邦画王

野獣死すべし(1980年)② (コメント数:56)

1 @kira 2013-02-25 23:02:45 [携帯]

の画像を貼りましょう。

2 @kira 2013-02-25 23:03:55 [携帯]


480 x 800
シーン70
 
令子『・・・・・・?』
 
会議室の令子、吸い寄せられるようにドアに向かう。
 
令子『・・・・・・』
 
ドアの前で伊達を見つめる令子。
 
伊達『・・・・・・』
 
伊達、背後に気配を感じて立ち止まる。マスクを外す伊達。
そして、決心したようにゆっくりと振り返る。
 
令子『・・・・・・!』
 
予感はしていたが信じられない事実に戸惑う令子。
 
令子『・・・・・・伊達さん・・・・・・』
 
令子、伊達を切なげに見つめる。
放心したような表情の伊達。

3 @kira 2013-02-25 23:05:06 [携帯]


1280 x 719
シーン70
 
伊達、無表情のまま、令子に拳銃を向ける。

4 @kira 2013-02-25 23:06:36 [携帯]


852 x 480
シーン70
 
そして、撃鉄を起こし躊躇する事なく引き金を引き、発砲する伊達。

5 @kira 2013-02-25 23:07:53 [携帯]


480 x 800
シーン70
 
令子『・・・!・・・』
 
伊達が放った銃弾は令子の心臓に命中。
背後の壁に血が飛び散る。
白のブラウスが赤く染まって行く。
そのまま、スローモーションで膝を着いて、倒れて行く令子。

6 @kira 2013-02-25 23:09:35 [携帯]


480 x 800
伊達邦彦の犯罪
 
伊達が計画した東洋銀行襲撃は多少、複雑な部分があるように思う。
伊達は以前に闇賭博場を襲撃しており、喰うに困らない金銭を得ている。
従って、金銭目的の計画ではない事は明らかである。
ならば何故、銀行を襲撃するのか。
それは人を殺す為なのではないだろうか。
しかし、それにしては慎重過ぎるほどに綿密に計画を立てている。
銀行を下見して、見取り図を入手、銀行フロアと金庫室が離れている事から相棒が必要と判断すると公園に通い、浮浪者を物色する。
しかし、相棒は思わぬ場所で見つかる。
場所は同窓会会場のレストラン。
他人に対する鮮やかなる暴力は、伊達を虜にする。
男の住処に赴いて、繋がれた鎖の存在を知ると、自らの手で断ち切らせて、共犯関係へと誘い込む。
ここまで観ても伊達の犯行動機は金のように思える。
実際、伊達は銀行でそれほど殺人を犯してはいない。
という事は伊達には、更なる目的があったのではないか。
伊達は逃亡した後に、自分が連れ戻された素晴らしい狩り場に戻り、以前のように思う存分狩りを楽しむつもりだったのでは…。
 
もうひとつ疑問に思う点がある。
華田令子殺害だ。
このシーンも、未だに語られる事が多い場面である。
顔を見られたから撃つのは理解出来るが、そもそもマスクを取ったのは、伊達自身である。
あんな美人を殺すなんてと言う意見が大半だが、反面、あのシーンがあるからこそ、ハードボイルド映画として成立しているとも言えよう。
では何故、伊達は令子を撃ったのか。
それは以前、私が立てた仮説『伊達邦彦性的不能論』に起因する。
伊達は報道カメラマンとして、戦場を転々として凄惨な現場を目撃していくうちに、性的不能になってしまったのだろう。
女を抱けなくなってしまった伊達の愛情表現が令子を撃つという事だったのだ。
言うなれば拳銃で撃つという行為そのものが、伊達にとってのファックなのである。
そう考えると令子は、伊達がファックするに相応しい女だったという事になる。
伊達は、令子の愛情に答えていたのである。

7 @kira 2013-02-25 23:17:55 [携帯]

『野獣死すべし』勝手にキャスティング
 
この作品は松田優作という稀有の俳優の存在無くしては考えられないが、そこを敢えてキャスティングしてみようと思う。
あくまでお遊びで。
 
①若手俳優編
 
伊達…岡田将生
真田…柄本兄弟
令子…佐々木希
柏木…大森南朋
 
全然、伊達のイメージではないが減量すれば、現在の若手ならではの伊達が見れるかも。
 
②中堅俳優編
 
伊達…玉木宏
真田…伊勢谷友介
令子…北川景子
柏木…小日向文世
 
玉木宏を小日向文世が執拗に追い詰める様が見たいだけの配役。
 
③キムタク編
 
伊達…木村拓哉
真田…竹野内豊
令子…松たか子
柏木…森本レオ
友情出演…イ・ビョンホン
 
優作を意識しているキムタクをキャスティングする事で、逆に優作との違いが浮き彫りになると思う。
 
④デスノート編
 
伊達…藤原竜也
真田…松山ケンイチ
令子…戸田恵梨香
柏木…鹿賀丈史
 
冗談の割りに上手くハマってる。
鹿賀丈史の柏木も予想外にイケるかも。
 
⑤ミュージシャン編
 
伊達…福山雅治
真田…SION
令子…中島みゆき
柏木…桑田佳祐
 
あの変な話し方で女を口説きまくって、犯行を忘れる伊達ってのもアリか。
 
⑥芸人編
 
伊達…太田光
真田…上田晋也
令子…太田光代
柏木…竹中直人
 
優作フリーク芸人で配役。
太田がボケて、上田が突っ込む。
竹中がなりきり優作で暴走。
事件は迷宮入り。
 
⑦AKB編
 
伊達…大島優子
真田…篠田真理子
令子…板野友美
柏木…高橋みなみ
ブタ…秋元康
 
もはや、新しい地平に飛び立ってしまった『野獣』。
誰も望まない形で秋元康プロデュースで映画化されるのだった…。
 
⑧ドラえもん編
 
伊達…ジャイアン
真田…スネ夫
令子…しずちゃん
柏木…ドラえもん
伊達に射殺される通行人A…のび太
友情出演…パーマン
 
野獣と言えばジャイアン。
リサイタルで発生する大量殺人事件。
事件を捜査するドラえもん。
しかし、事件の裏には男たちの固い絆があった。

8 @kira 2013-02-25 23:18:46 [携帯]

シーン71
 
銀行のシャッターが上がって行く。
 
シーン72
 
警官による検問が実施される。
警察のヘリポートからヘリコプターが飛び立って行く。

9 @kira 2013-02-25 23:19:26 [携帯]

シーン73
劇場版の台詞
伊達の声『まず、銀座線で神田に出る。それから山手線に乗り換えて、東京で降りる』
真田『そのまま、熱海に直行か?』
伊達の声『そうだ・・・熱海からレンタカーで伊豆の別荘に入る』
 
地下ホール。
エスカレーターに乗った伊達が上がってくる。
伊達と真田の声が被さる。
通路に出た伊達、そのまま歩く。
通路を歩いて来た別行動の真田、少し離れた後方を歩いている。

10 @kira 2013-02-25 23:20:39 [携帯]

シーン74
劇場版の台詞
柏木『やぁ!』
伊達『・・・・!』
柏木『偶然が二度も続くと、気持ちワリィなあ』
伊達『・・・・・・やっぱり、縁があるんじゃないですか?』
柏木『はっはっはっへっへっへ・・・・・・神田?』
伊達『ええ・・・出版社で翻訳の打ち合わせがあるもんですから・・・』
柏木『ほぉ~、俺も。神田の定食屋で、ヤクザが学生にブチ殺されたって、全く、どうなってんだよ』
柏木『近頃、ウチに帰ってないじゃないの。』
伊達『・・・・・・最近、よく旅に出ますんで・・・』
柏木『フゥ~ン・・・今日も?』
伊達『打ち合わせが終ってから・・・』
柏木『どこへ?』
伊達『・・・東北の方へ・・・』
 
シーン75
 
真田『・・・・・・?』

11 @kira 2013-02-25 23:25:11 [携帯]

シーン74
 
銀座線の列車内。
真田がドアに凭れている。
少し離れたところに吊革を持った伊達。
肩を叩かれた伊達が振り返るが誰もいない。
反対側から声。
振り向くと柏木がいる。
伊達と同じ列車に乗り合わせた柏木は人生の運を使い果たしたといって良いくらいの幸運だ。
柏木が刑事になった意味は伊達と出会う為にあったと言っても過言ではないだろう。
伊達の方は人生最大の不幸がやって来たようだ。
伊達をマークする事を諦めたかのように、『定食屋殺人事件』を捜査中の柏木。
ヤクザが学生に殺害されたという、この事件も『野獣死すべし』を象徴している。
弱者が必ずしも、強者に負ける訳ではないのが現代社会である。
穏やかそうな人間が何時、暴力を振るう側に転じるかは誰も予測出来ないだろう。
柏木は、質問攻めにして伊達を追い込んで行く。

12 @kira 2013-02-25 23:26:13 [携帯]

シーン77
劇場版の台詞
柏木『ヤマか?!』
警官『銀行が襲撃されました』
柏木『いつ、どこで?!』
警官『30分前、東洋銀行の日本橋支店です。13人射殺され、相当な金が強奪されたそうです』
無線の声『本部より各移動、各移動。車で逃走したと見られる犯人2名の内1名は、身長180センチ以上、着衣はベージュ色のブッシュマンコート、同じ色のレインハットを着用。マスクで顔を隠し、あとの一人は米軍のコートを着用・・・』
柏木『よし、わかった!ご苦労さん!』

13 @kira 2013-02-25 23:27:12 [携帯]

シーン77
 
ガード下を伊達と柏木が歩いて来る。
上空をヘリコプターの爆音が鳴り響く。
パトカーが何台も通り過ぎて行く。
柏木、その中の一台を警察手帳を見せて止める。
伊達は構わずに歩いて行く。
30分前、日本橋の銀行が襲撃され、13人が射殺された事を知る。
その時、無線が入り、犯人は二人組で犯人の衣服、外見を伝える。
柏木、振り返って先を歩いている伊達を見る。
逆光のガード下を歩く後ろ姿。
服装は違うが伊達に犯人の背格好がダブる。
パトカーを行かせて、伊達の後を追う柏木。

14 @kira 2013-02-25 23:39:55 [携帯]

シーン78
 
歩いて来る伊達と柏木。
出版社の前までやって来る。
創立五十周年の貼り紙がしてあり、シャッターが閉まっている。
打ち合わせがあるという伊達の嘘がバレる。
出頭しようとする伊達に柏木は犯人は二人である事と、令状を取らずに取り調べるのはまずいという理由で断っている。
伊達がやったという確証が無い為、もう少し様子を見るつもりである。
伊達が持っているバッグを見る柏木。
 
本編ではカット。
 
この後のシーンに続く遣り取りがあるが、出版社のシーンもカットされているから、初めから撮影はしていないのかも知れない。
 
シーン79
 
夕暮れの上野駅。
夕陽が差し込んでいる。
伊達が歩いて来る。
 
本編ではカット。

15 @kira 2013-02-25 23:40:50 [携帯]


800 x 532
ロケ地探偵団
 
伊達と柏木が歩いているガード下の横断歩道>>85
 
JR神田駅東口神田駅前交差点付近
 
撮影されたのは横断歩道を渡りきった辺りだろう。
ここで柏木がパトカーを止めている。
そして、伊達は横断歩道から左に曲がって高架沿いを歩いている。

16 @kira 2013-02-25 23:42:28 [携帯]

シーン80
 
上野駅
プラットフォームの急行・八甲田、列車車内。
 
伊達の腕時計のズーム。
19時10分。
列車が発車する。
動き出す車輪。
賑やかな車内。
ホッとしたかのような伊達、本を開く。
背後のドアが開き、男が入ってくる。
柏木。
伊達の斜め後ろの座席に座る。
柏木の方を見る伊達、眼鏡の奥の眼が見開かれる。
柏木、内ポケットからトランジスタラジオを取り出し、駅弁を食べている。
 
シーン81
 
暗闇の中を急行・八甲田が走り去る。

17 @kira 2013-02-25 23:44:08 [携帯]

シーン82
 
乗客が減った車内。
検札している車掌が立ち去る。
そこへ柏木がやって来て、伊達の向かい側の座席に座る。
窓際にトランジスタラジオを置く。
軽快な音楽が鳴っている。
 
柏木『こんなの、3千円もするんだってよぉ・・・高いよなぁ。それに、乗車券が3千9百円に、急行券が9百円か・・・。こんなのみんな、必要経費にしてくれるんだろうねえ』
 
伊達『難しい問題でしょうねえ』
 
柏木『難しいよお・・・必要経費プラス金一封貰えるか、厳重戒告処分になるか、あんたが鍵を握ってるんだからね。責任は重大だよ』
 
伊達『・・・・・・・・・・』
 
柏木『しかし俺も、定食屋殺人事件をほっぽりだすわ、本署に連絡しねえわ、こんなアホなデカいねえなあ・・・』
 
音楽番組が中断され、臨時ニュースに切り替わる。
 
ラジオ音声『番組の途中ですが、東京日本橋の銀行襲撃事件で、新たなニュースが入りましたのでお伝えいたします。犯人が逃走に使用したと見られるライトバンが、つい先ほど、発見されました。場所は東洋銀行日本橋支店のすぐ裏手の駐車場で、このことから捜査当局では、犯人二人は、車で逃走したのではなく、日本橋を通過する三つの地下鉄のいずれかで、逃走を図ったものと断定し、捜査体制を大幅に変更する模様です』
 
柏木『こんなアホな刑事は・・・やっぱ、いてもいいな』

18 @kira 2013-02-25 23:49:28 [携帯]

柏木『ところで、あんた・・・どうして通信社やめたんだ』
 
疲れたような伊達、眉間をマッサージする手を止めて―。
 
伊達『もう調べはついてるんでしょ?』
 
柏木『アンゴラ、レバノン、インドシナ、それに去年まではウガンダだ・・・。よくもまァまァあれだけの戦場を渡り歩いたもんだ。通信社行って、お宅の写真を見せて貰ったんだよ。・・・・・・ありゃあ、ひでぇなあ・・・』
 
伊達『・・・・・・』
 
柏木『特に2、3年前からのは・・・あれは俺達が見る検死の写真よりひでぇや・・・。』
 
インサートされる戦場の報道写真。
 
柏木『ボロッキレのようにブチ殺された兵士・・・住民。そして潰された顔とか、飛び出した内臓とか、そんなもんばかりじゃないか・・・日本の新聞は穏健だから、あんたみたいなハードな写真は載せないだろう。本社も見るに見かねて呼び帰した・・・無理もねぇなぁ・・・。』
 
柏木『あんた、どうして、ああいう写真しか撮らなくなったんだ』
 
窓に映る黙ったままの伊達。
柏木から顔を逸らし、窓の外を見る。

19 @kira 2013-02-25 23:50:58 [携帯]

シーン85
 
下車する家族連れ。
発車する列車。

20 @kira 2013-02-25 23:52:34 [携帯]

シーン86
 
伊達と柏木しかいなくなった車内。
伊達は眼を閉じている。
 
ラジオ音声『今日最後のニュースをお伝えします。今日午後3時、東京日本橋で発生した銀行襲撃事件は、いまだ犯人の手がかりすらつかめておりませんが、捜査当局は射殺された13人の内、客としてただ一人殺された女性について重大な関心を寄せています。この女性は、中央区日本橋のUSワックス社長秘書、華田令子さん、23歳ですが、なぜ大勢の客の中で華田さんだけが射殺されたのか、不可解な点(プツッ)』
 
拳銃の撃鉄を起こす音。
伊達、ゆっくりと眼を開ける。
柏木が銃口を伊達に向けている。
 
柏木『ようやく令状なしで取調べる決心がついたよ。・・・・・・いい女だったがなぁ、あの娘は・・・』
 
ニュースで華田令子の名が出た瞬間、柏木の頭の中のパズルのピースが埋まった。
最早、令状など必要ない。
 
柏木『動くな・・・』
 
素早く、伊達のボディチェックをする。 凶器らしいものは何も見当たらない。
バッグを開けて、中身を調べる。
迷彩柄の戦闘服が入っている。
 
柏木『・・・・・・?!どういう訳だ、これは・・・』
 
困惑する柏木。
 
伊達『インドシナで着てた、U.S.アーミーの戦闘服です』
 
伊達、柏木を見つめながら答える。
 
伊達『次の駅で引き返す決心・・・つきました?』
 
柏木『馬鹿言っちゃいかんよぉ!相棒はどうした?!どこでおち合う予定だ!』
 
伊達『質問の意味が・・・よくわかりませんが・・・』
 
柏木『妙な気分だよ・・・。俺はあんたを殺(バラ)したくなってきた。・・・・・・どうしてかな、・・・・・・あんたの目がそうしろと誘ってるんだよ』
 
柏木『・・・・!』
 
真田『はい、どうも』

21 @kira 2013-02-25 23:57:39 [携帯]

車内アナウンス『間もなく、午前0時になります。車内を少々暗くしますので、明日の朝までごゆっくりお休み下さい』
 
このアナウンスの声、どこかで聞き覚えはないだろうか。
ないって?
それもそのはず。
このアナウンスを担当したのは、村川透監督本人なのだ。
 
伊達、柏木から奪った拳銃の弾倉を開け弾を全て抜き取り、一発づつ床に落としてゆく。
残った一発を弾倉に戻して回転させる。
そして、柏木に銃口を向ける。
 
伊達『寝ますか・・・寝る前に・・・お話、ひとつしてあげますよ・・・・・・リップ・ヴァン・ウィンクルの話って知ってます?』
 
伊達『いい名前でしょ?リップ・ヴァン・ウィンクル・・・・・・』
 
伊達『彼がね、山へ狩りに行ったんですよ・・・。山へ狩りに・・・』
 
引き金を引く伊達。
 
柏木『・・・・・・!・・・・・・』
 
伊達『そこでね、小人に会ったんです。なんていう名前の小人だったかは忘れましたけどねぇ・・・ずいぶん昔の話だから・・・』
 
伊達『とにかくその小人に会って、ウィンクルはお酒をご馳走になったんですよ。そのお酒があまりにもおいしくて、どんどん酔ってしまったんです・・・。そして、夢を見たんです・・・眠りに落ちて・・・夢を見たんです・・・』
 
引き金を引く伊達。
 
柏木『・・・・・・!・・・・・・』
 
伊達『寒いですかぁ?寒いでしょ?』

22 @kira 2013-02-25 23:58:12 [携帯]

伊達『その夢はねぇ・・・どんな狩りでも許されるという素晴らしい夢だったんです』
 
伊達『ところが、その夢がクライマックスに達した頃、惜しいことに目が覚めてしまったんですよ。あたりを見廻すと、小人はもういなかった・・・森の様子も少し変わってた・・・ウィンクルは慌てて、妻に会うために、村へ戻ったんです。ところが・・・・・・妻はとっくの昔に死んでたんですよ。村の様子も全然変わってましてねぇ・・・わかりますぅ?』
 
伊達『つまり・・・ウィンクルが一眠りしてる間に、何十年もの歳月がたっていたんです・・・おもしろいでしょ?』
 
引き金を引く伊達。

23 @kira 2013-02-25 23:58:56 [携帯]

伊達『ところが、その夢がクライマックスに達した頃、惜しいことに目が覚めてしまったんですよ。あたりを見廻すと、小人はもういなかった・・・森の様子も少し変わってた・・・ウィンクルは慌てて、妻に会うために、村へ戻ったんです。ところが・・・・・・妻はとっくの昔に死んでたんですよ。村の様子も全然変わってましてねぇ・・・わかりますぅ?』

24 @kira 2013-02-25 23:59:32 [携帯]

伊達『つまり・・・ウィンクルが一眠りしてる間に、何十年もの歳月がたっていたんです・・・おもしろいでしょ?』
 
引き金を引く伊達。

25 @kira 2013-02-26 00:00:17 [携帯]

柏木『・・・・・・くっ!・・・・・・あ・・・あんたにゃぁ、初めっから妻なんかいなかったじゃないか・・・・・・』
 
徐々に、伊達の話の意味を理解する柏木。
 
伊達『僕の話をしてるわけじゃないでしょぉ・・・リップ・ヴァン・ウィンクルの話をしてるんですよぉ・・・』

26 @kira 2013-02-26 00:05:06 [携帯]

柏木『・・・・・・リップ・ヴァン・ウィンクル・・・・・・小人に・・・・・なんていう・・・名前の・・・酒を貰ったんだ・・・・・?・・・・・・できれば・・・俺も・・呑んでみたいなぁ・・・』
 
冗談まじりに柏木が訊く。
顔からは、血の気が引き、額から冷汗が噴き出ている。
 
伊達『覚えてます。ラム、コァントロー、それに、レモンジュースを少々、シェイクするんです。わかります?』
 
柏木に引導を渡すかのように答える伊達。
 
柏木『・・・・・・X・・・・・・Y・・・・・・Z・・・・・・』
 
柏木、自分の運命を悟ったようにカクテルの名を答える。
 
伊達『そう・・・・・・これで終わりって酒だ』
 
伊達の眼が吊り上がる。
伊達、引き金を引く。
 
柏木『ぐわっ!』
 
空砲。
 
柏木『くぅぅ~・・・』
 
自分がまだ生きている事が信じられない柏木。
 
伊達『あ・・・あ・・・あはっ・・・あんた、ツイてる・・・』
 
撃った伊達自身も信じられないと言った表情。
柏木の強運に笑いが込み上げる。

27 @kira 2013-02-26 00:05:55 [携帯]

伊達『寝ますか?おもしろかったでしょう?僕も疲れちゃった・・・寝ましょう・・・今日は・・・』
 
徐々に、眼を閉じて行く伊達。
極限の恐怖に限界寸前の柏木。
伊達が眠った事を確認すると、一目散に逃げ出す。
眼を開けて、柏木に向かって発砲する伊達。
銃弾が柏木の肩に命中。
柏木の動きが止まり、ドアの手前で倒れる。
柏木に駆け寄る伊達。
伊達、柏木をひたすら蹴り続ける。
伊達、真田を呼んで柏木を座席に座らせると、再び拳銃のグリップで柏木を殴りつけたり、蹴ったりの暴行を続ける。
感極まる伊達。
 
伊達『戦争だ!戦争だ!』
 
伊達、自分の座席へと走って行く。
 
車掌『お客さん、お客さん、どうしたんです?!』
 
車掌がやって来て、座席で眠っている真田に呼びかける。
真田、目を開けると車掌を睨み返す。
真田の隣にぐったりとなった柏木。
凍りつく車掌。
次の瞬間、ドアが開く。
車掌がドアの方向に目をやると、戦闘服を着た伊達がライフルを構えて立っている。
逃げようとする車掌。
伊達がライフルを撃つ。
被弾した車掌が倒れる。

28 @kira 2013-02-26 00:06:47 [携帯]

インサートされる真田や柏木の写真。
 
柏木『うわぁぁぁ!』
 
ドアの前に立っている柏木。
伊達の狂気に怯えている。
ドアを閉める柏木。
発砲する伊達。
ドアの窓ガラスが割れる。
 
真田『もう、やめよう。金も獲ったし、もうやめよう!な?な?』
 
パニックになった真田が、伊達を羽交い締めにして抑えようとする。
 
伊達『よしよし、よし、わかった。よし、わかった!落着け、落着け!!』
 
真田を逆に落ち着かせようと肩を揺さぶる伊達。
 
伊達『落着け、いいか?落着いたか?深呼吸、深呼吸だ!』
 
真田、深呼吸する。
 
伊達『よぉ~~し!一時撤退だ!なぁ!一時撤退!いいか?逃げるぞ!』
 
真田『どこに逃げンだよお?!』
 
伊達『なに?!よぉし、まかしとけ!おい、金持ってこい、金を持ってこい!』
 
真田、バッグを持って来る。
伊達、ライフルで窓ガラスを叩き割る。
車外から風が吹き込んでゴミが散乱する。
真田からバッグを受け取り、窓の外へ投げる。
次に真田を窓から脱出させる。
最後に伊達が脱出する。

29 @kira 2013-02-26 00:11:09 [携帯]

列車シーンについて①
 
列車のシーンは、『野獣死すべし』に於いてのみならず、日本映画にとっても珠玉の名シーンである。
撮影は実際の列車とセットで行われた。
最初は全部、実物の列車で撮影される予定だったが、松田優作が演技に集中する為に頼んで急遽、列車のセットが組まれた。
松田優作も
『いいセットでした。今村さん(美術)が、よくやってくれました。列車内のところでも、クランク・インする何日か前に、無理やり頼んでセットを作ってもらった。あのセットを作ったおかげでね、全然、変わっちゃったから。あれ、セットでなかったら、あんなことはできなかった。今考えたらゾッとするね、あれ、セットでなかったら、どうなってたんだろうって』
と、ベタ褒めだった。
そして、松田優作はセットに負けない素晴らしい演技で答えている。
今では有名になってしまったが、松田優作はこのシーンで瞬きをしていないのだ。
列車のシーンは長回し。
本番一回で撮影された。
シーンの性質上、松田優作と室田日出男のカットの切り返しがあるのだが、これは二台のカメラで撮影されている為、カット毎に撮影した訳ではない。
優作が意識して瞬きしなかったというよりは、演技に集中するあまり、瞬きを忘れていたと言ったほうが近いだろう。
松田優作にとって、こんな事は俳優として当然の事であった。
現在の俳優がこういう事をやると、公開前から、それを売りにしてしまうだろう。
そして、目の演技が凄まじい。
『蘇える金狼』の一年後に同じ俳優がここまで変われるものか。
優作の演技に対する意識レベルに当時の邦画界が追いついていなかった事が残念である。
この演技が製作されずに終わった丸山昇一脚本『荒神』に繋がったであろう事は容易に察しがつく。
優作は『野獣』よりも『荒神』を先に撮りたがっていたくらいで、すでに『野獣』など眼中になかった。
『荒神』が優作のエポックになっていた事は間違いなく、それだけに製作されなかった事が悔やまれてならない。

30 @kira 2013-02-26 00:12:17 [携帯]

列車シーンについて②
 
そして、もうひとつ特筆すべきは室田日出男氏の熱演だろう。
松田優作の狂気の演技ばかりが取り上げられがちだが、室田氏の助演があるからこそ、優作の狂気が浮かび上がるのだ。
これを他の俳優がしれっと演れば、阿呆みたいなもんである。
このシーンは、長回しの一発撮りだった。
最初は平然とした表情の室田氏なのだが、途中からどんどん顔色が変わって行き、クライマックスには顔が汗塗れになっている。
一体、どういう芝居をすれば、こんな事が出来るのだろう。
考えが浅い人間なら、エアコンの温度を上げたんだろうと思うだろう。
ならば、汗が出ていない優作の説明がつかない。
だったら温度を下げたんだろうと短絡的に考える。
だとすれば尚更、室田氏の説明がつかない。
即ち、松田優作、室田日出男、両氏が凄いという証明が成り立つ。
最早、演技を超えているとしか言いようがない。
 
このシーンは、セットで撮影されたものだが、それを感じさせない。
それは、今村氏のセットに依るところが大きいが、もう一人、照明の渡辺三雄氏の功績も忘れてはならない。
渡辺氏と村川組とは、『大都会PARTⅡ』からのつきあいである。
『蘇える金狼』も、渡辺氏が照明を担当していた。
『金狼』と『野獣』では、全くカラーが異なるが、渡辺氏の照明に類似点を見出す事が出来る。

31 @kira 2013-02-26 00:20:30 [携帯]


258 x 163
現代の[リップ・ヴァン・ウィンクル]伊達邦彦
 
伊達が柏木に語るリップ・ヴァン・ウィンクルの話は、アメリカの作家ワシントン・アーヴィングが1820年に発表した短編集『スケッチ・ブック』に収録された寓話である。
その内容からアメリカ版浦島太郎と呼ばれている。
呑気者の木樵のリップはうるさい妻から逃れる為、愛犬と銃を持って猟に出掛ける。
深い森に迷い込んだリップは自分の名を呼ぶ声を聞く。
それは酒樽を担いだ見覚えのない老人だった。
老人と共に谷を登って行くと数人の男達がボウリングに興じていた。
そして、リップは男達と酒を飲み、知らない間に眠ってしまう。
目覚めると、老人と出会った丘の上にいた。森の様子は変わっていて、銃は錆び、愛犬はいなくなっていた。
リップは老人達の仕業だと思い、彼等を探すが枯れていた筈の谷は川の激流に阻まれていた。
諦めたリップはとぼとぼと家路に就いた。
リップは自分の家を見つける事が出来なかった。
猟に出る以前より家が増えており、アメリカは独立していた。
やっと見つけた家は朽ち果てて誰も住んだいなかった。
村を歩き回ったリップは村人に取り囲まれた。
一人が『おじいさん、銃なんか持ってどうした』と聞く。
リップは『おじいさん?私はまだ若い』と答えるが人々はリップの胸元を指差し笑っている。
リップも自分の胸元を見ると白い髭が伸びていた。
驚いたリップは『誰かリップ・ヴァン・ウィンクルを知る者はいないのか』と叫んだ。
赤ん坊を抱いた若い女が現れ、『それは父です。20年前に山へ行って戻って来ませんでした』

32 @kira 2013-02-26 00:21:45 [携帯]

シーン87
 
トンネル。
停車した列車から警告の発煙筒の赤い煙が立ち上っている。
鉄橋の向こうから、伊達と真田が走って来る。
逃げた柏木が残した血痕を追っている。
伊達、立ち止まる。
周りを見渡す。
柏木を見失った。
伊達、森の方向を見ると走り出す。

33 @kira 2013-02-26 00:22:26 [携帯]

シーン88
 
森の中を、伊達と真田が駆けて行く。
 
朽ちた塹壕の前。
バイクが停まっている。
やって来る伊達と真田。

34 @kira 2013-02-26 00:23:43 [携帯]


800 x 564
ロケ地探偵団
 
伊達と真田が彷徨する森
 
猿島(正式名称は『えんとう』だが、広く一般的に『さるしま』と呼ばれる)
 
神奈川県横須賀市、東京湾に浮かぶ無人島。
湾内唯一の自然島である。
地勢
面積 約0.055km2
周囲 約1.6km
標高 最高39.3m
横須賀市平成町より北東へ約1.15km、また三笠公園(戦艦三笠保存地)東方約1.75km 沖合に浮かぶ
 
概要
京急本線横須賀中央駅から徒歩と船で約30分という立地ながら、海水浴、バーベキュー、釣り、散策などのレジャーに適する無人の自然島。
島内からは縄文時代の土器や弥生時代の土器・人骨が出土し、また日蓮上人にまつわる伝説が残るなど、古くから人々に親しまれた島である。
幕末から第二次世界大戦前にかけては、東京湾の首都防衛拠点となる。
幕末には江戸幕府の台場が築造され、明治時代に入ると陸軍省・海軍省の所管となり、東京湾要塞の猿島砲台が築造された。
実際に本施設が実戦に用いられたことはないが、島内の岩壁を掘って煉瓦で覆われた要塞跡は現在も残り、日本では数少ないフランドル積みが見られる。
第二次世界大戦後はまでの間は連合国の1国であるアメリカ軍に接収される。
その間にもに渡船の運航が開始、には海水浴場が開かれる。
その後に海水浴場は閉鎖、航路も廃止され立ち入り禁止とされる。
横須賀市が大蔵省から管理委託を受けて散策路等を整備し、航路も再開、翌には海水浴場も再開された。
横須賀市が国から猿島の無償譲与を受けた。

35 @kira 2013-02-26 00:25:15 [携帯]


782 x 600
猿島全景

36 @kira 2013-02-26 00:40:34 [携帯]

猿島①~③⑦

37 @kira 2013-02-26 00:42:21 [携帯]

シーン89
 
塹壕内部
 
伊達と真田が入ってくる。
入口から伊達が落ち窪んだ眼で辺りを見回す。
何かを発見して、ほくそ笑む。
そして、いきなり真田の肩を掴む。
 
伊達『良く聞け。お前は立派な兵士だ!わかるか?!もう、立派な兵士だ!何があっても驚かないよう、これからは自分の意思で行け!自分の意思でだ、わかったか、わかったか、わかったか、わかったかぁ!』
 
伊達が押し殺した声で真田に言い聞かせる。
真田、伊達の気迫に圧倒される。
 
真田『わかった・・・・』
 
伊達『よし!』
 
伊達『ぶっ殺せ!』
 
伊達が真田を塹壕の中央に押し出す。
真田が立ち止まり、前方を見据える。
 
内部は細長い床の先に円形状に広がったフロアがある。
床には瓦礫が散乱し、朽ちた煉瓦の隙間から漏れた雨水が溜まっている。
 
円形状のフロアの奥にある瓦礫の上で特攻服を着た男と女が交わっている。
真田に気づかず、行為を続けている。
 
女『あぁ~ん・・・あはぁ・・・』
 
愉悦の声を漏らす女。
男の方が真田に気づいて、立ち上がる。
 
男『誰だ?!何だよ、馬鹿野郎!!見せモンじゃねぇんだぞ、このぉ!』
 
男は、真田に対して向かってくる。
真田が撃つ。
男に命中する。
 
男『ぐわぁー!あ痛ぇ!痛ぇ!!』
 
痛みに堪えきれず、転がる男。
真田が駆け寄る。
馬乗りになって男を殴りつける。
 
伊達『ほら、やれ!ほら、やれ!ほら、やれ、ほら、やれ、ほら、やれ、ほら、殺れ!・・・・・・・』
 
伊達が興奮して、壁を蹴る。

38 @kira 2013-02-26 00:43:23 [携帯]

真田が男に馬乗りになり、瓦礫の欠片で男を殴り殺害する。
 
女『キャー!!』
 
悲鳴をあげる女。
真田、立ち上がって女に近づく。
女、壁に張り付いて怯えている。
真田、抵抗する女を殴り倒し、押さえつける。
 
真田『動くな、動くな!そのまま動くな!!』
 
真田、ベルトを外してズボンを下ろす。
開かせた女の脚の間に腰を入れる。
 
伊達『そうだ、そうだ、やってしまえ、やってしまえっ!!』
 
目の前で女を犯している真田を見ながら、興奮している伊達。

39 @kira 2013-02-26 00:44:03 [携帯]

伊達『あの時と同じだ!あの時と同じだよっ!!わかるか、わかるかわかるか?!やれ!!』
 
伊達『やれ!やれやれやれやれ!!』
 
伊達『おんなじだ。その時、俺は一人だったんだ。一人だったんだ!わかるか、わかるか?!』
 
伊達『倒れた兵士が一人いた、倒れた兵士が一人いたんだよ』
 
伊達『そいつはな、国籍もわからない傭兵なんだ、傭兵!!』
 
伊達『場所は、場所は!!ベイルートから10マイルの場所だ、わかるかわかるか?!思い出したか?!』
 
伊達『やれやれやれやれ!やるんだ、やるんだ!!』

40 @kira 2013-02-26 00:45:08 [携帯]

シャッターを切る伊達。
 
伊達『よし!』
 
シャッターを切る伊達。
 
伊達『そいつはなぁ、腹に!腹に!3発の銃弾をくらってたんだよ!わかるか?!』
 
伊達『そいつはな、自分で、自分でモルヒネを打ったんだ、モルヒネを!何故かわかるか?何故かわかるか?!』
 
シャッターを切る伊達。
伊達『食い込んだ3発の弾をな・・・食い込んだ3発の弾をそいつはな、自分で、かっさばいて取り出そうとしたんだ!わかるか!わかるか?!えぇ?!』
 
伊達『俺はな、狂ったようにシャッターをきった!狂ったようにだ!!』
 
伊達『エクスタシー、エキサイト!官能だった!』
 
伊達『そん時だ、そん時だ。その時突如、生き残ったゲリラの一人が出てきたんだ、生き残ったゲリラの一人が。』
 
伊達『そいつはな、左足を、左足を!フッ飛ばされてたんだ!わかるか?!そん時の興奮がわかるか?!』
 
伊達の問いには答えず、一心不乱に女を犯している真田。
 
伊達『いいか!そいつはな、ロシア製の銃を持って、俺の前に、にじり寄って来たんだぞ!わかるか!俺はな、咄嗟に自分で恐怖を感じた。これは撃たれる!間違いなく撃たれる!慌てて俺は!傭兵の銃を握って、そいつに向かって、寄るな、寄るなー!俺はプレスだ!日本人だ!関係ないんだ!撃つな!』
 
自分の世界に埋没していく伊達。
 
伊達『しかし、ゲリラは近寄ってきた。俺は・・・俺は、恐怖に打ち震えて思わず、思わず銃を撃ったんだ!!』

41 @kira 2013-02-26 00:50:02 [携帯]

伊達『うぅー、うぅー、うぅぅー、助けてくれ、助けてくれー!うわー!助けてくれー!』
 
伊達『でも・・・その時・・・言い知れない・・・興奮を覚えたんだ・・・俺は・・・人を殺したんだと・・・』
 
伊達『それから3日3晩・・・3日3晩!俺はジャングルを彷徨い歩いた・・・彷徨い歩き続けたんだ!』
 
伊達『何の為に・・・それは何の為に?!それは!!次の獲物を獲る為にだ!』
 
伊達『俺の思いはもう、人を殺すこと以外、なくなってしまったんだ!わかるか、わかるか、この気持ちがわかるか?!これがエクスタシーだ!これが神を超えることだったとは、俺は気がつかなかったんだ!』
 
伊達『ジャングルが消えた時、獲物はいた・・・生き残ったゲリラの一人が、年端も行かない少女を、犯していたんだ、陵辱していたんだ!俺は言った!やめろ!やめ・・・・・・』
 
伊達『・・・・・・!!』
 
話の途中、ふと真田を見る伊達。
女を犯し続ける真田。
女の意識はない。
 
伊達『やめろ・・・やめろ・・・』
 
少女をレイプするゲリラの姿がオーバーラップする。
 
伊達『やめろぉ~~!!その少女から離れるんだ!離れるんだぁ~~っ!!!』
 
錯乱して叫ぶ伊達。
伊達の叫び声に気づき、振り返る真田。
もはや、完全に覚醒している。
 
真田『・・・・・・なんだ?!お前ぇーっ!』
 
伊達『お前、死ね』
 
伊達、真田をライフルで撃つ。
真田の体が一瞬、静止する。
しかし、尚も伊達に近づいて来る。
次の瞬間、ライフルから無数の銃弾が真田に浴びせられる。
歓喜の表情の伊達。
真田の体から、血煙が立ち上る。
真田、ガックリと膝を落とし、水溜まりの中に倒れる。
静寂―。
歓喜の表情から、穏やかな表情へと変わって行く。
体勢を戻し、ライフルを下ろす伊達。
その場に立ち尽くしている。
伊達の左手が上がり、天空を指差す。
突如、クラシックが大音響で鳴り響く。
伊達の頭がガクッと落ち、左手を下ろす。
徐々にカメラが上昇する。
天を仰ぐ伊達。
カメラ、、さらに上昇し、無数の星が煌めく夜空に移行して行く。

42 @kira 2013-02-26 00:55:37 [携帯]

この塹壕シーンには逸話がある。
 
撮影当日、セットに入った松田優作は内部を見て、『あ、これは違うわ』と一言言うと帰ってしまった。
その日は撮影中止となり、翌日に持ち越された。
翌日、セットに現れた優作は台本を書き直していた。
台本の段階では、伊達は自分で野獣に育て上げた真田を最初から殺すつもりだという描写をしているが、松田優作が書き換えたものでは突発的に真田を殺している。
丸山氏は伊達を冷酷なだけの男として描写しているが、優作は、伊達がそうなるには理由があるだろうと考えていた。
勿論、列車のシーンである程度は言及されているが、優作はそれをさらに掘り下げた。
伊達は悪魔のような男だが、それを作り上げたのは地獄の如き現代社会そのものだ。
そして、例の即興芝居のようなシーンが誕生した。
つまり、松田優作はセットを見て、自分が準備した芝居が相応しくないと考え、1日で台本を書き換えて来たのだ。
この瞬発力は『探偵物語』で培った即興性が遺憾なく発揮されている。
なんというモチベーション。
こういったライブ感覚は、現在の俳優では到底無理だろう。
 
『野獣死すべし』の美術監督の今村力と松田優作は奇妙な因縁で結ばれていた。
1973年、松田優作の映画デビュー作『狼の紋章』の美術を担当したのが今村氏だったのだ。
当時の松田優作は全くの無名で自分の思い通りの芝居が出来なかった。
今村氏も低予算で不本意な仕事で終わった。
二人が7年後、『野獣死すべし』で、再び一緒に仕事をする事になった。
松田優作は自分の企画が通るようになった。
今村力も莫大な予算で自分の設計通りのセットを造れる立場になった。
この2本の作品を見比べる事で映画人の成長が見れるだろう。
 
面白いのは、優作が今村氏を激賞しているのに対し、今村氏は優作に批判的な目を向けていた。
スタッフを集めての打ち合わせで、監督の村川透を怒鳴りつける優作を見た彼は『なんじゃいな、この人は』という印象を抱いたという。
 
松田優作としては、偉くなってきた村川透を叱ってやれるのは俺くらいだという気持ちだったらしいが、そんなところが常識的には受け入れられないのだろう。
 
優作と今村氏はその後、森田芳光監督作品『それから』で三度組んでいる。

43 @kira 2013-02-26 00:56:41 [携帯]

松田優作はこの作品を舞台の延長と捉えていた節がある。
冒頭からカメラは、伊達を引きで捉えていて、アップが少ない。
バーで伊達と真田が会話しているシーンでは、松田優作のアップは一切なかった。
それが端的に現れているのがマンションのシーンであり、別荘のシーンであり、列車のシーンであり、そして、この塹壕シーンである。
これらのシーンの大半は、誇張された演技、照明、優作の一人芝居で占められている。
引きのカメラで演技する優作をひたすら追い続け、観客はいつしか、映画だという事を忘れてスクリーンを眺めているのだ。
だからこそ、相棒の真田役に、劇団四季出身の鹿賀丈史が抜擢されたのだろう。

44 @kira 2013-02-26 01:07:40 [携帯]

塹壕シーンは、ユニークな構成となっている。
柏木を追って、森の中を駆けて来た伊達は、錯乱しているのか、塹壕の中にいた特攻服の男を敵と錯覚して、殺そうとする。
伊達に洗脳された真田も、女を強姦するまでになる。
社会の規範は、取り払われている。
一方の暴走族の兄ちゃんは、自分では社会からドロップアウトしているつもりだが、法律で守られたれっきとした一般市民である。
社会から、はみ出したと勘違いしている人間と、社会から弾けた事を、理解していない人間の対立の構図が、ここにある。
伊達は、まるで革命でも興している気分なのだろうが、現実には、ただの殺人者だ。
異次元に迷い込んだような感覚が、このシーンの特色である。
ブラックユーモアに、満ちてはいるが、このシーンで笑った観客は皆無だろう。松田優作の鬼気迫る演技が、そうさせないオーラを放っているのだ。
興奮した伊達は、真田に何かをまくし立てるが、真田は、女を犯す事に夢中で、聞いていない。
こんなシーンをメジャー作品に入れる事は、現在ではないだろう。
レイプされる女を演じている女優は、『探偵物語』に出演していた橘雪子だろうか。クレジットにも、名前があったような気がするが。

45 @kira 2013-02-26 01:09:22 [携帯]


600 x 400
シーン90
 
ショパン ピアノ協奏曲第1番第3楽章が鳴り響く。
 
コンサート会場
埋め尽くされた客席。
静かに演奏を聴いている観客。
オーケストラの演奏が激しさを増して行く。
客席の中に2つの空席がある。
静かな楽章に入り、ピアノの旋律が響く。
客席に眠ったままの伊達がいる。
ピアニストの指がピアノから放れて、演奏が終了した。
 
客席―。
伊達が座ったまま、眠っている。
膝に置いた数冊の本が落ちる。
その音で目を覚ました伊達。
本を拾おうとして、身を乗り出す。
伊達、ハッとして会場を見渡す。
暗いホールに既に観客の姿はなく、静まり返ったホールにいるのは、伊達ただ一人。
伊達、落とした本を拾うと座席から立ち上がり、左手を頭上にあげる。
 
伊達『あっ!』
 
伊達の声が静まり返ったホールに響き渡る。
通路に出ると出入り口に向かって、歩いて行く伊達。
ドアの前で立ち止まる伊達。
 
伊達『あっ!!』
 
伊達の叫び声がホールに吸い込まれる。
伊達、ドアを開け、ホールを出て行く。

46 @kira 2013-02-26 01:11:14 [携帯]


600 x 400
階段を降りてくる伊達。
顔に光が当たる。
立ち止まり、上空を見上げる。
階段を降りようとした瞬間、伊達に一発の銃弾が命中する。
階段を転げ落ちる。
手摺りを掴んで起き上がる伊達。
膝をついて驚愕の表情でホール周辺を見渡す。
包帯を巻いた柏木の姿。
 
本を拾い集め、立ち上がる伊達に次の銃弾が命中し、倒れる。
手摺りを掴んだ伊達が倒れようとする瞬間、画面が静止して遠ざかって行く。
 
野獣の最期。
 
鐘の音が聞こえている。

47 @kira 2013-02-26 01:17:06 [携帯]

この最後の演奏会のシーンは、謎が多く、未だに議論されている。
演出に、いくつかの不可解な箇所があるのだ。
演奏会で伊達が眠っている事から、物語の上で起こった出来事が全て、夢だったのではないかと言われている。
確かに脚本の段階では、その前の塹壕のシーンで伊達に撃たれた真田が最後に渾身の一撃を伊達に撃っている描写がある事から夢落ちもあり得るだろう。
撃たれた伊達が、無傷で演奏会に行ける事など出来ないからだ。もっとも、『蘇える金狼』の朝倉ならば話は別だが。
しかし、映画では伊達が撃たれるシーンはないから夢落ちは考えられない。
それに演奏会では、令子が横に座っていない。
恐らく、この演奏会は雨の日の演奏会の帰り、タクシーの車内で令子から手渡されたチケットのものだろう。
映画ではカットされたが、真田を射殺した伊達がバッグからチケットを発見する描写が脚本のシーン89>>93にある。
夢落ちならば、射殺した令子がいるほうがわかりやすくはないか。
では夢だったと仮定して一体、どこからが夢だったのか、チケットを発見する件から伊達と令子がタクシーに乗り込むところまでは現実と断定して良いだろう。
次のマンションのシーンも問題ない。
伊豆の別荘のシーンは疑わしい。
雪絵を射殺したはずの真田がベッドで眠っており、夢にうなされて飛び起きるシーンがある。
しかし、直後に伊達が夢ではないと語っている。
夢なのに夢じゃないなんて馬鹿げた描写をあえてしないだろう。
では、次の銀行襲撃シーンだろうか。
このシーンが夢なら令子は生きている事になるだろう。
必然的に列車のシーンも夢になる。実際、眠っているしね。続く塹壕シーンも然りだ。
しかし、これらもラストシーンで全て否定されてしまう。
演奏会終了後、起きた伊達がホールの外に出ると銃弾が彼を襲う。
一人の老人が佇んでいる。
そして、警官隊によって伊達は射殺されてしまう。
銀行襲撃が夢なら伊達が射殺される理由はないだろう。

48 @kira 2013-02-26 01:17:57 [携帯]

しかし、この渋谷公会堂の外のシーンも謎だらけだ。
まず、伊達が警官隊によって狙撃されるのだが、出血しない。
これは、以下の理由が考えられる。
 
①実は撃たれていない。
②撮影場所の許可が得られなかった。
③何らかの演出上の理由。
 
単純に考えれば、①という発想になる。
しかし、実際に伊達が倒れているのだから撃たれたと診るのが自然だろう。
②は、映画が様々な制約の元に製作されている事を考えると全く有り得ない事ではない。
むしろ、こんな馬鹿馬鹿しい理由の中に真実が隠れている事も否定出来ない。
しかし、撮影許可が下りなかったのであれば、撮影日数に余裕があったのだから別の場所に変更すれば良かったのではないか。
私が推測する理由は③である。
何故なら、特異な演出をわざわざ、何の理由もなくするとは思えないからだ。
こういう風には考えられないだろうか。
アニメなどで、衝撃的な出来事が起こる瞬間をスローモーションにしたり、背景を白くしたり、現実と替えたりする場合がある。
伊達が撃たれるという事を強調する為に敢えて特殊効果を使わなかったのではないか。
松田優作の唯一の監督作品『ア・ホーマンス』に、同じようなシーンが存在する。
所属する組織の組長を射殺された山崎が、報復を行って数日後、風の前に姿を現した瞬間に、敵対組織の人間に狙撃される。
血糊が使用されているが、アングル、照明、転調の度合いまでもが似ているのだ。
勿論、その事を正確に表現しきれていない事も否めない。
警官隊も出て来ないし、柏木もどこか亡霊のようだ。
こういう表現が作品解釈を難解なものにしている。
しかし、私はそれが間違っているとは思わない。
作品として破綻しているからこそ、魅力的なのだ。
映画という枠や規制をはみ出した松田優作の思いが、『野獣死すべし』にはある。
松田優作が『野獣死すべし』で格闘した事が遺作『ブラック・レイン』へと繋がっていったのであり、その後、彼が出演したであろう作品に結実して行く筈だったのである。

49 @kira 2013-02-26 01:22:21 [携帯]

謎の中でも最も不可解なのは、撃たれた伊達が見る陽炎に揺らめく老人だろう。
白いシャツにグレーのスラックス、グレーの頭髪、頭と腕には包帯を巻いている。
唐突な登場に一瞬、戸惑うが脚本>>94にもあるとおり、刑事の柏木秀行である。
これが、あの伊達を執拗に追いつめた柏木かと目を疑う変貌ぶりだ。伊達から受けた暴力で、すっかり老け込んでしまっている。

50 @kira 2013-02-26 01:23:57 [携帯]

映画のラスト、銃弾に倒れる伊達に、鐘の音が被さる。
一見、なんて事のないシーンである。近くに教会でもあるという設定ならば、何ら不思議ではない。
しかし、私は鐘の音にある仮説を唱えたい。
それは、村川監督の鐘に対するこだわりである。
村川作品にはしばしば、鐘が鳴るシーンが登場する。
『最も危険な遊戯』では、依頼された殺人を決行するシーンで鐘が鳴っている。
『蘇える金狼』では、冒頭と朝倉が京子を殺害するシーン。
『探偵物語』第1話では、工藤俊作が依頼人に会う為に訪れる教会で鐘が鳴っていた。

51 @kira 2013-02-26 01:25:01 [携帯]


600 x 450
何より先ず、不可解なのは眠りから目覚めた伊達が立ち上がって、天井を指して発する『アッ!』だろう。
全く意味不明で訳がわからない。
脚本の丸山昇一も、『そんなの優作に聞け』と言っていた。
しかし、優作の気迫というか、何か得体が知れない雰囲気に圧倒されて見入ってしまうのだ。
同じ芝居を他の役者がやれば、その薄っぺらさに忽ちしらけて、席を立ってしまうだろう。
現在、こんな事をして許される俳優がいるだろうか。例えやったとしてもギャグと勘違いされて失笑を買うのが落ちだろう。
意味不明な事の積み重ねで、ひとつの映画を成立させてしまう松田優作に改めて感嘆せずにはいられない。
と普通なら締めくくるところだが、それではあまりに情けない。
優作が遺した謎に爪痕くらいは付けてやりたい。
『アッ!』のルーツを探ったが、私は実はショーケンなのではないかと密かに思っている。
この当時の萩原健一は、ライブで両手の人差し指を突き出すパフォーマンスをやっていた。
今でもショーケンの物真似というと、これをするタレントがいる。
以前、優作が萩原健一をリスペクトしていたと書いたが、そんな優作の事だから芝居に拝借したとしても、何ら不思議ではない。

52 @kira 2013-02-26 01:30:25 [携帯]


258 x 163
現代の[リップ・ヴァン・ウィンクル]伊達邦彦
 
伊達が柏木に語るリップ・ヴァン・ウィンクルの話は、アメリカの作家ワシントン・アーヴィングが1820年に発表した短編集『スケッチ・ブック』に収録された寓話である。
その内容からアメリカ版浦島太郎と呼ばれている。
呑気者の木樵のリップはうるさい妻から逃れる為、愛犬と銃を持って猟に出掛ける。
深い森に迷い込んだリップは自分の名を呼ぶ声を聞く。
それは白い髭を垂らした酒樽を担いだ見知らぬ老人だった。
犬は怯えている。
老人と共に谷を登って行くと高い崖に囲まれた広場に出た。そこでは数人の男達がボウリングに興じていた。
そして、リップは男達と酒を飲み、知らない間に眠ってしまう。
目覚めると、老人と出会った丘の上にいた。森の様子は変わっていて、銃は錆び、愛犬はいなくなっていた。
リップは老人達の仕業だと思い、彼等を探すが枯れていた筈の谷は川の激流に阻まれていた。
諦めたリップはとぼとぼと家路に就いた。
リップは自分の家を見つける事が出来なかった。
猟に出る以前より家が増えており、アメリカは独立していた。
やっと見つけた家は朽ち果てて誰も住んでいなかった。
村を歩き回ったリップは村人に取り囲まれた。
一人が『おじいさん、銃なんか持ってどうした』と聞く。
リップは『おじいさん?私はまだ若いですよ』と答えるが人々はリップの胸元を指差し笑っている。
リップも自分の胸元を見ると白い髭が伸びていた。
驚いたリップは『誰かリップ・ヴァン・ウィンクルを知る者はいないのか』と叫んだ。
赤ん坊を抱いた若い女が現れ、『それは父です。20年前に山へ行って戻って来ませんでした』
リップは愕然となる。
妻は既に死んでおり、恐妻から解放された事を知る。
リップが山で眠っている間に20年が過ぎ去っていた。
リップが事情を話すと『それはハドソン船長達の霊に違いない。20年に一度、巡回にやって来るんだ』と語った。
リップはその後、娘に引き取られ幸せに暮らしたという。

53 @kira 2013-02-26 01:37:42 [携帯]


421 x 599
この話、伊達が話していると『野獣死すべし』の為に書かれたのかと錯覚するほど類似している。
リップが猟に行く件は、通信社のカメラマンとして各地の戦場を渡り歩く伊達に重なる。
リップが谷川の上流で出会う男達は、戦場の傭兵やゲリラ。
リップが戻った村は伊達が戦場から呼び戻された東京そのものである。
相違点もある。
リップには妻がいたが伊達にはいない。
リップが会う小人も不思議なおじいさんである。
帰る場所があったリップに対して伊達には戻るべき居場所がなかった。
リップが見た夢の描写もない。
伊達はこの夢に自身を投影している。
それまで不完全燃焼な人生を送って来た伊達が、国外の戦場で不可抗力ながらも人を殺した事から殺人に取り憑かれ標的を求める姿は極めて悪魔的だ。
極限まで達した伊達の意識は撮影された写真にも投影され、通信社の知るところとなり、呼び戻される。
リップと伊達が違うのはこの後だ。
リップは眠りから覚めて娘と一緒に幸せに暮らすが、東京に戻った伊達は果たして幸せだったのか。
幸せだったのならば、この物語が始動する事などない。
伊達にとって東京とは故郷と呼べる場所ではなく単なる住処だ。
ショパンが故郷に帰る事を求めて止まなかったように、伊達は真の故郷である戦場への帰還を夢見た。
しかし、伊達が79年まで滞在していたウガンダのアミンの失脚により、伊達の故郷は事実上消滅。
故郷に帰れずとも、夢見る祖国があったショパンのほうが故郷を失った伊達よりも幸福だったのだろう。
だからこそ、伊達は故郷を取り戻す代償行為として銀行強盗を行ったのではないだろうか。

54 mousaku 2014-03-06 20:36:58 [PC]

「野獣死すべし」についての考察、非常に楽しませて頂きました。
「野獣死すべし」のラストについて私なりの解釈です。
ラストシーンは「明日に向かって撃て」からインスパイアを受けていると思います。
この頃はアメリカンニューシネマの直後で、アウトローがフィーチャーされる映画がたくさん作られました。
しかし、そんなアウトローたちも映画の最後に必ず死んだり捕まったりします。
悪は栄えないが、そんな悪党たちの生き様に私たちは憧れました。
しかし悪が栄える映画は作れません。
それはアメリカでも日本でも状況は似たようなものです。
映画「蘇える金狼」では朝倉は刺されて死にました。
原作では死んでいません。
「野獣死すべし」の原作では伊達邦彦は警官隊に突っ込んで行きましたが、その野獣の魂はいつまでも生き続けることを暗示していました。
そして、その後の「野獣死すべし・復讐編」で邦彦は復活しました。
そう考えると、映画「野獣死すべし」で伊達が生きているかの死んだのか分からない演出になったのは納得できます。
ラストのストップモーションからズームバックは「明日に向かって撃て」と同じ演出です。
「明日に向かって撃て」では軍隊に囲まれますが、最後は撃たれる瞬間にストップモーションになってそこに銃声がかぶります。
あの当時、誰もが真似をしたくなるカッコいい演出でした。
その名シーンをヒントに村川監督と優作によって作り上げた名シーンだと思います。
銃声ではなく矢が飛んでくるような風を切るような音になっているのはインディアンの弓矢の音ではないかと思っています。
グリップの裏に「最後の狙撃者…」と書いてあるシーンで優作がヒュン、ヒュンと言っていますが、あれもインディアンの弓矢の音ではないかと思います。
グリップの持ち主である西部で生きたガンマンのエピソードとして、インディアンとの死闘を想像することが出来ます。
何人もの血を吸った呪われた凶銃を手にした邦彦が最後に警官隊に囲まれた時、インディアンとの死闘をイメージしても変ではありません。
ラストの柏木は、亡霊のようにすることによって現実味をなくし、あいまいにすることによって邦彦のその後をぼやかしているのだと思います。
現実味がありすぎると生死をはっきり描かなくてはなりません。
死は原作のファンを裏切ることになったり、生は映倫の審査員を怒らせることになります。
よって、そのどちらも満足させるために、このような演出が必要だったのではないでしょうか。
多分優作のアイディアだと思いますが。
優作は自分がどのように映るかを計算できるし、映画全体を俯瞰で見ていたのだと思います。
今見ても良いシーンだと思えるのは優作のセンスだと思います。

ラスト前の指揮者のようなポーズでの「あっ」は、完全犯罪を完了した男が現実を確認するためにやった行動だと思いました。
「金狼」で朝倉が自室で太鼓を叩くように部屋中を動き回るシーンがありまが、あのシーンも似たような意味の行動だと思っています。
以上は私の勝手な解釈です。
初めて「野獣死すべし」を見てから30年以上たちますが、漠然と思っていたことをはじめて文章にしました。
乱文、乱筆にて失礼しました。

55 Casa com piscina na ilha terceira Portugal 2023-08-05 11:56:37 [URL] [PC]

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56 Como aparecer na primeira p?gina do google 2024-12-05 04:11:07 [URL] [PC]

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