すると、伯爵は (コメント数:1) |
1 Ryou 2014-01-25 11:32:56 [URL]
すると、伯爵は、急に語調をあらため、 「あ、さう。ではまた……。近頃、大沼先生もお変りはないかな? お会ひになつたらよろしくどうか……」 さう云ひすてゝ、さつさと奥へ引つ込んでしまつた。 「どうもをかしい。僕はこんなことを云ひに来たんぢやないんだ。曾根部落の青年たちは、泰平郷の無産インテリ階級の若い女のひとたちに対して、想像以上の反感を抱いてゐるつていふことを、あの事業の中心になつてゐる人の耳に入れておきたかつたんです。彼等は、泰平郷の別荘人種を決してブルジヨアだとは思つてゐないんだ。却つてブルジヨアでもないくせにといふ軽蔑を交へた敵意が、僕には特に強く感じられて、はゝあ、そんなもんかなと思ひました。なかなかややつこしいでせう?」 また素子と二人きりになつた気安さで、彼はそのまゝ喋りつゞけた。 |
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