蘇える金狼(1979年)
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1 @kira 2013-02-08 22:00:00 [携帯]
の画像を貼りましょう。
92 @kira 2013-02-26 01:59:06 [携帯]
ケーシー・ランキンによるテーマ曲が低音で響いてくる。期待させるオープニングである。
共立銀行本店。札束がジュラルミンケースに詰められて行く。
通用口から男達の一団が出て来る。手には鎖で繋がれたケース。
このシーンに優作が所属していた映画製作会社セントラルアーツの社長・黒澤満氏がゲスト出演している。現金運搬人をチェックしている人物だ。クレジットされていないし知る者は少ないだろう。
この作品はゲスト出演が豪華なので特集したいと思う。
現金運搬人・原に後方から近づく白バイ警官。
いよいよ松田優作初登場だ。
原の傍で停まった警官は近づき話しかける素振りでみぞおちに一撃入れて気絶させ白バイに乗せて走り去る。
■高速道路・橋脚の下
警官は原を射殺。鎖で繋がれたケースを奪う。
原を演じたのは、団巌。独特の関西弁で、『探偵物語』第1話『聖者が街にやって来た』では、工藤俊作をつけ狙うギャングを佐藤蛾次郎と共に演じた。
次回作、『処刑遊戯』では、鳴海が立ち寄るバーのバーテンダー役を演じた。
劇中でも語られるがどこか『三億円事件』を彷彿させる。
実は大藪春彦は事件当時、『血の来訪者』という作品が犯行内容と似ていた為に参考人として事情聴取を受けている。
この事を知る者ならニンマリするシーンだ。
このシーン。予告編ではしっかりサイレンサーの効果音をつけているのに本編では普通の発射音なのだ。サイレンサーを外しているのだから明らかにミスだが恐らく迫力がないので差し替えたのだろう。映画というのはこういった嘘の連続で成立しているのだ。
93 @kira 2013-02-26 02:10:28 [携帯]
■東和油脂
ボロボロの傘で風呂敷包を抱えて出社する朝倉哲也。
仕事中にくしゃみを連発する朝倉。
部長・小泉(成田三樹夫)や課長・金子(小池朝雄)にも疎まれる存在だ。
東和油脂という会社は重役が後方から社員の行動を監視するようなデスクの配置だ。こんな会社に入ったら、やりづらくて仕方ないだろう。
この重役連中が如何にも狡っ辛くて『いるよなぁ』という感じだ。
原作ではエリート社員だが映画では窓際社員(を装っている)だ。
これは『遊戯』シリーズの鳴海昌平のキャラクターを踏襲しているのだ。
昼行灯のキャラクターによってハードな本性が強調される。
ファンは松田優作の演技のバリエーションが楽しめる。『遊戯』シリーズファンの期待にも応えている。
この作品は『遊戯』シリーズの延長上にある作品である。だから『遊戯』シリーズと比較する事でより面白さが増すのである。
この頃の松田優作の演技しているのか、ふざけているのかわからない芝生は見ていても、なかなか面白い。
94 @kira 2013-02-26 02:16:49 [携帯]
『蘇える金狼』における松田優作
私は松田優作の演技を『原田芳雄タイプ』『萩原健一タイプ』の2タイプに分類する事が出来ると考える。
どちらも当時、優作が絶対的に尊敬していた俳優である。
デビューから1979年のドラマ『探偵物語』までが前者。
1980年『野獣死すべし』から1989年『ブラック・レイン』までが後者である。
そしてこの作品が『原田芳雄タイプ』の集大成だと思われる。
台詞回しや仕草も原田芳雄指数が高い。
優作の演技の根底に流れるユーモアも原田芳雄の影響だ。このユーモアが1980年以降は失われて行くのが些か残念である。
この年、原田芳雄を極めた優作は非常に充実しており仕事量も生涯で最高だった。
その充実ぶりがフィルムに定着している。
当時の優作の演技はどこか芝居を投げてる様な演技してない様な独特の演技だった。
これは芝居をナメている訳ではなく。役作りもしているのだ。
しかし『演技したって所詮は俺だ。ガチガチの芝居をするよりアドリブも入れた新鮮な芝居の方が面白いに決まってる』と考えていたのだろう。
この演技メソッドは好評を博し、多くのファンを獲得した。
相手の演技をダイレクトに受けずに外した芝居をしたり、わざと間を空けたりしている。
『女優が共演したい俳優ランキング』でもトップを穫っている。
まさしくピークに達した優作の『原田芳雄タイプ』集大成の演技を堪能出来るのがこの作品である。
しかし優作の魅力はそれだけではない。
優作にしか醸し出せない空気があった。
優作の不敵な演技の裏に垣間見える繊細な身のこなしや視線は彼にしか醸し出せないものだろう。
それを感じられなかった者は『野獣死すべし』で消失した優作を見失った。しかし、感じた者にも地獄の如き日々が待っていたのである。
95 @kira 2013-02-26 02:17:44 [携帯]
劇場版での台詞
金子『風邪ひく陽気でもないだろうに・・・』
石田『おい、知ってるかよ。今朝、××で3億円事件そっくりの事件があってよ。1億円ばかり、パクられたらしいゼ』
湯沢『あ、そう。うまく逃げてくれればいいけどね』
『痛快ですねぇ・・・』
石田『馬鹿なこと言うなよ、お前・・・。すぐ捕まるよ。だから、犯罪なんてのは割りに合わないんだよ』
朝倉『だけど・・・、捕まんなきゃいいなぁ・・・』
石田『そりゃ、捕まんなきゃいいけどさァ・・・すぐ捕まるんだよ。バレなきゃ何やったっていいようなモンだけどさァ・・・。』
石田『この会社だってひどいゼ〜、一部のお偉方のやってることは・・・。下請け会社から、不良品納入さて暴利むさぼったり、トンネル会社通じて融通手形落とさせて、それ、導入資金にして裏金利稼いだりよ・・・』
湯沢『そうだよな・・・。経理部長の小泉、腹心の金子、専務の竹島、監査部長の秀原・・・・・・みんな、仕事のできる奴ばっかりだもん。しょうがないよ・・・。その上、社長がグルだろ?バレなきゃいいってことだよ・・・。』
石田『腹、立たないかね、朝倉君・・・』
朝倉『ゲホッ・・・・いやぁ、そりゃ腹は立ちますけどねぇ・・・ケホッ・・・でも、怒ったところで、なんかイイ事あるわけじゃないし・・・ジッと我慢してるのが一番いいんじゃないですか?』
湯沢『まあね、一つでも上へね、出世した方が勝ちってことだよ』
朝倉『そう!それが一番ですよ、やっぱり・・・』
石田『そりゃ、君はいいよ。出世競争だって我々より一歩リードしてるんだからサ・・・』
朝倉『とんでもな〜い・・・僕なんか、あの〜・・・大学は夜間だし・・・この会社入ったのも、補欠ギリギリだもの・・・』
湯沢『あ、補欠っつーのは知ってるよ、俺』
朝倉『あ、そうスか・・・・』
96 @kira 2013-02-26 02:40:31 [携帯]
役職連中が背を向けた社員達を監視するような体制のオフィス。普通の会社なら役職と社員のデスクは向かい合っているか、横並びなのだが。仕事がやりづらい雰囲気だ。
無闇に嚔を連発する朝倉。優作のおふざけ演技炸裂。同時に雨天の犯行を強調。金子が嫌みを言い、小泉は、呆れた表情で見ている。
朝倉が昼食を摂りながら同僚の湯沢や石田らと今朝起きた、一億円強奪事件の話題に興じている。
七三分けの優作は、この映画でしか見れない貴重な映像だ。おまけにうどんまで啜っている。一流企業の社員ならレストランくらい行けよと思う。平社員の哀愁が滲む。
よく見ると優作の七三分けの襟足から揉み上げが覗く。当時の優作の揉み上げまでは流石に隠しきれなかったようだ。
自分が補欠社員だと明かす一幕も。滑舌が悪い岩城滉一との絶妙なやりとりには笑ってしまう。うどんをくわえたままの優作の表情が可笑しい。
97 @kira 2013-02-26 02:41:22 [携帯]
劇場版での台詞
小泉『あ、諸君、ちょっと仕事の手を休めて・・・この方の話を聞いてほしい』
小泉『共立銀行の兵庫さんだ』
兵庫『お仕事中、お邪魔いたします・・・え〜、あるいはニュースでご存知かと思いますが、今朝私どもの銀行の現金運搬人が襲われまして、1億にのぼる現金が奪われました』
兵庫『で、皆さんがたにお願いがあるんですが・・・ま、不幸中の幸いと申しますか、えー、奪われた紙幣のナンバーは全部本店に控えられてありましたわけでして・・・これがその番号です』
兵庫『え〜・・・私ども、こうして各方面にご協力をお願いしているわけですが、どうか、その紙幣のナンバーに該当するものが出てきましたら、あのー、是非、お知らせ願いたいと思います』
金子『なんだいこりゃ、おい、邪魔だなぁ、君ぃ・・・』
朝倉『故郷の母から林檎を・・・』
金子『いちいち、気になるなぁ、君は・・・』
朝倉『次長、ひとつ・・・』
金子『いいよ、そんなモノ・・・』
98 @kira 2013-02-26 02:47:01 [携帯]
朝倉達が仕事をしている所に共立銀行支店長・兵庫(久米明)が現れ今朝の朝倉の犯行を伝えると同時に紙幣のナンバーが控えてあった事を明かす。
怒りがこみ上げた朝倉が思わず握っていた鉛筆を折る。
銀行は何故、重要な情報を流したのか。まさか犯人がその場にいるとは思わなかったろう。朝倉は逮捕される危険は回避したが奪った現金が使えないという第一の困難に直面する。朝倉が数々の困難を如何に克服するかがこの映画の面白さだ。
朝倉は経理部勤務だがなんと算盤で計算している。電卓は既に開発されていた筈だが。
当時は算盤のほうが早くて、正確だという神話が信じられていた。
99 @kira 2013-02-26 02:57:59 [画像] [携帯]
劇場版での台詞
湯沢『いい女だねぇ・・・』
『知ってんの?!』
湯沢『社長令嬢の絵理子さんだよ』
『はぁ〜・・・綺麗な人だなぁ・・・』
湯沢『君はいつも出すぎるんだよ。彼女、射止めてエリートコースに乗る人がいるんだろうねぇ・・・羨ましいなぁ・・・ま、君たちは無理だな、俺だけだ。行こうか』
仕事を終えて会社を出ようとする朝倉達の前を一人の女性が通り過ぎエスカレーターで上がって行く。
社長令嬢・清水絵理子。
佐藤慶演じる東和油脂社長の清水の一人娘だ。
当時、資生堂CM『揺れるまなざし』で脚光を浴びたモデルの真行寺君枝が演じていた。
即物的で記号化された気品で微笑む真行寺君枝は台詞を一言も喋らない。芝居が出来ない者に敢えて何も要求しない潔さは実に気持ち良い。
絵理子は朝倉の野望の象徴である。
絵理子を射止める事、即ち東和油脂を手中に納める事なのだ。
普通に考えれば湯沢のように仕事で出世して社長の婿養子になるのが正攻法だろう。
しかし、補欠入社ではいくら頑張っても出世出来る見込みはないだろう。
これを裏から己の頭脳と肉体で成し遂げようとするのが朝倉の復讐なのだ。
黒縁眼鏡の奥で獲物を狙う獣のように絵理子を見つめるギラギラした眼差しがバッチリ決まっている。
こういう芝居が様になる俳優と白けさせてしまう俳優がいるが優作ほどケレン味のある芝居が嵌る俳優はいなかった。
ここで視線が泳いだりすると興醒めだし作品自体が駄目になってしまう。
この作品はそういうシーンの連続だが優作の芝居には嘘がない。『こいつ本当にイってるな』と思わせる事が出来れば俳優の勝ちだ。
それが出来ないなら芝居は向いてないから俳優なんか辞めてしまったほうがいいだろう。
100 @kira 2013-02-26 03:00:14 [携帯]
ロケ地探偵団@
東和油脂本社1階フロア
探偵団なんて言ってるがメンバーは私一人である。
映画観てるとこの場所どこだっけって事がよくあります。
それをまあ出来る限り可能な範囲内で調べて行こうというのが趣旨であります。
その第1回として取り上げるのが東和油脂。
あのエスカレーターがあるフロアですよ。
サラリーマンが自分の勤務している会社にエスカレーターなんてあれば家族・親戚に自慢出来るだろう。(※自社ビルってのが前提ね)
で、どこなんだって話なんだけど。
日本ランディック社ビルです。
昔、雑誌に載ってたのは覚えてるんだけど詳細は一切忘れてしまっていた。
なんせ20年以上昔の話だからね〜。ハハハ〜。
それでも微かな薄れかけた記憶を辿ってみよう!
83年頃にはあのエスカレーターは取り外されて階段になっております。
そしてこのロケ地は優作主演ドラマ『探偵物語』最終回でも使われています。
しかしあれから既に30年の歳月が過ぎ去った。
もしかしたら取り壊されている可能性も大!
工藤ちゃんの事務所もなくなったしなぁ〜。
という事で今回はここで強制終了。
調査は続行しながら結果が出れば更新しよう。
それじゃ!
101 @kira 2013-02-26 08:21:34 [画像] [携帯]
劇場版での台詞
沢野『残念だなァ・・・、ホントに残念だ・・・。あと体重を十ポンド絞って、ミドル級の試合に出れば、チャンピオン間違いなしなんだけどなぁ・・・』
沢野『お前、ホントに血友病なのか?』
朝倉『ええ、鼻血が出ると止まらないんですよ』
沢野『ふぅ〜ん・・・・・世の中ってのは、うまくいかねえもんだな・・・』
朝倉が東和油脂首脳陣と渡り合うには頭脳だけではなく肉体も鍛錬しなくてはならない。
その為に毎日、仕事終わりから夜遅くまでボクシングジムに通い、肉体を鍛錬している。
サンドバックが持ち上がる程のパンチ力を持つ朝倉はトレーナーの沢野からも試合に出るよう誘われるが『血友病』と称して断り続けている。朝倉の目的はあくまで東和油脂乗っ取りであり、試合になど出て顔が売れてしまっては元も子もない。
トレーナーの沢野を演じるのは元、角川書店社長の角川春樹。演技は下手だわ、台詞は何を言ってるかわからないわで見事に作品の流れをストップさせている。ルーカスみたいにCGで、ファイティング原田にでも代えて欲しかった。こういうワンマン・プロデューサーは、自分自身を冷静に見つめる目を持って欲しいものだ。
優作のこの鍛え上げられた肉体美はどうだ。肌はまるでサラブレッドのような艶を湛えている。この肉体ならば国家をも向こうにして立ち回れると思わせる。映画的リアリティとはこういう事だ。
原作ではこの後に横浜のドブ板横丁で血の滴るホルモンや臓物を貪り食う描写がある。朝倉にとって食事とは肉体を形成する材料でありガソリンの役割を果たす以外の何物でもない。
猥雑な都市の片隅で一匹の獣が体内に暗い野望を飼いながら、ホルモンなどで腹を満たす様に読者はその先を期待して活字の一文字一文字を追って行くのだ。

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