野獣死すべし(1980年)
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1 @kira 2013-02-08 22:00:00 [携帯]
の画像を貼りましょう。
82 @kira 2013-02-23 16:54:07 [画像] [携帯]
シーン63
[いきなりガッと起き上がる真田(貸別荘の2階の寝室)]
悪夢が醒めきらず、ボンヤリしている真田。
寝汗が噴出している。
隣のベッドは白いシーツが見えるだけ。
声『夢じゃない』
真田、ギクッと見回す。
隅の闇の中に、伊達が坐っている。
伊達『女は確かに死んだ。やがて土になる。それだけだ』
外は雨。遠く稲光りがする。
伊達『いま、なぜ脅えているかわかるか。人ひとり殺したからじゃない。殺すことに快感を覚えた自分に戸惑ってるだけだ。俺も最初はそうだった』
伊達、真田に歩み寄りながら悪魔のように囁きつづける。
伊達『お前の寝顔は輝いていた。心から充足していた。生まれて初めて一番のご馳走にありついた顔だ』
項垂れたままの真田。
雷鳴、稲光りが激しくなる。
伊達『誰も皆、牙をもって生まれる。1つ齢をとる。2つ齢をとる。よってたかって牙をもぎ、結局ドブネズミになりさがる、おしきせの快楽だけで満足するドブネズミ。そうじゃないだろ、真田。あの女を殺った瞬間に気づいただろ。本当のご馳走が何か気づいたはずだ』
真田、小刻みに震える。
伊達『快楽はむさぼりつくすまで奪うものだ。そのためにドブネズミがどれほど死のうと知ったことじゃない・・・・・・野獣に帰れ、真田』
真田、ゆっくり顔を上げる。異様な輝きだ。
そして物の怪にとりつかれたような伊達の顔。
2頭の野獣―。
その時、すさまじい雷鳴と共に閃光が画面を覆いつくす。
純白の画面。すべての音が一瞬にしてF・O。
83 @kira 2013-02-23 17:00:36 [画像] [携帯]
シーン64
[ドッと音が溢れ・都市が拡がる]
錯綜するハイウェイの車の列。
ターミナルの雑踏。金曜日―。
シーン65
[東洋銀行・日本橋支店・裏口]
現金輸送車が到着し、ガードマンの厳重な警戒のもと、ジェラルミンケースが運び込まれる。
シーン66
[同・表]
近くの路肩にライトバンが停車する。
運転席に、グローブをつけた伊達。
サングラスをかけ、帽子を真深に被っている。
助手席にゴルフバッグ。
伊達、何気なく前を見て、?となる。
女が銀行に入ってゆく。令子である。
伊達『・・・・・・』
腕時計、『2時55分』
サングラスと帽子で変装した真田が通りがかり、目配せする。
伊達、・・・・・・動かない。真田、不審な顔で伊達を見る。
伊達、・・・・・・ゴルフバッグを持ち、ゆっくり外に出る。
伊達と真田、マスクをつけた。
シーン67
[銀行内]
十数人の客が、カウンターに群がっている。
一方の出入り口から伊達が入り、カウンターに真っすぐ向かう。
べつの入口から真田がのっそり入り、さりげなくガードマンに近づく。
両出入口のガードマンが時計を見て、シャッターの開閉ボタンを押す。
伊達、ゴルフバッグからいきなりサイレンサー付ライフルを抜き出し、カウンター内の梅津(非常通報係)を撃つ。
心臓を撃ち抜かれて椅子ごとふっ飛ぶ梅津。
すかさず伊達は、店の奥の天井に設置された2ヵ所の防犯キャメラを撃ち落とす。
真田は伊達が行動を起こすと同時に、サイレンサー付オートマチックで、至近からガードマンを射殺。
さらにもうひとつの出入口に突っ走りながらそこのガードマンを射殺。
まさに、一瞬のできごとであった。
悲鳴を上げるのも忘れ、愕然とその場に釘づけになる行員や客たち。
下りてゆくシャッターの音だけが、無気味に響きわたる。
外界と完全に遮断される。
84 @kira 2013-02-23 17:17:03 [画像] [携帯]
真田、カウンターに飛び乗る。
真田『全員、手をあげて、ロビーに並べ!』
客や行員たちが覚束ない足どりでロビーに集まってくる。
真田『早くしろ!』
恐怖の移動の中で、ひとりだけ動かない女がいる。令子。
他の者たちとは違った驚きの眼を、伊達に向けているのだ。
伊達、令子には一顕だにせず、故意か偶然か、令子の脇をスリ抜け、奥に向かう。
令子『・・・・・・』
シーン68
[同・地下室への階段]
伊達、足音をたてずひっそりと下りてゆく。
手には、リボルバー。安全装置を外す。
シーン69
[地下金庫室]
出納係2名、責任者1名が、数え終えた札束を金庫に入れている。
見守るガードマン2名。
外で銃声がして血しぶきをあげたガードマンが倒れこんでくる。
続いて、スッと伊達が現われる。
ガードマンのひとりが非常通報ボタンを押す寸前、伊達が撃ち、射殺する。
ホールドアップする、他の4人。
伊達、バッグを2つ放り投げる。
シーン70
[同・1階の店内]
机上の電話が数本、鳴りっ放しである。
行員や客たちは、窓のない会議室に閉じ込められた。
全員、入口に背を向けている。
入口には真田の銃口が光っているのだ。
地下室から鈍い銃声が4発続けて聞こえる。
会議室の中で痙攣を起こす者、泣きじゃくる者、祈る者、小便をもらす者。
伊達が2個のバッグ(計20s)を下げてやってきた。
真田、頷いて会議室のドアを閉めようとする。
伊達が、何かに惹きこまれるように中を覗いた。
中の者は全員背を向けているのに、ひとりだけ伊達を凝視する女、令子。
2人の目が、合った。
伊達・・・・・・。
令子・・・・・・。
伊達、バッグを真田に渡し、決心して声を出す。
伊達『先に車に戻ってろ』
令子『―!』
真田、一瞬怪訝な顔をするが、裏口へ去る。フワッと立ち上がる令子。
伊達・・・・・・。
令子。憑かれたような顔。
揺れながら、伊達に歩み寄る。
伊達は逃がしてくれるかもしれない。連れ出されて始末されるかもしれない・・・・・・。令子、いっぱい目を見開いて、ドアの外に出てきた。
ドアを閉める、伊達。
同時に、鳴りつづけていた電話がパタッとやむ。
直後、令子の全身がワナワナと震え始める。伊達、令子を包み、抱く。
息がもつれ、声が声にならない令子。
鈍い銃声。ガクッと令子の身体が弛緩する。
伊達・・・・・・。
85 @kira 2013-02-23 17:20:38 [携帯]
シーン71
[同・表の通り]
ライトバンの運転席で待っている真田。
裏口から回ってきた伊達が、乗り込む。
2人の眼は、陶然として濡れている。
ライトバンは、銀行脇の路地に入ってゆく。
その時、遠くでパトカーのサイレンが高まる。
銀行のシャッターが開く。
地獄の恐怖から逃れた放心状態の人々が虫のように這いずり、出てくる。
到着したパトカーの警官が、唖然となる。
シーン72
[非常厳戒体制]
周辺の高速道路の入口が次々に閉鎖される。
一般道路の検問実施。
けたたましいサイレンと共に疾駆するパトカー郡。
警察のヘリポートからヘリコプターが飛び立つ。
―この間、警察の非常無線交信がOFFで交錯する。
86 @kira 2013-02-23 17:25:02 [携帯]
シーン73
[地下ホール]
コートを裏返しにし、変装をといた伊達と真田、カバーを替えたバッグを1つづつ持ち距離をおいて歩く。
都営浅草線、東西線の改札口には入らず、予め用意した切符で銀座線の日本橋駅改札に入る。
伊達の声が被る。
伊達の声『まず銀座線で神田に出る。それから山手線に乗り換えて東京で下りる』
真田の声『そのまま熱海に直行か』
伊達の声『そうだ。熱海からレンタカーで伊豆の別荘に入る』
シーン74
[銀座線・車内(浅草行き)]
ドアに凭れている真田。一様に押し黙り俯向いたサラリーマンの群れを見て胸がむかつく。
別のドアに凭れている伊達。と―、その肩を叩く者がいる。柏木である。
伊達『・・・・・・やあ』
柏木『ヨッ。偶然が2度も続くと気持ち悪いな』
伊達『やっぱり縁があるんじゃないですか』
『三越前』を発車して、車内アナウンスが次の停車駅『神田』を告げる。
柏木『神田?』
伊達『(咄嗟に)ええ。翻訳の打ち合わせがあるもんで』
柏木『俺も。神田の学生が定食屋でヤクザをブチ殺したんだと。どうなってんのかね、ところでなんで電車乗ってる?』
伊達『え?』
柏木『吐くんじゃないの』
伊達『・・・・・・(微笑)』
柏木『最近アパートに帰ってないじゃないか』
伊達『よく旅に出ますんで』
柏木、伊達の持つバッグに目をやる。
柏木『今日も?』
伊達『ええ。打合せ終わってから』
柏木『どちらへ』
伊達『・・・・・・東北へ、ちょっと』
柏木、バッグを胡散臭く見る。
シーン75
[銀座線・神田駅]
伊達と柏木が下りる。別のドアから、真田が出て、歩く。
シーン76
[国鉄神田駅]
地下通路から登ってきた真田、国鉄改札へ向かおうとして、振り返る。
遅れてやってきた伊達が、国鉄改札へ向かわずに、駅前に向かう。
しかもその隣にいる男(柏木)と話しながら。
真田『・・・・・・?』
87 @kira 2013-02-23 17:29:48 [携帯]
シーン76
[国鉄神田駅]
地下通路から登ってきた真田、国鉄改札へ向かおうとして、振り返る。
遅れてやってきた伊達が、国鉄改札へ向かわずに、駅前に向かう。
しかもその隣にいる男(柏木)と話しながら。
真田『・・・・・・?』
シーン77
[駅前の横断歩道(ガード下)]
を横断する伊達と柏木。
頭上には、警察のヘリコプター。
けたたましいサイレンと共に、パトカーがひっきりなしに行き交う。
その内の1台を、柏木が手帳を揚げて停める。
柏木『事件か』
パトカーの警官は臼井。
臼井『銀行が襲撃されました』
柏木『いつ、どこで』
臼井『つい先程、東洋銀行の日本橋支店です』
柏木『日本橋?』
柏木、傍の伊達を見る。
臼井『10人射殺され、相当の金が強奪されたそうです』
柏木、伊達のバッグを見る。
その時、パトカー内の無線が入る。
無線『本部から各車へ、本部から各車へ。車で逃走したと見られる犯人2名の内1名は身長1メートル80以上、肩幅が広く、脚が長い。○×色のコートを着ている。繰り返す・・・・・・』
伊達・・・・・・。
柏木『よし行け、飛ばしすぎて事故起こすなよ。新車なんだから』
パトカー、発進。
柏木、伊達と共に歩き出す。
柏木『出版社、どっち?』
伊達『あっちです。お宅は?』
柏木、伊達と同方向を指差す。
柏木『当然、あっち』
88 @kira 2013-02-23 17:33:12 [携帯]
シーン78
[通り]
伊達と柏木が歩いてくる。
柏木『さっきの聞いてた?』
伊達『ええ』
柏木『よォやるわな』
伊達『現場行かなくていいんですか』
柏木『前にも言ったじゃない。みんながワッと飛びつくのって、俺イヤなんだよね』
出版社の前に来た。シャッターが閉まっている。
貼り札―。
《本日は、弊社創立五十周年記念日につき、 休業させていただきます。 お客様各位 株式会社○△出版》
伊達、肩をすくめる。
柏木『(ニヤニヤと)・・・・・・お宅さん、日本橋からご乗車でしたね』
伊達『・・・・・・(ニヤッと頷く)』
柏木『つい先程』
伊達『・・・・・・一応出頭しますか』
柏木『この頃は令状なしで連行するとうるさいんでね。・・・・・・犯人は2人だっていうし』
伊達のバッグを見ている。
柏木『東北、どこ行くって』
伊達『できるだけ北の方、小湊あたりがいいと思ってますが』
柏木『上野から?切符買ってあんの?』
伊達『いや、予め予定を立てない方ですから』
柏木『温泉ねェ。クラシック音楽の権威が温泉めぐりなんて、ヘンな時代ですなァ』
シーン79
[上野駅・コンコース]
夕方の雑踏。夕陽が差込んでいる。
歩いてくる、伊達。
シーン80
[同・ホームの列車・中(急行・八甲田)]
客は、十数人。伊達がひっそりと坐っている。
網棚に、バッグ。
19時10分、発車した。
柏木が飄然とやってきて、伊達が見える位置の座席に坐る。
買ったばかりの小型トランジスタラジオを聴き、ポケットウィスキーをなめる。
伊達・・・・・・。
シーン81
[薦走する急行列車]
闇を―。
89 @kira 2013-02-23 17:36:23 [画像] [携帯]
シーン82
[同・車内]
客が数人に減った。
検札していた車掌が去る。
伊達の席に柏木がきて、向かい合って坐る。
呑みかけのウィスキーを差出す。
柏木『どう?』
伊達、手で断る。柏木のラジオから音楽番組が流れている。
柏木『痛いよなァ。このラジオが3千円。切符が○千円。こんなの必要経費で認めてくれんのかね』
伊達『・・・・・・難しい問題ですね』
柏木『難しいよ。必要経費プラス金一封がでるか、厳重戒告処分になるか、あんたがカギ握ってんだからね。(指差して)責任重いよ、ホント』
伊達『・・・・・・(苦笑)』
柏木『しかし、定食屋殺人事件はほっぽりだすわ、本署に連絡はせんわ・・・・・・こういう阿呆な刑事は―』
ラジオの音楽番組が中断する。
ニュース『・・・・・・東京日本橋の銀行襲撃事件であらたなニュースが入りましたのでお伝えします。犯人が逃走に使用したと見られるライトバンがつい先程発見されました。場所は東洋銀行日本橋支店のすぐ裏手の駐車場で、犯行に使用したと思われるライフル銃などが押収されました。このことから捜査当局では、犯人2人は車で逃走したのではなく、日本橋を通過する3つの地下鉄のいずれかで逃走を図ったものと断定し、捜査体制を大幅に変更する模様です』
柏木『―こういう阿呆な刑事は、やっぱりいてもいいわな』
不敵に笑う。
90 @kira 2013-02-23 17:41:42 [画像] [携帯]
シーン83
[薦走する急行列車]
シーン84
[同・車内]
客は、伊達と柏木。かなり離れた席に、家族づれが一組。
柏木『ところで、あんたどうして通信社やめたんだ』
伊達『それはもう調べがついてるでしょ』
柏木『まァな。アンゴラ、レバノン、インドシナ、去年のウガンダまで、よくもまァ戦場を渡り歩いたもんだ。この前通信社行って、あんたが各地から送ってきた写真をみせてもらったがね。ありゃひどい』
伊達『・・・・・・』
目を閉じた。
柏木『特に2、3年前からのは俺らが見る検死の写真よりひどいな。ボロキレみたいにブチ殺された兵士、住民、それも潰れた顔とか飛び出した内臓とか、そういうのばっかじゃないか。日本の新聞は隠健で、大体が戦火に脅える少女のつぶらな瞳とか戦場に残った一輪の花とか、そういうのしか載せんから、本社が見るに見かねてあんたを連れ戻すのも無理ないわな。・・・・・・なんでああいう写真しか撮らなくなったんだ』
伊達『・・・・・・』
瞑目した伊達。頬がキリッと引き攣る。ジッと見入る、柏木。
91 @kira 2013-02-23 17:46:09 [画像] [携帯]
シーン85
[地方駅に停車する急行]
家族づれが、下車する。
シーン86
[同・車内]
発車する。
乗客は柏木と伊達の2人だけになった。
棚のバッグを盗み見る、柏木。
瞑目したままの伊達。
ラジオのローカルニュース『午前0時のニュースです。昨日東京日本橋で発生した銀行襲撃事件は、いまだに犯人の手がかりすらつかめておりませんが、捜査当局は射殺された10人の内、客としてただひとり殺された女性について重大な関心を寄せています。この女性は、中央区日本橋のUSワックス社長秘書、華田令子さん。23歳ですが、なぜ多勢の客の中で華田さんだけが射殺されたのか不可解な点が多く―』
プツッとラジオのスイッチが切れる。伊達、フッと目を開ける。柏木が銃口を向けている。安全装置を外した。
柏木『ようやく令状なしでも取調べる決心がついたよ。・・・・・・いい女だったがな、あの娘は』
素早く、伊達のボディチェックをする。
凶器らしいものは何も見当たらない。
柏木、棚のバッグを下ろす。
伊達『・・・・・・』
柏木、片手でゆっくりバッグを開ける。
バッグの中には、―着替えが入っているだけ、
柏木『―』
伊達『(微笑)決心がつきましたか、次の駅で引き返す』
柏木『そうはいかんさ。・・・・・・相棒はどうした。どこで落ち合う予定だった!』
伊達『・・・・・・さァ、何と答えていいか』伊達、肩をすくめるだけ。
柏木の背後へ・・・・・・、真田が腰をかがめてソッと歩み寄ってくる。
柏木『・・・・・・妙な気分だよ。あんたが殺(バラ)したくなってきた。・・・・・・なんでかな、・・・・・・あんたの目がそうしろと、誘ってるよ』
伊達、無表情に内ポケットに手を入れる。柏木、カチャッと遊底を引く。
伊達がとり出したのは、サングラス。ゆっくり目に当てた。
柏木『―』
伊達のサングラスに、柏木の後頭部にオートマチックをつきつけた真田が映っている。
伊達がゆっくり手を差出す。
拳銃を伊達に渡す、柏木。
真田が回りこんで、伊達の隣に坐る。
真田『・・・・・・どうも』

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