深作欣二監督『復活の日』だった。
映画の出来も悪くなくヒットしたが賭け過ぎた予算を回収出来なかった。
角川は大作路線から撤退せざるを得なくなった。
今更ながら大作映画がリスキーである事を知った角川春樹は少ない(それでも他社に比べれば潤沢な)予算で製作出来るプログラムピクチャーの製作を開始する。
そこで角川春樹が選んだのがハードボイルドだった。
野心的な角川春樹はハードボイルド小説を映画化し、衰退していたハードボイルド復活を目論んだ。
闇雲に映画化しても当たらない事は角川も理解している。
そこで日本ハードボイルドの祖・大藪春彦に『遊戯』シリーズのヒットで当時乗りに乗っていた松田優作をぶつければ何らかの化学反応を起こすという読みだったのだろう。
角川春樹の読みは果たして成功するのだろうか。

40 @kira 2013-02-10 21:09:20 [携帯]


288 x 480
シナリオ
蘇える金狼
 
シーン1
■[中華料理店・店内]
テーブルに向かい合って朝倉哲也と、経理部次長の金子。メニューを見ながら朝倉が、控えてる店の女に、
朝倉『ギョーザと、チャーハン』
金子『あのな、きみ、私がおごってやると言ってるんだよ。遠慮するな。もっと食えるんだろ?』
朝倉『はァ・・・・・・では遠慮なくご馳走になります。(店の女に)それから、チャーシューメンを』
店の女、去る。
金子『これまで、確かにきみは無遅刻、無欠席、勤務成績もまァまァの経理マンだよ。しかしね、私に言わせればきみには覇気というものがないんだよ。覇気が』
朝倉『すいません。ここのとこ、風邪気味なもんでして・・・・・・』
金子『私はそんなこと言ってるんじゃないよ。なんだい、図体ばかりでかくて』
朝倉、ポケットからハンカチを出し、額の冷汗を拭う。
金子『ほらほら、ハンカチが汚れてるじゃないか』
朝倉『すいません・・・・・・』
と、チン!と鼻水をかんで―
 
シーン2
■[タイトル]
《蘇える金狼》

41 @kira 2013-02-10 21:16:35 [携帯]


416 x 720
シーン3
■[共立銀行本店・店内]
大金庫。
揃えられた札束が、それぞれのスーツ・ケースに次々に詰められていく。
 
シーン4
■[同・表(朝)]
雨。
通用口から、男たちの一団が出て来る。
それぞれがずっしりと重いスーツ・ケースを提げ、ケースの鎖を自分の手首につないでいる。
各支店の現金運搬人。
ほとんどが待機させた車に向かい、近くの支店の何人かだけが歩いて歩道に散っていく。
 
シーン5
■[ビル街の道(朝)]
まだ人影はまばら。
合羽姿の現金運搬人の原が歩く。
その傍に、後方から一台の白バイがやってきて、スッと停まる。
ヘルメットとサングラスで顔が判然としないその警官が、バイクを降り、原に何事か語りかける。
怪訝そうな表情の原。
突如、警官が物凄いパンチを原のみぞおちに叩き込む。
海老のように背を丸めるところに、もう一撃、首筋へチョップ。
崩れかける原を、警官が、軽々と抱え上げる。
シーン6
■[別のビル街の道(朝)]
雨の中を疾走する白バイ。
警官の後の荷台に、ぐったりと原。警官に抱きつくようにまわされた二本の腕は、警官の腹のところで手錠につながれている。
 
シーン7
■[高速道路の橋脚の下(朝)]
周囲から死角に当たり、頭上には通過する車の轟音。
白バイの警官が、原を放り出す。
ポケットから拳銃、コルト38口径スーパーを抜き、失神している原の心臓めがけて無表情に引金を絞る。
銃声―
警官がヘルメット、サングラス、身につけているものを手早く取り去っていき―。
―地味なサラリーマン姿の朝倉が現れる。
朝倉は細身のナイフの刃を出し、原の腕に繋がれたケースの皮に突き立てる。断ち切られた中から、高額紙幣が顔を出す。
シーン8
■[コインロッカー]
朝倉が風呂敷包みを預ける。
パトカーのサイレン―

42 @kira 2013-02-10 21:34:34 [携帯]


416 x 720
シーン9
■[東和油脂ビル・表]
出社して来るサラリーマン、OLたちの群。
その群の中に朝倉がひっそりと混ざって歩く。
サイレンを鳴らしたパトカーがすれ違い、朝倉が建物に吸い込まれて行く。
 
『東和油脂東京本社』のプレート。
 
シーン10
■[東和油脂・経理部]
朝倉がタイム・カードを押す。
時計は9時5分前。
部員は30人ほど。
黙々と仕事する朝倉たち。部屋の背後に大金庫があり、その前に社員たちを後から監視するような形で部長の小泉、次長の金子のデスクが並んでいて、睨みをきかせている。
昼休み。
出前の店屋物を食っている朝倉と同僚の石田、湯沢。
石田『資本金65億、業界ナンバー2の大手メーカー、か・・・・・・』
湯沢『なんのことだい?』
石田『うちの会社さ』
湯沢『それがどうしたんだ』
石田『長いこと経理をやってると、見なくてもいい会社の裏側も自然と見えてしまう。ひどいもんじゃないか、一部のお偉方のやってることは』
石田『下請け会社から、割高な不良品を納品させて暴利をむさぼったり、トンネル会社を通じてプール会社の融通手形を落とさせ、それを導入資金にして裏金利を稼いだり・・・・・・』
湯沢『取締役兼計理部長の小泉。腹心の金子次長、専務の竹島、監査部長の秀原・・・・・・仕方ないよ、みんなバリバリ仕事のできる実力者ばかりだからな。所詮清水社長は外様、見て見ぬふりさ』
石田『腹立たないかね、朝倉君』
朝倉『怒ったところでどうしようもないでしょう。我々ペーペーは指食わえてるだけですよ』
湯沢『一つでも上へ出世したほうが勝つってことかな』
朝倉『そうですね』
石田『君はいいよ。出世競争で我々を一歩リードしてるからね』
朝倉『僕なんか駄目だよ。夜学出だし、毛並悪いから』

43 @kira 2013-02-10 21:40:20 [携帯]


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■午後。
部長の小泉が、紙袋を抱えた一人の男を連れて部屋に入って来る。
小泉『諸君、ちょっと仕事の手を止めて、この方の話を聞いてくれ。共立銀行専務の兵庫さんだ』
朝倉たち部員が何事かと兵庫に注目。
兵庫『お仕事中、まことにあい済いません・・・・・・あるいはニュースでご存知かとも思いますが、今朝私どもの銀行の現金運搬人が襲われまして、九千万円にのぼる現金が奪われました』
朝倉『(緊張して)―』
兵庫『そこで皆様方にお願いがあるのです・・・・・・不幸中の幸いと申しますか、奪われた紙幣のナンバーは全部本店に控えられてあったわけでして、これがその番号です・・・・・・』
ショックを受ける朝倉。
デスクの下で握りしめたボールペンがピシッと音をたてて二つに折れる。
兵庫が紙袋から出した数字のビッシリ書きこまれた用紙を、金子次長が部下のデスクに配る。
朝倉の前にも置かれる。
兵庫『私どもは、各方面にご協力をお願いして歩いてるわけです。どうか、そこに書いてあるナンバーに該当する紙幣が出てきましたら、すぐにお知らせ願います』
金子『一般の人には、ナンバーを伏せておくのですか?』
兵庫『はァ・・・・・・警察とも相談した結果、犯人を油断させるためにもそのほうがいいということでして。どうか皆様方にもよろしくお願いいたします』
朝倉『(紙幣のナンバーにじっと視線を落として)・・・・・・』
 
シーン15
■[同・一階ホール(夕方)]
退社する社員がエレベーターから吐き出される。その中に、朝倉、湯沢、石田。
社員の流れとは逆に、ひとり若い女性が来て、エレベーターに向かう。
清水絵理子。絵理子を見て、立ちすくんでしまう朝倉たち。
石田『誰?』
湯沢『社長の令嬢だよ。絵理子さん』
石田『へえ、彼女が・・・・・・凄い美人だ』
小心そうな朝倉の眼が、一瞬鋭く、エレベーターに消える絵理子を見送る。

44 @kira 2013-02-10 21:48:04 [携帯]


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シーン13
■[道(夜)]
トレーニング・ウエアの朝倉が縄跳びで走る。
 
シーン14
■[ボクシング・ジム(夜)]
重いサンド・バッグに、朝倉が迫力あるパンチを食い込ませる。
声『残念だな。本当に残念だ』
朝倉、動きを止める。
背後にコーチの沢野が立っている。
沢野『あと十ポンド体重を絞ってミドル級で試合に出れば、お前さん間違いなくチャンピオンなんだが』
朝倉『僕だって、練習ばかりでなく試合やりたいですよ。でも、前に話したように、血友病といって鼻血が出ると止らなくなる病気がありまして』
沢野『うン。世の中ってのは、うまくいかねえもんだな』
と、首を振りながら去る。
朝倉、再び動き出す。
サンド・バッグに突き出したパンチが食い込んで―
 
シーン11
■[清風荘・表(夜)]
風呂敷を抱えた朝倉が来る。
戦前に建てられた古色蒼然たるアパート。
 
シーン12
■[同・朝倉の部屋(夜)]
朝倉が入り、ドアに鍵をかける。
質素な洋室。ベッド、テレビ、流し台とガス・レンジのそばに電気洗濯機がある他はたいした物はない。
風呂敷包みを解き、中のボストン・バッグの中味をベッドの上にぶちまける。夥しい札束、鈍く光る38口径スーパーの自動拳銃、数十個の車の鍵をつないだキイ・ホルダー、ナイフ。
札束だけをバッグに詰め、ベッドの下に押し込む。
拳銃、キイ・ホルダー、ナイフを持って流し台のところへ行く。
下の棚を開くと、大きな米櫃。米の中からビニール袋を取り出す。
中には弾薬の弾箱等。
そこに拳銃などをしまい、再び米の中に隠す。着ている物すべてを脱ぎ捨て、素っ裸になる。鍛え抜かれた筋肉。
 
シーン16
■[朝倉の部屋(夜)]
パンツ一枚、左の太ももにホルスターの朝倉が、米櫃からビニール袋を引っ張り出す。
拳銃を取り出し、弾倉の弾を確認して、ホルスターに収める。

45 @kira 2013-02-10 21:53:37 [携帯]


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シーン17
■[横須賀駅前(夜)]
オートバイに乗った朝倉が、通り過ぎて行く。
 
シーン18
■[歓楽街(夜)]
バーやキャバレーが軒を並べ、米水兵がわがもの顔で肩で風を切り、あるいはたむろしている。
朝倉が歩く。
精悍で不敵な表情には、昼の実直なサラリーマンを感じさせるものは微塵もない。朝倉、路地に入る。
 シーン19
■[同・路地(夜)]
海神組のチンピラ、今野がもちをつき、短刀を水車のように振り廻す。
朝倉『落ちつけ。話がしたいだけだ』
今野『(ガクガク膝を震わせ)よ、寄るな!それ以上近づくと、叩っ切るぞ!』
構わず朝倉が近づき、今野の短刀を持つ手を蹴り砕く。同時に反対の足の靴先が今野の顎を砕く。
横倒しになり、呻く今野。
朝倉『海神組はどこからヤクを仕入れるんだ?』
今野『アメちゃんの水兵・・・・・・』
朝倉『取引の方法は?』
今野『詳しくは知らねえ・・・・・・けど、海軍の連中は、クラブ・ドミンゴに行ってカウンターに坐れば金に替ると言ってた』
朝倉『クラブ・ドミンゴ・・・・・・』
 
シーン20
■[『クラブ・ドミンゴ』・店内(夜)]
フロアでは金髪の露悪的なストリップ・ティーズ。
高い背もたれのボックスでは水兵とホステスたちが涼蕩の限りをつくしている。バーのカウンターの隅で朝倉が酒を飲んでいる。その朝倉を胡散臭そうに見ている三人のバーテン。
朝倉『お代わり』
と、バーテンにグラスを出した時―背後からグイと銃口が突きつけられる。
朝倉『―』
背後に立ち拳銃を構えているのは用心棒の吉村。
吉村『騒ぐんじゃねえぞ。立て!』
朝倉はズボンのジッパーを少しゆるめる。ゆっくりと立つ。
店内の喧騒を後に、朝倉が銃口に小突かれながら、店の奥に向かう。

46 @kira 2013-02-11 00:10:33 [携帯]

シーン21
■[同地下室・(夜)]
朝倉と吉村が入る。
梱包した荷物が隅に積んであり、二人の男が待ち構えている。
海神組幹部の坂本、店の用心棒の野坂。
坂本『こいつのからだを当たり、ポケットの物を取り出せ』
吉村が油断なく銃口を向け、野坂が朝倉のからだを当たる。
腋の下、尻のポケットなどを手で軽く叩き、拳銃を隠した左の股に近づく。
野坂の手が、無事左の股を通過して、足もとのほうへ行く。ポケットから煙草、ライター、数枚の札と小銭などを取り上げる。
野坂『これで全部のようです』
坂本『(品物を一瞥して)身許を知らせる品は何もなしか・・・・・・何者だ?!』
朝倉『言った筈だ。麻薬を買いたい』
坂本『ここにそんな物はない。ふざけやがって・・・・・・てめえは何者だと俺は聞いてるんだ』
朝倉『・・・・・・』
坂本『思い出させてやろうじゃねえか』
と、野坂を眼で促す。野坂が刃渡りの長いナイフを出し、朝倉の髪を掴み、頬に刃を突きつける。
坂本『なますにしてやれ』
野坂がサディスティックな笑いを浮かべて刃を走らせようとした時、朝倉がナイフを避けるような恰好でからだを斜めに開く。
同時に、ズボンのチャックを外して開き、内腿に隠した拳銃を抜き出す。
拳銃を上げるのと引金を絞るのが同時。銃声が部屋を揺るがせ、ナイフを握ったまま内臓をぐしゃぐしゃにされた野坂が後向きに坂本のほうへ吹っ飛ぶ。
朝倉が茫然としてる吉村を撃つ。
喉笛から頸骨を打ちぬかれた吉村がぶっ倒れる。拳銃を抜いた坂本めがけ、朝倉が突進。
親指を撃針の間に差し込んで暴発を防いでおき、その拳銃で坂本の右腕を強打する。
床に落下した途端、坂本の拳銃が暴発。弾は壁のコンクリートに当たって跳ねる。
朝倉、仰天して飛び上がる。
その間に、坂本が落ちた拳銃を掴もうと腹這いで左手を伸ばす。その手に朝倉の靴が乗り、全体重をかけて踏みにじる。
坂本の絶叫。
朝倉が坂本の手から足を離し、転がってる拳銃を遠くへ蹴り飛ばして、坂本を見る。

47 @kira 2013-02-11 00:29:12 [携帯]

坂本『(喘いで)頼む、殺さねえでくれ・・・・・・』
朝倉『麻薬をまとめて買いたい。もしお前さんが俺の立場ならどうする?』
坂本『どうするって・・・・・・俺があんたなら、ブローカーを通して話をつける。うちの海神組は、チンピラを養うために小売りをやってるだけで・・・・・・うちの組が仕入れたヤクを扱ってるのは、市会議員の磯川だ』
朝倉『磯川?』
坂本『市議会でも実力者だし、県の公安委員もやってるから、誰もうかつに手が出せねえ。大物だ・・・・・・家は塚山公園の近くのでっかい屋敷だから、すぐ分る』
朝倉『・・・・・・』
坂本『けど、俺に言わせりゃ、無茶もいいとこだ。磯川が、そこの馬の骨とも分らねえあんたと素直に取引する筈がないし、海神組だって黙っちゃいねえ・・・・・・誰なんだ、あんた?』
朝倉『・・・・・・』
坂本『何企んでんだ?』
朝倉『聞きたいか?』
坂本『聞きたい。是非教えてくれ』
朝倉『東和油脂って会社を乗っ取ってやろうと思ってね。資本金65億の一流企業だ』
坂本『―』
朝倉『ゆくゆくは社長令嬢と結婚して、娘婿にでもおさまりたいんだが、そこに辿り着く迄には、いろいろとやることがある。例えば、不正行為をやってる経理部長一族を追いつめるためには、経理部長の女をモノにしなければならない』
坂本『―』
朝倉『それには先ず、てめえが自由に動けるだけの金が欲しい。そう思って、共立銀行の現金運搬人を襲って、九千万円ほどを奪った』
坂本『あれは、あんたが?!』
朝倉『そう。やったのは俺だ』
坂本『―』
坂本『話し終わったら、あんたは俺を殺すつもりなんだ!喋るな!』
朝倉『聞きたいと言ったのはお前だ・・・・・・そのヘロインをゼニに換えれば、きれいな金が、しかも何割か増えて戻ってくると目論んだのさ』
坂本『(縋るように)俺は何も聞いちゃいねえ!あんたの顔も忘れた!だから頼む、撃たな―』
朝倉が引金を絞る。
銃声。
背後に吹っ飛んで叩きつけられる坂本。
倒れている三人の服を次々に探る。
数十万の現金、坂本のシガレット・ケースの二重底から五グラムほどのヘロインを奪う。

48 @kira 2013-02-11 08:39:41 [携帯]

シーン22
■[ある駐車場]
朝倉が一台のスポーツカーの傍に立つ。
ポケットから数十個の鍵のついたキイ・ホルダーを取り出し、車のドアに合う鍵を選び始める。
眼は周囲の動きに注意を払いつつ、手の動きは的確に鍵を選び続ける。
いくつ目かの鍵が合う。
朝倉、ドアを開け、運転席にすべり込む。

49 @kira 2013-02-11 12:13:59 [携帯]


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シーン23
■[参宮マンション・表]
スポーツカーが停まる。
朝倉が七階の一室を見上げる。
 
シーン24
■[同・ある一室]
帰り仕度の経理部長の小泉が、立ち去り難く永井京子を抱きしめる。
小泉『重役会議があるので、どうしても社へ戻らないと・・・・・明日、来る』
京子はキスに応えるが、あまり気はない。
 
シーン25
■[スポーツカーの中]
朝倉、ポケットからヘロイン包みとケントの箱を取り出す。
煙草の一本を抜き、ナイフの刃先で器用に煙草の葉を三分の一ほど紙の上にほじくり出し、それにヘロインを少量混ぜる。
その葉を再び巻紙の中に戻す。
マンションの玄関を出入りする人間たちに気を配りながら、一本、二本、三本・・・・・・と、根気のいるその作業を続け―
朝倉が玄関を注目している。
やがて、永井京子がマンションから現れる。数本のゴルフ・クラブの入ったバッグを持ち、待たせてあるタクシーに乗り込む。
走り出すタクシーを追って、朝倉もスタートする。
 
シーン26
■[ゴルフ練習場]
京子が上手に打つ。
朝倉が隣の位置に(京子に尻を見せる形で)立ち、打ち始める。
が、まるでボールに当たらず、たまに当たってもチョロ。
挙句に、尻もちをつく。
その不様な恰好はいやでも京子の眼に入り、失笑を誘う。
朝倉が一旦打つのを諦め、京子の背後に来る。感嘆したように眺める。
しなやかな体が、ボールを飛ばす。
京子が朝倉の視線を意識する。
やがて、打ち終えて帰り仕度。朝倉が声をかける。
当惑する京子に、コーチを依頼する。
強引に頼み込み、クラブを握る。
京子は当惑の表情のまま、それでも基礎の打ち方のようなものをコーチし始める。
 
シーン27
■[道]
朝倉のスポーツカーが疾走する。助手席に京子。

50 @kira 2013-02-14 23:31:00 [携帯]

シーン28
■[中華街の『××楼』・個室(夜)]
朝倉と京子がビールのグラスを合わせる。一気に飲み干す。
朝倉『僕は堀田と言います。株屋です』
京子『私は永井京子・・・・・・(ピシャリと)堀田さん、食事だけという約束よ。名前だけでこれ以上は詮索しないことにしましょう、お互いのために』
朝倉『分りました』
ウエイターが料理を乗せたワゴンを押して入って来る。
料理の鉢や皿、ビールや朝倉の注文した透明な酒、ウーカーピンを置く間に、京子がトイレに立つ。
朝倉がポケットからヘロインを取り出し、京子のグラス、ビール壜に少量落とす。
京子がビールを飲む。
スープを飲み、料理を食べる。
そんな京子を朝倉が冷静に眺めながら、自分も食べる。
京子『とてもおいしいわ』
朝倉『これはメニューにはないスペシャル料理でしてね、蛇の卵、熊の掌、スッポン、牛や豚のペニスと枸杞の煮物などが混ざってます。スープにはエジプトから輸入したゼニアオイ科の植物が刻み込まれてます』
京子『(朝倉を見て)・・・・・・』
その頬は上気し、瞳は異常にギラギラ燃えている。
朝倉『つまり、強精剤ですな』
思考が鈍ってるのか京子は頓着なく食べ続ける。
不意に手から箸が落ち、からだがぐらりと揺れる。
朝倉が隣の椅子に移り、支える。
 
シーン29
■[中華街(夜)]
朝倉が、崩れ落ちそうな京子を支えて歩く。

51 @kira 2013-02-14 23:37:34 [携帯]


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シーン30
■[ホテル・表(夜)]
スポーツカーが滑り込み、停まる。
近づいたボーイにキイを預け、助手席のドアを開いて京子を降ろす。
 
シーン31
■[同・一室(夜)]
朝倉が窓際に立ち、カーテンを開ける。
宝石のような港の灯と、沖合いの船の灯が揺れている。
京子がじれたように着ているもの全てを脱ぎ捨て、朝倉に縋る。
朝倉は京子を抱き、ベッドに運ぶ。
そのまま倒れ込む。
獣のような呻きをあげ、京子が激しく反応して―
虚脱したようにベッドの中の二人。
朝倉がからだをずらしケントの箱を取る。さりげなく二本を取り出し、火をつける。そして、ヘロインを仕込んだ方のを京子に渡す。
京子がむさぼるように深く吸い込む。
朝倉は自分の煙草を揉み消すと、京子の乳房を愛撫。愛撫しながら京子の反応を見守る。
煙草を吸い続ける京子。
目尻に涙、生あくびをする。
京子『何だか、吐き気がする・・・・・・』
瞼を閉じ、指から煙草が落ちる。
朝倉が吸殻を拾い、灰皿に捨てる。
京子『吐きたい・・・・・・胸が苦しいの・・・・・・』
呟くと同時に鼾をかき始める。ヨダレが垂れる。
朝倉『(見守って)・・・・・・』
ベッドの朝倉が、胸の苦しさで眼を覚ますと―
上に京子がのしかかっている。
京子『私、何をしたの?覚えてないわ。思い出させて・・・・・・』
喘ぐ京子を、朝倉が受け容れる。
バスルーム。
頭からシャワーを浴びる朝倉。
朝倉がバスルームを出て、窓のカーテンを大きく開く。
眼を射る陽射しと、港の光景。
ベッドで、京子が眼を細めてゆるやかに煙草の煙を吐き出している。
京子『こんな気持になったのは初めて・・・・・・とても離れられそうにないわ、あなたから』
朝倉『・・・・・・』
京子『どうせ分ってしまうことだから、言ってしまうわ・・・・・・私は、あるお爺ちゃんの二号。向うは私に溺れきっているけど、私から見ればお金だけ・・・・・・東和油脂の取締役経理部長よ』
朝倉『・・・・・・』
京子『それが私の全て・・・・・・怒った?』
朝倉『いや』
京子『本当に?』
朝倉『本当だ』
京子『よかった・・・・・・これからは、あなたにお金の面では迷惑かけないわ。あなたが要るだけ、パパから取り上げてあげる』
朝倉『(笑って)悪い女だ』
京子『そうよ・・・・・・来て』
朝倉、ベッドに近づく。

52 @kira 2013-02-14 23:44:12 [携帯]

シーン32
■[参宮マンション・表(夜)]
スポーツカーが来て、パーキング・レーンに停まる。
降り立つ朝倉と、ゴルフバッグを提げた京子。
 
シーン33
■[同・京子の部屋(夜)]
朝倉が寝室のダブルベッドに坐り、豪華ずくめの室内を見廻す。
京子がグラスに氷を落とし、スコッチを注ぐ。
二人がグラスを合わせる。
京子『(朝倉の首に片手を廻して囁く)もう、あなたの煙草は残ってないの?』
朝倉『―』
京子『あの煙草には、やっぱり仕掛けがあるんでしょ?』
朝倉『・・・・・・』
京子『どんな?』
朝倉、財布を出し、中からヘロインの包みを取る。
朝倉『煙草の先に、この粉をほんの少しつけると美味くなるんだ。耳かきに四分の一ほど。最低三時間はあいだをあけないとからだに悪いそうだ』
京子『まさか、麻薬じゃないでしょうね』
朝倉『清涼剤だよ。友人に大学の物理学教室の助手がいてね、そいつから貰うんだ』
京子『それなら安心だわ』
と、自分の煙草を取り、ヘロインの包みを開いて、煙草の先に粉末をつける。
朝倉がライターで火をつけてやり、吸った京子が恍惚と眼を閉じる。
朝倉は玄関で鍵を開ける微かな物音を聞き取り、ハッとなる。
朝倉『パパさんのお出ましらしい。早いとこ俺のグラスを片づけてくれ』
と、素早く奥の一室へ向かう。
納戸として利用している薄暗い小部屋に朝倉が潜り込む。
小泉の声『京子、私がこんなに心配してたのに・・・・・・一体、どこへ行ってた!変な匂いがする・・・・・・分った、男と一緒だったんだな。言え!私がこんなに心配してたのに、若い男と楽しんでたんだろう。言わぬと、締め殺してやる!』
京子の声『(冷たく)あなたに私が殺せるの。ベッドでも満足に殺せないくせに』
小泉の声『男をここへ引っ張り込んだんだな。まだどこかに隠れてるんだろう。畜生、よくもよくも・・・・・・捜し出してやる。おい、泥棒猫、出て来い!』
次第に音とわめき声が近づいて来る。
朝倉、さすがに慌て、室内を見廻す。窓がある。
近づき、音をたてぬように鍵を開ける。

53 @kira 2013-02-15 00:02:40 [携帯]

シーン34
■[同・京子の部屋(夜)]
朝倉が潜んでいた小部屋の前で、京子が小泉に抱きつく。
京子『誰とも浮気なんかしてやしないわ。京子はパパだけの女』
小泉『(怒りが薄れて)・・・・・・』
京子『いいわ、信用して貰えないなら、悲しいけどここを出て行く』
小泉『何を言うんだ。悪かった。謝るからそんなこと言わないでくれ・・・・・・私は、君のためなら会社も家庭も、何もかも放り出して後悔しないと思っている。京子・・・・・・京子!』
京子を堅く抱きしめる。
抱かれながら、遠くを見るような京子の瞳。
 
シーン35
■[同・テラスから非常階段(夜)]
朝倉がテラスに出て、窓を閉める。
非常階段に移り、降りていく。
途中、ホッとして京子の部屋の窓を振り返った途端、足を踏みはずす。派手な音をたてて数段転げ落ち、顔をしかめる。

54 @kira 2013-02-15 00:15:08 [携帯]


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シーン38
■[磯川邸・正門(夜)]
覗き窓が細目に開かれ、鋭い目が、立っている朝倉を見つめる。
朝倉『先程電話した者です』
男の声『先生がお待ちかねです』
重く軋んで門が開く。やくざ者としか見えない門衛が二人。朝倉が入る。
 
シーン39
■[同・一室(夜)]
秘書の植木に案内されて朝倉が入る。
揺り椅子に体を丸めて、葉巻を横ぐわえにした丹前姿の磯川が見迎える。
磯川『電話で訳の分からぬことを言ってたそうだが・・・・・・俺に何の用だ?』
朝倉『まとまった量のヤクを買いたい。ただし、妥当な値段でね』
磯川『ヤクとは何のことだ』
朝倉『ヘロインだよ。俺はビジネスの話をしてるんだ』
磯川『帰れ、若造。悪いことは言わん』
朝倉『商売の話に入る前には帰れないね』
磯川『俺は、公安委員をやっているから警察に顔がきく。それに、やくざともじっ懇にしている。超党派外交でな。俺が一声かければ、気に入らん者を生かすも殺すも自由だ』
朝倉『ご立派ですな』
磯川『(立ち上り)やかましい。つまみ出すぞ!』
朝倉『やってみたらどうだ』
磯川『チンピラ奴・・・・・・(低く笑って)後を振り向いてみろ。ゆっくりとだぞ』
朝倉、首を後に廻す。背後のドアの横の羽目板が幅二メートルほど、腰から上が音もなく開き、三人の若い男がカービン銃を頬づけして朝倉を狙っている。
朝倉『―』
磯川『馬鹿者が。殺してやる』
朝倉『俺を簡単に撃てるのかい』
磯川『何だと?!』
朝倉『この距離からカービン銃をぶっ放せば、弾は完全に俺を貫通して、あんたに当たる。
俺を貫通するときに、弾はまだ炸裂してないから俺は即死しないが、あんたの体に食い込む時には、弾の潰れがひどいから目も当てられない傷になる。』
磯川『冗談も休み休み言え。そう調子よく俺に当たってたまるか』
朝倉『弾という奴は、一番抵抗の少ないところを抜けようとする性質がある。だから俺の体の中で、どう向きを変え、どこに飛ぶかは弾だけが知ってるんだ』
動揺する磯川。
その瞬間を狙って、朝倉がジグザグを描いてダッと走る。
逃げようとする磯川を捕まえ、後に廻り込んで拳銃を抜く。
凍りついている三人の用心棒と、植木。
朝倉『(磯川の後頭部に銃口を突きつけて撃鉄を起こし)銃を捨てろ!』
磯川『・・・・・・銃を降ろせ』
三人がためらいながらカービンをおろす。

55 @kira 2013-02-15 00:28:24 [携帯]

朝倉『弾倉と、薬室の弾も抜いて貰おう』
磯川『この男の言うとおりに』
三人がカービンの弾倉をはずし、遊底杯を引いて薬室の中のカービン弾をはじき飛ばす。
朝倉、磯川を押して肘掛け椅子に坐らせる。
朝倉『さて、商談に入りますか』
磯川『ゼニのツラを拝ませて貰おうか。話はそれからだ』
朝倉『ここに持ってきてない』
磯川『それでは話は終わりだ。ゼニを集めてから出直してくれ』
朝倉『九千万のゼニだ。そう簡単には持ち運びできねえよ』
磯川『いくらだって?!』
朝倉『九千万。あんたなら、それぐらいの取引きはしょっちゅうでしょう』
磯川『それはそうだが・・・・・・で、買い値は?』
朝倉『グラム六万』
磯川『お断りだな。グラム十万でいくらでも買い手がある』
鋭く見合う朝倉と磯川。
朝倉『七万五千。これ以上は出せねえ』
磯川『・・・・・・よかろう』
朝倉『金はいつでも用意できる。取引きの場所と時間は?』
 
シーン41
■[朝倉の部屋(夜)]
ベッドの下から朝倉が這い出る。手にはボストン・バッグ。
ジッパーを開く。中にはぎっしりと指名手配の危険な札束。

56 @kira 2013-02-15 00:37:56 [携帯]


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シーン42
■[東京湾・第二海堡]
モーターボートが着き、朝倉が上陸する。古い砲台の残骸と、それを覆う雑木。朝倉、歩き出す。
 
シーン43
■[同・雑木林]
灌木の中で、じっと身を潜めている朝倉。時計を見る。朝倉が鋭く一方を見る。こちらに近づいてくる数人の人影。
六人の男、磯川邸の用心棒A、B、Cと海神組の男A、B、C。
六人は雑木林をこちらに向かって来て、朝倉からやや離れた地点で停まる。
重いものを置く。それは支脚に乗った大きなブローニングA2軽機関銃。見守って朝倉。
用心棒A、Bが慎重に銃口をしたの砲台跡に向け、機銃を固定させる。それを確かめて用心棒Cと男三人が、配置につくため散って行く。
朝倉が拳銃を抜いて握りしめ、機関銃の二人にそろそろと近づいて行く。
一旦立ちどまり、ハンケチをくわえる。エロ話でヘラヘラ笑いの二人。朝倉が更に迫り、躍り出て用心棒Aの首筋に拳銃を叩き込む。
仰天した用心棒Bにもすかさず一撃を加えようとした時、崩れ落ちる用心棒Aに足を取られて朝倉が体勢を崩す。
その間にBは機銃にとりつき、銃口をめぐらして引金を絞る。バリバリと物凄い銃声。朝倉は大きく地を転がって銃弾を避け、Bを狙い撃つ。
銃声がパタリと止み、胸を打ち抜かれたBがスローモーションのように倒れる。朝倉が機銃に飛びつき、引金に指をかける。
『どうした?』『野郎が現れたのか?』などと声があり、四人の男が駆けつけて来る。
朝倉が機銃の引金を絞る。凄まじい連続発射音。蜂の巣になった四人がアッという間に崩れ落ちる。銃声が止む。
朝倉『(口からハンケチを取り)・・・・・・』
耳を澄ますが、物音も何もしない。機銃のガス・シリンダー固定用のピンを後に廻してから引き抜く。
砲台下にはまだ磯川の姿はない。見守る朝倉。磯川と小さなバッグを持った植木が悠然と現れる。

57 @kira 2013-02-15 00:45:45 [携帯]


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シーン44
■[同・砲台下]
磯川と植木が立つ。
朝倉が雑木林から飛び降り、近づいて来る。
磯川『やァ』
朝倉は応えず、ボストンをいきなり植木に投げる。慌てて受止める植木。
朝倉『調べろ』
頷く磯川に、植木がバッグを開け、札束を調べ始める。
雑木林の機銃に背を晒す恰好で立つ朝倉に、磯川がほくそ笑む。
植木『九千万、確かにあります』
磯川『そうか。では今度はあんたの番だ』
と、植木から小さなバッグを受け、朝倉に渡す。
受けた朝倉がバッグを開く。
1ポンド入り二つと、200グラム入り一つのビニール袋。
磯川と植木が数歩後退する。
磯川は葉巻をくわえ、ライターに点火する。葉巻に火が点いてもまだ同じ恰好を続ける。それが機銃手への合図らしい。
磯川の眼が雑木林に泳ぎ、表情が歪む。
苛立ち、ライターをやたら点滅させる。
朝倉、冷笑を浮かべて磯川に近づく。
狼狽して後退する磯川。
朝倉が素早く拳銃を抜き、磯川に突きつける。
磯川『な、何をする!』
朝倉『あそこの機関銃が吠えるのを待ってるんなら、当て外れだ。みんな眠ってるよ』
磯川『―』
朝倉『(植木に)おい、先生を助けたかったら、ここへ来て腹這いになれ』
植木は為す術なく言われたとおりにする。朝倉、拳銃の撃鉄を左手で押さえながら引金を絞り、撃鉄をハーフ・コックの安全位置に戻す。
と同時に、植木の頭に銃把を叩きつける。
朝倉が冷たく磯川を見る。
磯川『(震え上り)ペーは全部純度の高い本物だ。金も要らん・・・・・・(醜悪に顔が歪み、泣き出す)死にたくない。撃たんでくれ!』
朝倉『取引きだから金は払う』
磯川『・・・・・・』
朝倉、拳銃をベルトに差し、ヘロインのバッグを持って素早く消え去る。
磯川が札束のボストンに飛びついて抱え、何かわめきながら植木を蹴りつける。

58 @kira 2013-02-15 00:53:37 [携帯]


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シーン36
■[あるマンションの一室(夜)]
ベッドで全裸の男と女が激しく絡み合っている。次長の金子と、牧雪子。その二人を捉えて、何者かが写真を撮るシャッターの音。フィルムを巻き上げる音とシャッター音が連続して―
 
シーン37
■[東和油脂・経理部]
朝倉が書類を持って自分の席に向かう。
歩きながら小泉と金子を見る。
眼の下に隈を作り、疲労困憊といった表情の二人。
金子は欠伸を噛み殺して睡魔と闘い、小泉は口を開けて居眠りしている。
朝倉は席につき、黙々と事務を続ける。
 
シーン40
■[参宮マンション・京子の部屋(夜)]
ベッドに行為の後の朝倉と京子。
京子は眠っているように見える。
朝倉が腕を伸ばして自分の煙草の箱を取る。が、空。ナイト・テーブルの抽出しを探り、ケントの箱を取り出す。
中に、数本の煙草と一緒にセロファンの包み。開けて見ると、セロファンの包みには微かに残り少ない白い粉末がこびりついているだけ。
朝倉は自分のジャンパーを取る。財布を出し、中からヘロインの包みを数個取り出し、ケントの箱の中に入れる。
京子『何してるの?』
朝倉『煙草を』
京子『私にも。テーブルの抽出しの中のを』
朝倉、ケントを渡してやる。
京子がケントを受け取り、箱の中の増えてる包みを知る。
京子『・・・・・・(朝倉の胸に顔を埋ずめ)ありがとう。これが麻薬でも構わない・・・・・・なくなるのが、とても不安だったの』
朝倉『・・・・・・』

59 @kira 2013-02-15 01:07:01 [携帯]

シーン45
■[歩道]
黙々と歩き、出社するサラリーマンの群。
その中に、風采の上がらない朝倉の顔がある。
 
シーン46
■[東和油脂・経理部]
朝倉が部屋に入ると、まだ社員の姿はなく、次長の金子だけがゴルフのクラブを持ち、パターの練習をしている。
朝倉『おはようございます。昨日は欠勤しまして、申し訳ありませんでした』
金子のデスクの電話が鳴り出す。
ボールにかぶさって動かない金子。
朝倉『(受話器を取り)東和油脂の経理部でございます』
女の声『(歯切れのよい口調で)金子さんを出して下さらない?』
朝倉『失礼ですが、どちら様でしょうか』
女の声『牧からだと言ってください』
朝倉『(送話口を掌で押さえて)次長さん、牧というご婦人からです』
金子『ン・・・・・・(受話器を受けて)どうしたんだね、こんなに朝早く?』
朝倉、会釈して自分のデスクに戻る。
背後で金子の驚きと怒りを必死に圧し殺した声。
金子『な、なんだって?!・・・・・・そんな馬鹿な・・・・・・最初から計画的だったんだな』
朝倉がさりげなく聞き耳を立てる。
金子の声が切れ切れに聞こえる。
金子『・・・・・・そんな奴と話などする気はない・・・・・・十二時半、××デパートの屋上。リスの売り場だな・・・・・・その男の目標しは?・・・・・・』
乱暴に受話器を置く音。
朝倉『(金子を見ずに)・・・・・・』
単調な帳簿づけの作業。
朝倉のデスクにジポーのライターが立ててあり、後ろの金子と小泉の動きが写っている。
蒼ざめた金子が語り、小泉が苦りきった顔で聞いている。やがて小泉が金子の袖を引っ張って立ち上がり、応接室へ向かう。
朝倉が二人の後姿を見送る。

60 @kira 2013-02-15 09:23:03 [携帯]


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シーン47
■[××デパート・屋上]
並んだ籠の中で、愛らしく動き回るリス。
ベンチに金子が落ちつかぬ様子で坐っている。
近くに、ビニール張りの熱帯植物の温室がある。
 
シーン48
[同・温室の中]
朝倉が補聴器とマイクロ・テープレコーダーのデミフォーンを接続。
補聴器のレシーヴァーを耳に差し、スイッチを入れる。突然、拡大された音が耳の中で轟く。
一旦スイッチを切り、金子を見張る。
一人の男が金子に近づいて来る。
繊細な痩身と端正な顔立ちの桜井。
朝倉は補聴器とテープ・レコーダーのスイッチを入れる。
金子『君の名前は?』
桜井『桜井とでも呼んでください』
金子『雪子のヒモか?』
桜井はニコッと笑うだけ。
金子『私に何を売りたいと言うんだ?』
桜井、背広の内ポケットから封筒を出す。金子がひったくり、中の数枚の写真を見て、息を飲む。
金子『畜生・・・・・・やっぱり雪子と貴様はグルだったんだな』
桜井『よく撮れてるでしょう。テープもあります』
金子『テープも?・・・・・・(内ポケットから角封筒を出して)さ、これをくれてやる。100万円入ってる。ネガとテープをよこせ』
桜井『あなたは誤解してるようだ・・・・・・僕は鈴本光明先生に可愛がってもらっている者です』
金子『何?!誰だって?!』
桜井『鈴本光明』
金子『例の、東亜経済研究所所長の鈴本さんかね?』
桜井『そうです』
金子は絶句して、喘ぐ。
朝倉が固唾を飲んで事態を見守る。
桜井『あなたが経理部長たちと共謀して横領した金額を書き込んだ手帳も、僕はカメラに収めました。あなたが雪子の部屋で眠ってるあいだにね』
金子は呻き、頭を抱えこむ。
桜井『会社を食いものにして、あなたがたはひどい人達だ。もしこのことを鈴本先生が知ったら、早速乗り込んでこられるでしょうな』
金子『すると、鈴本さんにはまだ?』
桜井『話していませんよ。あなた方がお気の毒なことになるでしょうから』
金子『有難い・・・・・・(膝と両手をつき、頭を垂れ)失礼な態度をとって悪かった。この通りだ。許してくれたまえ』
桜井『分かって下さればいいことです』

61 @kira 2013-02-18 22:03:08 [携帯]


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金子『そこで、改めてご相談ですが、ナニのネガとテープ、それに手帖を写したネガ、合わせていかほどでお譲りいただけるでしょうか?』
桜井『五千万円』
金子『五千万?!・・・・・・とてもそんなまとまった金は・・・・・・』
桜井『あなたなら簡単でしょう。会社の融通手形を一枚書くだけでいいんだ。これ迄なんべんもやってきたことじゃないですか』
金子『部長とも相談しないと・・・・・・とにかく、明日まで待って下さい。明日、必ずご返事を』
桜井『分かりました。僕のほうから電話します』
金子『あの、これは別にお車代として・・・・・・』
100万円入りの封筒を差し出す。
桜井『これはどうも・・・・・・(と、あっさり受取り、立ち上がる)では明日』
優雅に一礼して、立ち去る。
放心したように金子。
朝倉も意外な事態の進展にとまどう。
 
シーン49
■[同・屋上]
朝倉がリス売場の前を避けて足早に歩きかけ、ふと足を止める。
金子の傍に一人の男が近づくのが見える。眼つきの悪い中年の男、石井。金子が何事か石井に話す。
 
シーン50
■[道]
桜井が振り向かずに歩く。
尾行する石井、そして朝倉。
 
シーン51
■[光明ビル・表]
『東亜経済研究所』のプレート。
桜井がビルに入る。石井が追って入る。
朝倉はためらう。が、意を決して入る。
 
シーン52
■[同・一階のロビー]
ロビーを囲むようにナンバーを書いた十個以上の部屋のドア。
五十人ほどの面接の順番を待つ男たち。
受付のカウンターがあり、若い女が坐っいる。置かれた名札に『西川朱美』とある。
朝倉が桜井を眼で追う。
朱美が傍を通り過ぎる桜井を思いつめたように見つめる。
朱美『光彦さん、待って!』
桜井は無視して奥へ向かう。
朱美が恨みを込めた熱い視線で見送る。
朝倉がソファに坐る。石井が壁にもたれ、新聞を拡げる。
朝倉『(朱美を見て)・・・・・・』

62 @kira 2013-02-18 22:12:53 [携帯]

シーン53
■[同・鈴本の部屋]
トイレに桜井。水洗タンクの中に、ポリエチレンで覆った包みを隠す。
桜井が部屋に戻る。
デスクに鈴本光明。
桜井『相変らず伯父さんは忙しそうだ』
鈴本『お前も元気そうでなによりだ』
桜井『第一線から身をひいたように見えても、鈴本光明は健在でいらっしゃる。数千の賛助会社を抱え、指一本でどうにでも動く投資家を五千人近く持ち、今でも乗っ取り事件が取沙汰されるたびに鈴本光明の名がクローズ・アップされる。今度はどこの会社を狙ってるんです?』
鈴本『フフフ・・・・・・どうだ光彦、本気で俺の下で仕事を憶える気には、まだならんか?』
桜井『(首を振り)そのうち・・・・・・今は伯父さんの手を借りずにどこまでやれるか、それを試してみたいんです』
鈴本『それもいいだろう。飯でも一緒に食わんか?』
桜井『そうもしていられません。早いとこ裏口から退散しないと』
鈴本『裏から?お前、何をしてる?』
桜井『(不適に笑い)じゃ、また』
と、ドアに消える。

63 @kira 2013-02-18 22:21:40 [携帯]


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シーン54
■[東和油脂・経理部]
湯沢『(受話器に)ゆっくり医者に診て貰えよ。部長も次長もこの部屋にはいないんだ。俺たちものんびりやってるところさ』
朝倉の声『二人ともどうしたんですか?』
湯沢『(欠伸して)緊急重役会議とかで、次長も列席してるんだ』
 
シーン55
■[赤電話]
朝倉『緊急重役会議・・・・・・』
 
シーン56
■[東和油脂・表]
タクシーが停まり、朝倉が降りる。
 
シーン57
■[同・エレベーターから七階の廊下]
朝倉。
経理部のある五階を通過して、七階でドアが開く。
朝倉がエレベーターを降り、廊下を進む。
『重役会議室』のプレート。その手前の小部屋に『図書室』のプレート。
朝倉、図書室に入る。
 
シーン58
■[同・図書室]
朝倉が壁に近づき、補聴器とテープ・レコーダーのスイッチを入れる。
声A『・・・・・・やはり、反応を見てからでも遅くはない、と私は思う。仮にその桜井という男が鈴本と関わりがあるとしても、まだ鈴本が乗り出してくるかどうかは断言できんのだからね』
声B『賛成ですな、専務の意見に・・・・・・それに、鈴本の嚇しに一度屈したら、あとは骨までしゃぶられるでしょう』
朝倉『・・・・・・』
 
シーン59
■[同・重役会議室]
小泉、金子の他に、清水社長、専務の竹島、秀原監査部長。
秀原『それにしても、横領金のメモを写真に撮られるとは』
小泉『監査部長、それはもう済んだ話です。問題は、この危機をどう切り抜けるかなんだ』
秀原『(苦虫噛んで)・・・・・・』
清水『(溜息ついて)困ったことです』
竹島『社長、あなたは自分には関わりのないこととお考えでしょうが、そうはいきませんぞ。あなたは、我々に担がれて社長の座についたんだ。もし我々が倒れるようなことになれば、その時はあなたも一緒に―』
小泉『その通りです』
清水『(気弱く)・・・・・・』
電話が鳴り出し、金子が素早く出る。
金子『私だ・・・・・・』

64 @kira 2013-02-18 22:33:43 [携帯]

シーン60
■[赤電話]
冴えない表情の石井が話している。
 
シーン61
■[東和油脂・重役会議室]
金子『仕方ない。じゃァ女の部屋を見張ってくれ。奴は必ず女と会う筈だ・・・・・・そう、牧雪子。西銀座のバー”ルナ”の雇われマダムで、住所は××の××マンション、305号室・・・・・・頼むよ。(電話を切り)中央秘密興信所の石井からですが、桜井を見失ったそうです。鈴本と桜井の関係も不明だそうでして・・・・・・』
重苦しい沈黙―
小泉『私はこう思うんですが、明日、桜井に要求の半額の二千五百万円を払うより、今夜にでも逆に桜井をこっちで嚇かして、ネガと写真を取り上げたらどうかな。バクチだが、初めから鈴本に屈するよりは・・・・・・』
 
シーン62
■[ビル街(夜)]
退社したサラリーマン達の群が流れる。その中に、西川朱美。
朝倉がスッと近づき、朱美と並ぶ。
朝倉『自分は目黒署の者です』
怪訝に立ちどまる朱美の腕を取り、ビルの横手に連れ込む。
朱美『何よ?私が何か悪いことしたとでも言うの?!』
朝倉『とんでもない。実は、桜井君の住所を知りたいんです』
朱美『―』
朝倉『ご存知でしょ?』
朱美『知らないわ』
朝倉『どうしても彼の居所を突き止めたいんですがね。彼、東亜経済研究所の所員ですか?』
朱美『知らないと言ったでしょ。所員名簿をお調べになったら』
朝倉『そうですか。ご存知だと思ったんですがね・・・・・・失礼しました』
朱美は朝倉を睨み、大通りへ足早に去る。
朝倉がゆっくりと追う。
 
シーン63
■[あるマンション・表(夜)]
朱美が玄関へ走り込む。
暫くして、朝倉が現れる。
 
シーン64
■[同・玄関(夜)]
朝倉が並んだ郵便受けを見る。
『桜井光彦』のネーム。

65 @kira 2013-02-18 22:37:09 [携帯]


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シーン65
■[同・表(夜)]
朝倉が立ち、周囲を見廻す。
建物のすぐ隣が広大な墓地。
肩を落とした朱美が玄関を出てくる。
朝倉『桜井は留守だったらしい』
朱美がギョッと振り返る。
その瞳に憎しみが燃えさかり―朝倉の顔に唾を吐きつける。
朝倉『―』
ゆっくりと頬の唾を手で拭い、次の瞬間、鋭く拳が朱美のみぞおちに叩き込まれる。
 
シーン66
■[墓地(夜)]
大きな墓碑の裏側で、朝倉は肩から、失神した朱美を降ろす。
朱美の頬を数発引っぱたく。意識を取り戻した朱美は起き上がろうとするが、朝倉はノーブラの朱美の乳房を掴み、押さえつける。もがき暴れる朱美のパンティまでが露になる。
朝倉『俺はデカなんかじゃねえ』
朱美『―』
朝倉『質問に答えなけりゃ、なぶり殺してやる。お前の一番大事なとこに、ナイフでも突っこんでやろうか』
朱美『・・・・・・(恐怖に抵抗心も萎えて)やめて・・・・・・』
朝倉『桜井は、東亜経済研究所の所員か?』
朱美『(首を振り)・・・・・・そうじゃないけど、鈴本さんの甥・・・・・・』
朝倉『奴に惚れてるな』
朱美『私を捨てたわ・・・・・・銀座の、バーの女に惚れたから・・・・・・でも、私は諦めてない。いつかあの人は、戻ってくる。信じてるわ』
朝倉、掴んでいた朱美の乳房から手を放す。

66 @kira 2013-02-18 22:42:36 [携帯]


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シーン67
■[牧雪子のマンション・表(夜)]
朝倉が来て、立つ。
豪華な建物が聳えている。
 
シーン68
■[同・三階の廊下(夜)]
朝倉が305号室の前で立ちどまる。『牧雪子』の名札。
その前を通り過ぎ、306号の前に来る。
女名前の名札。新聞受けには夕刊が突っこまれたまま。
ドア・ホーンを押す。
何度押しても返答はない。
ベルトから、先端を潰した針金を抜き取り、鍵穴に差し込んで、ブロックを解く。
 
シーン69
■[同・306号室(夜)]
侵入した朝倉がドアのロックをかけ、電灯のスイッチをつける。
乱雑な室内に、人の気配はない。
確認して灯を消す。
壁に近づき、補聴器のスイッチを入れる。
女の声『もしもし、恐れ入ります。そちらに桜井という人が伺ってませんでしょうか・・・』
男の声『いたのか?』
女の声『ええ』
男の声『よし、色男をうまく呼び寄せろよ』
女の声『・・・・・・もしもし、光彦さんね。早くこっちへ来て・・・・・・電話では話せないことなの・・・・・・早くね』
受話器を置く音。
男の声『(低く笑って)上出来だ』
朝倉はフランス窓を開け、バルコニーに這い出る。
 
シーン70
■[同・バルコニー(夜)]
朝倉、バルコニーを調べる。
隣の305号室のバルコニーとは2メートルほどの間隔があり、両方のバルコニーの下に、支えの張り出しのコンクリートが20センチほどの幅で外壁に沿って走っている。
十数メ-ター下の地上に落ちたらひとたまりもない。
朝倉、手摺りをまたぐ。
張り出しに足をかけ、外壁に張りつく。
必死に移動して―305号のバルコニーの手摺りにしがみつく。
バネのように身を移し終える。
這って、めくれたカーテンの隙間から305号室を覗く。
玄関の内側に長いナイフを握りしめて息を殺している石井。
その石井を憎悪に燃えた瞳で睨み、牧雪子がソファにいる。着ている物は破られて全裸に近く、皮膚には数条のミミズ腫れ。
雪子の背後に不気味なヘラヘラ笑いを浮かべた田宮が立ち、左手で雪子の首を掴み、右手に西洋カミソリの刃を弄んでいる。
時折、カミソリの刃を雪子の背に走らせ、けいれんするところを首を絞めて愉しんでいる。
玄関のドアに鍵が差し込まれる音。緊張する石井。

67 @kira 2013-02-18 22:50:49 [携帯]


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玄関のドアに鍵が差し込まれる音。緊張する石井。
ドアが開き、桜井が入って来る。
石井『(背後からナイフを突きつけ)下手に動くと、こいつが背中から胸へ突き抜けるぜ』
桜井『―』
朝倉が事態を見守る。
 
シーン71
■[同・雪子の部屋(夜)]
石井が桜井を居間の中央へ突き飛ばす。
石井『写真とテープはどこだ?』
桜井『・・・・・・』
石井、椅子の上のバッグを取り、ジッパーを開いて桜井の足元に放る。札束が数個、はみ出る。
石井『二千五百万ある。フィルムとテープをよこしたら、くれてやろう』
桜井『俺の要求は五千万だ。値引きはしない』
石井『この野郎・・・・・・不具になりゃ、考えも変わるだろうよ』
いきなり桜井の喉首を掴み、その顔にナイフを走らせようとする。が、桜井は石井のナイフを持った手首を掴むと同時に、体を沈め気味にして膝で思い切り石井の睾丸を蹴り上げる。両手で下腹部を抱えこみ、尻餅をつく石井。その拍子に舌を噛み、血を吹き出して喘ぐ。
石井のナイフを構える桜井。
田宮『そいつを捨てねえと、女の喉首掻っ切るぞ!』
桜井『やってみろ。そんな女がどうなろうと、俺には痛くも痒くもない』
雪子『あ、あなた!・・・・・・助けて!』
桜井『助けてだって?俺を裏切り、こんな所へおびき寄せといて、そんなことが言えた義理か』
雪子『―』
田宮『畜生ッ!』
雪子を蹴り、カミソリをかざして桜井に突進しようとする。
桜井がナイフを投げる。
一本の銀の糸のように飛び、田宮の肩に突き刺さる。後へ飛び、床に叩きつけられた勢いで、肩を突き抜けたナイフの刃先が、堅木の床に食い込み、田宮は床に縫いつけられる。
桜井『(石井に)この金は内金として受取っておく。遠廻しに、残りの二千五百万を用意しとくように伝えとけ』
石井、渋々と頷く。
桜井『失せろ』
石井はのろのろと立ち、田宮に近づく。肩のナイフを掴み、引っぱって堅木から抜く。更にナイフを肩口から抜こうと力をこめるが、抜けずに田宮が悲鳴をあげる。
桜井『(冷たく)医者に任せるんだ。無理に抜くと、血が止まらなくなるぞ』
石井と田宮、よろめきながら抱き合い、ドアに向かう。桜井が開けたドアから、廊下へ出る。

68 @kira 2013-02-18 22:55:33 [携帯]

桜井はドアを閉めてロックをかけ、床にうずくまりすすり上げている雪子の傍に来る。
自分の上衣を、そっと雪子の背にかけてやる。
雪子『・・・・・・死んでしまいたい』
桜井『馬鹿な』
雪子『・・・・・・』
桜井『奴等を欺くためには、ああするしかなかったんだ』
雪子『(表情に生気が蘇えり)・・・・・・』
桜井、そっと雪子を抱く。
雪子の瞳から大粒の涙があふれる。そして、ワッと泣き、桜井の胸に飛び込んで縋る。
二人、激しく唇を求め合う。
 
シーン72
■[桜井のマンション・駐車場(早朝)]
車が走り込んで、停まる。
バッグを持った桜井が降りる。
 
シーン73
■[桜井の部屋(早朝)]
ドアの鍵が差し込まれる音がして、桜井が入って来る。
不意に背後から朝倉が黒い影となって襲ってくる。
気配を察した桜井が体勢を整えようとするが、それよりも早く首筋に鋭い手刀を受ける。
応戦する間も与えず、ガクッと膝をつく桜井に、更にもう一撃。
突っ伏し、動かなくなる桜井。
朝倉、放り出されたバッグの中を見る。
札束。
朝倉は気絶した桜井を担ぎ、ベッドに運んでやる。
眼を閉じた桜井の端正な顔を暫らく無表情にじっと見るが― やがて踵を返し、バッグを奪い、玄関へ向かう。
 
シーン74
■[東和油脂・経理部]
朝倉がデスクに置いたジポーのライターで、後方の金子を窺っている。
受話器を握りしめ、オロオロと電話を受けている金子。小泉が不安そうに、金子を見つめている。
 
シーン75
■[電話ボックス]
桜井が怒りの表情で、語気鋭く電話している。

69 @kira 2013-02-18 23:03:50 [携帯]


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シーン76
■[レストラン(夜)]
食事する朝倉と京子。
朝倉『・・・・・・頼みがあるんだ』
京子『?』
朝倉『たしか君のパトロンは、東和油脂の経理部長だと言ってたね?』
京子『ええ、専務の一人でもあるわ。それがどうかしたの?』
朝倉『今、東和油脂は、経理次長の横領か何かをネタに、乗っ取り屋のような奴に嚇かされているらしい』
京子『まァ・・・・・・で、私に頼みって何かしら?』
朝倉『僕が株をやってるって話は前にしたね?』
京子、頷く。
朝倉『経営の乱れは、必ず株に反映する。だから、東和油脂が乗っ取り屋にどの程度嚇されているのか、そう対処するつもりなのかを正確に知りたい。君のパトロンから、内緒で聞きだして貰いたいんだ』
京子『・・・・・・』
朝倉『頼む』
京子『私がそれをやれば、あなたは株で儲けることができるの?』
朝倉『多分』
京子がじっと朝倉を見る。朝倉が見つめ返す。
京子『・・・・・・(微かに笑って)別に迷うことはないんだわ。あなたを取るか、パパを取るか、もうとっくに決めたことだもの・・・・・・やってみるわ』
朝倉『ありがとう』
京子『例の薬、パパが気がついたわ』
朝倉『それで?』
京子『自分にも吸わせてみろと言うの。断るのも変だし、好きにさせたの・・・・・・とても気に入ったみたい。もっと大量に手に入れといてくれと言ってたわ』
朝倉『・・・・・・』
京子『もういくらもないの。あの薬があると、パパから話も聞きだしやすいと思うんだけど』
朝倉『分かった。明日渡そう』

70 @kira 2013-02-18 23:09:01 [携帯]


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シーン77
■[東和油脂・重役会議室]
清水、小泉、金子、竹島、秀原の前に、傲然と桜井。
清水『(呻いて)二億?!』
桜井『自業自得でしょう。あなた方は、僕を怒らせたんだ』
小泉『ちょっと待ってくれないか。何度も繰り返すようだが、我々が君を襲って金を取り戻したというのは、誤解だ』
桜井『僕が襲われ、金を奪われたと言ってるのは言いがかりだと?』
小泉『そういう意味じゃないが・・・・・・改めて我々が五千万円君に支払うということで、納得していただけないだろうか』
桜井『断る。目には目をだ。二億をビタ一文まける気はありませんね』
途方にくれたような清水、小泉たち。
その時、社長秘書の富田が部屋に入って来て、清水に何事か耳打ちする。
清水の表情に微かな笑いが浮かび―
京子の声『東亜経済研究所の一人を買収して、桜井の正体を確かめたところ、一切研究所とは関係ない男だってことが分かったんですって・・・・・・』
 
シーン78
■[レストラン(夜)]
朝倉と京子。
朝倉『東亜経済研究所とは一切関係ない・・・・・・』
京子『それを知って、社長やパパたちは桜井との交渉を打ち切ろうと決心したのね』
朝倉『交渉を打ち切る?』
京子『桜井を眠らせるんですって。殺し屋に頼んで』
朝倉『―』
京子『石井という興信所の社長が、筋金入りの二人の男を、神戸から呼び寄せるそうよ。恐い話・・・・・・社長やパパが、交渉を長びかせて時間かせぎをしてるあいだに、二人の男が桜井を・・・・・・』
朝倉『(暗く燃える眼を一点に据えて)・・・・・・』

71 @kira 2013-02-19 20:31:37 [携帯]


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シーン79
■[豊洲・石炭埠頭(夜)]
二台の車がもつれるように疾走する。
一台には桜井と雪子、もう一台には石井と殺し屋の国友、福田。
二台は交錯し、車体をぶっつけ合う。国友と福田が拳銃を撃つ。
桜井は必死にハンドルを切りながら、雪子を伏せさせる。
二台が何度目かの激しいぶつかり合いをする。石井の車は桜井の車に接し、そのまま押しつけるような形で突っ走る。
桜井の車の前方に障害物。迫る― 寸前に石井の車が避けて走りぬけ、桜井の車は逃げ切れずに障害物に激突。大破。
桜井が車からよろめき出る。雪子を助け、ひきずり出し、抱える。
雪子は頭部を強打したらしく、ぐったりとして顔に鮮血が流れる。
桜井、女を抱いて逃げる―
 
シーン80
■[赤電話(夜)]
受話器を握って朝倉。
朝倉『僕だ。彼から何か聞けたかい?』 
シーン81
■[京子の部屋(夜)]
京子『部下の金子さんから電話があって、パパは五分ぐらい前に自宅へ帰ったわ。とても慌てて』
朝倉『何か?』
京子『興信所の人と、神戸から来た例の二人の男が、桜井をおびき出すのに成功したんですって。バーのマダムをしている桜井の恋人を利用して・・・・・・場所は、豊洲の石炭埠頭・・・・・・恐い・・・・・・ね、すぐ来て!』
朝倉の声『どうしても離れられない席にいるんだ。後で』
プツンと切れてしまう。
京子『・・・・・・』
 
シーン82
■[石炭埠頭(夜)]
桜井が雪子を抱いて、逃げる。
後方から迫る三人の人影と足音。
桜井、振り返り、拳銃を撃つ。
銃声と同時に―背後から突っ込んで来ようとしていた福田が棒立ちになる。腹に弾丸を食らい、崩れ落ちる。
桜井、必死に逃げる。背後から銃声。
桜井『!!』
動きが凍りつく。
腕から雪子が落ちる。
桜井のシャツの胸のあたりが、みるみる鮮血で染まっていく。
ガクンと膝をつく。
崩れ落ちていく。
石井と国友がそろそろと近づいて来る。

72 @kira 2013-02-19 20:43:57 [携帯]

不気味なほどの静寂の中を、朝倉が歩き廻る。
やがて一点を見て凍りついたように立ちどまる。
弾丸を全身に受けて血まみれとなり、重なるように倒れている桜井と雪子。
泥にまみれた二人の手は、それでも固く握り合わされている。
カッと見開かれた桜井の瞳。
本気で女を愛してしまった為、遂には悲惨な結果を迎えてしまった男の姿―
朝倉『(見つめて)・・・・・・』
そして、そっと桜井の眼を閉じてやる。
 
シーン83
■[京子の部屋(夜)]
熱いキスをかわす朝倉と京子。
京子『好きよ・・・・・・薬をくれるからじゃない・・・・・・あなたがどんな人でも、ちっとも構わない・・・・・・私から離れないで』
朝倉はやつれた京子の顔を見る。
複雑な想いが心をよぎり―京子を強く抱きしめる。
 
シーン84
■[東亜経済研究所・鈴本の部屋]
デスクに、突き上げる怒りをじっと耐えて鈴本光明。
傍に腹心の冬木がいる。
鈴本『東和油脂が、俺と光彦の関係を探っていたと言うが、光彦を殺したのは連中だと言うのか?』
冬木『それは今のところ・・・・・・』
鈴本『調査しろ!必ず調べあげるんだ!』
冬木『かしこまりました』

73 @kira 2013-02-19 20:51:24 [携帯]

シーン85
■[東和油脂・経理部]
朝倉が書類を手にして席を立つ。
金子のデスクに行き、書類を差し出す。
朝倉『判をお願いします』
金子はチラッと朝倉を見てから、書類に眼を通し、判を取る。
その表情、態度には傲慢と余裕が戻っている。
金子『どうしたんだ。君は近頃、やたら早びけや欠勤が多いようじゃないか』
朝倉『は、風邪をこじらせてしまったようで・・・・・・申し訳ありません』
金子『たかが風邪ぐらい・・・・・・・』
小泉が顔を引きつらせ、よろめくように部屋へ入って来る。
小泉『金子君!』
金子『何か?』
朝倉は書類を受取り、自分のデスクに戻る。
ジッポウに、緊迫した表情で話し合う小泉と金子が映っている。
朝倉は素早く補聴器のスイッチを入れ、巧妙にレシーヴァーを耳に当てる。
小泉の声『神戸の男が、社長のとこに電話をかけてきたんだ』
金子の声『それが何か?』
小泉の声『裏切ったんだよ、我々を。石井が裏で糸引いてるらしい』
金子の声『連中が?まさか!』
小泉の声『そのまさかが起こったんだ』
 
シーン86
■[電話ボックスの中]
朝倉が受話器にハンカチを当て、ダイヤルを廻す。
女の声『東和油脂でございます』
朝倉『経理の金子次長を』
女の声『少々お待ちください』
朝倉の手には一通のハガキ。ボクシングジムからの月謝の督促状である。
金子の声『・・・・・・はい』
朝倉『(声を作って)こちら××ボクシング・ジムですが、朝倉さん?』
 
シーン87~90
■[東和油脂・経理部]
金子『(受話器に)朝倉?おい、朝倉君!(朝倉の空席を見て)・・・・・・ちょっと席をはずしてますが』
声『しょうがねえな』
金子『(ハッとなり)××ボクシング・ジム?朝倉君にどんなご用件でしょうか?』
朝倉『奴、女でもできたんスかね。ここのとこ、とんとトレーニングにごぶさたなんですわ。先月分からの月謝が滞納なんで、その催促です』
金子『朝倉君がボクシングを?』
朝倉『分かりました。それじゃ、アパートの方へでも催促状を送りますんで』
 
シーン91
■[東和油脂・経理部]
金子が受話器を置く。
むっつりと何かを考え込む。
 
シーン92
■[ボクシング・ジム]
激しいスパーリング。
そのリングの傍に、コーチの沢野と金子。
執拗に問いかける金子に、沢野が答える。

74 @kira 2013-02-19 20:57:37 [携帯]


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シーン93
■[東和油脂・経理部]
退屈な仕事に励む朝倉。その肩がポンと叩かれる。
振り返ると、金子のにこやかな顔。
金子『朝倉君、社長がお呼びだ』
朝倉『何のご用でしょうか?』
金子『ともかく一緒に来てくれないか』
立ち上がる朝倉に湯沢たち同僚の嫉妬の視線が注がれる。
 
シーン94
■[同・七階の廊下]
エレベーターの表示ランプが七階で止まり、ドアが開く。
現れる金子と朝倉。
廊下には数人の警備課員。
会議室に向かう金子と朝倉に会釈する。
朝倉『・・・・・・』
 
シーン95
■[同・重役会議室]
朝倉が入り、金子が椅子に坐るよう指示する。朝倉が坐り、金子が脇に立つ。
部屋は中央からカーテンで二つに仕切られ、暗い向こう側からは微かなしわぶきが聞こえ、息を殺した数人の気配がある。
声『私は社長の清水だ。君は朝倉君だね?』
朝倉『はい』
清水の声『このような形で話をすることに、君はさぞ驚いているだろうが、暫らく辛棒して貰いたい』
朝倉『はァ』
清水の声『単刀直入に聞く。部長や次長の言によると、君の勤務態度は大層立派だそうだ。君のような社員を持って、私も嬉しい。そこで聞きたいんだが、君は会社の為に命を賭ける覚悟があると誓えるかね?』
朝倉『勿論です』
清水の声『よく言ってくれた。ところで、ボクシングをやってるそうだね?』
朝倉『・・・・・・』
金子『隠さなくていいんだよ。ジムに通ってることは調べがついているんだから。君は血友病と称して試合に出るのを拒んでるそうだが、実はアルバイトを禁じた社の規則に従って諦めたのだろう?』
朝倉『・・・・・・その通りです』
清水の声『その拳を、会社のために役立てて欲しいと言ったら?』
朝倉『おっしゃる意味がよく分からないのですが・・・・・・私に何をやれと?』
清水の声『報酬は、重役の椅子だ』
朝倉『夢のようです・・・・・・どのような命令でも』
清水の声『たとえ、社会的に許されないことでも?』
朝倉『やらせて下さい』
清水の声『ある人間を片づけて貰いたい』

75 @kira 2013-02-19 21:04:27 [携帯]


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朝倉『・・・・・・分かりました。誰を片づければいいのでしょう?』
返答ではなく、部屋の電灯が消える。
と同時にスポット・ライトの強烈な光線が朝倉の顔を射る。
朝倉、思わず顔をそむける。
小泉の声『前を向きたまえ!』
朝倉、眼を開き、前を見る。
凄まじい光線があるだけ。
小泉の声『朝倉君、生命を賭して東和油脂に忠誠を尽くすと宣誓できるか?』
朝倉『誓います』
小泉の声『きみは秘密を守り通すと誓えるか?』
朝倉『誓います』
小泉の声『よろしい』
スポット・ライトが消え、柔らかな電灯がつく。朝倉は伏せて瞼を揉み、前を見る。
カーテンがいつの間にか引かれていて、前のテーブルには清水、小泉、竹島、秀原がいる。
小泉『きみの忠誠心はよく理解できた。では、ビジネスの話をしよう』
朝倉『その前に、僕のほうも確かめておきたいことがあります。先程の報酬の件ですが―』
清水『分かっておる。金子君』
と、内ポケットから封筒を取り出す。
金子がそれを受け、朝倉に渡す。
朝倉、封筒の中から一枚の書類を取り出し、見る。
清水『東和油脂経理部の朝倉を、近日中に資材仕入部次長、三年内に資材仕入部部長、五年内に同部長兼常務に昇進させるため、取締役会は万全の努力を払うという主旨で、社長以下主だった役員の署名捺印だ』
朝倉『有難うございます』
と、封筒を内ポケットにしまう。
小泉『それでは用件に入ろう』
金子が、朝倉の前に銃身の短い38口径のリボルバー拳銃を置く。

76 @kira 2013-02-19 21:11:19 [携帯]

シーン96
■[××ホテル・一室]
渋い顔の清水、小泉、竹島、秀原、金子。
正面に殺し屋、国友の顔が見える。薄笑いを浮かべ、しきりに腋の下のホルスターとリボルバー拳銃をちらつかせている。
小泉『・・・・・・ですから、要求の一億円は、あくまで証拠のテープ、写真などと引換えだと申し上げてるのです』
国友『今日は金が払えねえってことか?』
小泉『証拠の品さえ渡して下されば、いつでも一億お払いします』
国友『相棒の福田は死んだ。奴の香典代を含まれてるってことを忘れるな』
小泉『承知してます』
国友『よし。なら、今日のところは一旦引揚げる』
 
シーン97
■[同・正面玄関前]
停まっている一台のヒルマンの中に、朝倉。
やがて、国友と金子が玄関に現れる。金子に見送られ、国友がタクシーに乗り、走り出す。
待機していた朝倉のヒルマンが、追ってスタート。
 
シーン98
■[走るヒルマンの中]
渋滞の中に突っ込み、動けなくなる。
前方のタクシーから国友が出る。つながった車を縫い、反対車線を突っ切って、歩道に出る。来た方向へ歩き去っていく。
朝倉は慌てる。
追おうにも前後と右側にはびっしりと渋滞の車。
思いきりハンドルを左へ切って歩道に乗り上げ、突っ走る。
 
シーン99
■[道]
ヒルマンが歩道を走る。
通行人をを唖然とさせ、ゴミ箱、置いてある自転車や荷物をはね飛ばして強引に走る。
車の切れ目を見つけて車道に突っ込み、反対車線に出る。
 
シーン100
■[走るヒルマンの中]
朝倉が国友の姿を求める。
前方で、停めたタクシーに国友がまさに乗り込むところ。

77 @kira 2013-02-19 21:15:44 [携帯]

シーン101
■[郊外の道]
タクシーが停まる。
朝倉の車も後方に停まる。
タクシーから国友が出て、歩き出す。
朝倉も車を出る。
 
シーン102
■[雑木林の中の道]
国友が足早に歩く。
朝倉が樹蔭を縫って追う。
国友は道を折れ、周囲の建売住宅とはやや離れた二階建てのモルタル小住宅に向かう。
林の中から見守る朝倉。
国友がドアの鍵をあけ、玄関に消える。
 シーン103
■[小住宅・表]
朝倉がそっと忍び寄る。
裏口へ廻る。
ベルトから抜いた針金で、注意深くドアの鍵を解く。
 
シーン104
■[同・一階]
朝倉が38口径の拳銃を手にダイニング・キッチン、六畳の茶の間を調べるが―無人。
二階への階段をそろそろと這い登り始める。
 
シーン105
■[同・階段]
朝倉が階段の真ん中ぐらいに来た時、下で戸の軋むような音 。
振り返るが、階下に人影はない。
再び登り始める。また物音。
朝倉は暫らく動きを止めているが、慎重に後ずさりし始める。
拳銃と顔を音のした階段の下へ突き出し、覗きおろそうとする。
その瞬間、階段の蔭から伸びた二本の腕が朝倉の拳銃を掴み、力をこめて引っぱる。
歯をむき出して踏んばる国友。
朝倉は拳銃を奪われまいと力をこめながら、いきなり国友の拳銃を掴んだ手に思いきり噛みつく。
朝倉が口から血が流れ、数秒後、国友が悲鳴をあげて廊下に転がる。
朝倉、ホッとして国友に銃口を向けようとするが―
声『ハジキを捨てろ。捨てないとぶっ殺す』
朝倉『!!』
拳銃を国友の足元に落とし、声のした二階の踊り場を振り仰ぐ。
銃身を短く挽き切った水平二連の散弾銃を腰だめにした石井。

78 @kira 2013-02-19 21:20:58 [携帯]


352 x 640
シーン106
■[同・二階(夜)]
国友が憎悪に眼を光らせ、散弾銃を構えている。
石井が朝倉の両手に手錠をかける。
そして椅子に坐らせ、用意したロープで朝倉の腕と椅子の背を縛り付ける。
室内には米軍用のスリーピング・バッグ、吸殻のあふれた灰皿、ウイスキーの空瓶、食いかけの果物やパンなどが散乱。
石井が小型のガソリン・バーナーを取る。
ノズルにライターで火を移し、朝倉をサディスティックな笑いを浮かべて見ながら、吹き出す炎を伸ばしたり縮めたりする。
朝倉『待ってくれ。そんなもんでバーベキューにされたんじゃたまらねえ。なんでも喋りますよ!・・・・・・東和油脂って会社に雇われ、そこにいる男を尾けて隠れ家を突き止めろと・・・・・・』
石井『それから俺たちを殺せと言われたのか』
朝倉『いや。殺した桜井から写真やネガ、録音テープをあんた達が奪ってる筈だから、そいつを取り戻して欲しいと言われた』
石井『なるほど』
国友『会社の奴等、俺達が証拠の品を掴んでると思い込んでるらしいぜ』
石井『黙れ!あんたは口が軽すぎるんだ』
国友『(ムッとして)どうせ始末するんだ、構やしねえ。そうよ、俺達ァ証拠の品なんざ持っちゃいねえ。そんな物なくたって、会社のキンタマ掴んでるんだからゼニはいくらでも絞れるんだ』
石井『よさないか』
国友、不貞たように部屋の隅へ行って座り込み、煙草に火をつける。
石井『貴様、どこの者だ?』
朝倉『(声を落とし)あんたにだけ教えたいことがある』
石井『何だと?』
朝倉『こっちへ来てくれ』
石井が近づいて来る。
朝倉が不自由な手で、ズボンのジッパーを下げる。
石井が朝倉の口に耳を傾けようと更に近づいた時―腿にくくりつけたコルトを抜いた朝倉が、安全装置をはずしざま相手の下腹部に銃口を押しつけ、二度引金を絞る。
くぐもった銃声。
石井が信じられぬといった顔で、ゆっくり膝から崩れる。
国友が跳び上がる。
朝倉が再び二発撃つ。
今度は耳をつん裂く銃声がして、弾をくらった国友が吹っ飛ぶ。

79 @kira 2013-02-19 21:31:44 [携帯]

朝倉は素早くバーナーを拾い、炎を伸ばし、ロープに近づける。
炎がロープと同時に朝倉の洋服の肘を焼く。更に肉も。
苦痛に顔を歪め―ようやくロープが切れる。
石井のポケットから鍵を取り出し、口でくわえて巧みに手錠を外す。
朝倉が箱から取り出した散弾の紙ケースをナイフで切断、オレンジ色の火薬を畳の上にぶちまけていく。
ローソクを短く折って、火薬のあいだに立てる。
石油罐を持ち、二人の死体、畳や襖にたっぷり振りかける。
ローソクに火をつける。
部屋を出る。
 
シーン107
■[雑木林の道(夜)]
小住宅を出た朝倉が、小走りに雑木林へ入る。
ハッとなり、身を隠す。
自転車に乗った警官が来て、小住宅へ向かう。
見守る朝倉。
 
シーン108
■[小住宅・表(夜)]
警官がドアをノックする。
警官『夜分すいません。開けて下さい。そこの交番の者ですが、銃声のような音がしたと近所の人から連絡があったので・・・・・・』
 シーン109
■[同・二階(夜)]
ローソクの炎が燃え尽き―閃光と炎が死体を襲う。
 
シーン110
■[同・表(夜)]
警官がドアを開ける。
その途端、閃光と赤黒い炎が室内から襲いかかって来る。
仰天して腰を抜かす警官。
 
シーン111
■[雑木林(夜)]
火を吹き出す死人の家。
朝倉、それを確かめて踵を返す。

80 @kira 2013-02-19 21:35:06 [携帯]

シーン112
■[疾走するフォード(翌日)]
 
シーン113
[走るフォードの中]
社長秘書の富田が運転し、後部シートに朝倉と金子。
朝倉『社長の家は、高輪台の筈ですが』
金子『伊豆山の別荘でお待ちなんだ』
朝倉、金子を見る。
握りしめた金子の拳が、なぜか膝の上で震えている。
 
シーン114
■[海沿いの道]
フォードが停まる。
金子、富田、朝倉が降りる。
金子『歩いて別荘へ来るようにと言われている。我慢してくれ』
朝倉『いいですよ』
波の音と、風に騒ぐ松の音の中を、三人が歩き出す。
 
シーン115
■[断崖(夜)]
三人が歩く。
岩に当たって波が白く砕ける。
不意に金子が立ちどまり、朝倉を振り返る。その手に拳銃が握られている。
金子『朝倉君、許してくれ!』
同時に、朝倉の全身が驚くほどの早さで翻える。
拳と蹴りが、鈍い音をたてて金子と富田に喰い込む。
一瞬のうちに、呻いてうずくまる富田。
金子は顔を砂に突っ込み、悶える。

81 @kira 2013-02-19 21:41:21 [携帯]

シーン116
■[清水邸・一室]
いきなりガッ!と蹴開けられるドア。
ソファや肘掛け椅子でうたた寝をしていた清水、小泉、竹島、秀原が一斉に腰を浮かす。
金子を抱えた富田たち秘書三人が入る。
続いて現れる朝倉。
茫然と清水たち。
朝倉がソファを指示し、三人の秘書が金子たちを横たえる。
朝倉『ちょっと手違いがあって、次長さんは怪我をされました。肋骨が二、三本折れてるようです・・・・・・お気の毒でしたね』
小泉『何を言ってるんだ。どうしてこんなとこへ来た?!確かに殺し屋たちを片づけてくれた功績は大きいが、それと、きみが平社員の分際で社長のお宅に押しかけてくるのとは問題が違う。帰りたまえ、命令だ!』
竹島『その通りだ!』
秀原『増長するな!』
朝倉『なるほど・・・・・・用が済んだらおとなしく殺されりゃいいものを、何をのこのこ生き返ってきた、と言うのか』
小泉『馬鹿なことを言うな。きみは疲れてるんだ。今夜の無礼は忘れてやるから、早く帰ってゆっくり眠れ。明日は会社を休んでよろしい』
と、椅子に座り込む。
朝倉が怒りの表情物凄く小泉に迫る。
小泉『(怯えて)寄るな、無礼者!』
朝倉、小泉の襟首をガッと掴み、軽々と吊り上げる。
小泉はもがくが、絞められているために絶叫は弱々しい悲鳴にしかならない。
朝倉『俺が舐められておとなしく引っ込んでる坊やにでも見えたのか?俺を殺そうとする前に、そのことを何度も考え直してみなかったのか。えッ?!』
小泉を椅子に放り捨てる。
小泉『・・・・・・(喘ぎ、頭を下げて)悪かった、許してくれ!金子が、どうしてもきみをやらせてくれと言うので、ついのせられたのが間違いだったんだ』
金子『嘘だ!私は命令に従っただけなのに―』
小泉『黙れ!貴様はクビだ!!』
金子『クビにするなら、すぐ警察に駆け込んでやる!』
清水『朝倉くん、私はこの件に関して最初から一切関係ないんだ。むしろ私は、ここにいる役員の諸君におどされて―』
竹島『社長、今更何を!』
秀原『そうだ。あんたと我々は一蓮托生なんだぞ!』
朝倉『仲間割れは、後でゆっくりやりなさいよ。俺の望は―』
清水たちが朝倉を見つめる。
朝倉『どうやってこのおとしまえをつけて貰うかだ』

82 @kira 2013-02-19 21:49:47 [携帯]

翌日。
朝倉の前に、小泉が重いジュラルミンのトランクを置く。
揺り椅子に沈み眼を閉じている清水と、虚脱したように肘掛け椅子に並んでいる竹島、秀原。
清水『数えてみなさい。千株券が千枚に、百株券が一万枚だ』
朝倉、トランクを開く。
譲渡証書と、株券が詰まっている。
朝倉、株券の確認作業を始める。
朝倉『・・・・・・確かに』
朝倉、トランクを軽々と提げて立ち上がる。
 
シーン117
■[同・前庭(別の日の夜)]
タクシーが走り込み、玄関ポーチの前に停まる。
朝倉が降りる。
社長秘書が走りより、恭々しく出迎え。
 
シーン118
■[同・食堂(夜)]
朝倉が、給仕の引いてくれる椅子に腰をおろす。
すでに清水、小泉、竹島、秀原が席について、まだ一つだけ空席がある。
ドアがノックされ、モス・グリーンのイヴニングを着けた絵理子が入って来る。
清水『紹介しよう。うちの末娘の絵理子だ。こちらは将来有望な若手社員の朝倉君』
朝倉『よろしく』
絵理子がチャーミングな微笑をたたえ、優雅に会釈。
給仕が冷えたシャンペンを抜き、全員に注ぐ。
清水『東和油脂の安泰を願って』
皆がそれに和す。
ワインと豪華な料理。
朝倉―
 
シーン119
■[同・スモーキング・ルーム(夜)]
背もたれの高い昼寝用の肘掛け椅子にゆったりと体を沈めて清水、小泉、竹島、秀原、朝倉。
小泉がヘロインを煙草につけ、深く吸う。竹島と秀原も吸う。
陶然となる三人の頽廃―そんな三人を、冷たくしっと見ている朝倉。
清水『どう思うね、絵理子を?』
朝倉『チャーミングな方です』
清水『君となら、うまくやっていけると思うんだが』
朝倉『?』
清水『絵理子を嫁に貰ってくれないか、と私は思っているんだよ』
朝倉『・・・・・・』
清水『頼むよ、きみ。(頭を下げ)この通りだ』
朝倉『・・・・・・』
小泉『絵理子さんは非の打ちどころのない女性じゃないか』
朝倉『僕もそう思います』
小泉『だったら、なぜ?!』
竹島『朝倉君、分かってないようだな。社長のお嬢さんの旦那様ということになれば、きみを今年中にでも重役に仕立てる理由がつくじゃないか』
秀原『そして、東和油脂は安泰となる』
朝倉『・・・・・・分かりました。有難くお受けします』
清水『そうか!乾杯だ!』
と、コーヒーのカップを挙げる。
五つのカップが鳴る。
『乾杯』

83 @kira 2013-02-19 21:55:59 [携帯]

シーン120
■[歩行者天国]
朝倉と京子が寄り添い、歩く。
朝倉の声『あの薬、パトロンに渡すのは構わないが、そろそろきみはやめたほうがいい』
京子の声『なぜ?』
朝倉の声『・・・・・・それ以上痩せると、抱いてて頼りないから』
京子が笑う。
朝倉は笑ってない。
テーラーから朝倉と京子が出る。
朝倉の衣装はパリッとしたスーツに変わっている。
朝倉が京子を待たせ、スタンドで新聞を買う。
社会面を見る。
『強奪された共立銀行の紙幣、横須賀に出現』と、見出しの活字。
朝倉、思わずニッと笑う。
 
シーン121
■[磯川邸・一室]
暖炉で夥しい数の一万円札が燃える。
磯川が、燃える炎を怒りの眼で見つめている。控えて植木。
磯川『糞ッ、あの野郎、人をコケにしやがて・・・・・・八つ裂きにしても腹の虫が収まらん。植木、なんとしてもあの糞ったれを消すんだ!』
植木『は』
声『磯川さん』
ギョッと振り返る磯川。刑事AとBが立っている。
刑事A『署へ同行願います』
磯川『署へだと?何しに?』
刑事A『伺いたいことがいろいろあるんですよ』
刑事B『強奪された共立銀行の紙幣を、なぜあんたが使ったのか・・・・・・そのへんのところをじっくり伺いたいですな』
刑事A『それから、麻薬のことなども』
磯川『・・・・・・(呆けたように口をポカンとあけ)そんな馬鹿な!』
 
シーン122
■[朝倉の部屋(夜)]
丼に山盛りのキャビアとウォッカ。
朝倉の一人だけの祝杯。
胸を絞めつけるような排気音が近づいて来て、停まる。
朝倉、その音にも乾杯。

84 @kira 2013-02-19 21:59:26 [携帯]


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シーン123
■[アパート裏の駐車場(夜)]
朝倉と愛想笑いのセールスの高柳が来る。
フィアット××。
高柳『お約束通り仕上げさせました』
朝倉は愛しい者にようやく出会えたかのように、フィアットを眺める。
 
シーン124
■[道(早朝)]
凄まじい排気音を響かせてフィアットが突っ走る。
 
シーン125
■[走るフィアットの中(早朝)]
最高のマシンに身を委ねて、満足そうな朝倉。
 
シーン126
■[山道(早朝)]
曲がりくねった登りの道を、フィアットが一気に駆け上がって行く。
 
シーン127
■[東和油脂・地下駐車場]
朝倉が靴音を響かせ、フィアットに近づく。
ドアを開けかけて―気配に振り返る。
離れた四方の車の蔭から七、八名の男が現れ、無言で近づいて来る。無気味な男たちは、いずれも見知らぬ顔。
逃げ場はなく、全身を恐怖が走る。
突如、ダッと一方へ走る。
一人の男を蹴倒し、出口への血路をひらこうとする。
だが、拳銃の銃口を向けたもう一人と、鋭い眼つきの男(栗原)が、立ち塞がる。
朝倉『―』
栗原『朝倉さんだね?』
朝倉『お前ら、会社に雇われたのか?』
栗原『あたしは栗原ってもんです。鈴本先生んとこの』
朝倉『鈴本?』
栗原『先生が、ぜひ会いたいとおっしゃってる』
朝倉『―』

85 @kira 2013-02-19 22:04:20 [携帯]


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シーン128
■[レストラン・店内]
客のいない店内を、朝倉と栗原が歩く。
奥のテーブルに、鈴本がワインを飲みながら料理を食っている。
栗原が朝倉を鈴本の向かいに坐らせ、去る。
朝倉『(鈴本を睨んで)・・・・・・』
鈴本『(貪欲に食い続けながら)あんた、社長たちから二百万株せしめたそうだな』
朝倉『よくご存知で』
鈴本『東和油脂の、冷飯食いの重役の一人に、俺が東和油脂を乗っ取ったら総務担当の重役に抜擢だと鼻薬を嗅がせたら、すぐに尻尾を振りおって、喋った』
朝倉『・・・・・・』
鈴本『俺は必ず東和油脂を乗っ取る。殺された甥の光彦のためにもな』
朝倉『・・・・・・』
鈴本『清水社長の娘と婚約したそうだが、あんた、本気で清水一族の一員になるつもりなのかね』
朝倉『・・・・・・』
鈴本『お前さんの柄ではないと思うが』
朝倉『・・・・・・それを言うために、私をここへ?』
鈴本『あんたの二百万株、売ってくれんか。時価の三倍払おう』
朝倉『時価の三倍・・・・・・三倍と言えば、××億』
鈴本『そう、大金だ。しかし、金はどうとでもなる。俺のバックには、次期総裁を狙う通産大臣の吉村がいる』
朝倉『(ショックを受けて)―』
鈴本『我々を敵にまわしてあがくか、それともこれを潮時にして儲けるか』
朝倉『・・・・・・』
鈴本『返事は?』
朝倉『(きっぱりと)××億、ドルの高額紙幣で用意できるか?』
鈴本、朝倉をじっと見つめるが―その顔がニヤッと崩れる。

86 @kira 2013-02-19 22:11:31 [携帯]

シーン129
■[清風荘・朝倉の部屋]
朝倉が放心したようにベッドにあお向けになっている。
ドアがカチッと鳴る。
振り返る。京子―
一段と痩せ、憔悴している。
朝倉は探るように京子を見る。
京子『朝倉さん、婚約おめでとう』
朝倉『・・・・・・』
京子『朝倉さん・・・・・・それがあなたの本当の名前なのね』
朝倉、頷く。
京子『あなたに頼まれたから、私はパパによく会社の話を聞いたわ。その中に、朝倉という名前が何度も出て来た。若い平社員が、どうやって社長のお嬢さんと婚約するまでになったか・・・・・・ある時、その朝倉という人のイメージとあなたのイメージが重なったの。女のカンね・・・・・・パパに頼んで、朝倉という人の写真を見せて貰ったの。パパは、三年前の慰安旅行の時に撮った写真を持ってきてくれたわ。これが朝倉という男だ。女がこんな男に惚れたら、最後に待ってるのは恐ろしいほどの不幸だ、とパパが言って指したところに、あなたの顔が写っていたわ』
朝倉『・・・・・・』
京子『あなたにとって私は、麻薬で縛り、情報を手に入れるためだけの道具だったの?』
朝倉『・・・・・・違う』
京子『・・・・・・絵理子さんと結婚するの?』
朝倉『しない』
京子『どうして?』
朝倉『(答える意思はなく)・・・・・・』
京子『あなたが何をしても構わない・・・・・・ただ私は、あなたを失うことだけが怖い』
朝倉『家へ送ろう』

87 @kira 2013-02-19 22:15:15 [携帯]

シーン130
■[大名焼きの店(夜)]
朝倉と小泉。
炭火の上の大きな鉄板で、肉や野菜を炙りながら頬張る。
朝倉『僕の友人が、トルコからある品を買って帰って来ました。コーヒー罐に入るだけの量で、何千万もするという代物です』
小泉『?』
朝倉『部長はきっと興味を持つんじゃないかと思ったんですがね』
小泉『(眼つきが変わり)きみ、トルコからというと・・・・・・麻薬のことかね?』
朝倉『純度90%以上です』
小泉『きみは知っていたのか。恐ろしい奴だ・・・・・・是非分けてくれ』
朝倉『一キロ三百グラムあります』
小泉『一キロ三百!本当か。それが手に入れば、私は一生クスリが切れる恐怖から解放されるんだよ!』
朝倉『グラム十万で、一億三千万円』
小泉『用意する。なんとしても容易するよ!』
朝倉『千ドル紙幣でお願いします。友人がそう望んでますので』
小泉『分かった』
 
シーン131
■[東和油脂・応接間]
朝倉と小泉が、ヘロインとドル紙幣を交換する。
朝倉が一億三千万円分のドルの紙幣を、無雑作に両方のポケットにしまう。
 
シーン132
■[京子の部屋(夜)]
小泉が多量のヘロインを示し、京子の前で狂喜する。
小泉『見てご覧、京子。我々はこれからクスリの心配をすることはないんだよ、ほら!』
京子『どこで?』
小泉『朝倉が譲ってくれたんだ』
京子『朝倉さん?』
小泉『もうきみが、町で苦労してチンピラから買わなくても済むんだ』
京子『(茫然と)・・・・・・』
朝倉が今、確実に自分のもとから離れて行こうとしているのを、自覚する。

88 @kira 2013-02-19 22:19:39 [携帯]

シーン133
■[ホテル・一室]
朝倉と鈴本が株券とドル紙幣を交換する。
二百万株の株券、譲渡書、委任状と××ドルの高額紙幣を、お互いが確認していく。
 
シーン134
■[東亜経済研究所・鈴本の部屋]
トイレに冬木。
コックをひねるが、水が流れない。
不審顔で、水洗タンクの中を覗く。手を突っ込んで探る。
その手が、ポリエチレンで厳重に包まれたモノを取り出す。
冬木がオフィスを走り出て行く。
シーン135
■[ホテル・表]
地下駐車場から、朝倉のフィアットが走り出る。
その近くを冬木が走り、玄関へ向かう。
走り去るフィアット。
 
シーン136
■[同・一室]
鈴本が、写真と写真のネガ、テープを握りしめる。控えて冬木。
鈴本『(呻くように)もう少し早く見つかっていたら・・・・・・東和油脂なぞ、これで叩き潰せたのに・・・・・・高い株を買わされたもんだ』
窓の外に拡がる街―

89 @kira 2013-02-19 22:23:53 [携帯]

シーン137
■[樹海の道]
京子を乗せた朝倉のフィアットが走る。
 
シーン138
■[湖のほとり]
朝倉が湖面を見る。
美しくはあるが、底知れず無気味に淀んでいる。
京子が煙草の先端にヘロインをつけ、深く吸う。
煙草を捨てる。
朝倉を見つめながらゆっくりと近づいてくる。
唇に微かな笑い。
迎える朝倉の胸に、抱かれるように頭をそっとつける。
朝倉『・・・・・・(突然の衝撃に!!)』
京子が握りしめた登山ナイフが、朝倉の脇腹に深々と突き立っている。
京子『私を、殺そうと思っていたんでしょ。殺して・・・・・・殺して・・・・・・早く!』
朝倉、呻ぐ。
両の腕を、京子の首に当てる。そして、力をこめる。
京子が声も立てずにガクッと膝を折り、朝倉の足にもたれる。
朝倉、更に絞める。
息絶える京子。
朝倉、ポケットから封筒を取り出す。中の二枚の紙片から一枚を抜き、落とす。
舞って京子の死体に落ちたのは―航空機の搭乗券。
朝倉『・・・・・・』
 
シーン139
■[成田空港]
朝倉がスーツケースを提げ、確かな足どりで出発ゲートに向かって歩く。
スイス行き航空便の搭乗案内のスピーカー。
朝倉が歩く。
 
シーン140
■[離陸して行く航空機]
 
シーン141
■[飛ぶ機内]
座席に朝倉。
脇腹を押さえ、小さく呻ぐ。
通りかかったスチュワーデスが、心配そうに覗き込んで何か問う。
朝倉は『なんでもない』というふうに首を振り、笑ってみせる。
スチュワーデスが去る。
朝倉の顔は土気色。脂汗がベットリと滲み、流れ落ちる。
その顔と画面が、次第に閃光のような白へと感光して―
 
    【完】

90 @kira 2013-02-19 22:29:02 [携帯]

シーン1[中華料理店]では、金子と朝倉が料理を食べながら会話する模様が描写されている。
会話というよりは、金子から朝倉への一方的な叱責である。ところが、当の朝倉は、まるで他人事のように受け流してしまうので金子が更に苛立つという設定。
劇場版ではカット。

91 @kira 2013-02-26 01:53:43 [携帯]

タイトルバック
 
まだ眠る雨の新宿・丸の内オフィス街。
シンセサイザーの効果音と共に浮かび上がるタイトル。
実は私はこのタイトルが嫌いである。
タイトルの文字は赤なのだが、その上に変な効果をつけているのだ。
単純に赤か白の方が生理的に好きなのだ。何故こんな処理をしたのだろう。白の場合は、バックの曇り空に消えてしまいそうだが。

92 @kira 2013-02-26 01:59:06 [携帯]

ケーシー・ランキンによるテーマ曲が低音で響いてくる。期待させるオープニングである。
共立銀行本店。札束がジュラルミンケースに詰められて行く。
通用口から男達の一団が出て来る。手には鎖で繋がれたケース。
このシーンに優作が所属していた映画製作会社セントラルアーツの社長・黒澤満氏がゲスト出演している。現金運搬人をチェックしている人物だ。クレジットされていないし知る者は少ないだろう。
この作品はゲスト出演が豪華なので特集したいと思う。
 
現金運搬人・原に後方から近づく白バイ警官。
いよいよ松田優作初登場だ。
原の傍で停まった警官は近づき話しかける素振りでみぞおちに一撃入れて気絶させ白バイに乗せて走り去る。
■高速道路・橋脚の下
警官は原を射殺。鎖で繋がれたケースを奪う。
原を演じたのは、団巌。独特の関西弁で、『探偵物語』第1話『聖者が街にやって来た』では、工藤俊作をつけ狙うギャングを佐藤蛾次郎と共に演じた。
次回作、『処刑遊戯』では、鳴海が立ち寄るバーのバーテンダー役を演じた。
劇中でも語られるがどこか『三億円事件』を彷彿させる。
実は大藪春彦は事件当時、『血の来訪者』という作品が犯行内容と似ていた為に参考人として事情聴取を受けている。
この事を知る者ならニンマリするシーンだ。
このシーン。予告編ではしっかりサイレンサーの効果音をつけているのに本編では普通の発射音なのだ。サイレンサーを外しているのだから明らかにミスだが恐らく迫力がないので差し替えたのだろう。映画というのはこういった嘘の連続で成立しているのだ。

93 @kira 2013-02-26 02:10:28 [携帯]

■東和油脂
ボロボロの傘で風呂敷包を抱えて出社する朝倉哲也。
仕事中にくしゃみを連発する朝倉。
部長・小泉(成田三樹夫)や課長・金子(小池朝雄)にも疎まれる存在だ。
東和油脂という会社は重役が後方から社員の行動を監視するようなデスクの配置だ。こんな会社に入ったら、やりづらくて仕方ないだろう。
この重役連中が如何にも狡っ辛くて『いるよなぁ』という感じだ。
原作ではエリート社員だが映画では窓際社員(を装っている)だ。
これは『遊戯』シリーズの鳴海昌平のキャラクターを踏襲しているのだ。
昼行灯のキャラクターによってハードな本性が強調される。
ファンは松田優作の演技のバリエーションが楽しめる。『遊戯』シリーズファンの期待にも応えている。
この作品は『遊戯』シリーズの延長上にある作品である。だから『遊戯』シリーズと比較する事でより面白さが増すのである。
この頃の松田優作の演技しているのか、ふざけているのかわからない芝生は見ていても、なかなか面白い。

94 @kira 2013-02-26 02:16:49 [携帯]

『蘇える金狼』における松田優作
 
私は松田優作の演技を『原田芳雄タイプ』『萩原健一タイプ』の2タイプに分類する事が出来ると考える。
どちらも当時、優作が絶対的に尊敬していた俳優である。
デビューから1979年のドラマ『探偵物語』までが前者。
1980年『野獣死すべし』から1989年『ブラック・レイン』までが後者である。
そしてこの作品が『原田芳雄タイプ』の集大成だと思われる。
台詞回しや仕草も原田芳雄指数が高い。
優作の演技の根底に流れるユーモアも原田芳雄の影響だ。このユーモアが1980年以降は失われて行くのが些か残念である。
この年、原田芳雄を極めた優作は非常に充実しており仕事量も生涯で最高だった。
その充実ぶりがフィルムに定着している。
当時の優作の演技はどこか芝居を投げてる様な演技してない様な独特の演技だった。
これは芝居をナメている訳ではなく。役作りもしているのだ。
しかし『演技したって所詮は俺だ。ガチガチの芝居をするよりアドリブも入れた新鮮な芝居の方が面白いに決まってる』と考えていたのだろう。
この演技メソッドは好評を博し、多くのファンを獲得した。
相手の演技をダイレクトに受けずに外した芝居をしたり、わざと間を空けたりしている。
『女優が共演したい俳優ランキング』でもトップを穫っている。
まさしくピークに達した優作の『原田芳雄タイプ』集大成の演技を堪能出来るのがこの作品である。
しかし優作の魅力はそれだけではない。
優作にしか醸し出せない空気があった。
優作の不敵な演技の裏に垣間見える繊細な身のこなしや視線は彼にしか醸し出せないものだろう。
それを感じられなかった者は『野獣死すべし』で消失した優作を見失った。しかし、感じた者にも地獄の如き日々が待っていたのである。

95 @kira 2013-02-26 02:17:44 [携帯]

劇場版での台詞
金子『風邪ひく陽気でもないだろうに・・・』
石田『おい、知ってるかよ。今朝、××で3億円事件そっくりの事件があってよ。1億円ばかり、パクられたらしいゼ』
湯沢『あ、そう。うまく逃げてくれればいいけどね』
『痛快ですねぇ・・・』
石田『馬鹿なこと言うなよ、お前・・・。すぐ捕まるよ。だから、犯罪なんてのは割りに合わないんだよ』
朝倉『だけど・・・、捕まんなきゃいいなぁ・・・』
石田『そりゃ、捕まんなきゃいいけどさァ・・・すぐ捕まるんだよ。バレなきゃ何やったっていいようなモンだけどさァ・・・。』
石田『この会社だってひどいゼ~、一部のお偉方のやってることは・・・。下請け会社から、不良品納入さて暴利むさぼったり、トンネル会社通じて融通手形落とさせて、それ、導入資金にして裏金利稼いだりよ・・・』
湯沢『そうだよな・・・。経理部長の小泉、腹心の金子、専務の竹島、監査部長の秀原・・・・・・みんな、仕事のできる奴ばっかりだもん。しょうがないよ・・・。その上、社長がグルだろ?バレなきゃいいってことだよ・・・。』
石田『腹、立たないかね、朝倉君・・・』
朝倉『ゲホッ・・・・いやぁ、そりゃ腹は立ちますけどねぇ・・・ケホッ・・・でも、怒ったところで、なんかイイ事あるわけじゃないし・・・ジッと我慢してるのが一番いいんじゃないですか?』
湯沢『まあね、一つでも上へね、出世した方が勝ちってことだよ』
朝倉『そう!それが一番ですよ、やっぱり・・・』
石田『そりゃ、君はいいよ。出世競争だって我々より一歩リードしてるんだからサ・・・』
朝倉『とんでもな~い・・・僕なんか、あの~・・・大学は夜間だし・・・この会社入ったのも、補欠ギリギリだもの・・・』
湯沢『あ、補欠っつーのは知ってるよ、俺』
朝倉『あ、そうスか・・・・』

96 @kira 2013-02-26 02:40:31 [携帯]

役職連中が背を向けた社員達を監視するような体制のオフィス。普通の会社なら役職と社員のデスクは向かい合っているか、横並びなのだが。仕事がやりづらい雰囲気だ。
無闇に嚔を連発する朝倉。優作のおふざけ演技炸裂。同時に雨天の犯行を強調。金子が嫌みを言い、小泉は、呆れた表情で見ている。
朝倉が昼食を摂りながら同僚の湯沢や石田らと今朝起きた、一億円強奪事件の話題に興じている。
七三分けの優作は、この映画でしか見れない貴重な映像だ。おまけにうどんまで啜っている。一流企業の社員ならレストランくらい行けよと思う。平社員の哀愁が滲む。
よく見ると優作の七三分けの襟足から揉み上げが覗く。当時の優作の揉み上げまでは流石に隠しきれなかったようだ。
自分が補欠社員だと明かす一幕も。滑舌が悪い岩城滉一との絶妙なやりとりには笑ってしまう。うどんをくわえたままの優作の表情が可笑しい。

97 @kira 2013-02-26 02:41:22 [携帯]

劇場版での台詞
小泉『あ、諸君、ちょっと仕事の手を休めて・・・この方の話を聞いてほしい』
小泉『共立銀行の兵庫さんだ』
兵庫『お仕事中、お邪魔いたします・・・え~、あるいはニュースでご存知かと思いますが、今朝私どもの銀行の現金運搬人が襲われまして、1億にのぼる現金が奪われました』
兵庫『で、皆さんがたにお願いがあるんですが・・・ま、不幸中の幸いと申しますか、えー、奪われた紙幣のナンバーは全部本店に控えられてありましたわけでして・・・これがその番号です』
兵庫『え~・・・私ども、こうして各方面にご協力をお願いしているわけですが、どうか、その紙幣のナンバーに該当するものが出てきましたら、あのー、是非、お知らせ願いたいと思います』
 
金子『なんだいこりゃ、おい、邪魔だなぁ、君ぃ・・・』
朝倉『故郷の母から林檎を・・・』
金子『いちいち、気になるなぁ、君は・・・』
朝倉『次長、ひとつ・・・』
金子『いいよ、そんなモノ・・・』

98 @kira 2013-02-26 02:47:01 [携帯]

朝倉達が仕事をしている所に共立銀行支店長・兵庫(久米明)が現れ今朝の朝倉の犯行を伝えると同時に紙幣のナンバーが控えてあった事を明かす。
怒りがこみ上げた朝倉が思わず握っていた鉛筆を折る。
銀行は何故、重要な情報を流したのか。まさか犯人がその場にいるとは思わなかったろう。朝倉は逮捕される危険は回避したが奪った現金が使えないという第一の困難に直面する。朝倉が数々の困難を如何に克服するかがこの映画の面白さだ。
朝倉は経理部勤務だがなんと算盤で計算している。電卓は既に開発されていた筈だが。
当時は算盤のほうが早くて、正確だという神話が信じられていた。

99 @kira 2013-02-26 02:57:59 [携帯]


416 x 720
劇場版での台詞
湯沢『いい女だねぇ・・・』
『知ってんの?!』
湯沢『社長令嬢の絵理子さんだよ』
『はぁ~・・・綺麗な人だなぁ・・・』
湯沢『君はいつも出すぎるんだよ。彼女、射止めてエリートコースに乗る人がいるんだろうねぇ・・・羨ましいなぁ・・・ま、君たちは無理だな、俺だけだ。行こうか』
 
仕事を終えて会社を出ようとする朝倉達の前を一人の女性が通り過ぎエスカレーターで上がって行く。
社長令嬢・清水絵理子。
佐藤慶演じる東和油脂社長の清水の一人娘だ。
当時、資生堂CM『揺れるまなざし』で脚光を浴びたモデルの真行寺君枝が演じていた。
即物的で記号化された気品で微笑む真行寺君枝は台詞を一言も喋らない。芝居が出来ない者に敢えて何も要求しない潔さは実に気持ち良い。
絵理子は朝倉の野望の象徴である。
絵理子を射止める事、即ち東和油脂を手中に納める事なのだ。
普通に考えれば湯沢のように仕事で出世して社長の婿養子になるのが正攻法だろう。
しかし、補欠入社ではいくら頑張っても出世出来る見込みはないだろう。
これを裏から己の頭脳と肉体で成し遂げようとするのが朝倉の復讐なのだ。
黒縁眼鏡の奥で獲物を狙う獣のように絵理子を見つめるギラギラした眼差しがバッチリ決まっている。
こういう芝居が様になる俳優と白けさせてしまう俳優がいるが優作ほどケレン味のある芝居が嵌る俳優はいなかった。
ここで視線が泳いだりすると興醒めだし作品自体が駄目になってしまう。
この作品はそういうシーンの連続だが優作の芝居には嘘がない。『こいつ本当にイってるな』と思わせる事が出来れば俳優の勝ちだ。
それが出来ないなら芝居は向いてないから俳優なんか辞めてしまったほうがいいだろう。

100 @kira 2013-02-26 03:00:14 [携帯]

ロケ地探偵団①
 
東和油脂本社1階フロア
 
探偵団なんて言ってるがメンバーは私一人である。
映画観てるとこの場所どこだっけって事がよくあります。
それをまあ出来る限り可能な範囲内で調べて行こうというのが趣旨であります。
その第1回として取り上げるのが東和油脂。
あのエスカレーターがあるフロアですよ。
サラリーマンが自分の勤務している会社にエスカレーターなんてあれば家族・親戚に自慢出来るだろう。(※自社ビルってのが前提ね)
 
で、どこなんだって話なんだけど。
 
日本ランディック社ビルです。
昔、雑誌に載ってたのは覚えてるんだけど詳細は一切忘れてしまっていた。
なんせ20年以上昔の話だからね~。ハハハ~。
それでも微かな薄れかけた記憶を辿ってみよう!
 
83年頃にはあのエスカレーターは取り外されて階段になっております。
そしてこのロケ地は優作主演ドラマ『探偵物語』最終回でも使われています。
しかしあれから既に30年の歳月が過ぎ去った。
もしかしたら取り壊されている可能性も大!
工藤ちゃんの事務所もなくなったしなぁ~。
 
という事で今回はここで強制終了。
調査は続行しながら結果が出れば更新しよう。
 
それじゃ!

101 @kira 2013-02-26 08:21:34 [携帯]


480 x 800
劇場版での台詞
沢野『残念だなァ・・・、ホントに残念だ・・・。あと体重を十ポンド絞って、ミドル級の試合に出れば、チャンピオン間違いなしなんだけどなぁ・・・』
沢野『お前、ホントに血友病なのか?』
朝倉『ええ、鼻血が出ると止まらないんですよ』
沢野『ふぅ~ん・・・・・世の中ってのは、うまくいかねえもんだな・・・』
 
朝倉が東和油脂首脳陣と渡り合うには頭脳だけではなく肉体も鍛錬しなくてはならない。
その為に毎日、仕事終わりから夜遅くまでボクシングジムに通い、肉体を鍛錬している。
サンドバックが持ち上がる程のパンチ力を持つ朝倉はトレーナーの沢野からも試合に出るよう誘われるが『血友病』と称して断り続けている。朝倉の目的はあくまで東和油脂乗っ取りであり、試合になど出て顔が売れてしまっては元も子もない。
トレーナーの沢野を演じるのは元、角川書店社長の角川春樹。演技は下手だわ、台詞は何を言ってるかわからないわで見事に作品の流れをストップさせている。ルーカスみたいにCGで、ファイティング原田にでも代えて欲しかった。こういうワンマン・プロデューサーは、自分自身を冷静に見つめる目を持って欲しいものだ。
優作のこの鍛え上げられた肉体美はどうだ。肌はまるでサラブレッドのような艶を湛えている。この肉体ならば国家をも向こうにして立ち回れると思わせる。映画的リアリティとはこういう事だ。
原作ではこの後に横浜のドブ板横丁で血の滴るホルモンや臓物を貪り食う描写がある。朝倉にとって食事とは肉体を形成する材料でありガソリンの役割を果たす以外の何物でもない。
猥雑な都市の片隅で一匹の獣が体内に暗い野望を飼いながら、ホルモンなどで腹を満たす様に読者はその先を期待して活字の一文字一文字を追って行くのだ。

102 @kira 2013-02-26 08:22:57 [携帯]

ここで編集の話をしよう。
東和油脂の朝倉のアップからジムの朝倉に時間も場所も飛んでしまうが違和感なく観れてしまう。何故ならば一瞬早くゴングが鳴る効果音が入るのだ。
シーンを前倒しする事により、作品のテンポが良くなる。
この作品とにかく音の挿入と編集のうまさは絶品である。まさに絶妙のタイミングで音が入り、カットが切り替わって行く。
それが効果音や音楽やボーカル曲の違いはあるが音によって我々は次のシーンに誘導されている。
これが巧妙である為、快適に鑑賞出来るのだ。
シーンとシーンをフェードアウト(場面を徐々に切り替える手法。回想シーンに多用される)やワイプ(窓を雑巾で拭く様にシーンが転換する手法。スターウォーズ エピソードⅣが有名)という手法で繋ぐ監督もいるが次のカットへの移行が緩慢になり映画のテンポが崩れるので良くない。
良いカットは少しでも長く残したいと考えるが非常に徹してバッサリ切らないと作品自体が死んでしまうのだ。作品を撮るのは監督だが作品の生死を握っているのは編集者で重要な仕事である。
やはり実力ある編集者が繋ぐと映画は生き物だと感じられる。
ただ、この作品にも一ヶ所だけ編集のまずいカットがある。
どこか分かるだろうか。
それは後ほど明かしたいと思う。

103 @kira 2013-02-26 08:28:27 [携帯]

劇場版での台詞
朝倉『こんばんわ』
『今、お帰りですか』
朝倉『はい』
 
近隣の住民と挨拶をしている社交的な朝倉。原作では微塵もない行動だ。
アパートの2階へと上がって行く。脚本では『清風荘』という名前だ。部屋のドアを開ける朝倉。
ランプに火を灯す。電力が供給されていない。灯りが点っても全体像が掴めない朝倉の住処。
階下へと続く階段を降りると椅子とテーブルとベッドのみの簡素な住まい。
ここはマンションなのかアパートなのか倉庫なのか。
第一に間取りが得体が知れない。
 
①窓がない。
②入口は二階のドアのみ。
③電力供給がない。
 
これらによって導き出される答は
ここは人が住む為に作られた空間ではない
という事だ。
恐らく『最も危険な遊戯』で鳴海昌平が潰れたボーリング場をアジトにしていたのと類似した状況だと思われる。
この場所で朝倉は自らの野望を飼っているのだろう。
暴れたりしても近隣からの苦情はない。
電力供給もないから到底まともな住居ではない。
一体住所はどうなっているのか。
住民票が取れなければ朝倉は現在では就職すら難しい。
或いは敵に居場所を探られない為のカムフラージュか。
 
朝倉は会社の同僚に分けようとした故郷の母親から送られてきたというリンゴのダンボール箱をベッドの上にぶちまけると今朝、強奪した一億が。カムフラージュのリンゴをかじりながらラジオのニュースで一億円強奪事件の捜査状況を聞きながら徐に頭に手をやる朝倉。
 
カツラかよ~~~!
 
ラジオに苛立つように立ち上がる朝倉。
 
優作が何故こんなふざけた芝居をするかと言うと大藪春彦が優作達にとってつまらないからである。
『大都会PARTⅡ』と同じ理由である。
『自分が乗れない状況を如何に楽しく変えてゆくか』
優作流の答えが『おふざけ芝居』である。
優作が単なる『格好つけたいだけの俳優』だったならこんな芝居は全然必要ない。原作のまま演じるだけで良いのだ。
次に何をするかが優作の売りであり、普通ではあり得ない演技こそ優作の魅力なのである。
と優作も我々もこの時点では思っていた。
だが、その後それが違う事に感づいたのは優作だった。
それは一年後、『野獣死すべし』で噴出する事になる。

104 @kira 2013-02-26 08:29:54 [携帯]


480 x 800
劇場版での台詞
今野『何処、行こうってんだヨ・・・ここは、通り抜けできねェんだよ!』
今野『よるな!よるなァッ!!』
朝倉『落ちつけ。お前、海神組だろ?』
今野『そうだよっ・・・』
朝倉『お前ら、ヤクはどこで仕入れてんだ?』
今野『アメちゃんの水兵だ・・・』
朝倉『取り引きの方法は?・・・取り引きの方法はっ?!』
今野『詳しくは知らねえ・・・・けど、クラブ・ドミンゴ行ってカウンターに坐れば、金に替わると言ってた!』
 
朝倉にとって第一の試練がナンバーが控えられた一億を安全な麻薬に換える事だ。
朝倉がバイクで向かったのは夜の横浜繁華街。
狼が獲物を探して街をうろつく。
向かった先に番犬のようにチンピラ今野(飯田敏之)が立ち塞がっている。
恐らくその上には朝倉が目指す海神組の事務所があるのだろう。
諦めたかに見せかけて空き地に誘い込む朝倉。目的はヘロインであり、チンピラ相手の腕自慢で目立つ事じゃない。
チンピラのボディーに容赦ないパンチが炸裂する。
このシーンの優作のアクションは通常とは若干違っている。
優作は元々、極真空手の有段者でアクションには自信があった。
しかしオンエアを見ると得意なはずのアクションに全然迫力がない。
本物と見せるアクションの違いを知る。そして徹底的に動きを研究した結果、優作独自の迫力あるアクションを体得した。
その代表的なアクションが腕を外側に振って走ったり、人を殴る時は逆の腕を振る仕草である。
その積み重ねが優作をアクションスターにし、数々の代表作を残したのだ。
だがここでは大振りなアクションは控えてあくまでボクサーのようなパンチを繰り出している。
ナイフを振り回すチンピラからからそれを取り上げ逆にヤクの取引方法を訊き出そうとする。
最初は強がるチンピラだが朝倉の気迫に負け『クラブ・ドミンゴ』の名を吐く。

105 @kira 2013-02-26 08:34:29 [携帯]


404 x 720
ここでも優作の『クラブ・ドミンゴか』のセリフを敢えて消して前野耀子の『野獣死すべし』を前倒しで挿入している。驚くべき事にこの映画で使用されているボーカル曲の全てが彼女の歌なのだ。日本人とは思えない声量だ。そして全タイトルが大藪春彦の作品名になっている。心憎い反面、企画モノかという脱力感も感じる。
朝倉はここでチンピラの息の根を止めなかったがこれには理由があるのだ。
東和油脂のボンクラ重役のように朝倉を見くびっていると単なる間抜けにしか見えない行動にも計算がある。
『朝倉って馬鹿だなぁ』と思っている貴方。
気づいた時には朝倉に寝首を掻かれているかも知れない。

106 @kira 2013-02-26 08:36:00 [携帯]


366 x 664
クラブ・ドミンゴ
 
その名はドミニカ共和国の首都から取られたのだろうか。
一歩足を踏み入れればソウル・ナンバーが大音量で鳴り響き、客の大半は外国人で日本人の姿は見当たらない。横須賀という土地柄か米軍基地から流れて来た猛者連の下品な笑い声が響き渡る。黒人女性のヌードダンサーが扇情的に腰をくねらせ、日本では違法なカジノが平然と営業している。ここは日本であって日本じゃない。
治外法権なのだ。
『安保』と呼ばれるモノの実態が横須賀という街に来れば理解出来るのかも知れない。
大藪春彦の原作はベトナム戦争開戦直前の横須賀が重要な舞台となっている。
小説はその辺の雰囲気を詳細に描写しているが優作版では舞台は現在(1979年当時)となっている為、描写は抑えられている。大藪春彦は無国籍を標榜しており、主人公も名前こそ日本人だがその風貌は全てが南米の美青年であった。
内容も舞台がどこかという事はどうでもよかった。
そんな大藪にとって横須賀は作品の格好の舞台だったのだ。
大藪は韓国から、死ぬような思いをして辿り着いた日本が米軍基地に取り囲まれていった次第をどう見ていたのだろうか。
異国情緒という甘いイメージは無くリアルな異文化の交流があるのみ。
民族学の学者はこういう場所に来るほうがより真実に近い民族データを出せるのではないだろうか。
こういった空気を肌で感じている朝倉が民族学の分野に足を踏み入れていれば相当な権威になってノーベル賞くらい穫っているかも知れない。
 
■補足情報
ヌードダンサー役の黒人女性はドラマ『探偵物語』にも出演しています。

107 @kira 2013-02-26 08:43:08 [携帯]

劇場版での台詞
吉村『兄ィちゃん・・・悪いな・・・一緒に来てもらおうか・・・ここで騒いだっていいんだぜ?よォ?・・・立てっ!』
 
今野の指示通りカウンターで飲んでいる朝倉。
おかわりしようとした時、ある男に背後から拳銃を突きつけられる。海神組の吉村だ。
吉村を演じるのは山西道広。優作とは、デビュー作『太陽にほえろ!』第72話『海を撃て!ジーパン』で共演。その後も『俺たちの勲章』『殺人遊戯』『俺たちに墓はない』『処刑遊戯』『探偵物語』『野獣死すべし』『ヨコハマBJブルース』『探偵物語』と多くの作品で優作と共演している。
一緒に来るように言われるが余裕の表情の朝倉。吉村に騒ぐと言われ、渋々カウンターを離れる。
バーテンダーに胸ポケットから紙幣で支払いを済ませる朝倉。
今野が朝倉の事を話したのは明らかだ。朝倉絶体絶命!

108 @kira 2013-02-26 08:47:32 [携帯]

劇場版での台詞
吉村『来ました』
坂本『ふぅ~ん・・・こいつか?』
坂本『おい、調べろ』
野坂『へい』
野坂『これだけです』
坂本『こんだけ?これじゃお前、何にもわかりゃしねぇじゃねぇか』
坂本『オメエ、一体何者なんだ?おい!』
朝倉『俺はヤクが欲しいんだ』
坂本『ヤクぅ?!ふざけんなよ。そんなモノありゃあしねえ!』
坂本『俺が聞きてえのはな、オメエが一体何者だということなんだよ!』
朝倉『忘れたな・・・』
坂本『へっへっへっへっへっへ・・・・。おい、思い出させてやれ』
野坂『へい・・・名前から思い出してもらおうかァ?!』
野坂『・・・・いい度胸してんじゃねえか・・・』
吉村『出てこい!出てこーい、コノヤロウ!!』
 
吉村が案内した先には海神組幹部の坂本、用心棒の野坂、先程のチンピラ今野がいた。
野坂が朝倉をボディーチェック。
4対1。
しかも丸腰の朝倉。この危機を乗り越えられるのか。
海神組はヤクザでもチンピラに近い部類だろう。
毎度、構成員の連携プレーで麻薬目的の素人から金を巻き上げているのだろうか。
坂本があれこれ問いただすが終始無言で余裕の朝倉。朝倉のブーツにはワルサーPPKが忍ばせてある。
野坂がナイフで口を割らせよう朝倉の頬に当てた瞬間、足で野坂を蹴り倒し、反動で椅子から転げ落ち様に引き抜いたワルサーの銃弾を見舞う。
殺気立つ海神組。銃撃戦となるが、俊敏な朝倉の動きと、巧みな銃捌きによって絶叫に包まれたまま、一瞬にして坂本以外の構成員は射殺されてしまう。
ここで朝倉という男が大胆でありながら非常に用心深い性格である事がわかる。
自分に分がない内は感情を表に出さない。しかし勝利を確信するとその本性を現すのだ。
 
坂本を演じたのは、今井健二。
優作とは
『太陽にほえろ!』第96話『ボスひとり行く』、第110話『走れ!猟犬』。
『大都会PARTⅡ』第51話『北九州コネクション』
『殺人遊戯』
『蘇える金狼』
『探偵物語』第6話『失踪者の影』第24話『ダイヤモンド・パニック』
等で共演。
野坂を演じたのは、阿藤快。当時は『阿藤海』だった。
優作とは『最も危険な遊戯』『殺人遊戯』等、多数の作品で共演している。

109 @kira 2013-02-26 08:55:00 [携帯]

劇場版での台詞
坂本『う、撃つな、撃つな・・・・』
朝倉『だから最初に言ったろう!俺はヤクが欲しいんだよ!』
坂本『そ・・・そんなモンなんてありゃしねえよ・・・ないんだよ!ここには!』
朝倉『トボけんな!バックがいるだろ、バックが!!ええ?!死にてえのか?お前』
坂本『か・・海神組が・・・ヤクの取り引きしてんのは・・・・』
朝倉『誰だっ!』
坂本『ああ・・・市会議員の磯川だよぉ!!』
朝倉『市会議員の磯川?』
坂本『ああ!市議会でもそうとうの顔だ。おまけに県の公安委員までやってる・・・』
坂本『だから、誰も手は出せねえんだよ!あんただって・・・手なんか出せるハズねえんだい!』
朝倉『何処に住んでんだ?』
坂本『家か・・・・塚山公園のすぐそばだよ・・・でっけえ屋敷だから、行きゃあすぐわかるよ・・・』
坂本『一つ聞かしてくれ・・・あんた、一体、何者なんだよ・・・なあ、あんた、何を企んでんだ・・・ええ?!』
朝倉『聞きたい?』
坂本『聞きたい・・・・教えてくれ・・・』
朝倉『今日の夕刊、読んだ?』
坂本『ああ・・・』
朝倉『じゃあ、知ってるハズだ・・・ほら・・・今朝、共立銀行の現金運搬人が襲われた事件。あの記事だよ、知ってんだろ・・・』
坂本『あ!あれ、あんたか!』
朝倉『ああ、俺がやった・・・一億円盗んだのも、この俺だ』
坂本『い、一億・・・』
朝倉『ところがねェ・・・その金のナンバーが全部控えられててなァ・・・使いたくてもヤバくて使えねえってワケだよ・・・』
坂本『ま、待ってくれ!』
朝倉『ま、そこで、俺は考えたんだよ・・・まずそのヤバイ金を、一旦、安全なヘロインに替えた方が・・・いいんじゃないかと思ってサ・・・』
坂本『まっ、待ってくれっ!あんた・・・全部しゃべり終わったら・・・俺を・・・バラす気だろ・・・』
朝倉『その通り!』
朝倉『要するにだっ!俺はヤクなんて、どうでもいいんだよ・・・金が欲しいんだよっ!だから、お前も最初から下手なマネしなけりゃ、こんな風にはならなかったんだよっ!』
坂本『わ、わかった・・・・撃つな・・・た、頼む・・・・お願いだ・・・殺さないで・・・』
朝倉『ダメ・・・ダ~メ』
坂本『頼むよぉ・・・』
朝倉『女房、子供、いるのか』
坂本『いる・・・いるいる!い~っぱい、いるんだ!』
朝倉『じゃ、死んだ方が幸せになれるよ』
坂本『そんなこたぁねえよぉ!』

110 @kira 2013-02-26 08:56:23 [携帯]

坂本を追い詰めた朝倉は麻薬の取引先を訊ねる。
坂本が語ったのは、麻薬ルートは市会議員という驚愕の事実だった。
そして坂本は、『あんた、何者なんだ』という禁断の一言を発する。
朝倉は、今朝の一億円強奪犯人が自分だと明かす。この瞬間に坂本の生存確率は、格段に下がった。
更に朝倉は、銃口を向けながら自らの野望を語り出す。
劇場版では変更されたが、脚本では東和油脂を乗っ取り、社長令嬢との結婚まで語っている。
坂本からすれば、知りたがった男の正体を、自分に銃口を向けながら笑いもせずに語る朝倉はこの上ない恐怖だろう。
それは、坂本を射殺する前提で話しているからだ
それに気づいた坂本は、話を遮ろうとするが朝倉は止めようとしない。
最後まで語り終えた朝倉は
 
そして朝倉は冷徹に坂本の腹に銃弾を撃ち込む。
酷い男だねぇ、朝倉。家族の有無を確認してから撃つなんて。しかし、こういう描写に我々市民がカタルシスを感じるのだ。
おわかりだろうけど朝倉は最初から海神組の連中を殺す気だよね。チンピラのとどめを刺さなかったのもその為である。
海神組から磯川に報告されれば朝倉の計画は水泡に帰してしまうのだ。己の野望を邪魔する者には容赦しないのが朝倉の掟だ。
 
松田優作と今井健二の遣り取りは何度観ても秀逸だ。
アドリブも交えて悪人対悪人の会話を恐ろしくも可笑しく演じている。
今井氏、自分で素性を訊いていながら全部喋ったらバラす気だろうって、そりゃそうだよ。
悪人を悪人らしく演じるというのは意外と難しい。誰が観てもこの役は悪いと思える演技が出来る俳優は少ない。それがステレオタイプの演技でなければ尚更である。最近は悪人ぽくない俳優が悪人ぽくない芝居をするのが流行りだが意外性を狙っただけの俳優の力量不足の言い訳みたいだ。
俳優とは映画という料理の素材である。肉・魚・野菜がそれぞれの持ち味を出さなければ料理自体がぼんやりとした物になってしまう。素材が水準値でもそれなりの料理は出来るがずば抜けて良かった場合は料理のイメージすら変えてしまうかも知れない。こういうおふざけ芝居の応酬がシーンを一層味わい深いモノにしている。
 
よく『【探偵物語】みたいのやりたいッスね~』とか言ってて出来ると思ってる若手の俳優さんいますがホントに出来るんスかねぇ。

111 @kira 2013-02-26 09:02:34 [携帯]

シーン22
 
朝倉が車を盗むシークエンス。
劇場版ではカットされたが、大藪春彦の小説には頻繁に描かれるシーンだ。
まるで、車は買うモノではない。奪うモノだとでも思っているようだ。否、思っているな。
このあたりは、欧米のハードボイルド小説とは決定的に違うところだ。
海外のハードボイルド小説の主人公は、私立探偵を生業としている場合が多い。
仕事をして、賃金を稼ぐ人間が車を盗むというのは、筋が通らない。
一方、大藪作品の主人公は犯罪者である事が多い。だから、車を盗む描写も、違和感なく読めるのだ。
日本のハードボイルド小説は、大藪春彦に端を発して、独自の進化を辿って行った。
私は、大藪春彦をハードボイルドと呼ぶのは常に違和感を感じている。
通常、ハードボイルド小説の主人公は直面する困難に対して忍耐強く、孤独に解決して行く。謂わば、『痩せ我慢』の美学が信条である。
しかし、大藪作品の主人公は大抵の場合、我慢というものをしない。自分の欲望に忠実であり、それをしない事こそ、彼らが最も軽蔑する事だ。
私は、大藪春彦はハードボイルドではなく、ノワールだと考える。
日本人はハードボイルドを基本的には理解していない。
ハードボイルドを理解出来ていたなら、現在をように廃れる事はなかっただろう。
優作も『探偵物語』の中で『日本のハードボイルドに夜明けは、何時来るんでしょうかね。小鷹信光さん』と嘆いていたっけ。
現在では、男を標榜している連中すら(だからこそ)ピアスをしているオカマになっちゃったんだから、どう仕様もないが。
最早、美学なんて言葉自体が何の意味すら持っていないのだ。

112 @kira 2013-02-26 09:04:04 [携帯]

白のマセラティ・メラクがやって来る。
乗っているのは朝倉。仕事はどうした。勿論、盗難車だ。大藪春彦の世界では車は基本的に盗む物だ。
朝倉が階上を睨む。
実はこのシーンも巧みな編集の賜物である。
松田優作は当時は運転免許を所持していなかった。
でも運転してるじゃないか。
それが映画のマジックなのだ。
最初にマセラティが走っているシーンはスタントである。そしてマンションの前で停車。これもスタント。
そして朝倉が降りる。
あれ、どこで乗り換えたの?
朝倉が降りるシーンの前に1カット挿入されているのだ。この1カットのお陰で我々は優作がマセラティを運転していたと思わせられていたのである。
これが最悪な編集だと停車したシーンの直後に降りるシーンを繋げてしまう。粒子が違うから素人が見ても違和感を感じる。

113 @kira 2013-02-26 09:08:46 [携帯]

劇場版の台詞
小泉『京子・・・重役会議があるんで、どうしても社に戻らなくちゃならないんだよ・・・な・・・』
小泉『また・・・明日、来るから・・・』
 
が見ても違和感を感じる。
 
7階の一室では東和油脂経理部長・小泉が愛人と密会していた。
愛人の名は永井京子。
クラブホステスをしており、小泉に囲われている。このマンションも小泉が東和油脂から横領した金で買った物だろうか。
 
表では朝倉が車で煙草にヘロインを混ぜながら様子を窺っている。
 
京子がゴルフバッグを抱えて出て来た。
劇場版の台詞
待たせていたタクシーに乗り込む。
 
京子『成城・・・』
運転手『はい』
 
タクシーの発進に前野曜子の軽快な曲『俺に墓はいらない』が被さる。

114 @kira 2013-02-26 09:09:53 [携帯]


366 x 664
Your day breaks, your heart aches There's nothing left to do It's all blown away Rain falls on phone calls Who's listening to you There's no-one to say Hum hum hum Well, It's all right, It's all right You won't feel so down too long Another change, He feels the same No-one's to blame, we both should sing I didn't really mean it, Oh No No No To make you cry I didn't really mean it, Oh No No No To make you cry I didn't really mean it, Oh No No No Don't say bye-bye Ah, ha ha . ha ha The sun shines, but your minds A million miles away You're all on your own Believing, He's leaving Was such a shock to take And now I'm all alone Hum hum hum Well, It's all right, It's all right There's no-one 'bout to die He feels the pain, about the same No-one's to blame, we both should sing
 
華麗なフォームでボールを打つ京子。
京子から見える場所に立つ朝倉。
何やら野球と勘違いしている感じのフォーム。
打ったと思ったらクラブがすっぽ抜けてグリーンに。
慌ててクラブを取りに行く浅倉。
 
ここで永井京子の腋に注目したい。
なんと腋毛を生やしている。
これは役柄に合わせて生やしたのか、それとも風吹ジュンが当時生やしていたものなのか。判断しづらい所だ。
ただこの時期に彼女はヌード写真集を発表している。
だからその名残という可能性がある。

115 @kira 2013-02-26 09:11:00 [携帯]

戻ると朝倉は上着を脱いで今度は京子の後方に立つ。京子の美しいスイングに見とれる朝倉。
京子、朝倉の視線を意識。
朝倉、気を取り直して打つ。しかし、またもやクラブがすっぽ抜ける。
クラブを拾い頭を下げる朝倉。
笑顔の京子。
彼女の関心を引く事に成功したみたいだ。
 
作品にはないが台本にはこの後、朝倉が京子にコーチを依頼するシークエンスがある。

116 @kira 2013-02-26 09:21:17 [携帯]


400 x 720
劇場版の台詞
朝倉『どうぞ・・・これはマオタイ酒といいましてね・・・まぁ、言ってみれば食前酒です・・・じゃあ、乾杯』
朝倉『僕は堀田修平と言います。株屋やってます。あなたは?』
京子『私は永井京子・・・・堀田さん、お食事だけって約束よ。名前だけでそれ以上のことは詮索しないことにしましょ、お互いのために・・・』
朝倉『そうですね・・・わかりました』
京子『ちょっと失礼・・・』
 
朝倉『これがねえ、中々おいしいんですよ。中々ないんですよね、熊の手のスライス・・・』
朝倉『不思議な味でしょ?』
京子『ん・・・・・・・』
朝倉『あ、そうだ、これがいいんだなあ・・・これがおいしいんですよ。蛇の卵に、たしか・・・牛や豚のペニスをね・・・刻み込んであるんですよ』
京子『ふふふ・・・』
朝倉『・・・・・・・・・・・・』
京子『あ・・・やだ・・・ごめんなさい・・・』
朝倉『大丈夫ですか?』
京子『私・・・ちょっと・・・ヘンみたい・・・』
京子『私・・・ヘンかしら・・・』

117 @kira 2013-02-26 09:22:48 [携帯]


366 x 664
横浜の中国料理店の個室で朝倉と京子が食事している。
馴れ馴れしい朝倉に対し、警戒する京子。
これが、フランス料理やイタリア料理だったらカッコつけんなと思うが中国料理は妥当な選択だと思う。
朝倉は、小泉の愛人である京子と親密になりたくて接近しているのだ。しかし、フランス料理やイタリア料理だと基本的にはテーブルを挟んで向かい合って座る。これでは、朝倉の目的達成は難しい。その点、中国料理の円卓ならば、隣の席に座っても不自然さはない。親密度は増すだろう。中国料理はデートに効果的かも知れない。
朝倉には時間がない。何度もデートを重ねて、京子と愛を育む事が目的ではなく、あくまで東和油脂乗っ取りへの足掛かりに過ぎない。
京子がトイレで席を外した隙に、京子のグラスとビール瓶にヘロインを混ぜる。
戻った京子は、食事を摂りながら次第に瞳が異常な輝きを帯びてくる。
炎を見つめる京子の指が近づく。止める朝倉。ヘロインが効いてくる。
この炎は京子の心理状態を表しているのだろう。
このまま小泉の愛人を続けるのか、突然現れた朝倉に走るのか。
しかし、京子には判断する権利は与えられていない。
朝倉が混ぜたヘロインによって抗えなくなっているからだ。
朝倉には時間がない為、こういう手っ取り早い手段を使っている。
しかし、朝倉が野望を抱かなかったら。京子が小泉の愛人でなかったら二人は出会う事すらなかっただろう。
この時、既に二人は抵抗出来ない運命に操られていたのかも知れない。
ところで、朝倉と京子が食べる料理がすごく気になるのだ。
メニューにはないスペシャル料理で、蛇の卵、熊の掌、スッポン、牛や豚のペニスと枸杞の煮物などが混ざっていて、スープにはエジプトから輸入したゼニアオイ科の植物が刻み込まれている。いったい、どんな味なのか。食べたらスゴい事になりそうだ。
 
朝倉は、京子を抱えて中国料理店を出る。

118 @kira 2013-02-26 09:39:58 [携帯]


1067 x 610
劇場版の台詞
ボーイ『いらっしゃいませ』
朝倉『車、頼むぞ』
ボーイ『はい、かしこまりました』
 
シーン30
ホテルの中へ消えて行く朝倉と京子。
 
劇場版の台詞
京子『私・・・こんな気持ちになったの初めてだわ・・・。ずーっと、一緒にいたいな・・・』
朝倉『俺もだ』
京子『どうせわかってしまうことだから言ってしまうけど・・・私は、ある男の二号なの・・・お金だけよ・・・怒った?』
朝倉『別に・・・』
京子『今度、いつ会えるのかな・・・』
朝倉『俺も会いたいし・・・俺の方から電話するよ』
京子『私・・・悪い女?』
朝倉『かわいい女だ』
 
シーン31
裸になった京子が朝倉に抱きつく。
京子を抱き上げ、ベッドへ運ぶ。
ベッドの上でネッキングに耽る朝倉と京子。
京子の背後から、乳房を愛撫する朝倉。
場所をシャワールームに移して、セックスに興じる朝倉と京子。
夜が白みかけた頃、朝食を摂りながら尚も京子を背後から責め続ける朝倉。
 
脚本では台詞があるが、完成作品ではひたすら朝倉と京子のセックスを追っている。
 
朝倉と京子のファックシーンは、『蘇える金狼』でもハイライトのひとつと言えるだろう。
このあたりは日活ロマンポルノでデビューした村川監督の本領発揮だろう。
そして、特筆すべきは何と言っても風吹ジュンの体当たり演技だろう。
彼女の美しい肢体はヒロインとして役割を十分に果たしている。そして、この作品でそれまでのアイドル的イメージからの路線変更に見事に成功している。
邦画の濡れ場は紗が掛かったり、美しいだけだったりと嘘が多いが本作の濡れ場は、誇張や虚飾のない素晴らしいシーンである。

119 @kira 2013-02-26 09:41:50 [携帯]


338 x 590
『蘇える金狼』ファックシーン推考
 
松田優作と風吹ジュンが演じたファックシーンは今や伝説になっている名シーンである。
その過激さはもとより、リアルな描写はそれまでの邦画での濡れ場を蹴散らしたと言えよう。
好きな濡れ場の10本の中に入れる方も多いだろう。
 
男性なら一度は朝倉のように何時間も女性をセックスの虜にしたいと考えるだろう。だが現実には不可能である。
これほどの持続力を維持するには格闘家レベルの体力と長距離ランナーレベルのスタミナが必要である。
 
①まず、我々の技術が追いつかない。セックスとは花火のようなモノである。一瞬にして消え去るからこそ美しい。それを長時間行うには相手を飽きさせない技が不可欠である。しかし、実際には時間が経過する程、そんな余裕はなくなる筈だ。『否、俺は違うよ』という方もいるだろうが相手は大変だろうと思われます。
②次に相手の女性について。セックスしている相手が何時間もそんな行為に及んでいると『私ってそんなに魅力ないの』とノイローゼになるかも知れません。それに炎症の原因になり、苦痛や痛みで継続どころではないでしょう。
③そして最後に相性の問題。これほど長時間事に及んで尚且つ、快感を感じる相手とは最早ベストパートナーと言っても過言ではありません。絶対手放さないように。そうでなかった場合どちらかが相当な苦痛を感じています。
 
食事をしながらなんて事も相手に対して失礼ですよ。
 
これらの描写はファンタジーである。
否、もはやコミックである。
『ドラゴンボール』が好きだからと言ってスーパーサイヤ人になろうと思う読者はいないだろう。
これらを娯楽として楽しみ、自分の生活とは切り離して自分のスケールに合った行動を執る事が快適な人生を送れる秘訣です。

120 @kira 2013-02-26 09:47:06 [携帯]


965 x 800
『風吹ジュン代役疑惑』
 
これは私が以前から個人的に思っていた事だがファックシーンでの風吹ジュンは実は代役だったのではないかという疑いだ。
何故、こんな考えを抱くようになったかと言うとこのシーンには色々と不自然なカットがあるからだ。
風吹ジュン本人が演じているなら随分と勿体ない撮り方をしていると感じるカットが多い。以下にその理由を列挙してみよう。
 
①手前から優作に向かって全裸で抱きつくシーン。
本人なら何故顔が確認出来るカットを入れないのか。確かにあのお尻は風吹ジュンのヌード写真と似ているが疑いの残る所だ。
②優作に抱かれてベッドルームへ移動するが暗すぎて本人なのか確認しづらい。胸を露出させた女性は風吹ジュンに似ている。しかし似た顔の代役であれば我々には判断出来まい。
③胸のアップ。しかし肝心の首から上。顔が写されていないのだ。仮に本人ならばサービスカットであるが。
④優作に跨る風吹ジュン。だがこれも顔が確認出来ない。せめて横を向くカットがあれば風吹ジュンと確信出来たかも知れない。
⑤有名な食事をしながらの後背位のカット。ここに来てようやく画面が明るくなった。しかも間違いなく風吹ジュンである!しかし残念ながら胸は見えない。まさかその為にベッドの前に皿やグラスを置いたのか!
 
以上が私が代役ではと疑惑を抱いている理由である。
なんというか都合の良いカットが多すぎるのだ。
本当に本人なら明るい照明で全身を撮ったカットがあっても良いんじゃないと言いたくなる。
本人だと言えばそう見えるし、違うと言えばそうも見えてしまう。
おっぱい揺らしてる風吹ジュンを正面から捉えたカットがあればこんな気持ち悪さとおさらば出来るのに。
イメージチェンジの為に脱いだという体にしたというのだけは勘弁して貰いたい。
で、風吹ジュンさん。村川透さん。実際の所…どうなんですかねぇ。
こんな事言ってるのは私だけだし本人であって欲しい気持ちは同じである。 それはともかくとして、このシーンが日本映画史上稀に見る濡れ場の傑作である事は間違いない事実である。
将来的に技術が進歩してフィルムからDNA鑑定とか出来ないかなぁ。
ま、こういう事も本人が演じているからこそ言えるんだけど。

121 @kira 2013-02-26 09:55:59 [携帯]


366 x 664
ファックシーン①

122 @kira 2013-02-26 10:00:01 [携帯]


366 x 664
ファックシーン②

123 @kira 2013-02-26 10:01:08 [携帯]


366 x 664
ファックシーン③

124 @kira 2013-02-26 10:02:16 [携帯]


366 x 664
ファックシーン④

125 @kira 2013-02-26 10:03:26 [携帯]


366 x 664
ファックシーン⑤

126 @kira 2013-02-26 10:04:23 [携帯]


366 x 664
ファックシーン⑥

127 @kira 2013-02-26 10:05:29 [携帯]


366 x 664
ファックシーン⑦

128 @kira 2013-02-26 10:06:41 [携帯]


366 x 664
ファックシーン⑧

129 @kira 2013-02-26 10:07:38 [携帯]


366 x 664
ファックシーン⑨

130 @kira 2013-02-26 10:08:35 [携帯]


366 x 664
ファックシーン⑩

131 @kira 2013-02-26 10:09:25 [携帯]


366 x 664
ファックシーン⑪

132 @kira 2013-02-26 10:10:24 [携帯]


366 x 664
ファックシーン⑫

133 @kira 2013-02-26 10:11:30 [携帯]


366 x 664
ファックシーン⑬

134 @kira 2013-02-26 10:12:29 [携帯]


366 x 664
ファックシーン⑭

135 @kira 2013-02-26 10:19:11 [携帯]


631 x 880
『蘇える金狼』の女優たち①
 
真行寺君枝
 
■1959年9月24日生まれ
■東京都大田区出身
■身長 156cm 体重 43kg
■スリーサイズ B78cm W57cm H83cm
■血液型 AB型
■東京都立大崎高等学校卒業
 
1976年に資生堂秋のキャンペーン『ゆれる、まなざし』で本格デビュー。
以降、モデル・女優・アーティストとして、舞台・映画・テレビなどで活躍。

136 @kira 2013-02-26 10:25:59 [携帯]


740 x 1024
『蘇える金狼』の女優たち②
 
風吹ジュン
 
■本名『堀川麗子』
■1952年5月12日生まれ。
富山県婦負郡八尾町(現・富山市八尾町)生まれ。高岡市と京都府で育つ。
■血液型 B型
 
1973年に初代ユニチカマスコットガールに選ばれ、1974年には歌手デビューする。
そして1975年に女優デビュー。
寺内貫太郎一家2(1975年)では寺内節子役で人気を博した。
冬の運動会(1977年)や岸辺のアルバム(1977年)にも篠崎雅江(哀愁)役で出演。
当初は年齢を公表せず、『不思議ちゃん』的イメージで活動していた。
1978年の『火の鳥』では尾美としのり演じる12歳・ナギのガールフレンド(オロ)を同年輩という設定で見事に演じて評価を高めた。
一転、翌年の『蘇える金狼』では永井京子役を妖艶に演じ、松田優作との濃厚なラブシーンも話題になった。
これは、アイドルを脱却する為のイメージチェンジだったと思われる。
この時期に年齢詐称が発覚し、芸能界を干されていた事による芸能活動の限界を感じていた事も原因だろう。
また『無能の人』では日本アカデミー賞優秀助演女優賞などを受賞。
その後の『青の時代』や『はみだし刑事情熱系』などの演技も高く評価された。
長年、大正製薬のCM(ナロンエース)に出演していたことでも知られる。

137 @kira 2013-02-26 11:10:27 [携帯]


849 x 361
『蘇える金狼』の男優たち①
 
小池朝雄
 
1931年3月18日 - 1985年3月23日
代表作のひとつである『刑事コロンボ』など、洋画・海外ドラマの吹き替えも数多く担当した。
アニメ『あしたのジョー』のエンディング・テーマ『ジョーの子守唄』では歌手を務めた。
 
東京都出身。
東京都立青山高等学校を経て、1950年に文学座付属演劇研究所に入所。
『崑崙山の人々』で初舞台を踏んだ。
1963年の文学座分裂の際には、芥川比呂志、神山繁らと行動を共にし、福田恆存が創立した現代演劇協会附属・劇団雲の創設に参画。
1975年の雲の分裂時には芥川らと離れ、福田が新たに結成した劇団昴に参加、中心俳優として活躍した。
異様なオーバーアクションの怪優として映画、テレビに脇役として数多く出演。
『仁義なき戦い』シリーズ(1973年~1974年)を始めとする東映ヤクザ映画で印象を残すほか、勝新太郎にたいへん気に入られ、勝製作の映画、ドラマの常連でもあった。
また、石井輝男監督映画の常連でもあり、『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年)の悪のいれずみ師 辰蔵役など、常に怪しい役柄を熱演していた。
なお本人は、『よく考えてみると、ぼくのやりたいのは、全部、狂人なんだな』と語っていたという。
声優としても、洋画ではジーン・ハックマン、ピーター・フォークなどを持役とした。
特に『刑事コロンボ』は番組自体の大ヒットとともに、小池のアクの強い台詞回しも外国俳優の吹き替えとしては空前絶後ともいえる注目を集めた。
 
1985年3月23日、肺不全のため東京都中央区築地の国立がんセンターで死去。
54歳の若さだった。
ピーター・フォーク、ジーン・ハックマン等一部の役は石田太郎と受け継がれている。
 
松田優作とはドラマ『大都会PARTⅡ』角川映画『蘇える金狼』で共演している。

138 @kira 2013-02-26 13:11:24 [携帯]


250 x 350
『蘇える金狼』の男優たち②
 
成田 三樹夫
 
1935年1月31日 - 1990年4月9日
山形県酒田市生まれ。
山形県立酒田東高等学校卒業。
 
岸洋子とは中学校から酒田東高を通じて同級生であった。
東京大学に入学するが、中退し帰郷。
その後、山形大学人文学部英文学科に入学するが中退している。
1959年、俳優座養成所に第12期生として入所。
同期には松山英太郎、山本圭、中村敦夫らがいる。
1963年の卒業後は永田雅一の知己を得て大映と専属契約を結び、1964年に『殺られる前に殺れ』で映画デビュー。
1965年の『座頭市地獄旅』出演以降は勝新太郎や市川雷蔵の敵役を主に務め、悪役イメージが定着した。
大映退社後は東映を中心に活躍。
『仁義なき戦い』シリーズなど実録ヤクザ映画の常連となってからも、そのニヒルで鋭い眼光とドスの利いた声を活かした鬼気迫る演技で、唯一無二の個性を持つ悪役俳優として圧倒的な存在感を発揮した。
悪役を得意とするが芸域は幅広く、映画『ある殺し屋』(1967年、大映)では市川雷蔵の弟分役で準主役を演じ、テレビドラマ『土曜日の虎』(1966年 TBS)では社会悪と闘う私立探偵的な企業コンサルタント『津村公』役で主役を務めた。
この他、大河ドラマ『徳川家康』(1983年 NHK)では今川義元役、ドラマ『探偵物語』(1979年 日本テレビ)ではコミカルな刑事役、映画『蘇える金狼』(1979年 角川映画)では権力者に媚びへつらう管理職役などを好演。
時に軽薄、人間的な弱さもあり、しかしどことなく憎めないキャラクターも数多く演じている。
特に映画『柳生一族の陰謀』(1978年 東映)では、公家でありながら剣豪という異色の敵役・『烏丸少将文麿』を、これまでの重厚な演技とは一転させ声色を変えるなどして飄々と怪演。
烏丸少将文麿は同年のテレビドラマ版でも演じ、当り役となった。
松田優作が『最高の悪役だと思う』と語ったことがあり、『探偵物語』には松田に請われて出演。
このドラマで成田が演じた『服部刑事』のキャラクターは現在でも多くのファンに愛されており、松田演じる私立探偵・工藤俊作への『工藤ちゃ~ん』という呼びかけの声は彼の代名詞ともなった。

139 @kira 2013-02-26 13:12:57 [携帯]


594 x 855
成田三樹夫②
続いてのレギュラー出演作『サンキュー先生』(1980年 テレビ朝日)の教頭役でも、校長役の藤岡琢也と掛け合い漫才を演じるなど、1980年代からはコメディリリーフ的な役柄にも演技の幅を広げていた。
晩年はテレビのバラエティー番組にも出演していた。
『今夜は最高!』(日本テレビ系)にゲスト出演した際、司会のタモリらとのトークで『俺はもう生まれてこのかた、ずっと厄年だよ(笑)』『(テレビの前の妻に向けて)帰ったら、一発やるか?』等の発言をした。
1990年4月9日、胃癌のため東海大学医学部付属東京病院で死去。
55歳の若さだった。
亡くなる前年、成田は松田優作の葬儀に出席した際、インタビューで『人の命なんてものは、まったくあてになりませんな…』と、自らの死まで暗示させるようなコメントを残している。
その個性と演技力と迫力に魅せられた新しい世代のファンも多く、現在でも『ミッキー』の愛称で慕われている。
趣味は将棋と俳句で、没後に遺稿句集『鯨の目』が出版された。

140 @kira 2013-02-26 13:53:13 [携帯]


400 x 579
『蘇える金狼』の男優たち③
 
岩城滉一
 
■本名 岩城光一
■1951年3月21日生まれ
■東京都出身
■日本大学鶴ヶ丘高等学校・帝京大学経済学部卒
■血液型 A型
 
デビュー前は、舘ひろしとともに原宿・表参道を拠点にした硬派暴走族『クールス』を総括。
矢沢永吉がリーダーだったロックバンド『キャロル』の親衛隊として有名となった。
 デビューは1975年製作『新幹線大爆破』だが本格的なデビューは同年の『爆発!暴走族』だった。
 
優作とは公私共に親交が深かった。
共演作も多く、初共演は1977年の角川映画『人間の証明』で岩城は優作に射殺される役だった。
『俺たちに墓はない』1978年
『探偵物語』1979年 日本テレビ
『野獣死すべし』1980年
でも共演している。
 
何本かの主演作もあり独特の嗄れた声が印象的だが滑舌が悪いのでセリフがよく聞き取れない。
本作でもその滑舌の悪さを遺憾なく発揮してコメディリリーフ的役割を絶妙にこなしている。
現在の彼しか知らない人には新鮮だろう。
余談として萩原健一主演『前略おふくろ様』第2シーズンの最終回に彼が新入りの板前役で出演している。

141 @kira 2013-02-26 13:55:04 [携帯]


640 x 480
『蘇える金狼』の男優たち④
 
加藤健一
 
■1949年10月31日生まれ
■静岡県磐田市出身
■加藤健一事務所主宰
 青年座映画放送部所属
■文化庁芸術選奨文部大 臣新人賞(1989年)
 第11回読売演劇大賞優 秀男優賞受賞(2004年)
 文化庁芸術選奨文部科 学大臣賞(2004年)
 紫綬褒章(2007年)受章
 
高校卒業後、半年間のサラリーマン生活を経て劇団俳優小劇場の養成所に入所。
その後、劇団新芸を結成しその上演を続けつつ、劇団つかこうへい事務所の作品に出演していた。
1980年に一人芝居『審判』を上演するため加藤健一事務所を設立。
以降現在に至るまで年間3、4本のペースで東京都世田谷区の本多劇場を中心に公演を行い主役を演じ続けている。
また、1986年には加藤健一事務所俳優教室を開設し、若手俳優の育成にも力を入れている。
映画やテレビドラマなどの映像作品については、舞台の稽古のためにスケジュールが合わないなどの理由から最近は少なくなっているが、ドラマ『想い出づくり』映画『椿姫』などへの出演経験がある。
 
加藤健一と言えば真っ先に思い浮かぶのは『舞台俳優』と言うイメージだ。
そのキャリアのほとんどが舞台で占められている。『蘇える金狼』出演の経緯は経済的理由か個人的理由かは不明だが、優作も『夢家』という劇団で活動していたから何らかの親交があったのかも知れない。
角川映画ではその後『麻雀放浪記』に出演している。
個人的には金曜ドラマ『金曜日の妻たちへ』の出演が印象に残っている。

142 @kira 2013-02-26 14:03:42 [携帯]


418 x 594
『蘇える金狼』の男優たち⑤
 
久米明
 
本名 同じ
1924年2月8日
日本の男性俳優、声優、ナレーター。
東京都出身。
元日本大学芸術学部教授。
1992年紫綬褒章。
長男は帝京平成大学准教授スポーツ科学者・久米秀作、次男はミュージシャン・久米大作。※アナウンサーの久米宏とは無関係。
 
旧制麻布中学校、東京商科大学(現・一橋大学)卒業。
永井正(元三井ホーム社長)は中学の同級生学徒兵として敗戦を迎え、大学に復学後、俳優座によるゴーゴリ『検察官』に感銘を受け演劇研究会を立ち上げる。
1947年、木下順二、山本安英らと劇団『ぶどうの会』を結成。
以降も中心俳優として活躍するが、17年での同劇団の分裂・解散により、1964年に福田恆存主宰の現代演劇協会・劇団雲に入団。
その後、同協会内の劇団欅に移り、1976年からは劇団昴に所属する。知的な風貌で、弁護士や医師といった役柄も多い。
顔立ちが池田勇人元総理によく似ていたことから、映画『金環蝕』『不毛地帯』(共に山本薩夫監督)では、池田がモデルとなっている政府高官を演じ、更にNHK特集『日本の戦後』シリーズでは池田本人の役も演じている。
独特の語り口で声優としても活躍、ハンフリー・ボガートの吹き替えや、『日立ドキュメンタリー すばらしい世界旅行』などドキュメンタリー番組のナレーターとしても知られる。
1972年から日本大学藝術学部講師、1975年から同教授に就任。
1992年に紫綬褒章、1997年に勲四等旭日章を受章。

143 @kira 2013-02-26 14:06:02 [携帯]


320 x 480
『蘇える金狼』のゲスト①
 
角川春樹
 
1942年1月8日生まれ。
日本の実業家、映画監督、映画プロデューサー、俳人、冒険家。
角川春樹事務所会長兼社長、幻戯書房会長。
 
富山県中新川郡水橋町(現富山市)に生まれ、東京都杉並区に育つ。
父は角川書店の創業者の角川源義、母は富美子(旧姓鈴木)。
杉並第五小学校・天沼中学校から國學院久我山高等学校に進む。
高校在学中は剣道部に所属。早稲田大学史学科に受験し合格したが、國學院大學理事の地位にある父の懇願で國學院大學文学部に進学。
 
角川書店時代
1965年、角川書店入社。
1970年から映画『ある愛の詩』『いちご白書』の原作本を始めとして、洋画の原作やノベライゼーションを次々と刊行。
社長である父・源義の存命中は、信賞必罰を貫く父の方針のもと、社内での立場もかなり浮き沈みがあったというが、父の反対を押し切って出版に踏み切った『ある愛の詩』の成功が後継者の地位の確立に繋がっていく。
さらに当時は既に過去の作家となっていた横溝正史のブームを仕掛け、映画製作に乗り出すと、1970年代後半から1980年代にかけて、いわゆる角川映画で一世を風靡し、日本映画界の風雲児としてもてはやされた。
 
1983年頃までの角川映画全作品出演という快挙を成し遂げた唯一の人物。
当然である。彼が製作して、自分で出るというのだから。誰が拒否出来よう。
その演技力の低さには定評があり、出演シーンにおいて観客を興醒めさせる魔力を秘めている。
しかも通行人Aなどではなく役名もついたセリフのある出演が多い。
ヒッチコックはエキストラを使う余裕がなくて自身が出演しており、決してセリフなど喋る事はなかった。
本人は自身の演技をどう思っていたのか。また、共演した俳優たちはどんな思いで相手をしたのか。心中察するばかりだ。
さすがに80年代中頃からは出演が減ったがフィルムとは残るモノ。自分が好きな作品を観る度にガッカリさせるというトラウマを観客に与え続けている。
本作でもしっかりと松田優作と共演してセリフの遣り取りまでしている。
しかも何を言っているのか聞き取れない。
角川が去った後の優作がウンザリした表情に見えたのは私だけではないだろう。
ご安心を。
『野獣死すべし』にもしっかり出ております。

144 @kira 2013-02-26 14:18:07 [携帯]


352 x 640
ロケ地探偵団②
 
中国料理店>>46
 
朝倉と京子が行く中国料理店は横浜市中区山下町の横浜中華街大通りにある『同發新館』である。
 
中華菜館 同發は焼き物・乾物の店として明治に創業。
横浜中華街を代表する大型広東料理店として地元近郊の方々、横浜を訪れる観光の方々に親しまれている。
中華菜館 同發は横浜中華街に本館、別館、新館、売店がある。
 
名前の由来は、『お客様と共にあり、共に発展していきたい』から。
 
アットホームな雰囲気で、映画のような怪しい空気は一切ない。
朝倉と京子が食べていたスペシャルメニューは、存在せず映画のオリジナルである。

145 @kira 2013-02-26 14:19:35 [携帯]


410 x 711
ロケ地探偵団③
 
朝倉と京子が泊まるホテル外観>>47
 
中華料理店を出た後に、朝倉と京子が激しい夜を過ごすのは
『HOTEL OZ YOKOHAMA』
である。
 
落ち着いた外観と照明の点いた看板が印象に残る。
このホテルは、優作の『処刑遊戯』にも鳴海の標的、殺し屋の岡島が泊まるホテルとして登場。
松田優作と青木義朗が、ロビーで遭遇するシーンもあった。

146 @kira 2013-02-26 14:21:22 [携帯]


400 x 704
劇場版の台詞
 
京子『ねえ・・・あの煙草、もう残っていないの?』
朝倉『どうして?』
京子『あの煙草には、何か仕掛けがしてあるんでしょ・・・』
朝倉『・・・・・・』
京子『どんな?!』
朝倉『欲しい?』
朝倉『これ・・・この粉をね、煙草の先に少しつけると気分が良くなるんだよ・・・煙草は?』
京子『まさか、麻薬じゃないでしょうね・・・』
朝倉『まさか・・・(笑)清涼剤。大学の友人にね、物理学教室の助手がいるんだ。そいつから貰ってるんだ』
京子『それなら安心だわ』
朝倉『これは進呈するよ。ただし!3時間は間をあけないと身体に悪いってよ』
京子『大変だわ!』
朝倉『あわてんな・・・おそらくパパさんだろ、あんたの・・・』
朝倉『グラス、なおして』
朝倉『改めて電話するよ』
京子『待って!お願い、行かないで・・・』
 
京子『いらっしゃい・・・』
小泉『京子!!こんなに心配してたんだよ・・・一体、どこ行ってた?!ん・・・?変な匂いがするなあ・・・分かった!男と一緒だったんだな?!言いなさい!私がこんなに心配してたのに、若い男と楽しんでたろう!ええ?!言いなさい!言わないと・・・絞め殺してやる!』
京子『あなたに私が殺せるの?ベッドでも満足に殺せないくせに・・・』
小泉『男をここに引っ張り込んだんだな?まだどっかに隠れてるんだろう。畜生・・・よくもよくも・・・探し出してやる!』
小泉『泥棒猫!!出て来なさい!!』
京子『誰とも浮気なんかしてないわ・・・私はあなただけのモノよ・・・』
京子『いいわ、信用してもらえないなら、私、出て行く!』
小泉『京子!そんなこと言わないでくれ!ね、悪かった!お前の・・・いや、僕はね、キミのためだったら、会社だって、家庭だって、みんなこう、棄てても後悔しないと思ってるんだ!ホントだ!京子!悪かった!』

147 @kira 2013-02-26 14:26:58 [携帯]

シーン32
京子のマンションに、マセラティが止まる。
朝倉と京子が、出てくる。
今度は、京子から誘ったのだろう。
 
シーン33
朝倉が、京子の煙草にヘロインをつけてやる。
朝倉が、京子にヘロインを常用させる事に成功する描写と朝倉と京子の関係が進展した場面が描かれる。
おそらく、この時点で朝倉に京子への愛は芽生えていないだろう。
 
それより重要なのは、朝倉のセリフの中に初めて『僕の友人』という言葉が出て来る事だ。
この作品を既にご覧になっているならおわかりだろうが、この言葉はしばしば象徴的に使用される。友人とは、朝倉が創り出した架空の人物である。
この時点では京子を騙す為についた嘘なのだが、その友人が朝倉の中でどんどん大きな存在となり、最終的には自分でもその存在の真偽の判断が出来なくなって行く。
ラストで友人の正体が明かされるがそれが分かった時、朝倉の人間性が垣間見えてくるのかも知れない。
 そして特筆すべきはなんと言ってもベテラン俳優・成田三樹夫氏の怪演だろう。
小泉という人物を的確に捉え、かつ、成田三樹夫でなければ到底出来ないと思わせる芝居を、オーバーアクトでありながらもバランスのよい計算された演技で楽しませてくれる。
おそらく前日に、京子とケンカしたまま別れたので夜に再び訪れたら、京子がいなかったので心配したのだろう。
大企業の重役とは思えない狼狽ぶりが、ギャップも加わってなんとも言えない可笑しさを出している。
一転、怒りの矛先を京子に向けるが軽くあしらわれてしまうところに二人の関係が窺える。
いつも小悪魔な京子に振り回されているのだろう。
そして、京子に男の影を感じると嫉妬して、いるかどうかもわからない男に向かって威嚇するのだが、屁っ放り腰でなんとも頼りない。しかも何故かお姉口調である。
これが、朝倉が勝負を挑んでいる相手かと拍子抜けするほどだ。
ところが、『仁義なき戦い』では非常に怖いヤクザを演じているからこの人の演技の幅の広さに驚いてしまう。
成田氏と優作は、この後、『探偵物語』で共演する。
成田は、服部警部が好評で芸域が広がった。山西道広も同様である。
『ア・ホーマンス』のポール牧や石橋凌など、優作によって俳優として評価された人物は少なくない。
 
最後のマンション脱出のスタントは、優作自身がこなしている。

148 @kira 2013-02-26 14:36:14 [携帯]


416 x 720
清水絵理子
 
東和油脂社長・清水の末娘。
社長令嬢であり、朝倉の東和油脂乗っ取りという野望の象徴である。
映画では、台詞は一切なし。
終始、麗しい微笑を浮かべているのみ。
生きた人間というよりは、お嬢様という記号だけの存在だ。
原作では、単なるお嬢様ではなく、じゃじゃ馬的一面も覗かせる。
社長令嬢という、自分の境遇に窮屈さを感じていて、朝倉が自分を、外の世界へと連れ出してくれる存在だと考えている。
原作では絵理子が、朝倉の車に乗り込んで、朝倉とカーチェイスを繰り広げる場面がある。

149 @kira 2013-02-26 14:37:40 [携帯]


339 x 593
劇場版の台詞
 
朝倉『先ほどお電話しました、セントラルタイムスの仙川です』
朝倉『ああ・・・ショパンのノクターンですか・・・』
植木『よく、おわかりで・・・』
朝倉『いえいえいえ・・・』
朝倉『いやあ・・・ベンツにベンベーに、ベントレー・・・素晴らしい車のご趣味ですなあ・・・』
磯川『若造!新聞記者などと語りおって・・・ワシに何の用だ?』
朝倉『なるほど・・・さすが、磯川さん。お察しが早い・・・わかりました、じゃ、単刀直入に申し上げましょう』
朝倉『まとまった量のヤクが欲しい・・・ただし!妥当な値段でね』
磯川『ヤクとは何だ?』
朝倉『トボけて貰っちゃ困るなあ・・・ヤクとは麻薬のヤク、ヘロインのことだ』
磯川『帰れ、若造!悪いことは言わん』
朝倉『商売の話が終るまでは帰れませんな』
磯川『チンピラめ!後を振り向いてみろ、ゆっくりとだぞ・・・』

150 @kira 2013-02-26 14:47:06 [携帯]


319 x 500
磯川『ふっふっふっふっふっふっふ・・・・馬鹿者が・・・殺してやる!』
朝倉『そんなに簡単に俺を撃っていいのかね』
磯川『なんだとォ?』
朝倉『アンタんとこの部下は、ナリばかりはデカくても、銃に関しては全くのトウシロだねえ・・・』
朝倉『いいか、この距離からあの手の銃をブッ放せば、弾は完全に俺の身体を貫通して、アンタに当るんだよ』
朝倉『それにだ・・・俺の身体を貫通する時は、弾は炸裂しない・・・だから、まだ助かる見込みはある。ところが、アンタの身体に喰い込む時は、弾の潰れがひどいから、間違いなく即死だな』
磯川『冗談も休み休み言え!そう調子よくワシに当ってたまるか』
朝倉『無知だねェ・・・弾ってのはねぇ、一番抵抗の少ないところを抜ける性質があるんだ。俺が身体の向きをちょっと変えるだけで、アンタの心臓めがけて飛ばせることも出来るんだよ』
朝倉『試してみるかい?』
朝倉『撃ってみな!撃ってみなよ、おい!』
植木『こいつ!!』
植木『うがぁーっ!』
朝倉『動くんじゃねぇぞ!銃、降ろせ!』
朝倉『銃を降ろせ』
朝倉『弾倉、抜け!』
磯川『この男の言う通りに・・・』
朝倉『M70!ボルト外せ・・・カービン!薬室の弾抜け』
朝倉『前に出す!・・・倒せ!』
朝倉『ベートーベン!!続けるんだよ!』
朝倉『よし!さて・・・商談に入りますか』
磯川『ゼニのツラを拝ませてもらおうか・・・話はそれからだ』
朝倉『あせるんじゃないよ、今ここに持って来てない』
磯川『それじゃあ、話は終わりだ。ゼニを集めてから出直してくれ』
朝倉『額は一億円だ』
磯川『あぁ?!いくらだってぇ?!』
朝倉『額は一億円だ!そう簡単に持ち運びは出来ないんだよ』
朝倉『こんな取り引きはしょっちゅうだろ?アンタ』
磯川『それはそうじゃが・・・で?買い値は?』
朝倉『グラム六万』
磯川『お断りだなぁ!グラム十万で、いっくらでも買い手がある』
朝倉『七万五千。それ以上は出せんぞ』
磯川『・・・・・・よかろう』
朝倉『よし、時間と場所は俺が指定する。それまでアンタはブツを用意して待ってるんだ』
 
朝倉『時間は・・・今から3時間後。時間厳守だ・・・よろしく』
磯川『クソォ~・・・合図は例の通りだ!奴は手ごわいぞ・・・いいな!』

151 @kira 2013-02-26 14:48:22 [携帯]

シーン38
 
磯川邸での朝倉と磯川の対決は、見どころのひとつだ。
門前で朝倉が名乗る『セントラルタイムズの仙川』に反応した貴方。なかなか鋭い。
セントラルとは、優作が所属するセントラルアーツから、仙は撮影の仙元誠三、川は監督の村川透から取ったものだ。
朝倉は、偽装が成功したつもりで、芝居しているが磯川達は既にお見通しだ。
開き直った朝倉は、取り引きの話を切り出すが、海千山千の磯川には通用しない。
しかし、朝倉も度胸では負けない。
引き際が悪い朝倉に対して、磯川は奥の手を出す。
何と、朝倉の背後の壁が開くと、そこには銃を構えた用心棒が、朝倉に照準を合わせていた。
朝倉、絶体絶命のピンチ。
我々が朝倉なら、この状況をどう切り抜けるだろう。
冗談だと許しを乞い、退散するか。イチかバチか、磯川に飛びかかるか。いずれにせよ、用心棒に蜂の巣にされるのがオチだろう。
朝倉は弾道学を引き合いに出して、磯川に脅しをかける。
弾丸は、抵抗の少ないところを通る性質がある。だから、自分が体を動かすだけで磯川を殺す事が出来るのだと。
この映画を観た大半の観客は、朝倉の説はでっち上げの詭弁だと思った。
しかし、これが事実だったのだ。
第一次大戦中、ある兵隊目掛けて、敵が撃った弾丸が襲った。
弾は兵隊の頭部に到達。しかし、兵隊は掠り傷ひとつ負わなかった。
兵隊が被っていたヘルメットを脱ぐと、頭の周りを一周するような形で頭髪が禿げていたのだ。
つまり、弾道はヘルメットと頭の僅かな隙間を通って反対側から排出されたのである。
これは、史実である。
そして、大藪春彦の原作にもこの話が登場する。
ガンマニアや、大藪春彦ファンが寄って集って、このシーンを批判しているが、私から言わせれば、
『諸君、そんな程度でよくファンを自称しているな。もっと勉強したまえ』
である。
私は、ガンマニアでも大藪春彦マニアでもない。
それでも、『蘇える金狼』は面白いと断言出来る。
これ以上に面白い作品があるなら紹介して欲しい。
ディテールがどうの、銃考証がどうのと言ってみたところで詮無い事。
ピストルを撃てない国でグチャグチャ言ってないで、作品を単純に楽しめば良いのだ。

152 @kira 2013-02-26 14:53:02 [携帯]


416 x 720
と言ってみたものの朝倉の弾道学は、所詮は机上の空論、弾がどこへ跳んで行くかは文字通り、神のみぞ知る事だ。
しかし、野望を達成する為には、ハッタリを裏打ちする知識で『コイツなら、やるかも知れん』と磯川に信じ込ませなければならない。
ここで必要とされるのは精神力だ。
朝倉がふてぶてしく、余裕の態度で磯川に対峙するからこそ、この駆け引きが成立する訳である。
強靭な肉体、明晰な頭脳、不屈の精神力が朝倉の野望達成には不可欠なのだ。
 
このシーンは、磯川を演じた南原宏治の存在無くしてはありえない。
白髪の頭髪と髭に丹前姿に葉巻、顔は典型的な悪役メイク。年老いた獅子の如き風貌は、雑魚どもを萎縮させるに充分。劇画に出てくる悪人そのものだ。
何故、こんな男が議員に当選出来るのか不思議だ。
市議会議員が麻薬を密売していて、家には銃を構えた用心棒がいる。ここは本当に法治国家・日本なのか。
あんなデカい御屋敷に住むには、さぞかし悪い事いっぱいしてるんだろうなぁ。
 
悪役は映画にとって、なくてはならないものだ。
悪役がいる事で主人公の存在感が強くなる。悪役が悪く見えないと主人公の存在意義もなくなり、話もつまらなくなる。
まさしく、映画の出来は悪役次第と言える。
南原宏治のように、的確な悪役芝居が出来る俳優は尚更貴重である。しかも、2枚目である。さすがは大映のニューフェイス。
南原氏演じる磯川には、ひとかけらの善もない。それでいて、ユーモアも感じさせる演技は流石である。
南原氏は当時、52歳。しかし、どう見てもひと回りは老けて見える。
現在の若手俳優が、30年後にこんな演技は到底出来ないだろう。
南原氏は『赤い手裏剣』『拳銃は俺のパスポート』など、大藪春彦原作の映画に出演しており、大藪作品にも縁が深い。
惜しい事に既に故人である。
彼のような悪役がやれる俳優がどんどんいなくなってゆくのが寂しい…。
優作とは『太陽にほえろ!』『探偵物語』で共演している。

153 @kira 2013-02-26 14:54:19 [携帯]


400 x 720
シーン41
 
暗い部屋で、磯川との対決に備えて銃の手入れをする朝倉。
『遊戯シリーズ』でも、こんな描写があったが、一見地味なこういったシーンがたまらなく好きだ。
磯川からの電話に、取り引きの場所と時間を指定する朝倉。
自分が主導権を握る事で、取り引きする際のリスクを減らす作戦だ。
しかし、それで危険回避出来るなら映画は成立しない。
朝倉に一本取られた磯川が、苦虫を噛み潰したような表情で部下を指定場所へと向かわせる。横で植木が、朝倉に葉巻を押しつけられた左手をさすっているのも可笑しさに溢れている。
格闘技ファンなら、K‐1グランプリのレフェリー・猪狩元秀が、磯川の用心棒役で出演しているのも嬉しいところだろう。一体、どういう経緯で出演していたのか。友情出演なのか。

154 @kira 2013-02-26 14:59:25 [携帯]


404 x 720
シーン42
 
ボートに乗った朝倉が第二海保に、やって来る。
巌流島の決闘を想起させるシチュエーションだ。
ジャンプスーツにサングラスを掛けた朝倉は、接岸するとすぐさま、岩場を駆ける。
 
シーン43
 
地下道を抜けると、視界が広がった。
そこには、銃を手にした磯川の部下が数人、朝倉の到着を待ち構えていた!
朝倉は手始めに、堤防と屋上にいる男をパチンコで倒した。
相手に気づかれずに、一人一人確実に始末していく作戦だ。
見張りを倒した朝倉は、地下道を抜け出して島の中心部に向かう。
防壁に挟まれた道を行く朝倉。
途中の階段に外したサングラスを置き、上に。
下を歩く見張りに飛び降りざまに、ナイフで飛びかかる。
階段の上にいた男の胸にナイフを突き立てる。
階段をずり落ちながら、絶命した男の銃が暴発。
 
地下道を通り、遂に中心部に到達。しかし、無数の見張りが行く手を遮る。
朝倉は銃を構えて、強行突破を決行。
朝倉に感づいた部下が、機関銃で撃ってくる。疾走する朝倉の足許に跳弾。
砲台に迫って来る朝倉。
部下が一斉に撃ってくる。
とうとう、砲台に到達!
飛び出す男達。
砲台の上から銃を構える朝倉。
やって来た部下の頭部を撃つ。
砲台から降りて銃を構える朝倉。消える。
 
砲台下に来た朝倉は、男二人を連続して射殺。
落下する男。爆発。
砲台下から静かになった島を見渡す朝倉。

155 @kira 2013-02-26 15:00:38 [携帯]


400 x 704
劇場版の台詞
 
磯川『やぁ』
朝倉『総額で一億だ。確認してみろ』
植木『確かに』
磯川『そうか・・・では、今度はあんたの番だ』
磯川『な、なにをする!』
朝倉『動くんじゃない!』
磯川『・・・・・!』
朝倉『火、貸してやろうか?』
朝倉『合図だったらもっと気の利いた合図、考えんだな』
朝倉『お宅ンとこの部下だったら今頃昼寝の真っ最中だよ。』
朝倉『残念だったねぇ』
磯川『う・・・・・・』
朝倉『おい、蚊トンボ、こっちこい!そこのデクの棒、二人!!こっちこい』
朝倉『あんた、タヌキだねぇ、磯川さん』
朝倉『手、頭の上にあげろ』
磯川『ペ、ペ、ペイは・・・全部・・・純度の高い・・・本物だ・・・・・』
朝倉『信用してるよ』
植木『ウッ!』
『ウウッ!』
『ウッ・・・!』
磯川『金は・・・いらん・・・ま、ま、ま・・まだ・・・死にたくない・・・撃たんでくれ!』
朝倉『取り引きだ、金は払う。ま、せいぜい長生きするんだな』

156 @kira 2013-02-26 15:06:02 [携帯]


480 x 800
『蘇える金狼』の第二海堡のアクションは、総体的には非常にグレードが高い満足いく出来映えなのだが、それまでの優作主演作品と比較すると不満を感じる部分もある。
第二海堡のような広大な場所でのロケは、『遊戯シリーズ』にはなく新鮮だった。
優作のしなやかな肉体が、第二海堡で躍動するのを観るだけで映画として成立している。
映画的興奮を覚えるのだ。CGや3Dで感じるものではない。
優作の漲る気迫が、スクリーンから伝わって来る。最も充実していた時代の優作の最高のアクションが観れる事は至福の一語に尽きる。
この頃の優作は『新宿アウトロー ぶっとばせ』の原田芳雄にそっくり。
 
不満のほうは、朝倉と戦闘を繰り広げる磯川の部下だ。
演じるのは『野性軍団』という集団である。
『野性軍団』と言っても知る人は少ないはずだ。それもそのはず、彼らは俳優ではない。
角川春樹が団長を務める冒険家集団とでも言おうか。要するに角川春樹の遊び相手である。
そんな奴らが、この傑作シーンに出ているのだ。当然、演技は学芸会レベル、チンピラっぽいけど演技じゃなく地である。
普通は熟練のスタントマンがやるだろう。
通常ならば、絶対に有り得ない事が起こるのが角川映画である。

157 @kira 2013-02-26 15:07:33 [携帯]


480 x 800
『【第二海堡】戦闘シーン』について①
 
【脚本家・永原秀一の功績】
 
第二海堡における朝倉哲也と磯川の部下との戦闘シーンは作品の中でもハイライトと言って良いだろう。
白昼に人工島で繰り広げられる銃撃戦は劇場で鑑賞している我々に小気味良い爽快感を与えてくれる。
この銃撃戦が夜だと作品の印象が大幅に変わってしまうだろう。
このシーンは大藪春彦の原作にはない。
『蘇える金狼』はこの他に劇場版(真木蔵人)とドに劇場版(真木蔵人)とドラマ版(香取慎吾)が製作されているがどちらにもこのようなシーンはない。
原作では横浜の倉庫街での戦闘シーンが描写されている。
他の作品でも同じく倉庫での銃撃戦である。
原作の描写に忠実に映像化しており、第二海堡は松田優作版のオリジナルである。
どういう事なのかというと
>>52
>>53で掲載したシナリオと劇場版とを見れば分かるように脚本家の永原秀一の資質によるところが大きい。
永原氏は松田優作・村川透とは『大都会PARTⅡ』『最も危険な遊戯』で組んでいる。
芸術祭にノミネートされた第3話『白昼の狂騒』も永原氏の脚本である。
優作とは『太陽にほえろ!』でも一緒に仕事をしている。
日活アクションでデビューした彼はハードボイルドを踏襲したアクション指向であった。
『拳銃は俺のパスポート』等、大藪春彦原作の脚本も手掛けている。
『大都会』シリーズのメインライターだった永原氏は同じくメインライターで人間ドラマ重視の倉本聰氏と作品の解釈で対立している。
永原氏の脚本にはハードボイルドを押さえながらも突き抜けた明るさがある。
優作の『遊戯』シリーズでも彼が脚本を書いた『最も危険な遊戯』はライトテイストで独特のユーモアが突出していた。
本作も他の脚本家ならば重苦しくなりがちな題材を、軽妙に料理して、一級の娯楽作品に仕上げている。

158 @kira 2013-02-26 18:10:04 [携帯]


480 x 800
『【第二海堡】戦闘シーン』について②
 
【脚本と劇場版の変更点】
 
しかしながら、シナリオ>>52>>53と実際の作品では明らかに改変がなされている。
シナリオではアクションシーンにおいてもある種のユーモアを湛えているが映画ではかなりハードでアクティブに変更されている。
アクション作品という括りで語られる作品の割に優作のアクションが少ない『蘇える金狼』では、輝きを放っているシーンだと言えよう。
優作ファンならこのシーンが『遊戯』シリーズを踏襲している事は一目瞭然である。
『遊戯』シリーズのアクションの特徴といえば、
 
①編集なしの長回し撮影
 
②ハンディカメラによる移動撮影
 
③常に優作をフレームに捕らえる
 
というものだ。
これがあるからこそ『遊戯』シリーズは大ヒットを記録し、アクション映画の傑作として現在も賞賛されている。
だが、『蘇える金狼』では若干、趣が違うようだ。
長回しのアクションシーンが醍醐味だった『遊戯』シリーズだが『蘇える金狼』では一見、長回し風ではあるが巧妙に編集が加えられている。
『遊戯』シリーズは、低予算で製作していた為に撮影日数も少なく、きめ細かな撮影が出来なかった。苦肉の策である長回しが逆にフィルムに緊張感を与え、成功した訳だが角川映画は予算も製作日数も潤沢にあるのでわざわざ、そんな事をする必要はない。
しかし、撮影スタッフもあの手法がベストである事は承知している。
だから、敢えてカットごとに撮影したフィルムを長回し風に編集して、『遊戯』シリーズのテイストを継承したのだ。
劇中では優作を追うハンディカメラが塹壕に入ると証明がない為に数秒間は真っ暗な画面が続いたりしているが、これも意図的に撮影していると思われる。
それが却って、リアリズムを生み出している事がわかるだろう。

159 @kira 2013-02-26 18:11:44 [携帯]


400 x 300
『蘇える金狼』の男優たち⑥
 
今井 健二
 
1932年3月31日生まれ。
神奈川県出身。
本名およびデビュー時の芸名は『今井俊一』、旧芸名は『今井俊二』。
 
1955年、ニューフェイス第二期生として東映に入社。
同期には高倉健がいる。
東映東京の現代劇作品を中心に、ニュー東映のアクション映画でも活躍した。
もともとは二枚目のスター候補だったが、1960年代からは悪役としてブレイク。
ヤクザ映画をはじめ、刑事ドラマや時代劇、特撮など、様々なジャンルの作品でアクの強い個性を発揮した。
近年は時代劇の舞台公演などで活躍。
日本を代表する悪役俳優の一人である。
趣味は釣り。
 
松田優作とは、
『太陽にほえろ!』
『大都会PARTⅡ』
『殺人遊戯』(1978年 東映)
『蘇える金狼』)1979年 東映)
『探偵物語』
『薔薇の標的』(1980年 東映)
で共演している。

160 @kira 2013-02-26 18:16:51 [携帯]


245 x 307
『蘇える金狼』の男優たち⑦
 
山西 道広
 
1948年3月7日生まれ。
兵庫県出身。
血液型O型。
本名同じ。
 
日本大学卒。
文学座研究所12期生。
同期に松田優作、阿川泰子らがいる。
1973年、『太陽にほえろ』第65話に学生役で出演しデビュー。
以降は、松田優作の盟友として、松田主演の映画、テレビ作品のほとんどに助演している。
松田優作のアルバム『Uターン』『まつりうた』などで作曲も手掛けた。
演じたキャラクターでは『探偵物語』の『松本刑事』、『あぶない刑事』シリーズの『吉井刑事』(通称『パパさん』)などが知られる。
現在もテレビ、舞台を中心に活躍中。
2006年まで阿佐ヶ谷駅近くで飲食店『クヨクヨハウス』の店主をしていた。
現在では息子が引き継いでいる。
漫画家の福谷たかしは生前、同店の常連客であり、代表作『独身アパートどくだみ荘』の背景に店の看板が描かれることもあった。
また、宮崎克(宮崎まさる)・高岩ヨシヒロ『松田優作物語』、羊崎文移『暗闇の用心棒』などでも店のエピソードが描かれている。
近年は神奈川県・葉山町に在住し、飲食店『山ふく』を経営している。
 
松田優作とは、
『太陽にほえろ!』
『赤い迷路』
『俺たちの勲章』
『大都会PARTⅡ』
『最も危険な遊戯』(1978年 東映)
『殺人遊戯』(1978年 東映)
『乱れからくり』(1979年 東宝)
『俺達に墓はない』(1979年 東映)
『蘇える金狼』(1979年 東映)
『探偵物語』
『処刑遊戯』(1979年 東映)
『レイプハンター 狙われた女』(1979年 にっかつ)
『薔薇の標的』(1980年 東映)
『野獣死すべし』(1980年 東映)
『ヨコハマBJブルース』
『春が来た』
『探偵物語』(1983年 東映)
『華麗なる追跡』
で共演している。

161 @kira 2013-02-26 18:18:22 [携帯]


375 x 541
『蘇える金狼』の男優たち』⑧
 
阿藤 快
 
1946年11月14日生まれ。
俳優・タレント。
旧芸名は『阿藤 「海」』、本名は『阿藤 「公一」』。
神奈川県小田原市出身。
有限会社さいど事務所所属。
 
中学時代は野球に熱中。
神奈川県立西湘高等学校に入学するが、高校に野球部がなかった為2年時に退学。
その後、野球部名門校の編入試験を受験するも不合格になり、西湘高校に復学した。
卒業後は、東京都立大学法学部第二部(夜間部)に入学。
学生時代は弁護士を志し司法試験の勉強に勤しむが、2年次にドイツ語の単位が足らず断念。
在学中に、劇団の俳優座養成所に加入したことをきっかけに役者を目指すようになった。
養成所に在籍し、東京都立大学卒業後の10年間は悪役専門で役者を続けた。
グルメ番組でのリポーター・旅番組での案内役もする。
また、出身地である小田原市が主催する小田原映画祭の実行委員を第1回(2005年)より務め、第2回(2007年)には実行委員長も務める。
 
血液型はA型。
座右の銘は『一日一生』。
長年煙草を吸っていたが、最近某通販の離煙パイプにより禁煙。
競馬が大好きなため、それが高じて競馬の関連書籍も執筆している。関西テレビのバラエティー番組『たかじん胸いっぱい』にゲスト出演した際、同局のアナウンサー馬場鉄志に数々のGIレースの実況を再現してもらい、感激していた。
テレビ番組や映画への出演のほか、『ぶらり途中下車の旅』の旅人役で出演していることでも知られている。
雑誌の取材にてインタビューした姓名判断士の助言により、『海』より『快』に改名。
女優の加藤あいと名前が似ていることから、『タモリ倶楽部』で『24人の加藤あい』に対して『24人の阿藤海』という企画が作られた際、この放送より阿藤『快』としての活動を開始した。
『なんだかなー』が口癖。
このフレーズは、険悪な現場を和ませるために言うようになったものである。
このように気さくな性格であるためか、『芸能界で最もいい人』との称号を受けることもある。

162 @kira 2013-02-26 18:24:56 [携帯]


1024 x 768
『蘇える金狼』の男優たち⑨
 
南原 宏治
 
1927年6月7日 - 2001年12月20日
神奈川県横浜市出身。
■本名 伍井 卯和二(旧姓 則竹)。
 
東京大学農学部中退後、1951年にスポーツニッポン社主催の『ミスターニッポンコンテスト』に入賞し、第6期ニュイフェースとして大映入り。
一般公募により、『船上爽』なる芸名でデビューした。
1954年から『南原伸二』の芸名で東映に移籍。
1957年に独立映画の『異母兄弟』に出演したことが原因で五社協定問題となり東映を離れ、松竹、現代演劇協会・劇団欅を経てフリーとなる。
1960年、芸名を『南原宏治』に改める。
フリー以降も各社の映画やテレビドラマにて、主に個性的な悪役として活躍した。
政界のフィクサーや暴力団の大ボスなど重厚な巨悪を演じる一方、映画『修羅雪姫_怨み恋歌』における聾唖の殺し屋“蜍”、テレビ時代劇『風』の怪剣士“野ざらし主膳”など、常軌を逸した狂気的な敵役も数多く怪演。
アクの強い特異な個性で強烈な存在感を見せた。
1980年には劇団『天地劇』を創設。
演出家として『瞼の母』『嵐が丘』などの舞台を手掛け、後進の育成・指導にも尽力した。
後年、宗教法人幸福の科学の会員となり本部職員・講師を務めた。
1990年代前半には伝道部長として同教団の勧誘活動における旗振り役となり、教団総裁の大川隆法が製作・総指揮したPR映画にも出演している。
2001年12月20日、東京都調布市の病院にて心不全のため74歳で死去。
私生活では宝塚歌劇団出身で女優の上月左知子と結婚、二男一女を授かるも性格の不一致により後年離婚。尚、娘が宝塚歌劇団・元月組副組長の嘉月絵理、息子のひとりも俳優の南原健朗として、芸能活動をしている。

163 @kira 2013-02-26 18:26:40 [携帯]


709 x 1020
『蘇える金狼』の男優たち⑩
 
猪狩 元秀
 
1950年5月19日生まれ。
特定非営利活動法人日本拳法協会理事長・同協会主席師範。
日本拳法九段。
日本大学文理学部社会学科卒。
元キックボクシングWKAミドル級王者。
日本王者を二階級制覇。
元・K-1レフェリー日本大学在学中に日本拳法部で活躍。
プロのキックボクシングに転向。日本拳法をベースとした重いストレートパンチは『マッハパンチ』と呼ばれた。
キックボクシング国内タイトルを二階級制覇、WKAミドル級タイトルを獲得して活躍した。
初代タイガーマスク(佐山聡)が人気絶頂の頃、異種格闘技戦が企画され、対戦相手として猪狩がリストアップされたことがある。
本人は乗り気であったが、諸事情から対戦は中止となっている。
 
■1973年、弘栄ジムよりキックボクシングデビュー。
■1975年、全日本ウェルター級王座獲得。
■1976年、ムエタイ現役王者サタンファー・ソープラティープに3RKO勝利。
■1977年、ムエタイ現役王者ピチット・センチャバンに4RKO勝利。
11月14日に日本武道館で行われた『格闘技大戦争』に出場し、ブレンディン・レディ(アメリカ)と対戦。
6R目にセコンドがタオルを投げ入れ、猪狩の6RKO勝ちとなった。■1978年、全日本ミドル級王座獲得。
■1979年、WKA世界ミドル級王座獲得。
世界王座獲得1979年3月23日に東京都体育館で行われたWKA世界ミドル級王者決定戦に出場し、スチーブ・アンダーソン(アメリカ)と対戦。
世界王者になった。
10月1日に、後楽園ホールでレイ・マッカラム(アメリカ)を相手にWKA王座の初防衛戦を行った。
試合前には松田優作から花束を手渡された。結果5R1:53KO勝ちで初防衛に成功した。
■1981年、ムエタイ現役王者ヴィラサック・パヨンカチョンに2RKO勝利。
■1982年、王者のまま引退。
■1993年、K-1チーフレフェリー
■2001年、K-1審議員
■2007年、NPO法人日本拳法協会理事長就任現在は、東京銀座に『パブ元秀』というパブを経営している。

164 @kira 2013-02-26 18:37:44 [携帯]


400 x 535
『蘇える金狼』の男優たち⑪
 
田畑靖男

165 @kira 2013-02-26 18:39:20 [携帯]


500 x 375
ロケ地探偵団④
 
朝倉が磯川との取り引きに指定した島>>52
 
映画では、名称の言及はないが、東京湾に浮かぶ『第二海堡』である事が脚本には明記されている。
 
海堡は、洋上における要塞の一つで、海上に人工的に造成した島に砲台を配置したものである。
日本では明治、大正に建設された複数の海堡が存在している。
 
日本の海堡
日本は明治から大正にかけて、山縣有朋陸軍大将が日本国内の要塞化を主張。
東京湾には千葉県富津岬沖から、神奈川県横須賀市側にかけて首都防衛のために3ヵ所の人工島が造成された。
完成後は兵舎や砲台が建され、自然島である猿島とあわせて東京湾口に円弧状に存在する防衛ラインの一環として運用された。
なおこれらの東京湾に作られた海堡は、現在は洋上要塞として使用されていない上に、東京湾周辺の海上交通の輻輳から海難事故の原因と指摘されていることから、ヨット愛好家でもある石原慎太郎東京都知事をはじめ、多くの船舶運航関係者が撤去を主張している。
 
第二海堡
1889年8月起工、1914年6月完成。
第一海堡と共に富津市に属する。
浦賀水道と内湾の北側境界に位置し面積は約41,000m&sup2 。
1923年9月1日の関東地震により被災、その年の内に廃止・除籍された。
その後海軍が使用し、第二次世界大戦中は対空砲が設置されるほか、敵潜水艦の東京湾への侵入を防ぐ防潜網が設置されている。
戦後は灯台が設置され、さらに1977年からは独立行政法人海上災害防止センターの消防演習場として利用されている。
以前は神奈川県からの渡し舟で釣り人が渡航していたが、侵食が進んでいることによる安全上の理由から2005年6月末に立入りが禁止された。
現在は第一海堡とともに海上保安庁によって灯台が設置されている。
2009年度から耐震化工事が行われるなど、今後も灯台と消防演習場として存続される予定である。

166 @kira 2013-02-26 18:40:18 [携帯]


503 x 585
第二海堡は、東京湾に浮かぶ人工要塞島で、通称『ブーメラン島』とも呼ばれている。
砲台を中心にして北北西と北北東に張り出した形状をしており、その外観は、文字通りブーメランのようである。

167 @kira 2013-02-26 18:43:32 [携帯]


464 x 442
第二海堡全景
 
至る所に関東大震災に拠る被災の爪痕が残る。

168 @kira 2013-02-26 18:44:57 [携帯]


567 x 152
竣工直後の第二海堡。

169 @kira 2013-02-26 18:47:52 [携帯]

第二海堡①~②①

170 @kira 2013-02-26 18:57:40 [携帯]


480 x 800
『第二海堡』戦闘シーンについて③
 
【突っ込みポイント】
 
①ボートでの上陸
②ジャンプスーツとサングラス
③要壁に挟まれた道での磯川の部下奇襲
④トーチカに向かう朝倉
⑤塔から落ちる磯川の部下
⑤クルーザーでやって来る磯川
⑥島を去る朝倉

171 @kira 2013-02-26 18:59:04 [携帯]


480 x 800
第二海堡で撮影の打ち合わせをする松田優作と村川透

172 @kira 2013-02-26 19:00:11 [携帯]


480 x 800
朝倉哲也

173 @kira 2013-02-26 19:01:13 [携帯]


500 x 375
劇場版予告編

174 @kira 2013-02-26 19:02:16 [携帯]


500 x 375
TV-CF①

175 @kira 2013-02-26 19:03:12 [携帯]


500 x 375
TV-CF②

176 @kira 2013-02-26 19:09:17 [携帯]

『蘇える金狼』スタッフ①
 
永原 秀一
 
1940年8月7日 - 2001年11月14日
東京都出身の脚本家。
株式会社ラグス元代表取締役社長。
日本大学芸術学部卒。
 
東宝プロデューサー貝山知弘の門下で脚本を学び、1967年に日活映画『拳銃は俺のパスポート』でデビュー。
以降、『野獣を消せ』(1969年)『斬り込み』(1970年)『女番長野良猫ロック』(1970年)などのハードボイルド・アクション作品を矢継ぎ早に手掛け、日活ニューアクション路線の屋台骨を脚本面から支えた。
一方で日活作品のみならず、初のオリジナル脚本作品である『狙撃』(1968年)をはじめ、『弾痕』(1969年)『ヘアピン・サーカス』(1972年)などの東宝作品においてもその手腕を発揮し、“東宝ニューアクション”という新路線の開拓にも大きな功績を残している。
70年代半ば以降は活躍の場の中心をテレビドラマの世界に移し、特に刑事ドラマ作品においては、自身の和製ハードボイルド作家としての素養とアメリカン・ポリスアクションのテイストを調和させた感覚が定評を得、メインライター、または中核ライターとして数多くのシリーズに参加。映画作品においても『最も危険な遊戯』(1978年)『蘇える金狼』(1979年)といった一連の松田優作主演作品の他、『惑星大戦争』(1977年)『ゴジラ』(1984年)などのSF作品、『ハイティーン・ブギ』(1982年)などのアイドル路線も積極的に手掛け、ジャンルに囚われない仕事ぶりを見せている。
ただし上記のSF作品群については批判が多く、永原の手腕に対する非難材料として持ち出されることも多々あったが、一方で永原の脚本を料理しきれなかった制作スタッフ、ひいては当時のSF作品に対する日本映画界の意識の低さや軽視に責任を求める声も多いのも事実である。
晩年は時代劇やVシネマなどをコンスタントに手掛けていたが、2001年11月14日、心不全のため死去。
享年62(満61歳没)。
生前は熱烈な草野球愛好家としても知られ、脚本家の柏原寛司、金子成人、峯尾基三、首藤剛志らと共に草野球チーム『JAWS』にもメンバーとして参加。
後に永原はJAWSから独立し、新チーム『ラグス』を創設。
これらの草野球チームは脚本家志望の若手や後輩ライターへの門戸としても広く活用されていたが、その後ラグスは脚本家事務所として株式会社化された。

177 @kira 2013-02-26 19:10:25 [携帯]

『蘇える金狼』スタッフ②
 
仙元 誠三
 
1938年7月23日生まれ。
日本映画のカメラマン、撮影監督。
京都府出身。
同志社大学中退。
1958年8月1日、松竹に入社。
松竹京都撮影所にて撮影助手を務める。
1967年にフリーとなり、1969年の『新宿泥棒日記』で撮影監督としてデビュー。
独特の長廻しの撮影を監督の村川透とともに作り上げ、松田優作とのトリオで、1970年代後半に数々のアクション映画を成功させたことで知られる。
B級ものからポルノ、大作に至るまで、多数の作品に携わる。
デビュー前はプロ野球選手を志しており、阪神タイガースにテスト生として入団していた経歴も持つ。
主な撮影作品
劇場映画
新宿泥棒日記(1969年)
書を捨てよ町へ出よう(1971年)
キャロル(1974年)
キタキツネ物語(1978年)
最も危険な遊戯(1978年)
殺人遊戯(1978年)
処刑遊戯(1979年)
蘇える金狼(1979年)
白昼の死角(1979年)
野獣死すべし(1980年)
ヨコハマBJブルース(1981年)
セーラー服と機関銃(1981年)
獣たちの熱い眠り(1981年)
野獣刑事(1982年)
汚れた英雄(1982年)
里見八犬伝(1983年)
探偵物語(1983年)
愛情物語(1984年)
Wの悲劇(1984年)
早春物語(1985年)
めぞん一刻(1986年)
キャバレー(1986年)
ア・ホーマンス(1986年)
この愛の物語(1987年)
恋人たちの時刻(1987年)
ラブ・ストーリーを君に(1988年)
いこかもどろか(1988年)
愛と平成の色男(1989年)
ウォータームーン(1989年)
オルゴール(1989年)
キッチン(1989年)
バカヤロー!3 へんな奴ら(1990年)
女がいちばん似合う職業(1990年)
福沢諭吉(1991年)
継承盃(1992年)
リング・リング・リング 涙のチャンピオンベルト(1993年)
免許がない!(1994年)
BE-BOP-HIGHSCHOOL(1994年)
あぶない刑事リターンズ(1996年)
極道の妻たち・決着〈けじめ〉(1997年)
義務と演技(1997年)
鉄と鉛STEEL&RED(1997年)
あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE(1998年)
共犯者(1999年)
侠道シリーズ(2000~2001年)

178 @kira 2013-02-26 19:17:18 [携帯]


366 x 664
劇場版の台詞
雪子『あぁ・・・・ああぁ・・・・』
 
シーン36
 
前野曜子の『優雅なる野獣』が挿入される。
 
ベッドで金子と雪子が交わっている。
場所は雪子のマンション。
音に気付き、金子が窓を見ようとするのを雪子が遮るように抱擁を求める。
 
牧雪子を演じるのは、結城しのぶ。
松田優作とは『探偵物語』第23話『夕陽に赤い血を!』で共演している。

179 @kira 2013-02-26 19:18:35 [携帯]


416 x 720
シーン37
 
金子は昨夜の情事で疲れきった表情で、小泉は居眠りをしている。
東和油脂重役連中の堕落ぶりを描写しているが、劇場版ではカットされている。
 
シーン40
 
ベッドの上の朝倉と京子の描写。
朝倉が、京子の煙草にヘロインを付けている。
劇場版ではカット。

180 @kira 2013-02-26 19:19:38 [携帯]


352 x 640
劇場版の台詞
朝倉『次長、お早うございます』
金子『ああ、お早う』
朝倉『昨日は欠勤いたしまして、申し訳ありませんでした』
金子『はい・・・もう、いいのかい?』
朝倉『おかげさまで・・・』
 
朝倉『もしもし、東和油脂の経理部でございますが・・・』
女の声『金子さんを出して下さらない?』
朝倉『あの・・・失礼ですがどちら様でしょうか』
女の声『牧からだと言って下さい』
朝倉『しばらくお待ち下さい・・・次長、牧というご婦人から・・・』
金子『ん?なんだい?こんなに早く・・・なんだって?!そんな馬鹿な!・・・・・・初めっから計画的だったんだな?そんな奴と話するつもりはない!』
金子『ああ・・・・よし・・・・12時半、東急デパートの屋上だな?その男の目印は?』
 
朝倉『ゴホッゴホッ・・・。あの・・・湯沢さん、ちょっと僕、熱っぽいんで、病院行って来ます。あとよろしくお願いします』
 
シーン46

181 @kira 2013-02-26 19:23:31 [携帯]


400 x 704
劇場版の台詞
桜井『金子さん・・・』
金子『キミの名前は?』
桜井『桜井とでも呼んで下さい』
金子『雪子のヒモか・・・で・・・私に売りつけようってモノは・・・?』
金子『ちっきしょう・・・雪子と貴様・・・やっぱりグルだったのか?!』
桜井『よく撮れてるでしょ?テープもございますよ。』
金子『テープも?!』
桜井『あっはは・・・』
金子『さぁっ、これ持ってけ、100万入ってる・・・これでネガとテープ早く出せ』
桜井『ああ・・・貴方は誤解してるようだ・・・私は鈴本光明先生に可愛がって貰ってる者なんですよ』
金子『ええ?!誰・・・誰だってぇ?!』
桜井『鈴本光明ですよ』
金子『あ・・・あ・・・あの、東和経済研究所長の鈴本先生か?!』
桜井『ええ、そうです。貴方が経理部長たちと共謀して横領した金額を書き込んだ手帖も全部カメラに収めさせて貰いましたよ。』
桜井『あなた方はひどい人たちだ。会社を食い物にしている。もし、このことを鈴本先生が知ったら、早速乗り込んで来るでしょうなぁ・・・』
金子『そいじゃ・・・鈴本先生はまだこのことを・・・』
桜井『話してませんよ』
金子『ハァ~・・・・・・ありがとう・・・悪かった、この通りだ・・・』
桜井『ああ、いやいや・・・わかってくれればいいんですよ』
金子『で・・・あのぉ・・・ナニのネガとテープ・・・いかほどでお譲りいただけましょうか・・・』
桜井『五千万』
金子『五千万~?!・・・・・とてもそんな大金・・・』
桜井『貴方なら簡単でしょう。』
金子『え~、明日までお待ちいただけませんか。明日、必ずお返事を・・・』
桜井『わかりました。こちらからお電話いたしましょう』
 
金子『ちっきしょう・・・やられた・・・・とにかく後を尾けろ!バラしてしまっても構わんぞ』
石井『ギャラ・・・高いよぉ・・・』

182 @kira 2013-02-26 19:43:12 [携帯]

シーン47
 
デパートの屋上で、金子が脅迫者を待っている。
遠くで鳴っている音は、遊園地のBGM。
この時代はデパートの屋上には、必ず小さな遊園地があったのだ。
乗り物やヒーローショーなどをやっていた。

183 @kira 2013-02-26 19:44:45 [携帯]

シーン48
 
金子の前に現れたのは、レザージャケットに身を包んだ桜井という男だった。
 
桜井光彦を演じるのは、日本が世界に誇るアクション・スター。サニー千葉こと千葉真一。
近年は、タランティーノにリスペクトされ、『キル・ビル』への出演が記憶に新しい。
 
松田優作が暴力事件で謹慎中だった76年に、千葉が多忙だった為に出演出来なかった『暴力教室』に代役として主演で映画復帰しているという浅からぬ因縁がある。
 
盗聴していた朝倉が、デパートの客にバレないようにイヤホンでラジオを聴いてる芝居をするところはツボにハマる。
桜井は、昨夜の金子と雪子の情事を収めた写真を持参していた。
チンピラと勘違いした金子は、桜井に100万の札束を突きつけ、ネガとテープを買い取ろうとするが桜井の口から意外な言葉を告げられる。
桜井は、乗っ取り屋の東亜経済研究所所長の鈴本光明と関係があるというのだ。
更に、東和油脂の重役共の悪行も掴んでいた。
一瞬にして金子の顔色が変わる。
しかし、鈴本には背任行為の件はまだ話していないと知るや掌を返したように桜井の許しを乞う金子。
だが、桜井が提示した5千万という法外な額に愕然とする。
金子は呼んでいた興信所の探偵、石井に桜井を尾行させ、殺害を命じる。
たとえ、一流企業といえども一皮剥けばヤクザと何ら変わりが無い組織である。
 
石井を演じるのは、怪優・岸田森。
吸血鬼を連想させる黒マントを纏い、円形のサングラスをかけ、ステッキを携えている。
この格好で尾行すれば目立って仕方ないだろう。
岸田森は、『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』『血を吸う薔薇』で吸血鬼を演じている。日本で唯一、吸血鬼が似合う役者である。
松田優作とは、『乱れからくり』『探偵物語』第13話『或る夜の出来事』で共演している。
 
『蘇える金狼』に於いて、桜井という男は非常に面白い存在だ。
桜井がやっている事は、これから朝倉が正にやろうとしている事である。
桜井の辿って行く運命は朝倉が辿る運命なのだ。
桜井の出現によって、朝倉は自分自身を冷静に見つめ直す機会を与えられる。
観客にはサスペンス的要素が付加される。
映画に奥行きが出来る。
しかし、朝倉と桜井には決定的な相違点がある。
それは一体、何なのか!
それこそが、この映画の醍醐味と言えよう。

184 @kira 2013-02-26 19:45:38 [携帯]

シーン50
 
桜井を尾行する石井。
ステッキを杖代わりに視覚障害者を装う。
信号が赤に変わると慌てて走る。
岸田森の演技は既に暴走をはじめている。

185 @kira 2013-02-26 20:03:32 [携帯]

劇場版の台詞
西川朱実『光彦さん、待って!光彦さん!!』
 
シーン51
 
『東亜経済研究所』に入って行く桜井。
 
シーン52
 
二階に上がって行く桜井を受付嬢の西川朱実が呼ぶ。
西川朱実は、桜井に捨てられた女である。
西川朱実役は、吉岡ひとみ。
彼女は一年後、『野獣死すべし』に東洋銀行の預金係の石島役で出演している。

186 @kira 2013-02-26 20:04:22 [携帯]


416 x 720
劇場版の台詞
桜井『伯父さん、相変らずお忙しいようですねえ』
鈴本『おお!お前も元気そうだな』
桜井『第一線から身をひいたように見えても、鈴本光明は健在でいらっしゃる。今でも乗っ取り事件が噂されるたびに、鈴本光明の名前がクローズアップされる。今度はどこの会社狙ってるんですか?』
鈴本『ハッハッハッハ・・・・どうだ光彦、本気でワシの下で仕事を覚える気には、まだならんのか?』
桜井『是非、そのうち・・・』
鈴本『一緒に飯、食いに行こうや』
桜井『是非、そうしたいところなんですが、早々に裏口から引き上げませんとねえ・・・』
鈴本『裏からぁ?お前、何しとるんだ』
桜井『じゃ伯父さん、また・・・』
 
シーン53
 
桜井は鈴本公明の部屋に入って行く。
トイレにナニを隠す桜井。
なんと、桜井は公明の甥だった。
公明は桜井を見込んでおり、自分の後継者にと考えている節がある。
しかし、若さゆえか光彦にその気はなさそうである。
公明の真似をして遊んでいるほうが楽しいのだろう。
公明は、恐ろしい人物なのだが久しぶりの甥との再開に表情を緩ませる。
公明の制止も聞かず、桜井は裏口から出て行く。
つけて来た石井は桜井の素性に気づいていない。これが今後の展開の重要ポイントである。
 
鈴本公明は、安倍徹が演じている。

187 @kira 2013-02-26 20:05:44 [携帯]

シーン54
劇場版の台詞
湯沢『ゆっくり医者に診て貰いなさいよ。部長も次長もいないのよ。二人でのんびりやってるところだから・・・』
朝倉『ケホン・・・二人ともどうしたんですか?』
湯沢『緊急重役会議とかでサァ、偉いさん、誰もいないのよ』
 
シーン55
 
シーン56
 
シーン57
劇場版の台詞
警備員『会議中ですので、どなたも入室できません』
朝倉『あ、そうですか・・・え~っと・・・あ、マルクスの資本論はと・・・』

188 @kira 2013-02-26 20:06:45 [携帯]

シーン58
劇場版の台詞
『やはり、そのォ~・・・反応を見てからでも遅くないと思うんだ・・・その桜井という男は鈴本と関わり合いがあるとしても、果たしてその鈴本が乗り出してくるかどうか、これは断言できんからね』
『うん・・・賛成ですね、専務の意見に・・・それに、鈴本の脅しに一度屈したら、こりゃもう、骨までしゃぶられるに決まってるんだ』
 
シーン59
劇場版の台詞
秀原『それにしてもだ・・・横領金のメモを写真に撮られるとはな!』
小泉『監査部長!それはもう、済んだことなんだ!問題はこの窮地を、どう切り抜けるかってことなんだ!』
清水『まあ、待ちなさい。内輪もめは困る』
竹島『社長、あなたはご自分が関わりがないと思ってらっしゃるんでしょうがね、その鈴本がその気になればですよ、社長以下、我々全体の横領背任は、これ、バレてしまうんだからね!ええ?!』
秀原『その通りですよ』
石井『い、石井だ・・・部屋に入ったまま、出てこない・・・』
 
シーン60
劇場版の台詞
金子『仕方がない・・・じゃあ、女の部屋、見張ってくれ。奴は必ず女と会う筈だ・・・・そう、女の名前は、牧雪子。銀座のバー・ルナの雇われマダムで・・・・頼むよ』
金子『秘密興信所の石井からです・・・』
金子『 桜井の姿を見失ったようです・・・それに、その桜井と鈴本との関係も依然不明なようでして・・・』
 
シーン61
劇場版の台詞
小泉『私はね・・・こう思うんだがな・・・明日、桜井に要求の半額の二千五百万払うより、今夜にでもこっちから桜井を嚇かして、写真とネガを取り上げたらどうかなぁ・・・そりゃもちろんバクチだが、初めから鈴本に屈するよりは・・・・・・』
清水『誰か、信用のおける男はいるのかね・・・』
小泉『今使ってる、石井が適任じゃないかと思うんだが・・・』

189 @kira 2013-02-26 20:13:50 [携帯]

シーン54
 
朝倉が金子と桜井を盗聴している間に、東和油脂では緊急重役会議が開かれていた。
理由は当然、桜井の登場である。
重役が消えた社内では、湯沢たちがくつろいでいる。
 
シーン55
 
シーン56
 
シーン57
 
急いで会社に戻って来た朝倉。
会議室に入ろうとして警備員に止められ、隣りの図書室に入る。
例の盗聴器で会議室の様子を窺う。

190 @kira 2013-02-26 20:14:52 [携帯]


352 x 640
シーン58
 
緊急重役会議と言いながらも、その議題は金子の情事をネタにした桜井の脅しの対抗策である。
一枚岩に見える重役連中も、清水、小泉、金子と秀原、竹島の二大勢力に別れている事が見て取れる。
他人事かのように責任を免れようとする清水。
清水の体質を糾弾する秀原と竹島。
それを食い止める小泉。
金子は情勢によって、どちらにでも寝返る可能性がある。
 
桜井の脅迫に戦々恐々とする重役たち。
 
シーン59

191 @kira 2013-02-26 20:16:06 [携帯]

シーン61
 
小泉は桜井を脅迫して、ネガとテープを奪う事を提案。

192 @kira 2013-02-26 20:16:49 [携帯]

シーン62
 
東亜経済研究所から出て来た朱美から桜井の女の情報を聞き出そうとする朝倉。
本編ではカット。
 
シーン63
 
シーン64

193 @kira 2013-02-26 20:17:51 [携帯]


366 x 664
シーン65
 
劇場版の台詞
朝倉『留守だったらしいねえ』
朱美『・・・・・・!!』
朝倉『うっ・・・』
朝倉『桜井は経済研究所の所員なんだろっ?えぇっ?』
朱美『知らないわ!』
朱美『ああ、そう・・・』
朱美『ああ!そうじゃないけど・・・・鈴本さんの・・・・甥!』
朝倉『フンフン・・・桜井が好きなんだねえ・・・あんなトロイの何処がいいんだよ。桜井にはアンタの他に女がいるだろ、え?』
朱美『し・・・知らないわ・・・』
 
シーン66
劇場版の台詞
朝倉『答えさせてやろうか?おい。ええ?誰だ、女!』
朱美『銀座のバーの・・・ホステス・・・!』
朝倉『名前は?!』
朱美『牧・・・牧雪子ぉ!』
朝倉『どこに住んでる?』
朱美『広尾の・・・公営マンション・・・』
朝倉『公営マンションか・・・ご苦労さん』
朱美『ああぁぁ・・・・』

194 @kira 2013-02-26 20:26:30 [携帯]

シーン67
 
雪子のマンションの前に立つ朝倉。
本編ではカット。
 
シーン68
 
シーン69
 
シーン70
 
朝倉が隣室のバルコニー伝いに雪子の部屋に乗り移る。
優作が危険なスタントも余裕でやっている。
配管に掴まりながら移動するうちに足を滑らせるというカットだが、便宜上撮っただけなのかあまり焦っている感じはない。
優作の芝居は気分が乗っている時とそうじゃない時の差が激しいのも特徴だ。
 
朝倉が雪子の部屋を覗くと、石井と相棒の田宮が雪子を拘束して桜井の帰りを待っていた。
脚本では雪子は、ほぼヌードに近い状態だが本編ではバスタオルを巻いている。シャワー中に襲われたのか。
石井の相棒、田宮も脚本ではよりサディスティックだ。
田宮を演じる高橋明は東映ヤクザ映画の悪役として多数の作品で活躍した。
優作の遺作『ブラック・レイン』にも出演していた。

195 @kira 2013-02-26 20:27:31 [携帯]


480 x 800
シーン71
劇場版の台詞
桜井『ああ~、あああああああ~、欲望の街~』
石井『動かないのネ・・・』
石井『写真とテープ、どこ!!二千五百万!写真とテープ渡したら、くれてやる!』
桜井『約束は・・・五千万・・・だぞ・・・取り引き出来ませんよ・・・』
石井『高いっ!!カタワになりゃ、考えも変わるだろうに』
桜井『わかった・・・わかりました・・・出しますよ、ちょっと待って下さい・・・ちょっと待ってくれ・・・』
石井『うわぁ~、ぐわぁ~』
田宮『そいつを捨てろ!!捨てねえと、女の喉首掻ッ切るぞ!』
桜井『やってみろ、やってみろよ。その女が死のうが生きようが、俺には痛くも痒くもねんだよ。へへっ・・・やってみろ』
雪子『あなた・・・・助けて・・・・・』
桜井『助けて?俺を騙して、ここにおびき寄せておきながら、そんなことが言えた義理か!』
田宮『コノヤロウ!』
田宮『うぎゃー!』
田宮『うがぁ~、うぎゃぁ~』
石井『がまんネ!!』
桜井『失せろ!!』
桜井『雪子・・・雪子・・・・・』
雪子『ホントじゃないわね、ホントじゃないわね?』
桜井『馬鹿だな・・・当たり前じゃないかよ』
雪子『来てくれて良かった』
桜井『悪かったよ・・・心配かけて悪かった・・・』
桜井『愛してるよ、雪子・・・・』

196 @kira 2013-02-26 20:33:26 [携帯]


400 x 720
桜井が何も知らずに雪子の部屋に鼻歌を歌いながら入って来る。
この時、桜井が歌っているのはダウン・タウン・ブギ・ウギ・バンドの『欲望の街』。
角川映画『白昼の死角』の主題歌である。
これは同年に村川透が監督した作品で、千葉真一も出演している。
『蘇える金狼』は、こうしたお遊びが多い作品だ。

197 @kira 2013-02-26 20:35:23 [携帯]


500 x 512
『蘇える金狼』の男優たち⑫
 
佐藤慶
 
1928年12月21日 - 2010年5月2日
福島県会津若松市生まれ。
本名は『佐藤慶之助』。
 
佐藤家は先祖代々会津藩士で、戊辰戦争に敗れて漆器材料の卸商を営んでいた佐貫百合人『役者烈々 俳優座養成所の軌跡』、三一書房、1995年、149-150頁。
福島県立会津工業学校染織科卒業後、会津若松市役所戸籍係に勤務するかたわら、地元で結成した新劇愛好会で演劇に打ち込むが、会の発表会の日に無断欠勤をして役所を免職されたという『根っからの新劇人』ぶりが高じ上京。
俳優座養成所から俳優人生をスタートする。
俳優座養成所の第4期生の同期には仲代達矢、佐藤允、中谷一郎、宇津井健などがいる。
1955年以降、大島渚監督の一連の作品をはじめ、映画、舞台、テレビドラマで存在感のある悪役などを演じる。
その無機質な風貌を生かし、屈折した性格の悪役を得意とし、社会派作品から時代劇・ヤクザ映画まで、様々な作品で総合的性格俳優として活躍する。
1965年、『鬼婆』でパナマ映画祭主演男優賞。
1971年、『儀式』『日本の悪霊』でキネマ旬報主演男優賞を受賞。
1967年のテレビドラマ『白い巨塔』では、田宮二郎の野心的な雰囲気とは違った暗くねじれた個性を前面に出した財前五郎役を好演した。
1980年、紀伊國屋演劇賞受賞。
また、低く泰然とした声でのナレーションも人気があり、1970年代から1980年代にかけて日本テレビで放送された科学ドキュメンタリー『知られざる世界』のナレーターを担当した。
1981年には『白日夢』で武智鉄二監督の演出のもと愛染恭子と本番行為を行い、一躍話題になった。
晩年の代表作にはNHK連続テレビ小説『ほんまもん』、大河ドラマ『風林火山』がある。
かつては月刊誌『噂の真相』を愛読しており、創刊準備号から最終号まで1号も欠かさず読みつづけたという。
また、下積み時代の生計を支えてくれたガリ版への感謝を忘れず、有名になってからもガリ版用具を大切に保管していたという謙虚な一面も持ちあわせていて、後年山形市の山形謄写印刷資料館に愛用のガリ版用具並びに製作した印刷物が寄贈された。
 
2010年5月2日午後4時19分、肺炎のため都内の病院で死去。

198 @kira 2013-02-26 20:41:55 [携帯]


520 x 360
『蘇える金狼』の男優たち⑬
 
草薙幸二郎
 
1929年9月19日 - 2007年11月11日
東京市王子区(現・東京都北区)出身の俳優。
本名は『草薙 幸次郎』。
長男の草薙仁も俳優。
 
日本大学文学部哲学科中退。
劇団民藝在籍中の1953年に映画『夜明け前』でデビュー。
1956年には今井正監督の『真昼の暗黒』で主役に抜擢され、第1回製作者協会の新人賞を受賞して注目される。
その後は日活映画を中心に活動。
アクション系作品では凄腕の刺客や謎の中国人などを怪演し、特異な個性を持つ敵役として強烈な存在感を見せた。
映画産業の斜陽化後はテレビドラマにも活躍の場を拡大。
時代劇から現代劇まで、主にインテリ系の悪役を様々な作品で演じてきたが、近年では悪役以外の老け役にも演技の幅を広げていた。
2007年11月11日、間質性肺炎のため東京都三鷹市の病院で死去。

199 @kira 2013-02-26 20:49:44 [携帯]

『蘇える金狼』の男優たち⑭
 
河合絃司
 
1918年10月4日
東京都出身。
旧芸名 河合弦司

200 @kira 2013-02-26 20:50:41 [携帯]


480 x 800
『蘇える金狼』の男優たち⑮
 
千葉 真一
 
1939年〈昭和14年〉1月22日生まれ。
 
英名 JJ Sonny Chiba
本名 前田禎穂
愛称 千葉ちゃん
日本を代表する映画スターの一人で、世界では『Sonny Chiba』の名で知られている。
定評のあるアクロバティックなアクションを生かし、映画・テレビドラマ・舞台・CMと半世紀にわたり幅広く活躍。
特技の器械体操・極真カラテ四段・少林寺拳法弐段や、スキー・乗馬・武道などあらゆるスポーツに精通し、アクションスターの元祖ともいえる存在である。
身長176cm、体重60kg、血液型O型。
ジャパンアクションクラブ(JAC)の元主宰。
アストライア所属。
 
福岡県福岡市博多区雑餉隈で、二男三女の長男(第二子)として生誕。

201 @kira 2013-02-26 20:52:34 [携帯]


500 x 375
『蘇える金狼』の男優たち⑯
 
岸田森
 
1939年10月17日 - 1982年12月28日
 
東京都杉並区阿佐ヶ谷にある河北総合病院にて誕生する。
5歳頃まで東京都中野区本町通りに住んでいた。
1944年
疎開先の箱根町立湯本小学校へ入学。
1947年
帰京し、千代田区の九段小学校へ転校する。
麹町中学校から海城高校を卒業。
この小学3年生のころから、蝶の収集を始める。
1958年
一浪後法政大学英文科へ入学するが、2年生の時に俳優の道を志し、中退したという。
1960年
文学座附属演劇研究所に研究生として入団。
研究発表会のような内輪の演劇ばかりで、年間収入が2~3万円という暮らしが5~6年続いた。
1964年
同期である女優・悠木千帆(後の樹木希林)と結婚する。
1965年
文学座座員に昇格。
1966年
年頭に退団。
悠木、村松克己らと劇団『六月劇場』を結成し、以降は主に映画・テレビに活躍の舞台を移す。
同年の『氷点』(NET)が本格的なテレビ初出演。
1968年
悠木(樹木)と離婚後、バーのマダムと再婚するが再び離婚。
その後は女優・三田和代と交際関係にあった。
『怪奇大作戦』(TBS)が、円谷プロとの初仕事となる。
この作品への出演が自身の芝居の一大転機になったと語り、以後『僕は円谷育ち』と公言している。
1971年
東宝映画『呪いの館 血を吸う眼』(山本迪夫監督)で吸血鬼を演じ、和製ドラキュラとの評価を得る。
1977年
『歌麿 夢と知りせば』(太陽社)に出演、脇役の多かった岸田としては唯一ともいえる大作映画主演であり、カンヌ映画祭でも上映され話題を集めた。
当作をはじめとして、円谷プロ以来のつきあいである実相寺昭雄監督とも名コンビを謳われた。
1982年12月28日午前4時59分、食道癌のため、43歳の若さで死去。
墓所は神奈川県鎌倉市にある鎌倉霊園。
 
血液型AB。
身長169センチ。
趣味は蝶の収集・採集、スコッチ・ウイスキー収集、油絵、ゴルフ、植草甚一の影響によりジャズ鑑賞。
特技は剣道(3段)、野球。
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