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退院 (コメント数:4) |
1 冴子 2025-07-13 17:18:43 [PC]
「ついに今日、退院かぁー・・・」 あたしは病院の天井を見上げて物思いにふけっていた。 退院自体はうれしいけれど・・・ 「ふう。・・・あ」 くすぐったい感触とともに、おまたが暖かくなる。 その暖かさは、すぐに、お尻の方へと広がって行く。 おもらしをしたあたしは、枕もとのナースコールを押した。 すぐに、ワゴンにおむつやら服やらを積んで看護師さんが来た。 「出ちゃった?」 「うん。」 「じゃあ、時間もちょうど良いし、退院のためのお着替えしようね!。」 「う、うん・・・」 あたしは、戸惑うように返事をした。 そんなあたしを励ますように看護師さんが言う。 「まゆみさん、退院おめでとう!。リハビリ、良く頑張ったね。」 「う、うん。でも・・・」 「大丈夫よ、あなただけじゃないんだし。すぐになじめるわ。」 看護師さんは明るくそう言って、あたしのおむつを替え始めた。 交通事故で入院して2か月。 リハビリを頑張って、無事、ほぼ元通りに歩けるようになった。 でも・・・ 事故のせいで、自分でおしっこを我慢する機能だけは、完全に失われてしまった。 だから、退院後もあたしはおむつを当て続けなければならないのだった。 今、日本では、「おもらしする人」に対する風当たりがすごく強い。 そのため、「おもらしする人」は、強制的に自分では外せないおむつを当てられてしまったり、「おむつを当てられている事が一目で分かる服装」をしなければならなかったりする。 学校も、退院してからは、通称『おむ中』という、おもらしが直らない子達が通う中学へと転校しないといけない。 大きなおむつを当てられ、保育園児のようなかわいい制服を着せられて。 「要支援排泄行動遅延児童」、通称「ようちえんじ」と呼ばれて。 |
2 冴子 2025-07-13 17:19:30 [PC]
看護師さんの手が、てきぱきとあたしのおむつを開けて行く。 ぐっしょりと濡れたおむつを見て、看護師さんが言う。 「うん。全部出てるみたいね。これなら退院後もおむつだけで大丈夫ね。」 看護師さんの言葉を聞いて、お医者さんに言われた事を思い出す。 今のあたしは、おしっこが溜まると、反射機能でおしっこが出てるんだって。 そのおかげで、自分でおしっこを止めることは出来ないけど、カテーテルとかいう器具をおしっこの出口から入れて(痛そう!、コワイ!)おしっこを出す事はしなくて済むんだって。 おむつはとっても恥ずかしいけど、痛そうなことはしなくて済むのは、良かったと思う。 「じゃあ、教わったみたいに、両手で足を抱え込んで、お尻を上げてもらえるかな?。」 看護師さんの声にはっとして、あたしは言われた通りにして、お尻を持ち上げる。 あたしの大事な部分を看護師さんの前におっぴろげる姿勢になり、女同士とはいえ、すっごく恥ずかしい。 でも、これからはおむつ替えの時には、これをずっとやらないといけないんだって。 おむつを替えてくれる人の負担を減らすのと、おむつ替えを早くするために。 「はい、お尻下ろして。」 「はーい」 あたしは、お尻を下ろす。 気持ちの良い乾いた布おむつの感触。 おむつゴミ問題のせいで、今では紙おむつは感染症とかの特別な場合以外は使えなくなっていた。 「まゆみさん。もっと大きく足を広げてもらえるかな?。」 「え?」 「外用のおむつは、いっぱい重ねるから、もっと足を広げてもらわないと当てられないの。」 あたしは、恥ずかしさをこらえて、足を大きく広げる。 分厚い布おむつが、あたしの足をさらに押し広げるようにして、当てられて行く。 おむつでガニ股になってしまう感触が、あたしを赤ちゃんになったような気持ちにさせた。 |
3 冴子 2025-07-13 17:20:25 [PC]
「はい、出来たわよ。」 看護師さんの声にあたしは体を起こした。 目に飛び込んで来たおむつは、予想以上に大きかった。 黙り込むあたしに、看護師さんはやさしく笑って、 「さ、お着替えしましょうね。」 と言った。 入院着の柔らかい生地で出来た前ボタンのワンピースを脱いで、おむつだけになる。 ふくらみかけの胸と、大きなおむつ。 その組み合わせが、とっても恥ずかしい。 あたしは、看護師さんが渡してくれた、前ボタンのジュニアブラを付ける。 ブラを付け終わったあたしに看護師さんが言う。 「じゃあ、これ着ようね。」 看護師さんが手に持ったものを見て、あたしはビクッと反応する。 『拘束ロンパース』 自分でおむつを外せなくするための服。 「はい、ばんざーい」 努めて明るく言う看護師さん。 あたしは、その声に乗るように、黙って両手を上げた。 看護師さんが、『拘束ロンパース』をあたしの頭からかぶせて着せて行く。 背中のファスナーが閉められ、首の後ろで、カチンと鍵付きのボタンが閉められる。 「じゃあ、もう一度寝ころんで。」 あたしが、ベッドにころがると、看護師さんは、『拘束ロンパース』のおまたのおむつ替え用の鍵付きホックを、ガチンガチンと閉めて行く。 あたしは、その音を聞きたくなくて、手で耳を押さえていた。 「じゃあ、外着だね。」 看護師さんがあたしが選んでおいた「外着」=おもらしをしてしまう人が家の外に出る時に着なければいけない「おむつを当てている事がはっきりと分かる服」を渡してくれる。 「おむつを当てている事がはっきりと分かる」この服は、 1おむつが丸見えになってしまうか、 2おむつを当てられているシルエットが強調されている(特に足の間の大きな隙間)か、 3着ている人の年齢に比べて大幅に幼いデザインか、 だった。 あたしが選んだのは、3だったんだけど。 「・・・幼稚園の子の服みたい。」 恥ずかしさにうつむいて言うあたしに、看護師さんは 「大丈夫、可愛いわよ。」 と言って慰めてくれたのだった。 |
4 冴子 2025-07-13 17:21:08 [PC]
「『可愛い』かぁ・・・」 ほめる言葉ではあるけれど、今は『幼い』と同じ意味だから。 あたしは、ため息をつきながら、ママが迎えに来るのを、ベッドの上で待ったのだった。 そうこうする内に。 「まゆみ!、やっと退院ね。」 そう言いながらママがやって来た。 ママは立ち上がったあたしの姿を見て、一瞬はっとしたように表情を凍らせたけど、すぐにニッコリ笑って、柔らかい表情であたしに 「ふふ、まゆみ、大丈夫。可愛いわよ。」 と言ったのだった。 「ママ、それって、『赤ちゃんみたい』って事?」 あたしはちょっぴり口をとがらせて聞く。 「ふふ、ママから見たら、ちょっとの違いよ。まゆみは幼い格好をしてようが、おむつを当てていようが、ママにとっては、可愛い娘で、中学生のおねえちゃんなんだから。」 「なんか、ちょっぴり赤ちゃん扱いされたような気がするなぁー」 と言って、あたしは甘えるようにママの胸に顔をうずめた(ちょっぴり足を曲げて背を低くして)。 なんか、無性に甘えたい気分だった。 そんなあたしを、ママは 「あらあら、甘えんぼさんになっちゃって。」 と言って、やさしく抱きしめてくれたのだった。 病院を出て、ママと並んでバス乗り場へと歩いて行く。 みんながあたしのことを見ているような気がして、きょろきょろしながら。 スカートがめくれておむつのふくらみが見えてないか?、大きなおむつのシルエットが服越しに出てないかと気にして、自分のお尻周りを触りながら。 そんなあたしに、ママは 「そんなに気にしていると、何事かと思ってかえって見られるわよ?」 といたずらっぽく言う。 あたしはあわてて、手を止めて、何気ない風を装ってぎくしゃくと歩くのだった。 ちゃんちゃん! |
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