蘇える金狼(1979年)
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1 @kira 2013-02-08 22:00:00 [携帯]
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42 @kira 2013-02-10 21:34:34 [画像] [携帯]
シーン9
■[東和油脂ビル・表]
出社して来るサラリーマン、OLたちの群。
その群の中に朝倉がひっそりと混ざって歩く。
サイレンを鳴らしたパトカーがすれ違い、朝倉が建物に吸い込まれて行く。
『東和油脂東京本社』のプレート。
シーン10
■[東和油脂・経理部]
朝倉がタイム・カードを押す。
時計は9時5分前。
部員は30人ほど。
黙々と仕事する朝倉たち。部屋の背後に大金庫があり、その前に社員たちを後から監視するような形で部長の小泉、次長の金子のデスクが並んでいて、睨みをきかせている。
昼休み。
出前の店屋物を食っている朝倉と同僚の石田、湯沢。
石田『資本金65億、業界ナンバー2の大手メーカー、か・・・・・・』
湯沢『なんのことだい?』
石田『うちの会社さ』
湯沢『それがどうしたんだ』
石田『長いこと経理をやってると、見なくてもいい会社の裏側も自然と見えてしまう。ひどいもんじゃないか、一部のお偉方のやってることは』
石田『下請け会社から、割高な不良品を納品させて暴利をむさぼったり、トンネル会社を通じてプール会社の融通手形を落とさせ、それを導入資金にして裏金利を稼いだり・・・・・・』
湯沢『取締役兼計理部長の小泉。腹心の金子次長、専務の竹島、監査部長の秀原・・・・・・仕方ないよ、みんなバリバリ仕事のできる実力者ばかりだからな。所詮清水社長は外様、見て見ぬふりさ』
石田『腹立たないかね、朝倉君』
朝倉『怒ったところでどうしようもないでしょう。我々ペーペーは指食わえてるだけですよ』
湯沢『一つでも上へ出世したほうが勝つってことかな』
朝倉『そうですね』
石田『君はいいよ。出世競争で我々を一歩リードしてるからね』
朝倉『僕なんか駄目だよ。夜学出だし、毛並悪いから』
43 @kira 2013-02-10 21:40:20 [画像] [携帯]
■午後。
部長の小泉が、紙袋を抱えた一人の男を連れて部屋に入って来る。
小泉『諸君、ちょっと仕事の手を止めて、この方の話を聞いてくれ。共立銀行専務の兵庫さんだ』
朝倉たち部員が何事かと兵庫に注目。
兵庫『お仕事中、まことにあい済いません・・・・・・あるいはニュースでご存知かとも思いますが、今朝私どもの銀行の現金運搬人が襲われまして、九千万円にのぼる現金が奪われました』
朝倉『(緊張して)―』
兵庫『そこで皆様方にお願いがあるのです・・・・・・不幸中の幸いと申しますか、奪われた紙幣のナンバーは全部本店に控えられてあったわけでして、これがその番号です・・・・・・』
ショックを受ける朝倉。
デスクの下で握りしめたボールペンがピシッと音をたてて二つに折れる。
兵庫が紙袋から出した数字のビッシリ書きこまれた用紙を、金子次長が部下のデスクに配る。
朝倉の前にも置かれる。
兵庫『私どもは、各方面にご協力をお願いして歩いてるわけです。どうか、そこに書いてあるナンバーに該当する紙幣が出てきましたら、すぐにお知らせ願います』
金子『一般の人には、ナンバーを伏せておくのですか?』
兵庫『はァ・・・・・・警察とも相談した結果、犯人を油断させるためにもそのほうがいいということでして。どうか皆様方にもよろしくお願いいたします』
朝倉『(紙幣のナンバーにじっと視線を落として)・・・・・・』
シーン15
■[同・一階ホール(夕方)]
退社する社員がエレベーターから吐き出される。その中に、朝倉、湯沢、石田。
社員の流れとは逆に、ひとり若い女性が来て、エレベーターに向かう。
清水絵理子。絵理子を見て、立ちすくんでしまう朝倉たち。
石田『誰?』
湯沢『社長の令嬢だよ。絵理子さん』
石田『へえ、彼女が・・・・・・凄い美人だ』
小心そうな朝倉の眼が、一瞬鋭く、エレベーターに消える絵理子を見送る。
44 @kira 2013-02-10 21:48:04 [画像] [携帯]
シーン13
■[道(夜)]
トレーニング・ウエアの朝倉が縄跳びで走る。
シーン14
■[ボクシング・ジム(夜)]
重いサンド・バッグに、朝倉が迫力あるパンチを食い込ませる。
声『残念だな。本当に残念だ』
朝倉、動きを止める。
背後にコーチの沢野が立っている。
沢野『あと十ポンド体重を絞ってミドル級で試合に出れば、お前さん間違いなくチャンピオンなんだが』
朝倉『僕だって、練習ばかりでなく試合やりたいですよ。でも、前に話したように、血友病といって鼻血が出ると止らなくなる病気がありまして』
沢野『うン。世の中ってのは、うまくいかねえもんだな』
と、首を振りながら去る。
朝倉、再び動き出す。
サンド・バッグに突き出したパンチが食い込んで―
シーン11
■[清風荘・表(夜)]
風呂敷を抱えた朝倉が来る。
戦前に建てられた古色蒼然たるアパート。
シーン12
■[同・朝倉の部屋(夜)]
朝倉が入り、ドアに鍵をかける。
質素な洋室。ベッド、テレビ、流し台とガス・レンジのそばに電気洗濯機がある他はたいした物はない。
風呂敷包みを解き、中のボストン・バッグの中味をベッドの上にぶちまける。夥しい札束、鈍く光る38口径スーパーの自動拳銃、数十個の車の鍵をつないだキイ・ホルダー、ナイフ。
札束だけをバッグに詰め、ベッドの下に押し込む。
拳銃、キイ・ホルダー、ナイフを持って流し台のところへ行く。
下の棚を開くと、大きな米櫃。米の中からビニール袋を取り出す。
中には弾薬の弾箱等。
そこに拳銃などをしまい、再び米の中に隠す。着ている物すべてを脱ぎ捨て、素っ裸になる。鍛え抜かれた筋肉。
シーン16
■[朝倉の部屋(夜)]
パンツ一枚、左の太ももにホルスターの朝倉が、米櫃からビニール袋を引っ張り出す。
拳銃を取り出し、弾倉の弾を確認して、ホルスターに収める。
45 @kira 2013-02-10 21:53:37 [画像] [携帯]
シーン17
■[横須賀駅前(夜)]
オートバイに乗った朝倉が、通り過ぎて行く。
シーン18
■[歓楽街(夜)]
バーやキャバレーが軒を並べ、米水兵がわがもの顔で肩で風を切り、あるいはたむろしている。
朝倉が歩く。
精悍で不敵な表情には、昼の実直なサラリーマンを感じさせるものは微塵もない。朝倉、路地に入る。
シーン19
■[同・路地(夜)]
海神組のチンピラ、今野がもちをつき、短刀を水車のように振り廻す。
朝倉『落ちつけ。話がしたいだけだ』
今野『(ガクガク膝を震わせ)よ、寄るな!それ以上近づくと、叩っ切るぞ!』
構わず朝倉が近づき、今野の短刀を持つ手を蹴り砕く。同時に反対の足の靴先が今野の顎を砕く。
横倒しになり、呻く今野。
朝倉『海神組はどこからヤクを仕入れるんだ?』
今野『アメちゃんの水兵・・・・・・』
朝倉『取引の方法は?』
今野『詳しくは知らねえ・・・・・・けど、海軍の連中は、クラブ・ドミンゴに行ってカウンターに坐れば金に替ると言ってた』
朝倉『クラブ・ドミンゴ・・・・・・』
シーン20
■[『クラブ・ドミンゴ』・店内(夜)]
フロアでは金髪の露悪的なストリップ・ティーズ。
高い背もたれのボックスでは水兵とホステスたちが涼蕩の限りをつくしている。バーのカウンターの隅で朝倉が酒を飲んでいる。その朝倉を胡散臭そうに見ている三人のバーテン。
朝倉『お代わり』
と、バーテンにグラスを出した時―背後からグイと銃口が突きつけられる。
朝倉『―』
背後に立ち拳銃を構えているのは用心棒の吉村。
吉村『騒ぐんじゃねえぞ。立て!』
朝倉はズボンのジッパーを少しゆるめる。ゆっくりと立つ。
店内の喧騒を後に、朝倉が銃口に小突かれながら、店の奥に向かう。
46 @kira 2013-02-11 00:10:33 [携帯]
シーン21
■[同地下室・(夜)]
朝倉と吉村が入る。
梱包した荷物が隅に積んであり、二人の男が待ち構えている。
海神組幹部の坂本、店の用心棒の野坂。
坂本『こいつのからだを当たり、ポケットの物を取り出せ』
吉村が油断なく銃口を向け、野坂が朝倉のからだを当たる。
腋の下、尻のポケットなどを手で軽く叩き、拳銃を隠した左の股に近づく。
野坂の手が、無事左の股を通過して、足もとのほうへ行く。ポケットから煙草、ライター、数枚の札と小銭などを取り上げる。
野坂『これで全部のようです』
坂本『(品物を一瞥して)身許を知らせる品は何もなしか・・・・・・何者だ?!』
朝倉『言った筈だ。麻薬を買いたい』
坂本『ここにそんな物はない。ふざけやがって・・・・・・てめえは何者だと俺は聞いてるんだ』
朝倉『・・・・・・』
坂本『思い出させてやろうじゃねえか』
と、野坂を眼で促す。野坂が刃渡りの長いナイフを出し、朝倉の髪を掴み、頬に刃を突きつける。
坂本『なますにしてやれ』
野坂がサディスティックな笑いを浮かべて刃を走らせようとした時、朝倉がナイフを避けるような恰好でからだを斜めに開く。
同時に、ズボンのチャックを外して開き、内腿に隠した拳銃を抜き出す。
拳銃を上げるのと引金を絞るのが同時。銃声が部屋を揺るがせ、ナイフを握ったまま内臓をぐしゃぐしゃにされた野坂が後向きに坂本のほうへ吹っ飛ぶ。
朝倉が茫然としてる吉村を撃つ。
喉笛から頸骨を打ちぬかれた吉村がぶっ倒れる。拳銃を抜いた坂本めがけ、朝倉が突進。
親指を撃針の間に差し込んで暴発を防いでおき、その拳銃で坂本の右腕を強打する。
床に落下した途端、坂本の拳銃が暴発。弾は壁のコンクリートに当たって跳ねる。
朝倉、仰天して飛び上がる。
その間に、坂本が落ちた拳銃を掴もうと腹這いで左手を伸ばす。その手に朝倉の靴が乗り、全体重をかけて踏みにじる。
坂本の絶叫。
朝倉が坂本の手から足を離し、転がってる拳銃を遠くへ蹴り飛ばして、坂本を見る。
47 @kira 2013-02-11 00:29:12 [携帯]
坂本『(喘いで)頼む、殺さねえでくれ・・・・・・』
朝倉『麻薬をまとめて買いたい。もしお前さんが俺の立場ならどうする?』
坂本『どうするって・・・・・・俺があんたなら、ブローカーを通して話をつける。うちの海神組は、チンピラを養うために小売りをやってるだけで・・・・・・うちの組が仕入れたヤクを扱ってるのは、市会議員の磯川だ』
朝倉『磯川?』
坂本『市議会でも実力者だし、県の公安委員もやってるから、誰もうかつに手が出せねえ。大物だ・・・・・・家は塚山公園の近くのでっかい屋敷だから、すぐ分る』
朝倉『・・・・・・』
坂本『けど、俺に言わせりゃ、無茶もいいとこだ。磯川が、そこの馬の骨とも分らねえあんたと素直に取引する筈がないし、海神組だって黙っちゃいねえ・・・・・・誰なんだ、あんた?』
朝倉『・・・・・・』
坂本『何企んでんだ?』
朝倉『聞きたいか?』
坂本『聞きたい。是非教えてくれ』
朝倉『東和油脂って会社を乗っ取ってやろうと思ってね。資本金65億の一流企業だ』
坂本『―』
朝倉『ゆくゆくは社長令嬢と結婚して、娘婿にでもおさまりたいんだが、そこに辿り着く迄には、いろいろとやることがある。例えば、不正行為をやってる経理部長一族を追いつめるためには、経理部長の女をモノにしなければならない』
坂本『―』
朝倉『それには先ず、てめえが自由に動けるだけの金が欲しい。そう思って、共立銀行の現金運搬人を襲って、九千万円ほどを奪った』
坂本『あれは、あんたが?!』
朝倉『そう。やったのは俺だ』
坂本『―』
坂本『話し終わったら、あんたは俺を殺すつもりなんだ!喋るな!』
朝倉『聞きたいと言ったのはお前だ・・・・・・そのヘロインをゼニに換えれば、きれいな金が、しかも何割か増えて戻ってくると目論んだのさ』
坂本『(縋るように)俺は何も聞いちゃいねえ!あんたの顔も忘れた!だから頼む、撃たな―』
朝倉が引金を絞る。
銃声。
背後に吹っ飛んで叩きつけられる坂本。
倒れている三人の服を次々に探る。
数十万の現金、坂本のシガレット・ケースの二重底から五グラムほどのヘロインを奪う。
48 @kira 2013-02-11 08:39:41 [携帯]
シーン22
■[ある駐車場]
朝倉が一台のスポーツカーの傍に立つ。
ポケットから数十個の鍵のついたキイ・ホルダーを取り出し、車のドアに合う鍵を選び始める。
眼は周囲の動きに注意を払いつつ、手の動きは的確に鍵を選び続ける。
いくつ目かの鍵が合う。
朝倉、ドアを開け、運転席にすべり込む。
49 @kira 2013-02-11 12:13:59 [画像] [携帯]
シーン23
■[参宮マンション・表]
スポーツカーが停まる。
朝倉が七階の一室を見上げる。
シーン24
■[同・ある一室]
帰り仕度の経理部長の小泉が、立ち去り難く永井京子を抱きしめる。
小泉『重役会議があるので、どうしても社へ戻らないと・・・・・明日、来る』
京子はキスに応えるが、あまり気はない。
シーン25
■[スポーツカーの中]
朝倉、ポケットからヘロイン包みとケントの箱を取り出す。
煙草の一本を抜き、ナイフの刃先で器用に煙草の葉を三分の一ほど紙の上にほじくり出し、それにヘロインを少量混ぜる。
その葉を再び巻紙の中に戻す。
マンションの玄関を出入りする人間たちに気を配りながら、一本、二本、三本・・・・・・と、根気のいるその作業を続け―
朝倉が玄関を注目している。
やがて、永井京子がマンションから現れる。数本のゴルフ・クラブの入ったバッグを持ち、待たせてあるタクシーに乗り込む。
走り出すタクシーを追って、朝倉もスタートする。
シーン26
■[ゴルフ練習場]
京子が上手に打つ。
朝倉が隣の位置に(京子に尻を見せる形で)立ち、打ち始める。
が、まるでボールに当たらず、たまに当たってもチョロ。
挙句に、尻もちをつく。
その不様な恰好はいやでも京子の眼に入り、失笑を誘う。
朝倉が一旦打つのを諦め、京子の背後に来る。感嘆したように眺める。
しなやかな体が、ボールを飛ばす。
京子が朝倉の視線を意識する。
やがて、打ち終えて帰り仕度。朝倉が声をかける。
当惑する京子に、コーチを依頼する。
強引に頼み込み、クラブを握る。
京子は当惑の表情のまま、それでも基礎の打ち方のようなものをコーチし始める。
シーン27
■[道]
朝倉のスポーツカーが疾走する。助手席に京子。
50 @kira 2013-02-14 23:31:00 [携帯]
シーン28
■[中華街の『××楼』・個室(夜)]
朝倉と京子がビールのグラスを合わせる。一気に飲み干す。
朝倉『僕は堀田と言います。株屋です』
京子『私は永井京子・・・・・・(ピシャリと)堀田さん、食事だけという約束よ。名前だけでこれ以上は詮索しないことにしましょう、お互いのために』
朝倉『分りました』
ウエイターが料理を乗せたワゴンを押して入って来る。
料理の鉢や皿、ビールや朝倉の注文した透明な酒、ウーカーピンを置く間に、京子がトイレに立つ。
朝倉がポケットからヘロインを取り出し、京子のグラス、ビール壜に少量落とす。
京子がビールを飲む。
スープを飲み、料理を食べる。
そんな京子を朝倉が冷静に眺めながら、自分も食べる。
京子『とてもおいしいわ』
朝倉『これはメニューにはないスペシャル料理でしてね、蛇の卵、熊の掌、スッポン、牛や豚のペニスと枸杞の煮物などが混ざってます。スープにはエジプトから輸入したゼニアオイ科の植物が刻み込まれてます』
京子『(朝倉を見て)・・・・・・』
その頬は上気し、瞳は異常にギラギラ燃えている。
朝倉『つまり、強精剤ですな』
思考が鈍ってるのか京子は頓着なく食べ続ける。
不意に手から箸が落ち、からだがぐらりと揺れる。
朝倉が隣の椅子に移り、支える。
シーン29
■[中華街(夜)]
朝倉が、崩れ落ちそうな京子を支えて歩く。
51 @kira 2013-02-14 23:37:34 [画像] [携帯]
シーン30
■[ホテル・表(夜)]
スポーツカーが滑り込み、停まる。
近づいたボーイにキイを預け、助手席のドアを開いて京子を降ろす。
シーン31
■[同・一室(夜)]
朝倉が窓際に立ち、カーテンを開ける。
宝石のような港の灯と、沖合いの船の灯が揺れている。
京子がじれたように着ているもの全てを脱ぎ捨て、朝倉に縋る。
朝倉は京子を抱き、ベッドに運ぶ。
そのまま倒れ込む。
獣のような呻きをあげ、京子が激しく反応して―
虚脱したようにベッドの中の二人。
朝倉がからだをずらしケントの箱を取る。さりげなく二本を取り出し、火をつける。そして、ヘロインを仕込んだ方のを京子に渡す。
京子がむさぼるように深く吸い込む。
朝倉は自分の煙草を揉み消すと、京子の乳房を愛撫。愛撫しながら京子の反応を見守る。
煙草を吸い続ける京子。
目尻に涙、生あくびをする。
京子『何だか、吐き気がする・・・・・・』
瞼を閉じ、指から煙草が落ちる。
朝倉が吸殻を拾い、灰皿に捨てる。
京子『吐きたい・・・・・・胸が苦しいの・・・・・・』
呟くと同時に鼾をかき始める。ヨダレが垂れる。
朝倉『(見守って)・・・・・・』
ベッドの朝倉が、胸の苦しさで眼を覚ますと―
上に京子がのしかかっている。
京子『私、何をしたの?覚えてないわ。思い出させて・・・・・・』
喘ぐ京子を、朝倉が受け容れる。
バスルーム。
頭からシャワーを浴びる朝倉。
朝倉がバスルームを出て、窓のカーテンを大きく開く。
眼を射る陽射しと、港の光景。
ベッドで、京子が眼を細めてゆるやかに煙草の煙を吐き出している。
京子『こんな気持になったのは初めて・・・・・・とても離れられそうにないわ、あなたから』
朝倉『・・・・・・』
京子『どうせ分ってしまうことだから、言ってしまうわ・・・・・・私は、あるお爺ちゃんの二号。向うは私に溺れきっているけど、私から見ればお金だけ・・・・・・東和油脂の取締役経理部長よ』
朝倉『・・・・・・』
京子『それが私の全て・・・・・・怒った?』
朝倉『いや』
京子『本当に?』
朝倉『本当だ』
京子『よかった・・・・・・これからは、あなたにお金の面では迷惑かけないわ。あなたが要るだけ、パパから取り上げてあげる』
朝倉『(笑って)悪い女だ』
京子『そうよ・・・・・・来て』
朝倉、ベッドに近づく。

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