野獣死すべし(1980年)
[スレッド一覧] [返信投稿] [▼下に]
<<始n <前n 次n> 終n>>
page
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

1 @kira 2013-02-08 22:00:00 [携帯]

の画像を貼りましょう。
42 @kira 2013-02-22 21:28:52 [画像] [携帯]

これが『B』では人物も画面全体も非常に鮮明になり人物ひとりひとりの動きも鮮明でセットの奥行きも広く感じられます。
 
今村力氏渾身のセットが鮮やかに蘇えって来ます!

43 @kira 2013-02-22 21:30:41 [画像] [携帯]

次は『列車内』での伊達邦彦の表情
 
『D』では画面が暗く全体的に青みが強い。
顔のパーツもノッペリした印象。

44 @kira 2013-02-22 21:32:27 [画像] [携帯]

『B』では画面全体の青に不自然さがなくなり肌の色合いもよりフィルムに近いモノとなっている。
瞳の濡れた感じもより鮮明になり、伊達の狂気が際立っています。
 
こうまで違ってくると最早別物と思われるくらいです。
実際『D』は画質を加工していたので映画とは別物というのは正しいかも知れませんね。
ただし『B』も別物である事には変わりありませんから、これから出てくるであろう次世代メディアがどんどん本物に迫って行くのだろうと思います。
 
『そう…これで終わりって酒だ!』

45 @kira 2013-02-22 21:38:41 [画像] [携帯]

■マンションの一室でラジオから自分が犯した殺人事件のニュースを聴くシーン。
編集では犯行当日のようだが実は数日後の設定だ。
丸山昇一の最初の脚本では犯行前に伊達は小さな安アパートに住んでいてクラシックを聴いていると隣の住人から壁を叩かれるのだ。
ハードボイルド映画の主人公がクラシックを聴いているのは非常に斬新だった。
カジノから強奪した金でマンションを購入した訳である。犯行後のマンションのシーンでは引っ越して来た伊達が本棚の整理をしている。脚本段階では運送屋のスタッフが完全に防音された部屋を見て『ピストルでも撃つんじゃないか』と不信がる描写があった。
恐らく優作自身がこういった生活感を嫌い脚本段階で削除したのだろう。
優作が目指したのは金の為に殺人を犯す男ではなく殺人の為の犯罪である。
こういった部分が『蘇える金狼』の朝倉哲也との決定的な相違点だ。伊達に較べれば金が目的の朝倉は極めて健全で我々に近い価値観を持っている。
これがどれほど恐ろしい事かというと30年経過した現在は伊達の後継者が続々と誕生しているのである。
これは優作が30年後を予見したのではない。
優作が夢想した世界に現実が近づいているのだ!
■午前6時に既に起きてコーヒーを飲んでいるからかなり早起きだ。不眠症とも考えられるが昼寝しているシーンがあるのでそれはないだろう。

46 @kira 2013-02-22 21:50:51 [画像] [携帯]

『松田優作失踪事件』
 
ドラマ『探偵物語』終了から『野獣死すべし』撮影開始までの数週間ほど松田優作が姿を消した。
詳細はよくわからないが松田優作の生涯の中でも非常にヘビーな時期であった。
『探偵物語』で共演した女優・熊谷美由紀と不倫関係にあった。
妻には友人から優作と美由紀がデートしている現場を目撃したという報告で知らされた。
優作は『妹みたいなもんだ』と言い訳したが実際は違った。
自己のジレンマと『野獣死すべし』の伊達邦彦像構築の苦悩から優作は姿を消す。
 
では優作は一体どこへ行ったのか。
 
優作はある宗教家の門を叩いていた。
最早、自分ではどうする事も出来ない悩みの回答を宗教に求めたのだった。
優作が宗教なんて冗談みたいだ。
『悟り』なんて言葉とは真逆のいちばん遠い場所にいるのが優作という人間なのに。
これが冗談のような本当の話である。
 
優作の葬儀の映像を見た事があるだろうか。
美由紀が子供達と並んで喪主の挨拶をしている場面だ。
実はこの場面の美由紀の後ろにいる人の中にその人物がいたというのだ。
その人物の名は『今井』という。
優作はその人物のおかげで救われたらしい。
優作は以後、亡くなるまでの間、朝一番に沸かした水で墨を擦って写経をした。
優作は生活する為に最低限の食事だけを採り、サウナ等で減量を行った。
クランクイン当時には体重が8キロ減って62キロだった。
自身の伊達邦彦像に近づける為に上下の奥歯4本を抜歯した。これにより頬をすっきりさせる事に成功した。
そして、身長を低くする為に脚の骨を10センチ切断する事まで考えていたという。
優作は医学書を調べて成功事例を発見。切るか否かを真剣に悩んでいたが、歩けなくなる為に断念した。ここまで行くと最早、狂気の沙汰と言えよう。

47 @kira 2013-02-22 22:01:34 [画像] [携帯]

『野獣死すべし』とは何か
 
『野獣死すべし』は松田優作の存在なくして完成されなかった作品である。
この作品は公開当時の批評では『破綻した失敗作』と評された。
では何故、角川春樹が『蘇える金狼』のヒットに気をよくして第二弾として企画しただけの映画が現在も語られているのか。
 
松田優作はまず丸山昇一が書いた脚本で角川から了承を得た。
ここから優作とスタッフの犯行がスタートする。
この脚本は完成した映画とは全然違っている。
話は設定やキャラクターの変更以外は実は原作のストーリーに似ている。
しかし後半に行くに従い、脚本と映画は別物になっている。
これは優作が脚本を改変したからである。
普通の俳優はこんな事はやらない。
貰った台本のセリフを喋ってれば出演料が貰えるのだ。
まして脚本家でもない優作が手直ししたって脚本料は出ないし、クレジットもされない。
こんな事をさせたのは松田優作の抱える業である。怨念である。
映画とは大抵が映画会社が企画したモノを映画職人がそのまま映画化して配給されるだけで終わりだ。
しかしこの『野獣死すべし』はその企画を映画会社から奪い取り、変質させて自らの血と肉を流し込んだ墓標なのだ。
或いは、己の生を確認する為に闇に発せられた慟哭だ。
 
この作品は松田優作が自身でも持て余す業をメジャー作品の中に投入した壮大なる実験作だ。
だから当時の技術的な問題や思想的な事も含めて破綻している。
優作は纏める方向性も模索しながらも敢えて破綻させたのだ。
それは恰も伊達邦彦の亡霊がそうさせたかのようだ。そして破綻こそ、この作品に相応しい。
 
『この作品が理解出来ない』だとか『酷い映画だ』という意見はどうでも良い。理解出来る者だけが理解すれば良い。日本映画史に名を残すとか映画賞を穫るだとか観客に感動をなどという事とは別の次元にこの作品は存在する。
ある種、神がかった作品と言えよう。
 
『野獣死すべし』には当時の優作の仕事でもプライベートでももがき苦しんだ疵痕が残っている。
 
『野獣死すべし』は過去に二作。原作に忠実に映画化されている。
それでも松田優作出演作が我々の心を捉えているのはその疵痕に惹かれてしまうからである。
それはまた我々も破綻しているからではないだろうか。

48 @kira 2013-02-23 10:30:03 [画像] [携帯]

『野獣死すべし』大藪春彦
角川文庫版
映画『野獣死すべし』が公開された1980年にカバーをリニューアル。
カバー写真が『蘇える金狼』の松田優作に替えられた。
角川としてはこういうイメージで行きたかったのだろう。

49 @kira 2013-02-23 10:43:00 [画像] [携帯]

『野獣死すべし』大藪春彦
角川文庫版
年始にリニューアルされたカバーを映画の公開に合わせて再びリニューアル。
映画ポスター等で使用されたビジュアルを採用。
これは『蘇える金狼』製作の際に松田優作がグアム島に渡って射撃訓練した時の写真を加工したモノ。
最初のは映画製作発表直後だから納得出来るが、今回も『蘇える金狼』のビジュアルを使用するというのは理解出来ない。
公開直前ならポスター写真も撮影されているだろうし、ビジュアルイメージも固まっているはずだろう。
松田優作の大胆なイメージチェンジで戦略に迷いが出ていたのかも知れない。

50 @kira 2013-02-23 10:52:35 [画像] [携帯]

『野獣死すべし』大藪春彦
角川文庫版
82年の『汚れた英雄』公開に合わせて開催された『汚れた英雄フェア』に伴ってカバーがリニューアルされた。
今回やっと『野獣死すべし』のポスター写真に近いビジュアルイメージが使用された。
このはバージョン違いが多数存在する。
いずれも薄暗いライティングで松田優作がはっきり写っていない。
松田優作が抱いている女性は映画でヒロインを演じた小林麻美。
伊達邦彦のサインが意味不明。

51 @kira 2013-02-23 10:58:13 [画像] [携帯]

シナリオ『野獣死すべし』
 
シーン1
■[歓楽街]
午後の遅い時刻―。 板前たちが店の前で猥談に興じ、太ったホステスが美容院からセット途中の頭をのぞかせ、生気ない餓鬼どもがもっそり走り回る。
緩慢で白茶けた光景を裂くように、その男は悠然と現われた。
すれ違う地廻りのヤクザたちが、男に軽く会釈する。
追い始める視点・・・・・・。
その男は、警視庁に入ってゆく。
追ってきた視点が、停まる。
立哨する警官が男に敬礼する。
男は警視庁捜査一課岡田警部補である。
 
シーン2
■[賭場の中]
その男たちは、ポーカーやルーレットに興じる紳士淑女をさりげない視線で監視している。
黒岩、峰原、奥津。用心棒だ。
低い照明。もうもうたる紫煙。紙屑のように行き交う札ビラ。
3人を追いつづける視点・・・・・・。
 
シーン3
■[雑居ビルの前]
虚飾の剥げおちた早朝の歓楽街。
ビルから、賭場にいた紳士淑女が吐き出され、外車やハイヤーで散ってゆく。
ビルの上階を振り仰ぐ視点・・・・・・。
 
シーン4
■[アスレチック・ジム]
器具を使い、隆々たる筋肉を鍛えている岡田。
隣りで刑事の柏木が鍛錬しているが、こちらはつきあい程度で乗り気でない。
柏木『どうスか、ビールでも。健康になりすぎると、仕事にならんですよ』
岡田、苦笑して、サウナ室へ向かう。
追う、視点・・・・・・。
岡田、フッと顔半分振り向いてみる。背後に何かを感じていた。
立ち去る、視点・・・・・・。
 
シーン5
■[賭場の中]
ポーカーに興じる、手。
負けて手持ちの札を投げ、出口に向かう。
その視点は黒岩、峰原、奥津の拳措を追っている。
黒岩が、フッと顔半分振り向いた。背後に何かを感じたのだ。
立ち去る視点・・・・・・。
 
シーン6
■[アパート]
1Kの部屋には洋書や哲学、心理学、詩集などの分厚い書物、それにオーディオや英文タイプライターが所狭しと並ぶ。
オーディオから流れるクラシック音楽。
隣室から壁を叩く音がして『静かに!』と声がした。
部屋の主が、むっくり起き上がる。
伊達邦彦。隣室への壁を見て・・・・・・オーディオのボリュームを絞る。



<<始n <前n 次n> 終n>>
page
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
[スレッド一覧] [返信投稿] [▲上に] [管理ページ]
もっとき*掲示板