九月八日死去 - 材大なれば用を為し難し

1 Ryou 2014-03-27 09:48:00 [URL]

妻　福代こと去る九月八日死去いたしました。急性肺炎の手おくれが原因であります。まつたく、小生の機敏を欠いだ処置のためで、自ら慰めやうもなく、妻にもたゞ申訳なく思つてゐます。葬ひは時節柄、内輪だけですませましたが、生前特別な交誼を願つてゐました貴女へ、とりあへずご報告いたしたく、一筆認めました。なほ妻の旧友の方には、二三心覚えだけで通知はしますが、お気づきの向きへは、貴女から然るべくお伝へくださるやう願ひます。

　加部福代が死んだといふことは、すぐには信じられませんでした。住居が女学校の近所なのと、教室で席が並んでゐた関係で、保枝はわりに折々その家へ遊びに行つたことがあり、卒業後、向うはすぐに養子を迎へることになつて、その披露にも同級では自分がたつた一人招かれたのですが、それ以来、だんだん疎遠になつてしまひ、お互に訪ね会ふ機会もなく、年一度のクラス会にもかけちがつて顔を合はせたことはないのでした。終戦後、どこやらの疎開先から帰つたといふ知らせをだしぬけにもらつて、さうさう、こんな友達もゐたんだ、と、旧い記憶をよびさまされたほどです。

材大なれば用を為し難し

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