蘇える金狼(1979年)
[スレッド一覧]
[返信投稿]
[▼下に]
<<始n <前n 次n> 終n>>
page 1
2
3
4
5
6
7
8
9 10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20

1 @kira 2013-02-08 22:00:00 [携帯]
の画像を貼りましょう。
82 @kira 2013-02-19 21:49:47 [携帯]
翌日。
朝倉の前に、小泉が重いジュラルミンのトランクを置く。
揺り椅子に沈み眼を閉じている清水と、虚脱したように肘掛け椅子に並んでいる竹島、秀原。
清水『数えてみなさい。千株券が千枚に、百株券が一万枚だ』
朝倉、トランクを開く。
譲渡証書と、株券が詰まっている。
朝倉、株券の確認作業を始める。
朝倉『・・・・・・確かに』
朝倉、トランクを軽々と提げて立ち上がる。
シーン117
■[同・前庭(別の日の夜)]
タクシーが走り込み、玄関ポーチの前に停まる。
朝倉が降りる。
社長秘書が走りより、恭々しく出迎え。
シーン118
■[同・食堂(夜)]
朝倉が、給仕の引いてくれる椅子に腰をおろす。
すでに清水、小泉、竹島、秀原が席について、まだ一つだけ空席がある。
ドアがノックされ、モス・グリーンのイヴニングを着けた絵理子が入って来る。
清水『紹介しよう。うちの末娘の絵理子だ。こちらは将来有望な若手社員の朝倉君』
朝倉『よろしく』
絵理子がチャーミングな微笑をたたえ、優雅に会釈。
給仕が冷えたシャンペンを抜き、全員に注ぐ。
清水『東和油脂の安泰を願って』
皆がそれに和す。
ワインと豪華な料理。
朝倉―
シーン119
■[同・スモーキング・ルーム(夜)]
背もたれの高い昼寝用の肘掛け椅子にゆったりと体を沈めて清水、小泉、竹島、秀原、朝倉。
小泉がヘロインを煙草につけ、深く吸う。竹島と秀原も吸う。
陶然となる三人の頽廃―そんな三人を、冷たくしっと見ている朝倉。
清水『どう思うね、絵理子を?』
朝倉『チャーミングな方です』
清水『君となら、うまくやっていけると思うんだが』
朝倉『?』
清水『絵理子を嫁に貰ってくれないか、と私は思っているんだよ』
朝倉『・・・・・・』
清水『頼むよ、きみ。(頭を下げ)この通りだ』
朝倉『・・・・・・』
小泉『絵理子さんは非の打ちどころのない女性じゃないか』
朝倉『僕もそう思います』
小泉『だったら、なぜ?!』
竹島『朝倉君、分かってないようだな。社長のお嬢さんの旦那様ということになれば、きみを今年中にでも重役に仕立てる理由がつくじゃないか』
秀原『そして、東和油脂は安泰となる』
朝倉『・・・・・・分かりました。有難くお受けします』
清水『そうか!乾杯だ!』
と、コーヒーのカップを挙げる。
五つのカップが鳴る。
『乾杯』
83 @kira 2013-02-19 21:55:59 [携帯]
シーン120
■[歩行者天国]
朝倉と京子が寄り添い、歩く。
朝倉の声『あの薬、パトロンに渡すのは構わないが、そろそろきみはやめたほうがいい』
京子の声『なぜ?』
朝倉の声『・・・・・・それ以上痩せると、抱いてて頼りないから』
京子が笑う。
朝倉は笑ってない。
テーラーから朝倉と京子が出る。
朝倉の衣装はパリッとしたスーツに変わっている。
朝倉が京子を待たせ、スタンドで新聞を買う。
社会面を見る。
『強奪された共立銀行の紙幣、横須賀に出現』と、見出しの活字。
朝倉、思わずニッと笑う。
シーン121
■[磯川邸・一室]
暖炉で夥しい数の一万円札が燃える。
磯川が、燃える炎を怒りの眼で見つめている。控えて植木。
磯川『糞ッ、あの野郎、人をコケにしやがて・・・・・・八つ裂きにしても腹の虫が収まらん。植木、なんとしてもあの糞ったれを消すんだ!』
植木『は』
声『磯川さん』
ギョッと振り返る磯川。刑事AとBが立っている。
刑事A『署へ同行願います』
磯川『署へだと?何しに?』
刑事A『伺いたいことがいろいろあるんですよ』
刑事B『強奪された共立銀行の紙幣を、なぜあんたが使ったのか・・・・・・そのへんのところをじっくり伺いたいですな』
刑事A『それから、麻薬のことなども』
磯川『・・・・・・(呆けたように口をポカンとあけ)そんな馬鹿な!』
シーン122
■[朝倉の部屋(夜)]
丼に山盛りのキャビアとウォッカ。
朝倉の一人だけの祝杯。
胸を絞めつけるような排気音が近づいて来て、停まる。
朝倉、その音にも乾杯。
84 @kira 2013-02-19 21:59:26 [画像] [携帯]
シーン123
■[アパート裏の駐車場(夜)]
朝倉と愛想笑いのセールスの高柳が来る。
フィアット××。
高柳『お約束通り仕上げさせました』
朝倉は愛しい者にようやく出会えたかのように、フィアットを眺める。
シーン124
■[道(早朝)]
凄まじい排気音を響かせてフィアットが突っ走る。
シーン125
■[走るフィアットの中(早朝)]
最高のマシンに身を委ねて、満足そうな朝倉。
シーン126
■[山道(早朝)]
曲がりくねった登りの道を、フィアットが一気に駆け上がって行く。
シーン127
■[東和油脂・地下駐車場]
朝倉が靴音を響かせ、フィアットに近づく。
ドアを開けかけて―気配に振り返る。
離れた四方の車の蔭から七、八名の男が現れ、無言で近づいて来る。無気味な男たちは、いずれも見知らぬ顔。
逃げ場はなく、全身を恐怖が走る。
突如、ダッと一方へ走る。
一人の男を蹴倒し、出口への血路をひらこうとする。
だが、拳銃の銃口を向けたもう一人と、鋭い眼つきの男(栗原)が、立ち塞がる。
朝倉『―』
栗原『朝倉さんだね?』
朝倉『お前ら、会社に雇われたのか?』
栗原『あたしは栗原ってもんです。鈴本先生んとこの』
朝倉『鈴本?』
栗原『先生が、ぜひ会いたいとおっしゃってる』
朝倉『―』
85 @kira 2013-02-19 22:04:20 [画像] [携帯]
シーン128
■[レストラン・店内]
客のいない店内を、朝倉と栗原が歩く。
奥のテーブルに、鈴本がワインを飲みながら料理を食っている。
栗原が朝倉を鈴本の向かいに坐らせ、去る。
朝倉『(鈴本を睨んで)・・・・・・』
鈴本『(貪欲に食い続けながら)あんた、社長たちから二百万株せしめたそうだな』
朝倉『よくご存知で』
鈴本『東和油脂の、冷飯食いの重役の一人に、俺が東和油脂を乗っ取ったら総務担当の重役に抜擢だと鼻薬を嗅がせたら、すぐに尻尾を振りおって、喋った』
朝倉『・・・・・・』
鈴本『俺は必ず東和油脂を乗っ取る。殺された甥の光彦のためにもな』
朝倉『・・・・・・』
鈴本『清水社長の娘と婚約したそうだが、あんた、本気で清水一族の一員になるつもりなのかね』
朝倉『・・・・・・』
鈴本『お前さんの柄ではないと思うが』
朝倉『・・・・・・それを言うために、私をここへ?』
鈴本『あんたの二百万株、売ってくれんか。時価の三倍払おう』
朝倉『時価の三倍・・・・・・三倍と言えば、××億』
鈴本『そう、大金だ。しかし、金はどうとでもなる。俺のバックには、次期総裁を狙う通産大臣の吉村がいる』
朝倉『(ショックを受けて)―』
鈴本『我々を敵にまわしてあがくか、それともこれを潮時にして儲けるか』
朝倉『・・・・・・』
鈴本『返事は?』
朝倉『(きっぱりと)××億、ドルの高額紙幣で用意できるか?』
鈴本、朝倉をじっと見つめるが―その顔がニヤッと崩れる。
86 @kira 2013-02-19 22:11:31 [携帯]
シーン129
■[清風荘・朝倉の部屋]
朝倉が放心したようにベッドにあお向けになっている。
ドアがカチッと鳴る。
振り返る。京子―
一段と痩せ、憔悴している。
朝倉は探るように京子を見る。
京子『朝倉さん、婚約おめでとう』
朝倉『・・・・・・』
京子『朝倉さん・・・・・・それがあなたの本当の名前なのね』
朝倉、頷く。
京子『あなたに頼まれたから、私はパパによく会社の話を聞いたわ。その中に、朝倉という名前が何度も出て来た。若い平社員が、どうやって社長のお嬢さんと婚約するまでになったか・・・・・・ある時、その朝倉という人のイメージとあなたのイメージが重なったの。女のカンね・・・・・・パパに頼んで、朝倉という人の写真を見せて貰ったの。パパは、三年前の慰安旅行の時に撮った写真を持ってきてくれたわ。これが朝倉という男だ。女がこんな男に惚れたら、最後に待ってるのは恐ろしいほどの不幸だ、とパパが言って指したところに、あなたの顔が写っていたわ』
朝倉『・・・・・・』
京子『あなたにとって私は、麻薬で縛り、情報を手に入れるためだけの道具だったの?』
朝倉『・・・・・・違う』
京子『・・・・・・絵理子さんと結婚するの?』
朝倉『しない』
京子『どうして?』
朝倉『(答える意思はなく)・・・・・・』
京子『あなたが何をしても構わない・・・・・・ただ私は、あなたを失うことだけが怖い』
朝倉『家へ送ろう』
87 @kira 2013-02-19 22:15:15 [携帯]
シーン130
■[大名焼きの店(夜)]
朝倉と小泉。
炭火の上の大きな鉄板で、肉や野菜を炙りながら頬張る。
朝倉『僕の友人が、トルコからある品を買って帰って来ました。コーヒー罐に入るだけの量で、何千万もするという代物です』
小泉『?』
朝倉『部長はきっと興味を持つんじゃないかと思ったんですがね』
小泉『(眼つきが変わり)きみ、トルコからというと・・・・・・麻薬のことかね?』
朝倉『純度90%以上です』
小泉『きみは知っていたのか。恐ろしい奴だ・・・・・・是非分けてくれ』
朝倉『一キロ三百グラムあります』
小泉『一キロ三百!本当か。それが手に入れば、私は一生クスリが切れる恐怖から解放されるんだよ!』
朝倉『グラム十万で、一億三千万円』
小泉『用意する。なんとしても容易するよ!』
朝倉『千ドル紙幣でお願いします。友人がそう望んでますので』
小泉『分かった』
シーン131
■[東和油脂・応接間]
朝倉と小泉が、ヘロインとドル紙幣を交換する。
朝倉が一億三千万円分のドルの紙幣を、無雑作に両方のポケットにしまう。
シーン132
■[京子の部屋(夜)]
小泉が多量のヘロインを示し、京子の前で狂喜する。
小泉『見てご覧、京子。我々はこれからクスリの心配をすることはないんだよ、ほら!』
京子『どこで?』
小泉『朝倉が譲ってくれたんだ』
京子『朝倉さん?』
小泉『もうきみが、町で苦労してチンピラから買わなくても済むんだ』
京子『(茫然と)・・・・・・』
朝倉が今、確実に自分のもとから離れて行こうとしているのを、自覚する。
88 @kira 2013-02-19 22:19:39 [携帯]
シーン133
■[ホテル・一室]
朝倉と鈴本が株券とドル紙幣を交換する。
二百万株の株券、譲渡書、委任状と××ドルの高額紙幣を、お互いが確認していく。
シーン134
■[東亜経済研究所・鈴本の部屋]
トイレに冬木。
コックをひねるが、水が流れない。
不審顔で、水洗タンクの中を覗く。手を突っ込んで探る。
その手が、ポリエチレンで厳重に包まれたモノを取り出す。
冬木がオフィスを走り出て行く。
シーン135
■[ホテル・表]
地下駐車場から、朝倉のフィアットが走り出る。
その近くを冬木が走り、玄関へ向かう。
走り去るフィアット。
シーン136
■[同・一室]
鈴本が、写真と写真のネガ、テープを握りしめる。控えて冬木。
鈴本『(呻くように)もう少し早く見つかっていたら・・・・・・東和油脂なぞ、これで叩き潰せたのに・・・・・・高い株を買わされたもんだ』
窓の外に拡がる街―
89 @kira 2013-02-19 22:23:53 [携帯]
シーン137
■[樹海の道]
京子を乗せた朝倉のフィアットが走る。
シーン138
■[湖のほとり]
朝倉が湖面を見る。
美しくはあるが、底知れず無気味に淀んでいる。
京子が煙草の先端にヘロインをつけ、深く吸う。
煙草を捨てる。
朝倉を見つめながらゆっくりと近づいてくる。
唇に微かな笑い。
迎える朝倉の胸に、抱かれるように頭をそっとつける。
朝倉『・・・・・・(突然の衝撃に!!)』
京子が握りしめた登山ナイフが、朝倉の脇腹に深々と突き立っている。
京子『私を、殺そうと思っていたんでしょ。殺して・・・・・・殺して・・・・・・早く!』
朝倉、呻ぐ。
両の腕を、京子の首に当てる。そして、力をこめる。
京子が声も立てずにガクッと膝を折り、朝倉の足にもたれる。
朝倉、更に絞める。
息絶える京子。
朝倉、ポケットから封筒を取り出す。中の二枚の紙片から一枚を抜き、落とす。
舞って京子の死体に落ちたのは―航空機の搭乗券。
朝倉『・・・・・・』
シーン139
■[成田空港]
朝倉がスーツケースを提げ、確かな足どりで出発ゲートに向かって歩く。
スイス行き航空便の搭乗案内のスピーカー。
朝倉が歩く。
シーン140
■[離陸して行く航空機]
シーン141
■[飛ぶ機内]
座席に朝倉。
脇腹を押さえ、小さく呻ぐ。
通りかかったスチュワーデスが、心配そうに覗き込んで何か問う。
朝倉は『なんでもない』というふうに首を振り、笑ってみせる。
スチュワーデスが去る。
朝倉の顔は土気色。脂汗がベットリと滲み、流れ落ちる。
その顔と画面が、次第に閃光のような白へと感光して―
【完】
90 @kira 2013-02-19 22:29:02 [携帯]
シーン1[中華料理店]では、金子と朝倉が料理を食べながら会話する模様が描写されている。
会話というよりは、金子から朝倉への一方的な叱責である。ところが、当の朝倉は、まるで他人事のように受け流してしまうので金子が更に苛立つという設定。
劇場版ではカット。
91 @kira 2013-02-26 01:53:43 [携帯]
タイトルバック
まだ眠る雨の新宿・丸の内オフィス街。
シンセサイザーの効果音と共に浮かび上がるタイトル。
実は私はこのタイトルが嫌いである。
タイトルの文字は赤なのだが、その上に変な効果をつけているのだ。
単純に赤か白の方が生理的に好きなのだ。何故こんな処理をしたのだろう。白の場合は、バックの曇り空に消えてしまいそうだが。

<<始n <前n 次n> 終n>>
page 1
2
3
4
5
6
7
8
9 10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
[スレッド一覧]
[返信投稿]
[▲上に]
[管理ページ]
もっとき*掲示板