災難 (コメント数:7) |
1 冴子 2024-06-30 18:53:03 [PC]
「あー、もう。またおねしょしてっ!。」 あたしのおむつを開けたママが言う。 「だぁってぇ、出ちゃったんだもん。しかたないじゃなぁい。」 「もう中学生になって、おねえさんな制服を着てるのに!。」 「ママだって言ってたじゃない『おねしょは成長すれば治るから、ゆっくり直して行こうね』って。」 「まさか、中学生になっても直らないとは思わなかったのよ・・・、はぁ。」 ママは、そんな会話をあたしとしながら、あたしのおねしょでぐっしょりと濡れたおむつを外して、おまたを拭いてくれた。 あたしは知亜紀(ちあき)13歳。今、中学2年生。 まだおねしょが直らなくて、夜寝る時は、おむつを当てられています、おっきな「赤ちゃんおむつ」です、はい。 昼間も、ちょっぴりおしっこの出口がゆるいので、『念のため』におもらしパンツをはいてます、はい。 でも、まあ、友達にはバレてないし、まあいっかと思っていた。 そんな平和な日常が、いっぺんにひっくり返るとも知らずに・・・。 運命の日は突然やって来た。 そりゃあ、やれ30年後までに大地震が起こる可能性は80%だのと言われてはいた。 でも、まさか、それがいきなり来るとは思わないじゃない?。 その日、ママにおむつを外してもらって、中学の制服に着替え、「念のため」のおもらしパンツをはいて朝食を食べていたら、いきなりグラグラと来た!。 とはいえ、そんなに大きな揺れじゃなくて「いきなりグラッと来るなんて珍しいなぁー」と思っていたら。 スマホがいきなり警報音を鳴らし、それが2回鳴ったくらいで、 いきなり、どぉーーーんっっ!!!!!という感じで揺れ始め、テーブルが、その上に乗った朝食が吹っ飛んで行った!。 あとで思い返せば、最初の「グラグラ」がいつもの「コトコト」って言う前兆の地震(初期微動?)だったのだろう。 あたしはそんな揺れでイスごとひっくり返り、結果的に動いて来たテーブルの下に隠れる形になって、倒れてきた食器棚やら、棚から飛んで来た色々な物やら、崩れてきた天井などから守られた。 そうして、あたしとママは命からがらお家から脱出して、半分崩れたお家の前にへたり込み呆然とする。 そしてしばらくしてから、やっと気を取り直して、防災無線の声を頼りに避難所へと避難したのだった。 |
2 冴子 2024-06-30 18:54:11 [PC]
避難所の市立体育館は、ぎゅうぎゅうだった。 仕切りもなく、辛うじて自分が寝る事が出来るスペースと手荷物を置く事が出来るスペースがある程度。 元々避難所として建てたものではなかったし、急発展してきたベッドタウンで、人口の多いマンションとかもいっぱい建ってきた所だったから。 避難所が開設されただけマシ、入れただけマシ、そう言う状況だった。 それでもやっと、ホッと一息つく事が出来た。 その途端に、おしっこがしたくなった。 時計を見れば、地震で逃げだして来てから、2時間くらい経っていた。 いつもなら、ほぼほぼ限界の時間。 あたしは、ママに言って、大急ぎでトイレを目指した。 壁の標識を追ってトイレに行くと、ウンチの匂いが漂って来て、係の人に止められた。 体育館の水洗トイレは使えなかった。 下水道が壊れて詰まっている上に、上水道も壊れているので、流す事が出来ないとの事。 現在は、それが分かる前に排泄した人の排泄物が山になっていると言う・・・。 あたしは、係の人の案内を聞いて、もれそうになるおしっこを必死で我慢して、「仮設トイレ」を目指した。 「仮設トイレ」は長蛇の列だった。 そして、ちょっと離れた所で、「増設作業」をやっていた。 地面に大きな穴を掘って、足場になる板を渡し、段ボールで囲う作業を。 もう限界を超えそうだったあたしはそれを見て、「次々と列から離れて植え込みの中に入って行く人」の後に続いた。 つつじの植え込みの中に潜り込んでしゃがみ、大急ぎでパンツを下ろす。 ちょっぴりもらしちゃったけど、ギリギリで間に合った。 お尻を何カ所もやぶ蚊に刺され、野ションの恥ずかしさに逃げるようにして避難所に戻ったあたしは、ポンと肩を叩かれて「きゃっ!」と声を上げる。 そこには中学のクラスメイト。 お互いの無事を喜びあって、あたし達はしばし話し込んだのだった。 |
3 冴子 2024-06-30 18:55:22 [PC]
夕暮れが迫って来る。 配られた物は、 毛布は2人に1枚。 水は、1人に500mlのペットボトル1つ。 食べ物は、防災備蓄の乾パンだけ。 電気は辛うじて通じているらしく、明るいけど・・・21時くらいになったら大半を消すらしい。 あたしの心配は、「おねしょ」の事だった。 「おもらしパンツ」は履いているけど、いつも当てられている「赤ちゃんおむつ」に比べたら全然吸収量は少ない。 毎晩するわけではないけど、2日に1回くらいはやっちゃうから。 かと言って、避難所の係の人に、「おむつを支給して欲しい。」なんて、恥ずかしくて言えるはずもなく、そもそも物資がかなり不足していて、紙おむつは赤ちゃんと介護が必要な人とで取り合い状態で、「おねしょしちゃうかもしれない中学生」になど回ってくるはずもなかった。 「ママぁ、大丈夫かなぁ・・・」 あたしが不安をにじませて言うと、 ママは、 「あの揺れでも倒れなかったんだから、きっと大丈夫よ、ここは。」 と、地震の事を言って来る。 「あ、いや、その、おねしょ・・・」 あたしは、ママにだけ聞こえるように小さな声で言う。 顔が赤くなって来るのを感じる。 「あ!、それがあったわねぇ、うーん・・・頑張ってもらうしかないわねぇ。ちゃんと、寝る前には、トイレに行ってね!?」 「はい・・・」 あたしは、そう答えたんだけど。 懐中電灯もなく、「あの仮設トイレ」に行く事を考えると気が重く、行こう行こうと思っている内にうつらうつらと眠り込んでしまい・・・ 翌朝、着ていた中学の制服をぐっしょりと濡らして目覚めたのだった!。 |
4 冴子 2024-06-30 18:56:22 [PC]
隣の家族の人の所まで濡れなかったのだけが、不幸中の幸いだった。 「まぁーっ!、中学生の癖におねしょなんてして・・・」 そんなひそひそ声が周囲に広がって行く。 仕切りもない避難所、すぐに周囲にあたしのおねしょは知られてしまい、ちょっとした騒ぎになり、あたしは恥ずかしさに、逃げるように避難所を飛び出したのだった。 避難所の裏で泣いていたら、クラスメイトの声。 驚いて振り向くと、クラスメイトが、 「こんな地震があったんだし、仕方ないよ。ね?、だから元気出して?」と言って慰めてくれた。 「う、うん…」と言ってうつむくあたし。 そうして、クラスメイトに抱きかかえられるようにして、あたしは避難所の中に戻ったのだった。 その日の昼。 あたしとママは、お家にいったん戻った。 着替えとか、避難所で使えそうなものとか、貴重品とか、食べ物とか・・・そして夜用の「おむつセット」を持って来るために。 おむつカバーとおもらしパンツを3まいづつ。布おむつはかなり多めに。おむつを洗うための洗剤と消毒剤そんなものを。 避難所でおむつを当てられる事を考えると、気が滅入る。 周りに丸見えになっちゃうから。 一応隠せるようにと、傘を何本か持って来たけど、「おむつ替えをしている」のはバレバレで、周りの人たちにあたしがおむつを当てられている事が知れ渡ってしまうから。 |
5 冴子 2024-06-30 18:59:54 [PC]
そうして夕方。 トイレを済ませたあたしは、覚悟を決めて目をつぶって、避難所で横になった。 「じゃあ、おむつ当てるね。」 ママが周囲の視線をさえぎるために傘を広げて周りに置いてから、あたしに言う。 「う、うん。」 あたしはそう答えてお尻を浮かせ、おもらしパンツを脱ぐ。 「あ、結構もらしちゃってるね。」 あたしが脱いだおもらしパンツを見てママがポツリと言う。 あたしは顔を赤らめてそらし、ママは、あたしが浮かせたお尻の下におむつカバーと多めの布おむつを敷いて、 「はい、お尻下ろして。」と言った。 周り中に他人がいる中で、いつもよりちょっと多めの布おむつに大きく足を押し広げられ、恥ずかしさが込み上げて来る。 「やん・・・」 思わずそんな声がもれ、あたしはちょっと抵抗してしまう。 「ほーら、暴れないの。赤ちゃんじゃないんだからぁ。」 ママのあやすような声。 あたしは、頭の中で、「今、あたしは赤ちゃんなの、だから恥ずかしくないの!」と唱えて、必死で恥ずかしさを我慢した。 |
6 冴子 2024-06-30 19:01:16 [PC]
「はい、終わったわよ。」 ママの声に、あたしは目を開け、ほっと息をつく。ママは傘を片付けている。 大きなおむつに押し広げられて、大きな隙間が空いた両足の間。恥ずかしい!。 でも、これで、おねしょしても大丈夫!。 明日からは、避難所からちょっと離れた川に行って、おむつの洗濯もしなくちゃいけないけど。 今晩は安心して眠れる・・・ そう思って、視線を上げたら、あたしの方を見て目を丸くしているクラスメイトと目が合ってしまった!。 「えっ!?」 「あ、ええと、その、トイレに一緒に行こうと思って、誘いに来たんだけど、その・・・それ、おむつ?。良く支給してもらえたね!?。」 「あ、これ、お家から持って来たの。」 あたしは、思わず答えてしまった。 「えっ!?、お家からって・・・あっ!、そういう、その、じゃぁ、おねしょ、ここで初めてってわけじゃなくて・・・その、お家でもずっと・・・」 しまった!、と思ったけれど、もう遅かった。 クラスメイトの視線が、生暖かいものに変わる。 「そっかぁ、知亜紀ちゃん、もとからおねしょしちゃう子だったんだね。」 あたしは、みるみる火照って来る顔をうつむけて、そっとうなづく。 「あ、た、大変だね。でも、知亜紀ちゃん背も小っちゃくて可愛いいし、仕草とか口調も幼い感じだから、小学生とかに見えない事もないし、その格好も結構似合うから、その、うん、おむつ当ててても大丈夫だよっ!、きっと、うん。」 クラスメイトは、そんな慰める(?)ような事を、あたふたと言って、気まずそうに去って行った。 あたしは、ここでのおねしょだけではなく、これまでもずっとおねしょをしていた事がクラスメイトにバレてしまい、ずぅーん!、と落ち込んだのだった。 |
7 冴子 2024-06-30 19:02:04 [PC]
その後。 あたしは、避難所で、昼も夜もおむつを当てて過ごすようになった。 その、「仮設トイレ」は汚くて臭くて行きたくなくて、しかもいつも人が並んでいて、間に合わなくて、おもらしパンツにもらしてしまってばかりだったから。 おもらしパンツのパッドは分厚くて乾きにくくて、でも、毎日濡らしちゃうから洗わなきゃいけなくて、だったら広げて乾かせる布おむつの方が楽だし、という事になって。 そして、そんなあたしを、クラスメイト達は「知亜紀ちゃん」ではなく「ちーちゃん」と呼ぶようになって、まるで幼児に対するように、可愛がってくれるようになったのだった。 ちゃんちゃん! |
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