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医療費抑制 (コメント数:7)

1 manolo 2017-08-28 02:06:24 [PC]


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1. 出典:『朝日新聞』、8/25/2017、医療費とコスト 高額な薬の値下げ 日本版「NICE」創設検討 費用対効果で判断」、生田大介、p.1

1-1.
 膨れあがる医療費を抑えるため、政府は費用対効果に基づく薬の評価を行う組織をつくる検討に入った。英国をモデルに日本版の新組織を設け、評価の低い高額薬を値下げする仕組みを来年度から本格導入する。医療は命が最優先のはずだが、コストパフォーマンスを求める議論が進む。

2 manolo 2017-08-28 02:11:35 [PC]

1-2.
 モデルとなるのは、1999年に英国で設立された国立医療技術評価機構(NICE(ナイス)=National Institute for Health and Care Excellence)。政府は日本版NICEのあり方について厚生労働省の専門部会などで検討し、年内に結論を出す。薬の費用対効果を評価する仕組みも英国にならう。寿命を1年延ばすのに必要な新薬の費用を計算し、既存の薬と比較して、あらかじめ設定した基準額を上回れば値下げする。基準額は、国民意識調査などを踏まえて設定する方針だ。

1-3.
 こうした仕組みを設けるのは、医療費が増え続けていることが背景にある。2015年の医療費は約42兆円で、団塊の世代がすべて75歳を超える25年には推計で54兆円になる。とりわけ最近は高額薬が医療費を押し上げている。日本では効果と安全性が認められた薬は高額でもすべて公的保険の対象となる。患者は少ない自己負担で使えるが、その分、保険料や公費で賄う負担が増える。

1-4.
 英国の医療費はほとんどが公費で賄われる。そこで、完全な健康状態の命を1年延ばすのにかけられる薬の費用として原則2万~3万ポンド(約280万~420万円)という基準額を設定。それを超えると、基本的に公費で使える対象から外す。日本でも将来的には英国のように公的保険の対象外とすることも検討している。来年度は6年に1度の医療と介護の報酬(公定価格)の同時改定がある。医療費が膨張する25年を前に医療と介護の体制を見直す事実上、最後の機会となる。


医療をめぐる環境はこう変わる
医療費は年度。2025年はいずれも推計値
  2013年   2025年
75歳以上の人口  1560万人 →1.4倍  2180万人
生産年齢人口   7901万人 →0.9倍  7170万人
(15~64歳)
医療費    40兆円  →1.4倍   54兆円
医療機関の病床数 135万床  →0.9倍 119万床

3 manolo 2017-08-28 02:14:36 [PC]

2. 出典:『朝日新聞』、8/25/2017、「医療とコスト 高い薬 公的負担いくらまで?」、生田大介、伊藤綾、p.2

費用対効果 悩ましい線引き
月400万円「自己負担困る」

2-1.
 妻と5歳の息子がいる千葉県の男性(40)は5年前に肺がんが見つかり、昨年末に髄膜に転移した。余命半年ともされていたが、がん治療薬のオブジーボを2回投薬すると、がんは急速に小さくなった。オブジーボは当初、月約400万円かかったが、医療費の自己負担には制度上の上限がある。男性が加入する健康保険からの付加給付もあり、実際に支払ったのは月2万5000円だった。男性は「新薬に命を助けられた」と語る一方、高額な費用に複雑な思いを抱える。「このままでは医療保険財政がもたないかもしれないが、高い薬が自己負担となるのも困る」

2-2.
 薬代は公定価格で、新薬は開発費や製造費を考慮して最終的には国が決める。2014年~15年にはオブジーボのほか、乳がん治療薬のカドサイラやC型肝炎治療薬のソバルディ、ハーボニーといった開発費の高い薬が相次いで発売された。こうした薬の値段は1日あたり数万円に上る。発売後に患者の対象が広がったオブジーボは高すぎるとの批判を受け、今年2月に緊急で半額になった。ただ、値下げは企業の開発意欲をそぐ懸念もある。

2-3.
 年間の薬剤費は約9兆円で、医療費全体(約41兆円)の2割ほど。15年度の高齢化による影響を除く医療費の伸びは前年度比で2.7%で、その半分の1.4%分を薬剤費が押し上げた。こうしたことを背景に、高額でも効果の低い薬を保険の対象から外そうという議論が浮上している。

2-4.
 首相官邸で5月に開かれた政府の経済財政諮問会議。民間議員の新浪剛史サントリーホ-ルディングス社長らは「国民皆保険の持続性を確保するため、医薬品をより効率的・効果的に使用していく必要がある」と指摘し、「日本版NICE(ナイス)(国立医療技術評価機構)」の新設を求めた。英国のNICEでは、費用対効果の低い薬は公的医療の対象外としている。当時の塩崎恭久厚生労働相は「ぜひ考えたい」と応じ、6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」には「本年中に結論を得る」と明記した。

4 manolo 2017-08-28 02:17:55 [PC]

2-5.
 制度作りは、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会の専門部会で進む。まず費用対効果に基づき薬を値下げする仕組みを設けるため、近く国民3千人以上を対象に意識調査を実施。「完全な健康状態で1年間生存することを可能とする医療品・医療機器等の費用」をどこまで公的保険で賄うべきかを聞き、判定する基準に反映させる。7月の専門部会では「国民の多くは、公的保険財政の厳しさも薬剤費の自己負担割合も十分に理解していない。そんな中で答えた結果で基準をつくっていのか」との異論が出た。医療にコストパフォーマンスを考慮するのは初めてのことで、模索が続いている。

2-6.【延命1年700万円 英国の基準】
126件で公費使用を認めず

 本家・英国のNICEは7月19日付けで、カドサイラを引き続き公的医療として使えると認めた。転移性の乳がんを患う英ロンドン在住のフィオナ・レスリーさん(49)は「多くの乳がん患者が救われます」と安堵した。英国の医療費は、ほぼ税金で賄われる。治療代は原則無料で、処方された薬の自己負担は1種類当たり1千円程度まで。代わりに公費で使える薬には制約があり、NICEが費用対効果などをもとに判断する。

2-7.
 カドサイラは既存の薬より平均6カ月ほど延命効果があるが、標準的な治療で9万ポンド(約1300万円)ほどになる。終末期患者向けの薬なら1年の延命に約5万ポンド(約700万円)まで認められるが、その基準すら大きく上回るコストがかかる。NICEは昨年12月、公的医療としての使用継続を認めない仮決定を出した。公的医療の対象外となれば、患者が使うのは難しくなる。レスリーさんが所属する患者団体は使用継続を求める署名活動を行い11万5898人分を提出。製薬会社も値下げに踏み切り、最終的にNICEは使用の継続を認めた。

2-8.
設立された1999年から今年5月までにNICEは680件を評価し、2割近い126件について公費での使用を認めなかった。使用を制限された中には、日本でも保険適用が認められている抗がん剤のアバスチンやアービタックスも含まれる。NICE最高責任者のアンドリュー・ディロン氏は「透明で一貫性があり、証拠に基づく判断をしている」。

5 manolo 2017-08-28 02:23:33 [PC]

2-9.
 抗がん剤は終末期の患者の命を少しずつ延ばす薬も多く、費用対効果は低くなりがちだ。英国政府は、通常予算と別枠で使用を認める「キャンサー・ドラッグ・ファンド(CDF)」という枠組みも設けた。しかし利用者が増え、昨年から適用できる期間を2年間に限定。値下げしたうえで、より高い効果を証明するなどしなければ、薬の使用継続は認められない。CDFのピーター・クラーク会長は言う。「ケーキの大きさ(使える医療費の総額)は決まっている。抗がん剤にもっとお金を使うなら、他に使うお金を減らさないといけない」英国では、14年の国内総生産(GDP)に対する保険医療支出は9.9%だった。米国の16.6%や日本の11.4%より低い水準を維持している。

2-10.
 東京大の五十嵐中(あたる)特任准教授(医薬政策学)は「日本では『人命は地球より重い』『医療にお金の話を持ちこむべきでない』といった意見が強かったが、薬もお金と効き目のバランスを考えないといけない時代になった」と指摘する。


【近年発売された主な高額薬】
薬価は体重50kgの患者の場合

発売時期 薬剤名   1日あたり薬価  適応症
14年4月  カドサイラ  約2万円    乳がん
9月  オブジーボ  約1万7千円  肺がん
~3万9千円  皮膚がんなど
15年5月  ソバルディ 約4万2千円  C型肝炎
9月   ハーボニー 約5万4千円  C型肝炎
16年4月  レパーサ  約1600円  高コレステロール
   ~2400円  血症

【薬の費用対効果を評価する仕組み】
日本で2018年度から本格的導入

薬代 低~高
効果(QALYで評価)低~高
QALY(質調整生存年):完全に健康な状態で生存期間が1年延びれば「1」、死亡した場合は「0」

既存薬
新薬A 費用対効果低い → 値下げ
新薬B 費用対効果高い → 値上げも

【医療の自己負担】
 原則として70歳未満は3割で、75歳以上は1割。70~74歳は1割から2割へ段階的に引き上げられている。ただ、「高額療養費制度」によって、所得や年齢に応じて毎月の自己負担の上限が定められている。

6 manolo 2017-08-28 02:28:14 [PC]

3. 出典:『朝日新聞』、8/26/2017、「医療とコスト 高齢者への高額医療、現場は模索」、生田大介、p.7

90代に700万円施術 数カ月後に死亡
治療対象「年齢で区切れるのか」

3-1.
 日本は世界に誇る長寿国となった一方、それが医療費を膨張させている。薬や医療機器の高額化も進むなか、高齢者への医療はどうあるべきなのか。

3-2.
 西日本のある病院に昨年末、90代後半の重症心不全の女性が運び込まれた。心臓から血液を全身に送るための弁が硬くなり、呼吸困難に陥った。本来なら胸を切って人工弁を埋める外科手術が必要だが、高齢すぎて体力的に耐えられない。そこで、太ももの血管から細い管を通して人工心臓弁を届ける「経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI(タビ))という治療が行われた。体への負担が少ない最先端の技術で費用は700万円ほど。保険が利くので患者負担は少ないが、保険料や公費の負担は大きい。治療は成功して女性は無事に退院したが、その数か月後に肺炎で亡くなった。治療を担当した医師は振り返る。「症状が悪化するまで畑仕事をしており、『もう一度元気になりたい』という思いが強かった。高齢になるほど肺炎や脳梗塞のリスクは高くなるが、発症するのか予測は難しい」

3-3.
TAVIは国内では2013年に保険適用され、8千例以上行われた。だが、比較的余命が短い「超高齢者」にどこまで使うのか医療現場は模索している。北里大学では、95歳の患者まで対象としたことがある。阿古潤哉教授は「体力や認知能力などから適応をしっかり選んで実施している。国民皆保険がこのまま持つかどうか懸念はあるが、年齢だけで区切っていいのか難しい」と漏らす。TAVIの費用対効果は高いとされるが、合併症を起こす可能性が大きい高齢者には費用対効果が低いという海外の研究もある。TAVIの関連学会協議会の事務局を務める鳥飼慶・大阪大講師は「手術できない高齢者にとってTAVIは福音となる技術。ただ、超高齢者にどこまで適応するかは、医療費の観点も含めて議論していく必要があるのではないか」と話す。

7 manolo 2017-08-28 02:29:05 [PC]

3-4.【医療費75歳以上3分の1占める 命に直結 容易に進まぬ議論】
 日本人の平均寿命は伸び続け、16年は女性が87.14歳、男性が80.98歳になった。一方、高齢になるほど医療費はかさみ、14年度の医療費(約41兆円)の3分の1以上にあたる約14兆円は、後期高齢者医療制度に入る75歳以上が使った。大島伸一・国立長寿医療研究センター名誉総長(71)は、こう訴える。「平均寿命を超えたら超高額な薬は使わないことや治療内容によっては、自己負担割合を引き上げることなどを本気で考えないと、医療が崩壊するかもしれない。」

3-5.
 とはいえ、高齢者の医療費を削減する議論は、命に直結する問題だけに容易ではない。とりわけ多くの医療費がかかる延命治療のあり方は難題だ。患者の意思が確認しづらく、望まない延命治療が行われる場合もあるとされる。そこで京都市は4月、患者の意識が明確なうちに延命治療をするかどうかなどを決めておく「事前指示書」を約3万部つくり、配布を始めた。すると「生命を軽んじている。国の医療費抑制に同調しているのでは」といった反発が出た。

3-6.
 政府は08年4月に、医師が延命治療などの相談を受ければ報酬を加算する仕組みを導入したが、「高齢者は早く死ねということか」といった強い批判を受け、3カ月後に凍結。10年4月に廃止された。国立がん研究センターは4月、高齢の進行期がん患者は抗がん剤による延命効果が見られない可能性があるという研究結果を公表し、波紋を広げた。同センターの中釜斉(ひとし)・理事長は「研究の狙いは医療費抑制ではない。体力が乏しく副作用のリスクも大きい高齢者に最適な治療を考える研究の一環だ」と説明。症例数が少ないため、より大規模な研究が検討されている。

1人あたりの医療費は(14年度)
0~14歳 15.3万円
15~44歳 11.7
45~64歳 27.8
65~69歳 48,4
70~74歳 63.5
75~79歳 78.5
80~84歳 92.6
85歳~ 104.8
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